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『結合男子』レビュー。男性ライター視点によるキャラの魅力や戦闘のコツを解説

原常樹
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 スクウェア・エニックスから6月29日に発売されたNintendo Switch用ゲーム『結合男子』。元素の力を宿す志献官(しけんかん)と呼ばれるキャラクターたちと世界を侵食する死せる元素・デッドマターとの戦いを描いたシミュレーションアドベンチャーとして注目を集めている本作。そんな『結合男子』の魅力を“男性目線”からレビューしていきます!

男性ライターが『結合男子』をプレイしてみたら?

 どうもみなさん、こんにちは。今回『結合男子』のレビュー記事を担当することになったライターの原常樹です。

 今回は編集さんを通してお仕事のオファーをいただいたのですが、実は以前から『結合男子』の広告を目にして「元素を操る!? なんて夢のあるコンテンツなんだ」と興味津々でした。

 学生時代、筆者は化学を含めた理系科目全般を苦手にしていましたが、実をいうと元素周期表だけはしっかりと覚えておりまして……。しかも、覚えた理由は化学のためというよりは、“読み上げていたら呪文の詠唱っぽい”、もしくは“この表の中には自分が自在に操れる運命の元素があるかもしれない”といった厨二病真っ只中の男子ならではの発想によるものでした。つまりはどの元素がどんな性質を持っているのかとかはよくわかっていませんでしたし、ただただ妄想交じりで愛着を持っていたわけですね……。

 あれから25年、もちろん元素を操るような能力は微塵も覚醒しませんでしたし、夢に見たナイスミドルの結合おじさんにもなれませんでした。ただ、その夢の残滓はこの『結合男子』をプレイすることで追えそうです。


 本作のプレイヤーは、記憶を失った謎の志献官(しけんかん)という立ち位置。水素の志献官・源朔(みなもと さく/声優:伊東健人)と酸素の志献官・安酸栄都(やすかた えいと/声優:榎木淳弥)がデッドマター に立ち向かおうとする中、砂浜にいるところを発見され、絶望的な状況のなか突如発動した「結合術」によりデッドマター“アルビレオ”を討伐することができました。

 さてこちらの結合術、絶滅したはずの"触媒の能力"を持った志献官、別名「媒人(なこうど)」のみ使用できる術で、対象となった志献官ふたりの能力を飛躍的に高める一方で、結びつけたふたりの意識が強制的に共有されてしまうという弊害が。いや、これは怖いですよ……だってほら、たとえば赤の他人と携帯の端末が急に共有されたら困るじゃないですか。端末だってそんな感じなのに心の奥底が共有されるわけですから、その恐ろしさは測り知れません。しかし、徐々に強まっていくデッドマターの侵食によって世界そのものが滅亡の危機に瀕しているという状況下で結合術を眠らせておくわけにはいかない……ということで、プレイヤーは媒人として志献官たちを指揮し、作戦へと向かうことになります。

 舞台となっている結倭ノ国(ゆわのくに)は、大正浪漫と現代的な雰囲気を感じる独特なを融合させたような独特の世界造型。多くの中年男性にとって大好物のジャンルと断言していいでしょう……。

 キャラクターたちの衣裳も和洋折衷という感じがして、そこに化学式を模した模様や元素記号など“化学モチーフの意匠”が織り込まれているのもユニークで、眺めているだけで時間を忘れそうになります。こういうデザイン、いいですよね!

 ゲームの序盤「メインストーリー 弐論」からは朔、栄都のほかに炭素の志献官・鍛炭六花(かすみ りっか/声優:田丸篤志)が隊に加わり、さらに「メインストーリー 参論」からは10人の純の志献官(※)の中から最大5人までを部隊に編成して作戦に挑む形に。
(※前述の3名と通常版に含まれるベリリウムの志献官・宇緑四季(うろく しき/声優:古川慎)を除いた志献官は、追加ダウンロードコンテンツ購入後、編成可能に)

 どの志献官の絆を深めるかによって最大45通りにルートが分岐し、なんと合計90種類以上のエンディングが用意されているとか……。ちなみに、一部の選択肢を間違えた場合はバッドエンドに直行することもあります。かくいう筆者も無邪気にプレイしていたところ、 容赦なく物語が終わってしまい呆然となりました。

 とにかくひとつの選択肢が世界の存亡に関わるほど重い本作。ほかにもバッドエンドを確認していますが、セーブデータを辿ればすぐにやり直しができるようなものばかりだったので、その点は安心してよさそうです。

元素の特徴をいかしたキャラクター性やデザインも魅力

 そんな重苦しい世界の中で懸命に戦う志献官たち。彼らの豊かなキャラクター性は『結合男子』の大きな魅力でしょう。

 志献官それぞれの外見や性格、嗜好、さらには名前や衣裳までもが対応する元素の特徴に沿ったものになっているのもポイント。たとえば酸素の志献官・栄都は日光浴が趣味だったり、炭素の志献官・六花は画を描くことが好きだったり(画材は炭素由来のものが多い)と元素と結びつけて細やかな設定を眺めるだけでも楽しいものがあるんですよね……。化学の知識に乏しい筆者でさえもこれだけ知的探求心をそそられているわけですから、化学に詳しい方であれば「こういう側面を持っているのは、元素のこんな性質が理由づけになっているからでは……?」などと考察が捗るかもしれません。

