『信長の野望・新生 with パワーアップキット』発売記念インタビュー! “劉プロデューサーらしい”緻密な作戦が求められる骨太SLGがやってきた!
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この7月20日についに発売を迎える『信長の野望・新生with パワーアップキット(以下、新生PK)』。攻城戦や家宰など数々の新要素が加わり、『新生』本編から大きな進化を遂げての再出発となる。
そんなわけで今回は、開発プロデューサー兼ディレクターを務める劉プロデューサーに『新生PK』の見どころを改めてお聞きした。シリーズファン、歴史SLGファンの多くが注目する本作、その進化の程には注目ですぞ!
『新生PK』開発の舵取りと方向性
――ついに発売ということで、開発を終えての今のお気持ちを聞かせてください。
劉:約半年の開発期間でしたが、もう終っちゃったのか……という感覚ですね。『新生』のときはみなさんに早く遊んで欲しいという気持ちもあって、ずっと終わらない、いつまでも開発していたような気がするのですが(笑)。今回は、開発プロデューサーに立場が変わったということもあって、みなさんに受け入れてもらえるかどうかの緊張感が強いです。だから、あっという間に開発期間が過ぎた気がしています。
――立場が変わったということは、開発への向き合い方、心境的な変化もやっぱりあったんじゃないでしょうか。
劉:『新生』同様、『新生PK』ではディレクターも兼任しているので、ゲームを作る意識というか、基本的にそこでの差はありませんでした。ただ、『新生』のときは小笠原(プロデューサー:小笠原賢一氏)や小山(前開発プロデューサー:小山宏行氏)の意見を受けて方向を決めていたのですが、『新生PK』は僕の考えでやって良いと任せてくれたので、ある程度自由にやらせていただいています。そこを遠慮せずに開発を進めたのは、心境的に一番の変化かもしれません。
――それは逆にプレッシャーも大きそうですね。
劉:そうですね。こういうのをやりたい、と言ったときに、『新生』のときはブレーキをかけてくれる、バランスを取ってくれる人たちがいた。もちろん今回も小笠原や小山と話し合って進めているので、違うものは違うと指摘をもらって修正はしていますが、最終的には自分で判断しなければならない立場なので。そこは自分にとっても挑戦だった部分ですね。
――『新生』発売後、多くのユーザーから意見や感想をいただいたと思います。そのなかで『新生PK』に影響を与えたものはありますか?
劉:発売から本当に多くの声を頂いています。そのなかでは、難易度が高くて歯ごたえがあることを肯定的に感じられている声が思ったよりも多かったです。そこは『新生』の方向性として、『新生PK』でもしっかり歯ごたえを残していくべきかなと思っていました。それとこれは完全に意外だったのですが、「武将たちにはもっと好きに動いて欲しい」という要望も多かったです。もともと『新生』の合戦では武将が自分から動く要素はあったのですが、その行動を自分の命令で上書きできました。武将の勝手な行動を、なるべくストレスのない形にしたわけですね。でも、「もっとワガママでいい」という声も多くて。
――『三國志14』の「猪突」が好評だった影響かもしれませんね……。勝手に突撃する張飛が可愛かった記憶があります。
劉:そうですね。逆に『創造』の前田慶次の「傾奇者(※)」はけっこう批判をいただいて……。可愛く感じるワガママと、可愛くないワガママがあるんですよね(笑)。今回、新特性に「猪武者」というものがあって、こちらは武将の好きにさせると大きく能力が上昇します。こちらも命令上書きはできますが、好きにさせた方がいいよね、という形で落とし込んでいます。
※編集部注:「傾奇者」のもともとの効果は進軍コントロールが効かなくなるもので、勝手に関係ない第三国に突っ込んで開戦状態にしてしまうものだった。戦略級ワガママ。さすがに後日アップデートで修正されている。
劉:それととくに要望の多かったものは、やっぱり攻城戦と築城の2つでした。築城は前回のインタビューでもお話した通り、どうしても実現することが難しかった要素ではあるのですが、ご存じの通り攻城戦は『新生PK』の柱の1つとして入れさせていただきました。
新要素「攻城戦」は戦略上の重要な戦い
――攻めるにせよ守るにせよ、攻城戦は戦略に大きな影響を与える要素になりました。こちらの導入にあたってとくに注意したことはなんでしょうか?
劉:攻城戦は…要するにボス戦です!
――ボス戦!
