電撃オンライン

『どうする家康』22話感想。鉄砲の前にはなすすべもなし…信長の恐ろしさを改めて感じた長篠・設楽原の戦い

びえ
公開日時
最終更新

 毎週日曜20時からNHKで放送の大河ドラマ『どうする家康』。第22回“設楽原の戦い”のレビューをお届けします。

戦いを仕掛けようとしない信長に焦れる家康。信長の真意とは?

 前回は、武田軍に包囲され落城寸前まで追い込まれてしまった長篠城を救うため、徳川と織田の連合軍が結成される様子が描かれました。

 今回は、かの有名な“長篠の戦い”……と筆者は呼んでしまうのですが、近年は決戦の場である設楽原の名前を採用した“設楽原の戦い”と呼ぶことも多いようです。

 この戦いについては、歴史の教科書にも必ず載っているぐらいのものですから、知っている方も多いかと思われます。鉄砲が本格的に利用された戦いとして有名ですね。

 その戦いに備えるところから今回のお話が始まります。

 戦場で対峙する徳川・織田連合軍と武田軍。しかし、信長はなかなか戦いを仕掛けようとはせず、ただひたすら馬防柵(馬の侵入を防ぐための背の高い柵のこと)を建て続けます。

 鉄砲が本格的に戦いに利用されはじめる以前から、戦場での馬の力というのは非常に大きく、恐ろしいものでした。機動力があって素早く敵を倒すことができ、またそのまま全速力で突っ込んでこられたら、人間なんてひとたまりもありません。

 そうした馬の利点である機動力、突進力を、敵の軍から少しでも削ぐために必要だったのが、馬防柵というわけです。

 つまり守りのための道具ということなのですが、それをひたすら作り続ける様子を見ていた家康たちは、織田軍が臆病風に吹かれているのではないかと疑ってしまいます。

 痺れを切らした家康は、信長に直談判。どうしてこちらが数で上回っているのに、攻めてかからないのかと問いかけます。

 すでに歴史を知っている私たちからすれば「ああ、信長は徹底的に武田を叩き潰したいのだな……これはその下準備で……」と納得してしまうのですが、当時の家康はそんなことは知りません。

 食ってかかる家康を、信長は挑発します。先手を打って攻めかかってくる武田軍に対して、カウンターを打ち込んで徹底的に攻撃したほうが与えるダメージは大きいですから、信長はそれを狙っているのでしょう。

 そしてその武田軍の先制攻撃を誘うためのコマとして、家康は利用されてしまいます。

 前回も似たような場面がありましたが、秀吉の人を上手く誘導する手口が、どんどん巧妙になっているのが面白いところです。天下人としての才能が垣間見えますね。

3000丁の鉄砲の前には武田軍もなすすべなし…改めて感じる信長の恐ろしさ

 さて、家康は部下を送り込んで、武田軍の背後から夜襲をかける作戦に出ます。これが成功し、武田軍は進むか退くかの選択を迫られることに。

 この状況で、もし武田信玄が指揮を取っていたら、きっと撤退したことでしょう。しかし、勝頼はあえて進むほうを選びます。父を超えたいという覚悟の表れなのでしょうが、それが吉と出るか凶と出るか。

 押し寄せる武田軍に、容赦なく撃ち込まれる銃弾の雨。3000丁の鉄砲が一斉に火を噴きます。馬防柵に到達することもできず、なすすべもなく倒れていく武田軍。

 これまでの戦いの常識をくつがえすような衝撃的な光景に、家康は言葉を失ってしまいます。

 自分たちが勝っている状況で、本当は喜んでいいはずの場面なのですが、あまりの恐ろしさにそんな気持ちも湧きません。あまりにも壮絶すぎる光景でした。

 諸説ありますが、ここでは鉄砲の使い手が交代で敵を攻撃する、いわゆる“三段撃ち”の戦法が使われています。というのも、現代の銃と違い、当時の火縄銃は連射などできませんし、弾を込め直すのにどうしても時間がかかってしまうからです。

 馬防柵の後ろに立って、ひたすら銃弾を放ち続ける様子を見ていると、守りのための道具であった馬防柵が、なんだか攻めのための道具に変わったようにも思えます。信長による軍事革命の象徴のような、印象に残るシーンでした。

 音もなく倒れていく武田軍の兵士たちを見ていると、敵であるはずなのになぜだか切なくなってしまいます。同じ様子を見ながら、それを愉快と言い切る秀吉との決定的な考え方の違いが、浮き彫りになるシーンでもありました。

 武田軍を圧倒した信長は、早くも次の敵を見定めようとします。北条や上杉といった聞き慣れた名前が次々と出てくるので、なんだかワクワクしてしまいますね。

 しかし、織田軍の圧倒的な軍事力を見て、家康の部下たちは意気消沈ぎみ。弱気になってしまうのも無理はないのですが。自分や仲間たちが、武田軍と同じ目にあうことを想像するだけでも恐ろしいことです。

 家康も、信長に従うことを選ばざるを得ません。信長の指示通り、武田軍を滅ぼすために動きます。

 そんな激しい戦いの中で、少しずつ人が変わっていってしまう信康。昔は小さな虫の命でさえも大切にしていた彼が、敵の命を奪ったことを自慢し、誇りに思い始める……そんな姿を見つめ続ける瀬名の気持ちを考えると、なんだか遣る瀬なくなってしまいます。

 信康本人も、戦場での光景がトラウマとなってしまい、苦しんでいる様子。だんだんと家族の中の何かが崩れていってしまうような、不穏な終わり方となりました。

 次回のタイトルは、“瀬名、覚醒”とのこと。どんな形で覚醒してくれるのか、楽しみに待ちましょう。

Copyright NHK (Japan Broadcasting Corporation). All rights reserved.

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら