『プリンセスクラウン』を振り返る。童話的な絵作りで王道ファンタジーを描く名作アクションRPG【電撃PS】

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 “アトラス×ヴァニラウェア”ブランドの最新作として話題を集めている『十三機兵防衛圏』が、ついに発売されました。

 本作は1985年の架空の日本を舞台に、巨大ロボット“機兵”に搭乗し、時代を超えて謎の敵“怪獣”と戦う十三人の主人公たちの活躍を描いたSFドラマチックアドベンチャーですが、作品のクオリティの高さと同時に、超豪華な先着購入特典(パッケージ版の初回生産分か、2020年1月15日までに購入したダウンロード版の通常版/限定版の両方に付属)でも話題を集めました。

 その中でも注目したいのが、PS4『プリンセスクラウン 復刻版』(ダウンロードコンテンツ/配信開始は2019年~2020年冬予定)です。

 本作は1997年にセガサターンで発売され、アトラス×ヴァニラウェア作品の“原点”となった名作アクションRPGのPS4復刻版。2005年に発売されたプレイステーション・ポータブル(PSP)版と同内容で、『十三機兵防衛圏』発売時点でもPS VitaのPlayStation Store経由でダウンロード版を購入することも可能ですが、先着購入特典として、PS4で無料で今冬配信予定と聞いて喜んだファンの方も多いのではないでしょうか?

 『プリンセスクラウン』は20年以上前の作品であり、グラフィックもPSP版と同内容のため、『オーディンスフィア レイヴスラシル』や『十三機兵防衛圏』といった最新のタイトルと比較すると、たしかに見劣りはするかもしれません。

 しかし本作は『十三機兵防衛圏』まで脈々と受け継がれてきたアトラス×ヴァニラウェア作品の“魅力の原点”が詰まった、非常に完成度の高い名作となっています。セガサターン版やPSP版を懐かしめる方はもちろん、「『ドラゴンズクラウン』とかは大好きだけど、『プリンセスクラウン』はやったことないな」という方も、ヴァニラウェアの歴史を知るまたとない好機ですので、ぜひプレイしてみていただきたい!

 ここでは、そんな思いから当時プレイしていたライターが『プリンセスクラウン』の魅力を詳しく語っていきたいと思います。
※画面写真はPSP版のものです。

  • ▲幼き女王・グラドリエルたちを操作して、冒険を繰り広げていくファンタジーアクションRPG。2005年に発売されたPSP版と同じ内容を、PS4で楽しめます。なお、DL配信開始は2019年~2020年今冬予定で、同じく先着購入得点のDLC“『十三機兵防衛圏』デジタル・アートワークス”所有者にPS Store経由で提供予定です。

後に生まれる名作タイトルの原点――
時代を超えてファンを魅了する名作アクションRPG

 『プリンセスクラウン』が発売された1997年は、ハードウェア性能の進化により、ゲーム自体も大きく変化を遂げている時代でした。アーケードや家庭用ゲーム機でも『バーチャファイター』シリーズや『鉄拳』シリーズ、『電脳戦機バーチャロン』シリーズなどの3Dポリゴン技術を採用した対戦アクション(格闘)が人気。

 RPGのジャンルでも『ファイナルファンタジーVII』や『グランディア』といった名作が登場して、まさに“大3D時代の幕開け”といっても過言でないくらい、3Dポリゴン演出やグラフィックが進化しはじめた時代でした。また、RPGでは、サイバーパンク風など少しひねりを加えた作品が人気を集めていました。

 そんな時代に颯爽と世に放たれたのが『プリンセスクラウン』です。まだスーパーファミコンなどがギリギリ現役で、なじみが深かった2Dドット絵のグラフィックを、セガサターンという当時の“次世代機”で表現するという逆転の発想で高い映像クオリティを実現。ゲーム業界に衝撃を与えました。また、当時のトレンドを俯瞰すると、本作の古典的とも言える”中世ヨーロッパ風の王道な世界設定”は一周回って珍しく、かえって新鮮な印象を与えるものでした。

 当時の“主流”ではないゆえか、他の有名RPGシリーズのような爆発的なヒットには至りませんでしたが、開発を担当したアトラス関西(当時)と、ディレクターからキャラクターデザイン、シナリオ、更にはアニメーションまで手掛けた神谷盛治氏(現:ヴァニラウェア有限会社代表取締役)の名前をゲームファンの心に刻みつけ、後に続くブランドの礎となりました。