劉:攻城戦は『新生PK』を開発するにあたって入れるべき要素として最初から決めていたのですが、すべての城で攻城戦が発生すると、とても手間がかかってテンポも悪くなっちゃいますよね。オートのオンオフをつけるという選択肢もあるのですが、それでは結局ユーザーのみなさんはオートにして遊ばなくなってしまう。じゃあどうしよう、と考えたときに「戦略上の重要な戦い」として攻城戦を用意しようという形になりました。史実で言えば小田原城の戦いとかボスステージ感ありますよね。
――なので攻城戦はボス戦と。
劉:攻城戦では一般に、攻め側に3倍の兵力が必要と言われていますよね。『新生PK』でも、攻める側はどこから攻めるか、どれだけの軍勢を用意するか、ちゃんと考えて準備しないと勝てません。すべての城がそうだったら各地で進行が難しくなりますが、「戦略上の重要な戦い」とするとそういった表現も可能になってきます。そのあたりが、RPGでボスに挑むような感覚に近いと思っています。
――攻めでは確かにボス戦に挑むような感覚もありますが、遊んでいてとくに楽しかったのはやはり籠城側でした。ちゃんと準備してうまく立ち回って、十倍の敵を撃破できたときは本当に気持ちよかったです。もっともその後、耐久度低下したところに再度攻撃を受けたり、調略の破壊で吹き飛ばされたりでなかなかそのあとが続かないんですが……。
劉:そこは意図したジリ貧ですね。一度完璧な形で防衛を整えたら、もうずっと守れちゃうというのも違うなと。史実の籠城戦も、何度か敵を追い返せても後詰など何か戦略がないと結局はいつか落ちてしまうものです。だから『革新』の鉄砲櫓のように無限に追い返せる形にはしませんでした。逆にCPU大名がものすごくガチガチに城を固めていても、破壊などを使えば攻略することは必ず可能です。
――二つ名の調略功績が強いということもあるんですが、『新生PK』では調略の価値が大きく上がった気がします。主に攻城前の破壊なんですが。
劉:『新生』のときよりも重要度は上げようとは思っていて、『新生PK』では調略の使い勝手が上がっていますね。必要な金銭も少し減っています。
――プレイしていてわからなかったのが、攻城戦威風の大小でした。通常の合戦威風とは条件が違いますよね?
劉:そうですね。 攻城側の敗北時は部隊数に依存しますが、守城側の敗北時は、簡単に言うとその勢力全体の強さや城の状況に影響しますね。細かい条件は伏せますが、守る側の勢力が大きいほど威風は大きくなります。
――なるほど。確かにそのルールだと、攻めるにしても守るにしても威風にカタルシスが生まれますね。『新生PK』の攻城戦は攻守どちらも楽しくて、この城はこう攻めよう、こう守ろうとアレコレ悩むのは本当に良い部分だと思っています。そのアレコレ悩めるのは200種類以上の個別マップありのことでもあるんですが……正直、合戦マップがイベント合戦以外で増えなかったのは残念です。攻城戦の分を少し回したりはできなかったんでしょうか?
劉:じつは攻城戦と合戦ではマップの作り方がまったく異なります。攻城戦マップは技術的に大きなチャレンジをしていて、合戦マップと同じ作り方だと5マップも作れなかった可能性があり、それだとあまりにも残念なのでマップをオート作成できる仕組みに取り組みました。もちろん最終的にすべてチェックして、必要に応じて手直しをしながら調整していますが、そういう技術的な力もあっての個別マップ化が実現しています。逆に合戦はすべてのマップが完全に手作業で作る仕組みになっていて、単純に攻城マップを減らせば野戦マップが増える、というようにはいかない形になりました。
――なるほど……。ちなみに本城以外の守城には防衛設定が必要なんですが、防衛設定するとその城から出兵がほぼできなくなりますよね。なかなか思い切ったルールだなと思いました。
劉:前回のインタビューで「全部防衛設定すればよいのでは?」という質問に対して、好き放題に防衛設定はできないとお答えした部分ですね。そこはやっぱり我々もわかっていて、都合よく切り替えられるようにはあえてしていません。「どこで守るか」をしっかりと事前に計画を立てて遊んでほしい部分です。
――そうですね。出撃したいときは防衛設定やめればいいんじゃ! と思って防衛設定を解除しても、こんどは兵糧が激減していてすぐには攻められない。いい意味で、システムの穴をキッチリ潰してるなあと変に感動しました(笑)。
劉:『新生』のときからの方向性なのですが、都合良く何でも自由にできるプレイは極力行わせたくなくて。その場しのぎのプレイではうまくいかないように設計しています。行き当たりばったりでうまくいくこともありますが、シミュレーションゲームってやっぱり先の先を読んで計画して進めていくものだと考えています。
――新しく追加された補給拠点の設定もそうですよね。あれも設定するとその城はほぼ出撃不可能になりますし、兵糧も無尽蔵に補給されるわけじゃない。事前に移動日数までだいたい考えて、米問屋をたくさん作って、そこまで準備してようやく機能するという……。
劉:補給拠点は要望の多かった要素で『新生PK』に追加したのですが、これはけっこう迷った部分でした。『新生』は腰兵糧を管理しながら計画的に進軍の戦略を練ってほしいということもあり、安易に入れたくはありませんでした。簡単に補給できて、ずっと軍勢を出しっぱなしでどんどん攻め落とせるというのも違うなと。そういうこともあって、補給拠点は現在実装されている形になりました。
――『新生PK』はそういう細かい設計、強みを安易に使わせない部分に劉プロデューサーらしさを感じました。『新生』のときにたぶん要望があったと思うんですが、政策の解除やレベルの引き下げはあえて入れていないんですよね?
