『どうする家康』23話感想。じわじわと家族を蝕む疑心暗鬼…優しかった心が少しずつ壊れていく様子が切ない

びえ
公開日時
最終更新

 毎週日曜20時からNHKで放送の大河ドラマ『どうする家康』。第23回“瀬名、覚醒”のレビューをお届けします。

少しずつ深まっていく溝…試される家族の絆

 前回は、長篠・設楽原の戦いで、信長が導入した鉄砲の威力と恐ろしさを、まざまざと見せつけられました。

 今回は、その戦いをきっかけに、少しずつ変化していく人間模様が描かれます。

 長引く武田軍との戦いで、人が変わってしまったような振る舞いをする信康に、家康も心配を隠せません。信康の様子を勇ましいと称賛する人もいますが、どちらかと言うと、焦りや不安を隠すための虚勢にしか見えませんでした。

 冷静にその姿を見つめる瀬名と、信康を褒めそやす五徳との間にも、少しずつ溝が……だんだんと崩れていく家族同士のバランスに、胃が痛くなるような気持ちになります。良くも悪くも戦いは人を変えていくものなのだなと、やるせなさを感じました。

 そんな状況で、不安を感じているのは家康も同じです。心の癒やしを求めるように、侍女の於愛との距離がだんだんと縮まっていきます。誰もが腹の中に野望を隠しているようなこの時代では、飾らない性格の於愛に救いを見出してしまう気持ちも、理解できてしまうのでした。

 瀬名は、たびたび武田の使者・千代と対話をしていました。武田との戦いを早く終わらせようと、和睦をするように説得します。こうした瀬名の隠れた努力に、どれだけ家康が支えられていることか。

 敵の立場でありながらも、瀬名の力を認めているような千代の言葉に、なんだか救われるような気がします。

 しかし、そんなやり取りを快く思わない人物がいるのもまた事実。この密会は、とうとう五徳を通じて信長にも知られてしまいました。どんどん不穏な空気が立ち込めてきて、見ているこちらもドキドキしてしまいます。恐ろしいことが起こらなければいいのですが……。

強くならなければ…優しい心が壊れていく様子に思わず涙

 この密会に関する疑いは、なぜか水野信元にかけられてしまいます。まったくの言いがかりで、水野本人にはなんの関係もないのですが、家康を責めるための手段として良いように利用されることに。

 岡崎に移るよう命じられた水野を、家康は処分することになってしまいました。信長に言われるまま伯父を手に掛けようとする家康へ、信康は軽蔑の目を向けます。親族を処分するなど、そう簡単に認められるはずがありませんから。とはいえ、家族を守りたい家康は、そう簡単に信長に歯向かうこともできません。

 無実の罪で殺されようとする水野は、信長の思惑に気づきます。自分が処分されるのは、家康への見せしめなのだと。信長はすべてお見通しだという言葉が、家康の心に深く突き刺さります。

 もしかしたら自分の身内に、裏切り者がいるかもしれないという疑いは、一度抱いてしまうとなかなか捨てることができません。家康があまり思い詰めないといいのですが……。

 水野を実際に殺めてしまったのは、家康本人ではなく部下の七之助でした。信康は、それが気に入りません。家康のことを信長の犬だと言って、ますます勢いよく責めはじめます。

 その光景を見ながら、瀬名に向けてひっそりと釘を刺す五徳。誰も彼もが疑心暗鬼におちいって、家族の絆にも、どんどん暗い影が。なんとか元の仲睦まじい家族に戻って欲しいと、筆者は願ってやみません。

 年が明けて、その暗い影はますます濃くなっていくことに。突然、坊主に斬りかかったという信康が、返り血を浴びた状態で城へと帰ってきます。あまりのことに、言葉を失う瀬名。理不尽な理由で激昂し、部下や周囲の人達に刀を向ける姿は、とても正気とは思えません。

 強くなろうとするあまり、自分を見失ってしまった信康の姿が、切なく物悲しくて胸が苦しくなりました。終わりの見えない戦いに、信康の優しい心は耐えられなくなっていたのです。

 ようやく自分を取り戻した信康へ、瀬名は自分の決心を打ち明けます。そのための準備を、着々と進めていく瀬名。しかしその動きを、家康の部下たちは大いに怪しみます。

 物語が、もう戻れないところまで進んできてしまったかのような、恐ろしい予感が止まりません。また昔のように、仲良く会話する瀬名と家康の姿が見られるといいのですが。

 瀬名の覚悟と行動が、どんな結果をもたらすのか……次回も楽しみに待ちましょう。

Copyright NHK (Japan Broadcasting Corporation). All rights reserved.

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら