アニメ『陰の実力者になりたくて!』×ゲーム『カゲマス』対談。PR担当が語るファンとの向き合い方。意識しているのはツッコミを入れられる企画

セスタス原川
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 アニメ『陰の実力者になりたくて!』と、その3DアニメーションRPG『陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン(カゲマス)』の連続対談企画。第1弾はアニメ・ゲームそれぞれのプロモーション担当者の対談をお届けします。

 今回ご参加いただいたのは、KADOKAWAアニメ事業部の高岡遼さんと、『カゲマス』の開発・運営を行うAimingの小川文也さん。

 作品の魅力に加え、これまで行われた宣伝企画の意図や裏側なども語ってくださいました。

  • ▲左:小川文也さん、右:高岡遼さん。

●小川文也さん

 『カゲマス』の宣伝を担当。ゲームを中心に、手に取って遊んでもらうための戦略や施策を実施。

●高岡遼さん

 アニメ『陰の実力者になりたくて!』の宣伝を担当。『カゲマス』に加え、社内の原作、コミカライズ部署ともやり取りをしつつ、“作品をたくさんの人に知ってもらい、長く楽しんでもらう”ための施策を実施。

アニメに合わせたゲームリリースで盛り上がりを生む

――まずは『陰の実力者になりたくて!』の好きなところを教えてください。

高岡:異世界、最強主人公、ダークヒーローなど王道の要素が詰まっているのですが、そこにすれ違いという強いスパイスが効いているところかなと思います。ここが作品の一番の個性ではないでしょうか。

 もう1つ面白いところとしては、シャドウですら自分がすれ違っていることに気が付いていない。キャラクターたちのそれぞれの思惑に気が付けるのは読者・視聴者だけという。

小川:アニメを見ていても「いつお互いの真実を知るんだ?」とソワソワしちゃう感がありますよね。

高岡:みんなまじめなんですけど、シャドウも斜に構えているわけではなくて、自分の目標である陰の実力者を目指して一生懸命にやっていて。

小川:それぞれでベクトルが違っちゃってる。僕も高岡さんと同じところが好きです。

 すれ違いってほかの作品やお笑いなんかでも採用される要素ですけど、本作の場合はシャドウ本人ですら気が付いてないところが面白いです。

 彼は本当に最強の存在ではあるのですが、よくある何でも知っているタイプではなく、ただ本気で陰の実力者を目指していて、それに周りが巻き込まれていきます。

 シャドウに仕えるシャドウガーデンのメンバーも勝手に深読みするし、敵のディアボロス教団も何故か思惑を知られて困惑する。このすれ違いが本当に面白いです。

――今回、ゲームとアニメで連携するにあたり、ほかの作品と異なる部分などはありましたか?

小川:『カゲマス』はアニメ放送中にリリースできたのが珍しい部分だったと思っています。やっぱり、アニメなどで認知を広めてからゲームをリリースするというのが一般的じゃないかなと思いますし。

高岡:私としても、担当したアニメ作品のなかでゲーム展開をしたのは『陰の実力者になりたくて!』が初めてだったので比較は難しいですが、たぶんあまりないことですよね。

小川:そのぶん、他の作品以上に足並みを揃えることが多かった気がしています。アニメの放送期間中に出すと決まった以上は、そこに間に合わせるべく開発を進める必要があったので。

高岡:『カゲマス』チームの皆さんとは、細かく連携を取りながら進めさせて頂きましたね。

小川:アニメと同時期にゲームが出るからこそ楽しめる要素もあると思っていて、我々はそこを目指して開発を進めていました。

 監修を急いでいただくなどアニメ側にご負担をかけることも多々ありましたが、おかげでさまでリリースできまして、アニメと連動した楽しみ方を提供できたと思います。

高岡:こちらこそありがとうございました。

――事前登録からリリースまでの期間が短かったのも印象的でした。

小川:それはあえて短めのスケジュールにしました。事前登録を長くすると忘れられてしまうリスクがありますから。

 今回はアニメ放送中なのでそのリスクも少なかったかと思いますが、ある程度熱量を持った状態でリリースを迎えるための期間設定でした。

――宣伝はどのようなタイミングで足並みを揃えられましたか?

小川:僕らがご相談したタイミングでは、もう既にアニメのスケジュールが大方決まっている状態だったんです。

 そこで先ほどの通りゲームの開発を合わせるところで、どういうタイミングで情報を出すのが作品の盛り上がりを感じてもらえるかを意識していました。

高岡:情報解禁のタイミングなどもそうですよね。

小川:はい。まずは直前生放送でゲーム化を発表し、そこから事前登録のタイミングもアニメの盛り上がりに合わせたいなどなど、いろいろご相談させていただきました。

高岡:アニメについては、ほとんどの作品が放送前から全体のグランドスケジュールが決まっているので、そこをベースにどういった宣伝活動をするかを考えていきます。

 具体的には、第1話放送までは如何に多くの人に見てもらえるかの“認知”。その後は、如何に最後まで見てもらえるかの“継続”の2つを意識しています。

 そのために、放送中は継続的に情報を出すことを意識していました。水曜日のオンエアが一番盛り上がるタイミングなので、そこに宣伝の山場を持ってくるようにしました。

小川:ゲームのリリースもオンエアタイミングに合わせる形でした。

高岡:放送日以外も前日の宣伝だけでなく、放送後にその話で登場したモノに関するプレゼントをするなど、放送日以外の作品外でも『陰の実力者になりたくて!』を楽しんでもらえる工夫を考えました。

 宣伝の意図として、“広く伝える”という基本的な部分は両方で共通していると思いますが、ゲームならではだなって感じられるところってあります?

