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『どうする家康』27話感想。初めて信長が見せた、弱さと人間らしさ…それでも覚悟を持って進む

びえ
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 毎週日曜20時からNHKで放送の大河ドラマ『どうする家康』。第27回“安土城の決闘”のレビューをお届けします。

ついに本能寺の名が! 信長を討つための策とは

 前回は、家族を失った悲しみを押し隠しつつ、信長に復讐する機会を虎視眈々とうかがう家康の姿が描かれました。

 今回のお話では、信長を討つ計画に向けて、家康たちが動き出します。

 信長を精一杯もてなしたことで、家康たちはその礼として安土城に招かれました。その機会に乗じて、信長を討とうという作戦です。

 もちろん、信長の本拠地である安土でいきなり戦いを仕掛けるわけにはいきません。その点についてもきちんと考えられており、家康は信長が京都へ場所を移すだろうという予測のもと、自分の手の者を京へ忍び込ませました。京都は警備も手薄ですから、やりやすいだろうという判断です。

 表の顔では、あれだけ笑顔で楽しそうに信長を歓待していたのに、裏の顔では、非常に冷静に計画を進めていたことが分かります。この二面性は、あの辛い出来事が生み出してしまったものなのだと思うと、彼が成長したと言っていいものなのか、悩んでしまいます。成長して得たものより、失ったものが大きすぎますから。

 さて、ここでようやく“本能寺”という名前が出てきました。あまりにも有名な場所のため、ワクワクした方も多いのではないでしょうか。

 しかし、考えてみればここで起きる大事件の登場人物と言えば、織田信長と明智光秀で、徳川家康ではありません。これからどうなってしまうんだ……? と色々な意味で気になってきますね。

 秀吉や柴田勝家といった信長の有力な配下たちは、出払っていてすぐには戻ってこられません。まさに千載一遇のチャンスです。あとは、明智光秀さえ排除してしまえば……家康の策は、ここまできちんと考えられていました。

 並々ならぬ決意を打ち明けた家康は、誰からの反論も受け付けようとはしません。家臣たちの意見も聞こうとせず、自分ですべてを決めてしまいました。家族を守れなかったことに関して、初めから自分がやりたいように行動していれば、こんなことには……という後悔があったのかもしれません。

 悲痛な覚悟ではありますが、それでも前に進もうとしている家康を、今は応援していきたいですね。

 とはいえ、その場に居合わせた家臣たちにとっては、非常に難しい判断を迫られている状況です。意見が真っ二つに割れるのも、当然と言えます。

 家康の精神は、ただ信長への復讐心を燃やすことでなんとか保たれている状態であることを、酒井忠次は分かっていました。だからこの作戦を止めることは、家康から生きる意味を奪うのと同じことだと。そう言われてしまえば、反論はできません。家臣たちの家康を思う気持ちに、胸を打たれました。

 ところ変わって、安土城にやってきました。明智光秀の主導のもと、酒宴が開かれます。そこで出された料理の一つが、淀の鯉を使った料理です。

 家康は、遠回しにこの料理が臭うと言い出します。反論しようとする光秀に、信長は激しい怒りをぶつけ、その場から追い出してしまいました。

 恐らく家康の作戦だったのでしょうが、もしやこれが本能寺の変の原因に……? と勘ぐってしまう場面でもありました。

ついに露わになった家康と信長の感情が激突! 二人の本音とは

 二人きりで話をしたいという信長に、家康は応じてその場所へと向かいます。

 本当に鯉の料理が臭ったのかと問いかけられ、家康ははっきりとは答えませんでしたが、信長はこれですべてを理解したのでしょう。その上で失敗は許さないという信長に、家康は厳しすぎると反論します。

 それに対して、甘すぎると答える信長。この二人の価値観の違いが、はっきりと分かる会話でした。

 人を信じなければ、人に信じてもらえない。それで裏切られるなら、それまでの器だったのだと。過去に言われた言葉がそのまま家康の中で生きていることに、感動してしまいました。そしてこの器の大きさが、やっぱり普通の人とは違うところですね。

 一人で何でもできる信長と、一人では何もできない家康。だからこそ周りの助けが必要なのだと、これまでの思い出を振り返るような言い方に、なんだかちょっと涙が出ました。

 しかし、穏やかに終われないのが織田信長という人物です。家康が自分を討とうとしていることも、彼はお見通しでした。謝ってほしいかと挑発し、下らないと切り捨てる信長に、家康は久しぶりに感情をあらわにします。

 そんな感情は捨てたと言いつつも、信長もまた初めて弱い部分をさらけ出しました。人の命を奪えば奪うほど、その人たちの痛みや恨みを背負わなければいけない。

 俺はどれだけ殺した、という言葉に、彼の中の悩みや苦しみ、葛藤、悲しみがすべて表れているようで、なんだか信長を憎む気持ちが少しだけ和らいでしまいました。もちろん、すべてを許せるわけではないのですが……。

 憎んだままでもいいから俺を支えろ、という言い方はあまりにも横暴すぎますが、それがなんとも信長らしいと思ってしまいます。それに対して、自分のやり方で世の中を治めると言い切った家康のカッコよさ。

 覚悟があるならやってみればいいという信長の言い方は、信じられないほど優しく、もうすでに死を覚悟しているような、そんな悟りにも近い感情が見えました。

 初めて信長の人間らしさに触れた瞬間でしたが、できればもっと早くこういう一面を見せてほしかったという気持ちもあります。死の間際になって初めて本音を言えるだなんて、あまりにも悲しすぎますから。

 そんなやり取りを知ることもなく、秀吉のように、早くも信長がいなくなった後のことを考えている人物がいるのも、乱世の恐ろしいところですね。

 宣言通りに、少数の手勢だけを率いて本能寺へとやって来た信長。本当に家康が討ち取ってしまうのか!? 次回がとても楽しみですね。

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