 本作で培われた奥深い世界観や味のある2Dグラフィックにこだわる作風は『オーディンスフィア』や『ドラゴンズクラウン』、そして最新作である『十三機兵防衛圏』にも受け継がれています。ゲーム中のあちこちに後の作品に継承されている“エッセンス”が存在するので、その点に注目しながら遊ぶのも面白いと思います。

  • ▲美しい2Dグラフィック、対戦格闘のような濃縮された攻防が楽しめるバトルなど、後のアトラス×ヴァニラウェア作品に共通する魅力が詰まっています。

これぞ“ザ・ファンタジー”!
古式ゆかしい王道の世界観&ストーリー

 人間と魔族が古くから戦いを繰り広げている世界。人間界と魔族の世界がひとつのゲートで結ばれて発生した25年前の戦いでは、多くの魔族が人間界に攻め込んできたものの、先代の女王・エルファーランの活躍で撃退され、世界にひとときの平和が訪れた。

 時は流れ、女王エルファーランは世を去ったが、その血と志は彼女の娘たちに受け継がれた。そして末娘のグラドリエルが13歳の誕生日を迎えた日、彼女の頭上にヴァレンディア王国の王冠が継承される。しかし時を同じくして、各地に魔物が現れ、人々の生活を脅かそうとしていた――!?

  • ▲先代女王エルファーランと宮廷魔術師ジェストナイがデーモンと対決する迫力のオープニングシーン。そして25年の時が流れ、エルファーランの娘・グラドリエルが王位を継承するところから本作の物語が始まります。

 こんなプロローグから始まる『プリンセスクラウン』の物語。最初の主人公となるグラドリエルは、代々女王が治めるヴァレンディア王国のお姫さまで、ゲーム開始と同時に王位を継承し、幼いながら女王となります。しかし、王国の各地で魔物に苦しめられている人々の存在を知った彼女は、妖精のアーリアを従者として、旅に出る決意を固めるのでした。

 まさに王道、まさに絵本の姫騎士物語といった出だしですが、その後もドラゴンスレイヤーと称えられる凄腕の若き騎士・エドワードや、海の義賊と呼ばれる隻腕で片足の海賊・ポートガス、グラドリエルのジャマをしてくる魔法使いの女の子・プロセルピナなど、個性的なキャラクターたちが登場して、ストーリーを盛り上げてくれます。

 もちろんゲームを進めると、この3人が主人公となるシナリオもプレイ可能に。こういったストレートで絵本のような王道ファンタジーの作品は、近年なかなか珍しいため、逆に新鮮な気持ちでプレイできるのではないかと思います。

  • ▲グラドリエルを取り巻くキャラクターたちを中心に、壮大なストーリーが展開していきます。複数の主人公の視点で描かれたシナリオをプレイできる点は、『オーディンスフィア』シリーズや『十三機兵防衛圏』の先駆けとなる要素となっています。

 ちなみに本作では、各シナリオが”本”として表現されており、ゲーム開始後に小さな女の子に本を拾わせることでプレイするシナリオを選択していきます。

 この演出は、みなさんならご存知であろう『オーディンスフィア』にも通じるもの。本作ではおばあさんに本を読んでもらう形ですが、おばあさんに本を手渡した女の子が、その膝元に座る動きは必見! 猫を捕まえるとコンフィグ等に進めるといった構造も同じなので、要チェックです。

  • ▲女の子を操作して、本(シナリオ)を選ぶことでゲームが始まります。こうした丁寧な演出の数々が、作品世界への没入感を盛り上げてくれます。

当時の2Dグラフィックの最高峰!
今なお色あせない職人芸に注目!!

 『プリンセスクラウン』が注目を集めた1番のポイントは、安易に時流に乗ることなく、独自路線で高いクオリティを実現したグラフィックだと感じています。

 現在もインディーゲームに2D表現にこだわったタイトルがあるように、温かみのある本作のグラフィックは、今もなお”味わい”として通用する部分があります。3Dポリゴン技術の隆盛でゲーム映像のトレンドが“リアル方向”に全力で突き進んでいたなか、あえて2Dドット絵による表現にこだわり、別方向の最先端を見せつけてくれたのは、衝撃的でした。

 オリジナル版の発売当時は、絵本の中に飛び込んだかのようなフィールドを背景に、アニメのような瑞々しい動きのキャラクターたちが動き回っている映像を見て、目玉が飛び出た記憶があります。

 また、単に美しいだけでなく、細かい動作の1つ1つまでごだわった動きを楽しめる点でも革新的でした。プレイヤーが操作するグラドリエル姫は、振り返る際や地面のアイテムを拾う際、かがんだり身を翻すといった、ワンクッションある動きとなっており、これがまるでアニメーションを見ているかのような、なめらかな動きを実現しています。