小川:ゲームの場合は、遊びとしての魅力もお伝えする必要がある点じゃないでしょうか。

 ファンの方に楽しんでいただくのはもちろんですが、次のフェーズとして『陰の実力者になりたくて!』のキャラクターとかストーリーを知らない方々に向けて、ゲームとして楽しそうだと思ってもらえるようなことを伝えていくのも大事だと考えています。

 あとは運営していくものなので、アニメ以上に継続的かつ新鮮に感じてもらえる宣伝を意識しています。

施策にファンがツッコミを入れる独特な関係性

――印象に残っている施策を教えてください。

高岡:アニメ放送前で言うと、七陰を演じてくださっているキャストの方にご協力いただいて撮影した実写ビジュアルですね。認知を広げるうえでもかなり効果がありました。

 放送後だと“シャドウ様戦記コンテスト”でしょうか。作中のベータよろしく、シャドウを称える“シャドウ様戦記”をファンの方に書いてもらおうという施策で、多くの方がご参加くださいました。

小川:『カゲマス』だと“イプシロンの立体マウスパッドプレゼント企画”ですね。

 こういった形のマウスパッドが登場することは珍しくはないのですが、まさか許諾がいただけるとは……(笑)。

高岡:正直、マウスパッドの案はいい意味で「これはやられたな……」と思いましたね。

小川:NGになるかなと思っていたので驚きました。僕も『陰の実力者になりたくて!』のファンの1人なので、PR担当として費用対効果なども考えますが、最終的にどうやったら宣伝段階から楽しんでもらえるかは常に考えています。

 マウスパッドもその1つで、ベータとイプシロンが張り合うシーンをヒントに行った施策だったのですが、すんなりと許諾をいただけて、かつファンの方からの反響も良くて嬉しかったですね。

 そういった意味では、エイプリルフールネタも好評をいただけて安心しています。

高岡:今思えば、そっちもイプシロンですね。

小川:僕がイプシロン推しなのもあって……って、違います違います(笑)。

 いろいろと考えたときに、イプシロンなら“嘘”で繋げられるなと思い、彼女を中心にした施策にしようかと。

 Twitterでファンの方が参加できるものがいいなと思い、その結果、いいねとRTで盛る量が増え、盛り過ぎたというところでオチがつき、さらに爆発させるいう企画になりました。

 ただ、それだけだとTwitterだけで終わってしまうので、ゲーム内と連動させるため、イプシロンの10連ガチャを用意することしたという流れです。

高岡:イプシロンらしさと楽しさが備わっていて良かったと思います。

小川:でも実は最初に思いついた企画は全く違うものだったんですよ。

 イータの実験が暴走し、シャドウから見た女の子がすべて敵役の姿になってしまうという内容を考えていたんです。シェリーのボイスや仕草でネルソンがトークしてくる、みたいな。

 ですがそちらは準備の工数の問題で没になりました。面白いと思ったんですけど(笑)。

 アニメのほうでは『オーバーロード』とのエイプリルフール企画を行われていましたが、あれはどういった経緯だったんですか?

高岡:『オーバーロード』と『陰の実力者になりたくて!』は、作品の雰囲気が少し似ていますが、それ以外にも色々と繋がりがありまして。

 原作書籍が同じ編集部から出ていて、TVアニメを同じプロデューサーが担当してる。さらに2022年7月の『オーバーロード』第4期に続き、2022年10月に『陰の実力者になりたくて!』が放送されたんですね。

 そのような関係性があって、この2作品の主役であるシャドウ役の山下誠一郎さんとアインズ役の日野聡さんにもご参加いただいてコラボビジュアルを作成したことが最初のきっかけでした。

小川:シャドウとアインズ様がお互いにボイス付きで褒めあっているイラストですね。

高岡:そうですね。他にも、YouTubeで公開したミニアニメ『かげじつ!』は、『異世界かるてっと』や『オーバーロード』のミニアニメも手掛けられている芦名みのるさんが監督をされていまして。

 こういった繋がりがあり、両作品のファン層も近いので、せっかくならエイプリルフールもまた何かやりたいなと思い、あのビジュアルを用意しました。

――施策でいうと『カゲマス』のPVも話題性が高かった印象です。

小川:PVについては、アートチームと「このイベントではこの絵が欲しい」という話は頻繁にしています。

 例えば“HIGHEST DREAM”というイベントでは、学生服ということから「放課後デートのような雰囲気のイラストが4枚欲しい!」とお願いしました。

 こういったことをよくやっているので、アートチームにはいつも負担をかけてしまっているのですが、お陰様で、プレイヤーの皆さんにキャラクターの色んな一面をお届けできているのではないかと思っています。

――お話を聞いていると『陰の実力者になりたくて!』はファンとの関係性が独特な作品という印象です。施策でもそこは意識されているのでしょうか?

