『ティンクルスターナイツ』インタビュー。名作『ティンクル☆くるせいだーす』が15年の時を経て生まれ変わった理由は?

カワチ
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 7月7日に配信予定のPCブラウザ/DMM GAME PLAYER/DMM GAMES ストア(Android)向けRPG『ティンクルスターナイツ』のインタビューをお届け。Studio KUMASANの代表であり本作のプロデューサーを務めるはせPこと長谷川雄大さんと、ディレクターのかんなぎれいさんにお話をお聞きしました。

  • ▲長谷川雄大さん(左)とかんなぎれいさん(右)

なぜ『ティンクル』を復活させるのか

――おふたりの本作における役職と担当していることをお聞かせください。

はせP:『ティンクルスターナイツ』ではプロデューサーを担当しているはせPです。

かんなぎ:ディレクターとクリエイティブディレクターを兼任という形で担当しているかんなぎです。

はせP:“クリエイティブチーム くまさん”では、僕が団長で、かんなぎが副団長という役職名でチームをまとめています。

――かんなぎさんが務めるディレクターとクリエイティブディレクターはどう異なるのでしょうか?

かんなぎ:ディレクターはゲームの企画を監修する役職で、クリエイティブディレクターはビジュアルや演出などと密接に関わる役職になります。今回の『ティンクルスターナイツ』ではクリエイティブディレクターとしてアート全体の監修と、主人公のクロトやヒロインのヴィーナスをデザインしているほか、キービジュアルなども描いています。

――戦略的子会社設立の際、長谷川さんにインタビューさせていただいたとき、かんなぎさんが“クリエイティブチーム くまさん”にジョインしたことはお聞きしましたが、改めてかんなぎさんが合流した経緯をお聞かせ願えますでしょうか。

はせP:ジョインしたというより、小会社の前進となる“クリエイティブチーム くまさん”自体がかんなぎといっしょに作ったチームのようなものでした。ブランド第1作の『ミストトレインガールズ』を作りはじめたときに“クリエイティブチーム くまさん”を同時に立ち上げましたが、これは自分ひとりでほとんどすべての業務をやることに限界を感じ始めたからです。

――『フラワーナイトガール』のときは、ほぼ個人で業務を回していたとお聞きしました。

はせP:そうなんです。ディレクションをしながらプロデュースをおこない、アートのオーダーなども自分でやっていたので手が回りませんでした。さらに会社からのオーダーも増え、僕自体の新規タイトルも求められるようになってきてしまい……。

――そういったなかで、かんなぎさんにお声がかかると。

はせP:かんなぎとの出会いは『フラワーナイトガール』で『ハナヒメ*アブソリュート!』とのコラボをお願いしたことがきっかけですが、そもそも自分がこの業界に憧れたのが、かんなぎの手掛けた『パティシエなにゃんこ』や『プリンセスうぃっちぃず』に感銘を受けたからでした。

 自分の憧れであったかんなぎといろいろな話をしていくなかで、ものづくりに対する考えなどがすごく合っていて、いっしょに仕事をしたいという話は継続的にしていました。足掛け3年ぐらいですかね。

 当時のかんなぎはみなとそふとに所属していたので、代表であるタカヒロさんに相談させていただきました。そして、タカヒロさんには「いつか一緒に仕事が出来たらいいね」という話とともに快諾していただけました。

 “クリエイティブチーム くまさん”のロゴも、かんなぎが作っていますし、ジョインしてもらったというよりはいっしょに立ち上げた感じですね。

――かんなぎさんとしては、『フラワーナイトガール』のころからいっしょに仕事をしていたので、中に入って同じチームになることにも戸惑いもなかったと。

かんなぎ:そうですね。みなとそふとで手掛けているタイトルもあったので、その作業が完了してから移籍することになりました。

――では、ここからは『ティンクルスターナイツ』についてお聞かせください。『ティンクルスターナイツ』は『ティンクル☆くるせいだーす』をベースにした作品になるそうですが、2008年に発売された『ティンクル☆くるせいだーす』のIPを2023年に復活させた理由や狙いを教えてください。

かんなぎ:これははせPが言い出しっぺなので、はせPから説明したほうがいいかと(笑)。

はせP:そうですね(笑)。当時は電撃さんの雑誌などでも取り上げていたと思うのですが、『ティンクル☆くるせいだーす』は素晴らしい作品で、自分自身としても思い入れの強い作品でした。そのため、絶対にゲーム化したいと思いましたし、IPをお借りするような形ではなく、今の時代に合ったものをしっかり作り、次世代につなげたいと思っていました。

 『ミストトレインガールズ』のサービスを開始したときは、目の前の作業でいっぱいいっぱいでしたが、ちょっと落ち着いたタイミングで、あらためてかんなぎれいと『ティンクル』というタイトルに向き合うことにしました。

かんなぎ:はせPの決意が固かったので、自分に選択は無かったです。「ティンクルの新作を作ろう」と言われ、「はい」と答えるしかなかったです(笑)。

――かんなぎさんのなかでは、いちど終わったものをもういちど手がける不安よりも、また新しいものが作れるよろこびのほうが大きかったんですか?