 また、ハートの実をかじる、宝箱を見つけて喜んで飛び跳ねるといった仕草がいちいちかわいく、見ていて飽きません。歩くだけでも“ガシャン、ガシャン”といった鎧がきしむ重量感が伝わってくるレベルで、まさに“ドット絵の職人芸”を実感できます。

 これらの感想は『オーディンスフィア』や『ドラゴンズクラウン』をプレイした際にも持たれることかもしれませんが、その数世代前のハードで発売された作品から、ブレずに絵作りを追求していた点は本当に素晴らしい! 技術的な制約は当時のほうが多いぶん、最近の作品より味のある絵だと言っても過言ではありません。こういった細かい点も、注目ポイントです。

  • ▲プレイヤーが操作するグラドリエルはもちろん、敵モンスターの動きも圧巻のひとことです。攻撃の前兆となるアクションもバッチリ用意されているので、お見逃しなく!

 なお、アトラス×ヴァニラウェア作品では定番となっている“おいしそうな食べ物のグラフィック”も、本作でその原点を確かめることができます。食材や調理道具を組み合わせることで“料理”を行うことができ、“おべんとパン”や“やきもろこし”、“グリルにく”といった多彩なHP回復アイテムを入手できるので(しかもグラドリエル女王がおいしそうに食べてくれるというコンボ付き!)、ぜひお試しください。

ザコ敵の攻撃も油断できない!?
迫力の対戦格闘風アクションバトル

 後に『オーディンスフィア』などに受け継がれる、まるで格闘ゲームのような2Dフィールドでの探索&バトルも、本作の特徴となっています。敵と遭遇したら、シームレスにそのまま戦闘シーンに移行。勝利後も場面転換などはなく、そのまま再び探索できるといった感じで、テンポよくゲームを進められます。

 戦闘シーンでは、グラドリエルをはじめとする主人公を操作して、さまざまな敵モンスターと戦うことになります。キャラクターのサイズが大きく、さらに敵もさまざまなアクション(技)を駆使してくるため、まるで対戦格闘のような駆け引きと興奮が味わえると話題を集めました。それでいて煩雑なキー入力が必要なく、シンプルな操作で誰でも手軽に楽しめる点も魅力です。

 シンプルといってもダッシュ攻撃やジャンプ攻撃、連続攻撃、必殺技、防御、回避といった多彩なアクションやが用意されており、これらをうまく使い分ける必要があります。また、アクションを行うと消耗する“パワーゲージ”が存在し、これがゼロになると連続攻撃や必殺技が使えなくなるため、やみくもに攻撃し続けるのは得策ではありません。さらにHPを回復できる食品や薬、呪文の巻物といったアイテムの活用法も、勝敗を大きく分ける要素となっています。

  • ▲従者のアーリアから剣を受け取って戦闘スタート! 相手の動きをよく見て、防御や回避も織り交ぜつつ攻撃していく“対戦格闘風”のアクションバトルとなっています。

 敵モンスターの多彩な2Dアクションも見どころの1つです。オーカージェリー(≒スライム)やゴブリン、グールといった定番のザコモンスターはもちろん、ドラゴンやグリフォン、デーモンといった大型モンスターたちも主人公たち同様、美しい2Dグラフィックとスムーズなアクションで攻撃してくるので、ぜひ注目してください。

  • ▲ゲーム冒頭のイベントシーンで暴れるデーモンの動きも、迫力のあるものとなっています。攻撃それぞれに専用の動きやエフェクトが用意されており、必見!

 20年の時を経てなお、色あせぬ輝きを放つ名作『プリンセスクラウン』。古き良きレトロな時代をフィーチャーした『十三機兵防衛圏』と一緒に遊ぶのにふさわしい作品だと言えます。実際にプレイできる(DL配信が始まる)のはもう少し先なので、『十三機兵防衛圏』のプレイを進めつつ、楽しみに待ちましょう!

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電撃PlayStation Vol.682

  • プロデュース:アスキー・メディアワークス
  • 発行:株式会社KADOKAWA
  • 発売日:2019年11月28日
  • 定価:980円税込

十三機兵防衛圏

  • メーカー: アトラス
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: ADV
  • 発売日: 2019年11月28日
  • 希望小売価格: 8,980円+税

十三機兵防衛圏 プレミアムボックス

  • メーカー: アトラス
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: ADV
  • 発売日: 2019年11月28日
  • 希望小売価格: 14,980円+税

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