高岡:最初にお話ししたように、ツッコミ役が作中のどこにも登場しないのがこの作品の個性であり、コメディとしての面白さだと個人的には考えています。

 ですので、作品宣伝としてもそこに合わせて「お客さんにツッコミを入れてもらう」ということを意識しました。

 例えば、PVやビジュアルについても、本作は制作スタッフの皆さんが素晴らしい本編映像を上げて下さっていたのでカッコよさに全振りして作ったのですが、これらを素直に見た目通りに受け取っていただいても良いし、原作をご存じの方は「コメディなのになんでカッコつけてんの!」とツッコミも入れられる。

小川:エイプリルフールなどの企画も、我々が面白いと思いつつも至ってまじめなスタンスでキャンペーンなどを実施したところに、みなさんがコメントしてくれる関係性があってこそですからね。

高岡:イプシロンのスライムも、公式は何食わぬ顔でベータと並べているところに、ファンの皆さんが「こっちは偽物だろ!」とツッコんでくれるわけですよね。

小川:本当にありがたいことだと思います。

――ちなみに没になった企画もあるのでしょうか?

小川:提案を諦めた企画はあります。聖域でイプシロンの「胸が取れちゃう」シーンに合わせて“黒いゴムボール”をプレゼントする企画を思いついた……のですが、残念ながら無地の真っ黒いゴムボールが見当たらず没に。

 ただゴムボールを出しただけでも、ファンの皆さんはいろいろと察してくれるのかなと(笑)。

アニメ第2期に向けてさらなる魅力を届ける

――宣伝について、現在はさまざまな形で作品を訴求する方法があると感じています。PR担当として、宣伝方法に変化などはありましたか?

高岡:アニメでいうと、昨今はどんどん作品数が増え、視聴方法もテレビだけでなく配信やYouTubeが加わり、情報を得る場所もTwitterやTikTokなど変化しています。

 それぞれの作品のスタイルに合わせた宣伝方法を取ることは増えていると感じますね。

小川:個人的には、テレビからWEB広告に広告予算の出稿比率が変わっていますが、本質的なところは変わっていないと思っています。

 今はVTuberが盛んで、我々も“マンスリーホロライブ”という企画を実施していますが、その前はYouTuber、その前はニコニコ動画など、人とメディアが変わっているだけでやっていること自体は大きく変わっていないと思っています。

 最近は口コミが大きく影響しますが、これはSNSなどで影響力が増しただけで、昔から周辺で話題のモノという存在はあったと思います。

 そのため、今後またメディアや媒体が変わったとしても、プレイヤーさんに知ってもらって楽しんでもらうという本質は変わらないのではないかと思っています。

――アニメ第1期が大好評で、10月からは第2期が放送されます。ヒットに起因したと感じる要素、また今後考えられている施策などをお聞かせください。

高岡:第1期の宣伝については、やはり制作会社のNexusさんの協力が大きかったと思います。放送のかなり前の段階から、豊富な本編素材を使ってクオリティの高いPVなどをたくさん公開する事が出来ました。これは作品の認知に大きく貢献したと思います。

 他には、SNSの運用も上手くいったと思います。まだ第1期しか放送してない作品としてはTwitterのフォロワー数も比較的多く、ファンの方と一緒に盛り上げる形を作れたことも影響したのではないでしょうか。

小川:『カゲマス』の方では、まずは既存のプレイヤーさんに楽しんでもらうための施策として、ゲーム公式Discordを運営している会社さんと連携を強くして連動キャンペーンを定期的に実施していきたいと思っています。

 PVなどでキャラクターをより深堀りするすることも考えていますし、この時期といえば! な、水着イベントも予定しています。

 普通のPVに加えて水着ならではな映像も作っているので、ぜひご期待ください。

  • ▲ハイエースプレゼントといったアニメを知っているからこそ刺さる施策が行われたのも記憶に新しい。

――最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします。

高岡:TVアニメ『陰の実力者になりたくて!』は監督をはじめ、原作の熱いファンが制作陣に沢山います。私たちも視聴者の方たちと一緒に『陰実』を楽しんでいきたいと思っています。

 これからも面白がっていただけるネタを準備していきますので、ぜひ一緒に盛り上げていただけたら幸いです。

小川:『カゲマス』は今後もアニメや原作小説の協力を得ながらキャラクターの深掘りをして新たな一面や魅力をお届けしていこうと思っています。

 宣伝でもみなさんが楽しめるような施策をお届けしてくので、引き続き応援よろしくお願いします。

■陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン


©逢沢大介・KADOKAWA刊/シャドウガーデン
©マスターオブガーデン製作委員会

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