劉:そうですね。そこも都合よくオンオフを切り替えてほしくない部分です。内政するときは内政向けの政策を、戦闘するときは戦闘向けの政策を、という形でタイミングに合わせて切り替えれば良いだけになってしまうのはどうなんだろうと。最終的にどの政策を取って、その勢力をどう育てていくのかをちゃんと考えて欲しくて。ただ『新生PK』は編集機能がありますので、要望の声が大きいようでしたら、そういった箇所で変更可能にするのは検討できるかもしれません。
政策や家宰などのシナジー効果の妙
――個人的には良い落としどころだと思います。『新生PK』を遊んでいて面白かった部分の1つなんですが、そういう政策に家宰や個性や二つ名が加わって、すごいシナジー発揮できますよね。そういう組み合わせの妙というのは、やはり意識した部分なんでしょうか?
劉:はい。『新生』では勢力ごとの違いというものが少なく、そこは改善しなきゃいけないと思っていた部分でした。”君臣一体”というテーマを掲げているので、もともと勢力にいる武将や、新しく加わった武将たちをうまく組み合わせて、勢力を特徴づけていってほしいなと。
――ちなみに劉Pのオススメのやり方は?
劉:それぞれに好みもあるのでオススメと言えるかはわかりませんが、個人的には調略系が好きですね。家宰特性の「深謀遠慮」とか。先ほども言いましたが調略の使い勝手が良くなっているので、力攻めだけに頼らず調略で相手を翻弄するような戦い方も楽しいです。
――家宰特性と言えば、『新生PK』では武田家が強くなりましたね。その要因の1つが武田信繁の家宰特性「騎馬教練(騎馬LV+3、鉄砲LV-5)」で、川中島で信繁が戦死すると武田全体がちょっと弱体化するのが面白かったです。逆に信繁が生きていると、騎馬LV10の部隊がガンガン突っ込んできて怖い相手でした。
劉:『新生』では北条が強い強いと言われてしまいましたが、小笠原とも話し、やっぱり織田家の前に立ち塞がった武田はもっと強くあるべきだよねと。なので『新生PK』では武田にだいぶテコ入れしましたね(笑)。信繁もそうですが、名所の諏訪神社(勢力の騎馬LVアップ)もあったりしますし。他にも上杉、佐竹、里見あたりは意識して強くしています。
――では最後にいよいよ『新生PK』出陣となるわけですが、待ち望んでいたユーザーに、そして購入を悩んでるユーザーに一言お願いします。
劉:シブサワ・コウ40周年記念作品として作ってきた『新生』は、今回新たに「信長の野望」シリーズ40周年記念作品の『パワーアップキット』として再びお届けすることができます。本当にクオリティの高い作品になったと思っていますし、シリーズの新たな出発点としてこれまでとは違ったプレイ感を味わえる作品だとも思っています。『新生』本編の時点で高い評価は頂いていましたが、そこから改善する部分は改善して、さらに深掘りして、まさに「君臣一体」の戦国を楽しめる作品となっています。まだシリーズを遊んだことがない方にも遊びやすく、しばらく離れていたシリーズファンも色んな進化を味わえる内容となっていますので、是非この機会に手に取っていただき、戦国体験を楽しんでいただきたいです。
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