『なつもん!』をおじさんライターがレビュー! 夏休みの自由研究のようなアドベンチャーゲームを自由気ままに堪能

原常樹
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 スパイク・チュンソフトから7月28日に発売されるSwitch用ソフト『なつもん! 20世紀の夏休み』

 夏休みや子ども時代へのノスタルジーをテーマにしたゲームを数多く手がけてきた、ミレニアムキッチンの綾部和氏が開発する新作アドベンチャーゲームを、実際に20世紀の夏休みを経験して育ったおじさんライターがレビューします!

小学4年生の視点で20世紀の夏休みを追体験

 どうもみなさん、こんにちは。今回『なつもん!』のレビュー記事を担当することになったライターの原常樹です。

 本記事が掲載される頃には学生のみなさんは夏休み真っ盛りというところでしょうか。社会人──とりわけ我々のようなフリーランスの職業に就くと夏休みの恩恵や実感はほとんどありません。

 別に休みになるわけでもないですしね……。でも、子どもの頃は“夏休み”という単語を聞くだけで「ヒャッホ~!」と舞い上がった記憶があるものです。それぐらい特別なイベントでした。

 そんな誰もが幼少期に過ごしてきたであろう夏休みの日々を描いたのが『なつもん!』です。

 小学4年生の主人公の視点から夏休みを追体験できるアドベンチャーゲームということで、「夏休みなんてどう過ごしたか覚えていない……」と記憶を遠い昔に置き去りにしてきたみなさんにこそオススメしたい作品でもあります。

 本作の主人公・サトルは、各地を旅する“まぼろしサーカス団”のひとり息子。サーカス団は8月1日から風光明媚なよもぎ町へと本拠を移し、8月が終わるまでこの地で興行することとなりました。つまり主人公は、よもぎ町で8月31日までの1カ月間を過ごすわけです。

 8月は夏休みの期間に当たるので、この1カ月小学校に通うことはありません。では、何をして過ごすのかというと……それはもうプレイヤーの自由! 思うがままに野山をかけて昆虫採集に励むもよし、海辺や川で魚を釣るもよし、貯めたおこづかいでサーカス団の経営を支えるもよしと、本当にいろいろなことができちゃうんです。

 3Dのオープンワールドとして構築されたよもぎ町は人口の少ない田舎町ではあるのですが、子どもが散策するにはかなり広大。そこを自由に散策していいよ~と放り出されるわけだから、ちょっとビックリしましたし、同時にものすごくワクワクしました。

 筆者が小学生の頃には『たんけんぼくのまち』という社会科番組が放映されていて、配達員のお兄さん(※出演されていたのは、なんと現在も声優として活躍されているチョーさん!)が住んでいる市町村を調べながら、ユーモラスな手描きの地図にまとめるという内容が子どもたちに大人気でした。

 もちろん、筆者もこの番組が大好きで、地元のお店や街並みを幼いながらに探検しては楽しんでいたんですが、『なつもん!』で町を散策する感覚はまさにあの感じ。

 毎日、絵日記でそこで起こったことをレポートするというのも感覚的に近いですし、あの時代にタイムスリップした気がしてしまいました。

 それまで知らなかった町を探索したことがある方だったら、そのときのドキドキ感がきっと『なつもん!』を通じて蘇ってくると思います。

 なお、舞台となっているのは20世紀の夏休み──ちょうど1999年ということで程よいレトロ感も魅力に。アラサーぐらいのユーザーにはとくに親近感が湧く舞台設定になっていると思います。

1日あたりの冒険密度の濃さがすごい!