 ビジュアル面では筆者個人的には、リチウムの志献官・浮石三宙(うきいし みそら/声優:西山宏太朗)がツボに入りました。色付きの丸眼鏡に魅力を感じる男性は多いと思うんですが、これがなかなか日本人には似合わなくて……。ここまで見事にファッションに合わせられるオシャレ男子はそれだけで尊い存在だと断言したいところ。しかも、そんなスタイリッシュな外見をしつつも博識で科学技術に詳しく(※リチウムは電子機器の生産に不可欠な元素)、ピアノが趣味というギャップも素晴らしい。

 腐れ縁の朔とは顔を合わせるたびに喧嘩をしていますが、心の奥底では彼を気遣っているような素振りを見せるところもあって、このふたりの物語も追いかけたくなります。今回のプレイではかなわなかったのでいずれ……!


 あと、ギャップといえば、危険な香りを漂わせている塩素の志献官・塩水流 一那(しおづる いちな/声優:岡本 信彦)も外せません。殺意に駆られると無意識に息が毒性を帯びることもあり、周囲とはだいぶ距離を取っているようですが、普段の行動を見ているとチラホラ気遣いのようなものが垣間見える瞬間があるんですよね……。こんな凶悪なマスクを身につけながらも、小動物たちをこっそり愛でているところもまたほっこりしてしまいます。


 志献官ひとりひとりの個性が強い上に、彼らの“関係性”にそのままスポットライトが当たるのも『結合男子』の魅力。プレイヤーが“絆結錠”の条件を満たして解放した“反応結抄”によって、シナリオは分岐していきます。



 今回のプレイで筆者は“朔と栄都”と“六花と四季”の結合率を高めるルートをプレイしました。シナリオは会話劇を中心にテンポよく進むイメージで、長文を読むのが苦手というユーザーでもサクサク進められるかと思います。また、男性の筆者は志献官たちの熱い生き様を本作に期待していたので、主人公が過度に主張しすぎないところも高ポイントでした。男子たちの間に割って入ることもなく、その役目は補佐官のモル公(声優:宮田幸季)たちが担ってくれている感じです。モル公たちも愛らしくて一家に一匹欲しくなります(モルモットと物質量のSI単位である「mol」をうまく掛け合わせているところも膝を打ちました)。

 もちろん、記憶喪失に陥っている主人公の正体に関してはメインストーリーの中でしっかりと言及されていきます。“触媒の志献官”や“数字が浮かび上がる謎のガラス管”にまつわる背景もつまびらかになっていくので、ここは大きな見どころかと。


 各ルートの詳しいネタバレについては控えますが、それぞれの志献官たちが秘めている過去が物語の大きなカギになってきます。デッドマターの中には死んだ人間の姿形をした“ミラーズ”と呼ばれる個体も存在し、彼らの侵攻も物語に大きな影響を与えることに……。個人的には“朔と栄都”のルートでのどんなときでもポジティブにあろうとする栄都の在り方にはシビれました。決して彼も幸せな過去を持っているというわけではないのですが、そこを糧にしてがんばっていて……。真面目ながらも内面に熱いものを秘めた朔も、彼が相手だからこそ心を開いていけるんだろうなと感じてしまいました。今回感じたような印象もまた別のルートでは変化するかもしれませんし、そう考えるとやり込み甲斐もひとしおですね。

活動パートのポイントは?

 さて、シミュレーション要素である活動パートについても見ていきましょう。

 プレイヤーは志献官たちのスケジュールを定めることができます。具体的に取れる行動は以下の3つ。

・結合訓練 → ふたりの志献官を選んで結合率を強化する。
・部隊訓練 → 部隊全体の作戦練度を強化する。
・休憩 → 人員を選んで調子を回復する。


 一日に行動できる回数は午前に2回、巡回を挟んで、午後に2回……つまりは最大4回。ときおりデッドマターの襲撃があって午前の行動がそこに充てられます。物語のラストまではかなりの行動回数が用意されていますが、志献官たちのイベントをしっかり押さえていこうとすると的確な訓練が必要になります。

 プレイする上で「この志献官とこの志献官の“結合反応”が見たい!」と目的が定まっているのであれば、そのふたりの結合訓練を重視しつつ、推奨作戦練度に達するまで部隊訓練を重ねていけば問題はありません。デッドマターとの戦闘で詰まることはなかなかないはず。