かんなぎ:不安と楽しみの両方の感情がありました。ただ、同じものをもう1回作ってもおもしろくないですし、新しいものや違ったものを作りたいという気持ちはつねに持っています。今回も『ティンクル』の持つ要素は踏襲しつつも、ソーシャルゲームとして最適なゲームを作ることを目指しました。

――今では『ティンクル☆くるせいだーす』を知らない世代も多いと思いますが、当時この作品が話題になった要因はなんだったのでしょうか。

はせP:格闘ゲーム的なおもしろさを美少女ゲームに落とし込んだことだと思っています。

 格闘ゲームは相手のやりたいことをなるべくやらせないようにして、こっち側が自分のやりたいことを押し付けるのが気持ちいいゲームだと思っていますが、『ティンクル』も敵をなるべく動かさないようにしながら、こちら側はどんどんコンボを決めてダメージ倍率を上げていき、最後に気持ちよくフィニッシュを決めるというゲームでした。

 そのカタルシスは格闘ゲームにすごく似ていましたね。当時のPCゲームはノベルやシミュレーションが主流だったので、こういった爽快感のある作品は珍しかったです。

かんなぎ:そうですね。お話をしっかり読ませるアドベンチャータイプのゲームが多いなか、『ティンクル☆くるせいだーす』はしっかりとしたゲームパートを作り、ほかのゲームとの差別化を図りました。ユーザーさんにはそういった部分が評価されたのではないかと思っています。

 もともと『ティンクル☆くるせいだーす』を出したLillianというブランドが、コンシューマーゲーム志向が強いスタッフが多いので、遊べるゲームをしっかり作りたいという人が多かったです。

 『ティンクル☆くるせいだーす』の前に発売した『プリンセスうぃっちぃず』から、そういうゲームパートは入れてましたが、『ティンクル☆くるせいだーす』はそれよりもしっかりしたものを作ろうという意識で制作されました。

 格闘ゲームを意識しているというのは長谷川の言う通りで、どんどんダメージを大きくしていくのは格闘ゲームのラッシュやコンボを意識しています。

 また、スタッフにはアニメに強いメンバーもいたので、そういった方々の協力も得て、気持ちがいい演出を取り入れることができました。また、ゲーム好きのスタッフたちがしっかりしたゲームのバランスにしてくれたので、そこも受けたポイントだと思います。

――『ティンクルスターナイツ』はOPアニメが渡辺明夫さんだったり、主題歌がfripSideさんだったりと、オリジナルのスタッフが起用されていますが、ここはこだわりでしょうか? また、渡辺さんやfripSideの八木沼さんたちにオファーしたときの反応はいかがでしたか?

かんなぎ:渡辺明夫さんのアニメやfripSideさんの主題歌アニメーションはユーザーさんに好評だった部分なので、外せない要因として継承したいと思いました。私自身も『ティンクル☆くるせいだーす』を一緒に作ってきた仲間という認識ですし、みなさん今も第一線で活躍しているクリエイターなので、ぜひ力を貸して欲しいとお願いしました。

 fripSideの八木沼さんは久しぶりにお会いしましたが、「ちょうどかんなぎさんのことを考えていたんだよ」と言ってくれて、ノリノリで参加してくれました。渡辺さんに関しては憧れの人で、私が絵を描きはじめたころに影響を受けている方です。

 自分が業界に入ってお付き合いできるようになり、仲良くさせてもらいました。とても人柄がいい方です。今はフロントウイングさんに所属されていますが、今回の参加を掛け合ってくださったり、アニメを作るにあたってアニメスタジオを紹介してくださったりと、いろいろな架け橋になってくれました。

――『ティンクルスターナイツ』は『ティンクル☆くるせいだーす』のコアな部分を残しつつ新しいものを作るということですが、“流星学園”をはじめ、ファンにとってワクワクするワードが詰め込まれています。作品としてどのぐらいつながりがあるのでしょうか?

かんなぎ:確かに流星学園という学園名や九浄という名字などは、『ティンクル☆くるせいだーす』にも登場したものですが、基本的には別の世界です。パラレルワールドのような位置付けとして捉えていただければと思います。

 構成する要素としては『ティンクル☆くるせいだーす』と近しいものや同じものを用意しつつ、そのうえでまったく新しいキャラクターや舞台を用意しているのが『ティンクルスターナイツ』になります。

――なるほど。では『ティンクル☆くるせいだーす』を知らない人でも楽しめそうですね。

かんなぎ:今回はソーシャルゲームということで、これまでのファンはもちろん、DMM GAMES(FANZA GAMES)のユーザーさんやソーシャルゲームが好きなユーザーさんにも楽しんでもらいたいという意識を持っています。

――主人公が魔王を目指すという設定は『ティンクル☆くるせいだーす』をプレイしていれば「おっ」となりますね。元ネタを知っていればより楽しめそうです。

かんなぎ:そうですね。踏襲している設定は多数あるので、『ティンクル』を知っている人は多面的な楽しみ方をしていただけると思います。

【インタビュー後編に続く】

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