 ひとつコツを挙げるならば、全員の調子が絶好調に近ければ近いほど部隊訓練で“秀”の評価(作戦練度が20上昇)を取りやすくなるので、部隊全員の調子はなるべく絶好調で保つこと。“優”(作戦練度が10上昇)を重ねるよりも効率よく動けます。調子を回復するためには休憩が大事。それぞれの志献官は得意な場所と苦手な場所が定められているので、これを考えて動くことが肝要に。たとえば朔は“煉瓦街”が好きだが、四季は“煉瓦街”が苦手。 好きなスポットは二段階調子を回復できるのに対して、苦手なスポットでは回復ができないので、このふたりを同時に休憩させる必要がある場合はチョイスを考えなければいけません。追加ダウンロードコンテンツを除いた4人であれば“廻遊庭園”は苦手とする志献官はいないので、かなり便利なスポットといえそうです。


 そして、成果が試されるのがデッドマターとの戦闘。基本的に志献官たちはオートで攻撃を繰り出してくれますが、攻撃1回につき対応する元素の力がひとつ蓄積。これらの元素の力を消費することで“分子術”を繰り出せます。当然ながら俊敏が高い志献官(栄都など)の元素はたまりやすく、逆に俊敏が低い志献官の元素をためるのに苦労することに(六花など)。編成している志献官の俊敏を確認しつつ、持て余す元素がないようにバランスよく分子術を装備しましょう。

 中盤以降はデッドマターの攻撃力が大幅に上昇し、戦闘の難易度も一気に上がっていくので分子術のチョイスにもこだわりたいところ。初期の4人の志献官にはHPを回復する“水”(H₂2O)があるが、回復対象が単体ということもあって強敵の攻撃をこれだけで凌ぐのは至難の業です。先だって敵の攻撃を低下させる“アセチレン”(H₂C₂)を使ったり、栄都など防御面に不安のある志献官の防御を“酸化ベリリウム”(BeO)で上昇させておくと安心です。一気にカタを付けたい場合は炭酸(H₂CO₃)による部隊全体の攻撃力上昇も頼りになるはず!

 ……ちなみに、おじさん、初回のプレイでは何度か戦闘に敗北しました。

 デッドマターとの死闘はそれだけ命がけと考えれば納得いくんですが、部隊の育成をおざなりにすると最悪ゲーム自体が詰みかねません。再戦、もしくはその論の初日からやり直すハメになってしまうので、活動パートも決しておざなりにしないようにしましょう。

 なお、戦闘シーンの演出はシンプル。わかりやすさを重視したインターフェイスとも言えますが、志献官たちがどういう手段で戦っているのか、またどのようなアクションを繰り出しているのかといった部分は我々の想像に委ねられています。

 まぁ、分子術の効果を参照すると「ああ、二酸化炭素を使って相手を窒息させて防御も下げているんだろうなぁ」とか「化学的に安定していて耐熱材料としても使われる酸化ベリリウムをコーティングすることで味方の防御を高めているのか!?」みたいな妄想はいくらでも膨らませられるんですけど……。なんならこれだけでお腹いっぱいになるぐらいですし、多用した分子術にも愛着が湧いてくるというか。“六花と四季”のルートでお世話になった“炭化ベリリウム”(Be₂C)は、すっかり筆者の脳内での“気になる金属炭化物ランキング第一位”になりました。「四季の銃で生成したベリリウムと六花の巨大な筆で生成した炭素を重ね合わせてうまく合成しているんだろうか!?」みたいなイメージが捗るわけですよ。いや、いつかアニメとかでも観られる日が来ないかなぁ……。

 ちなみにRPG大好きな筆者は“やり込み要素のあるバトル”も大好物。しかし、本作に関してはバトル面でのやり込み要素は確認できませんでした。デッドマターとの戦闘に関してはあくまでストーリー攻略に詰まらない難易度であるのが重要ということで仕方ないのかもしれませんが、せっかく部隊を鍛えてきたわけなので挑戦要素があったら、志献官たちのもっとカッコいいところが拝めたのに……と個人的には感じてしまいました。

 シミュレーションやバトルの仕組みがわかりやすく、シナリオテキストもサクサク読み進められる『結合男子』。1ルートごとのプレイ時間はしっかりテキストを読んでも8時間ですが、全90種類以上のエンディングを制覇するとなるとかなり歯ごたえがありそうな作品です。化学の知識がなくても遊びやすく、知識があればもっと楽しめる──そんな作品に仕上がっているといえるのでは。

 カッコいい志献官の活躍を拝みたいという女子はもちろん、化学を戦闘に用いるというイケない妄想をしたことのある男子にもぜひともオススメしたい一作です。きっとこれまで以上に化学も好きになるはず!

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結合男子

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Nintendo Switch / iOS / Android※ダウンロード専売、※iOS/Android版は2023年夏配信予定
  • ジャンル: 友情結合シミュレーションアドベンチャー
  • 発売日:2023年6月29日
  • 希望小売価格: 【通常版】3,300円(税込)※収録キャラクター:源朔、安酸栄都、鍛炭六花、宇緑四季【追加志献官(1体)】1,100円(税込)※追加DLC(全6体):凍硝七瀬、浮石三宙、舎利弗玖苑、鐵仁武、塩水流一那、清硫十六夜

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