 アドベンチャーゲームとしての『なつもん!』の魅力を挙げていくとすると、やはりまずは1日あたりの冒険密度の濃さに言及しなければならないでしょう。

 本作では、リアルタイムで時間が経過して夕飯の時刻になるとサーカス団員のトコトコくんが迎えに来て、その時点で探索切り上げとなります。

 同様に夜間も眠気が強くなる22時までは自由に探索ができるのですが、時間の経過はかなり緩やかに設定されているために必然的に一日あたりに取れる行動も増えます。

 そのため、「決まった行動しなきゃ時間を無駄にしてしまう!」という束縛感はほとんどなく、小学生の感性に任せて思いつきで行動してもゲームの進行に支障はありません。

 とにかく1日1日がボリューミーなので、気張らずに楽しんで過ごすのがよさそうです。

 しかし、主人公がどんな場所にいても時間になると迎えに来るトコトコくん……サーカス団のエースとはいえ、さすがにすごすぎるような(笑)。

 簡単に入れないような山道でもしっかりと主人公を見つけてくれます。頼りになる大人がいて、初めて子どもは楽しく遊べるんだな~と実感させられますね。

やりこみもバッチリ! 昆虫をすべて集められるか!?

 何をしてもいいというとにかく自由な本作ですが、同時に「夏休みをトコトンまで遊び尽くそう」と思う人にもしっかり応えてくれます。その代表例が昆虫採集でしょう。

 森の中から道端まで至るところに生息していて、虫取り網を使ったり、直接捕まえることで捕獲&飼育することができます。未発見の昆虫を見つけると丸いカーソルが表示されるので「あっ、なんか見たことない昆虫だ!」とすぐに捕まえに行くことができるのもポイント。

 しかし、一部の昆虫は出現する時期が決まっていたり、山の高いところまで行かなければ捕まえられないようなめずらしい昆虫もいるため、図鑑を埋めようとするのは至難の業です。

 全部で200種類の昆虫が登場するそうですが、筆者は8月31日まで通しでプレイしても120種類ぐらいしか見つけられませんでした。いや、これでも頑張った方だと思うんですよ……!

 なお、昆虫も含めた一部の要素はクリア後に引き継げるので、焦らずにじっくりと集めていくのもオススメです。

 めずらしい昆虫は町立博物館に寄贈することができます。ほかにめずらしい魚や各地で採掘した化石なども寄贈できるので、やりこみ甲斐はバッチリ!

充実した夏休みを送るとやれることも増える!

 昆虫採集をはじめ、山野をくまなく散策するのは体力の有り余っている主人公であっても大変……。高いところに登ったり、ダッシュをするときはステッカーゲージ(一定時間休むと回復)を消費します。

 ステッカーゲージをうまく管理しつつ、足場を見つけてしまえば切り立った断崖を登ることもできるので、何度もチャレンジするうちに“クライミングテクニック”や“クライミングルート”が自然とプレイヤーに備わっていくというのも本作の醍醐味。

 ちなみに、ステッカーゲージの最大値は、町の中で起こるさまざまな出来事を解決したり、昆虫や魚を一定数捕まえたり、めずらしい昆虫や魚を町立博物館に寄贈することで増やせます。

 充実した夏休みを送れば送るほど、主人公にも体力がついていく……みたいな感じに捉えるとしっくりきますね。

 サーカス団について回っているだけあって、成長すると主人公の運動センスは抜群に。慣れてくるとパルクールのように民家の屋根を駆けていけるようになります。

 ここまで来ると一般的な小学生の夏休みの体験とはいえない気もしますが、昨今は“スポーツクライミング”で活躍している中学生や高校生もいますし、ファンタジーとは言いきれないのかもしれません。

 ステッカーゲージが増えたら、ひたすら“てっぺん”を目指してみるというのもアリ。灯台や時計塔の上など、簡単には登れない場所ばかりですが、だからこそひと夏の目標にする価値があります。

 最初は参道の灯篭に登るのにも苦戦する主人公が、ちょっとずつ成長して崖や壁をひょいひょい登っていく姿を見ているとなんだかグッと来てしまいます。若き才能が開花していくのは素晴らしい……。

 ちなみにどんなに高いところから落ちても、足がジ~ンとなるだけで済むのもまた本作のいいところ。無茶をして怪我で夏休みを棒に振ったことのある筆者からすると、主人公の頑丈さが羨ましくなります。

夏休みの自由研究のようなアドベンチャーゲーム

 そして、サーカスの団員やよもぎ町やとなり町の住人たちと親交を深めるのも『なつもん!』のひとつの楽しみ方。神社の神主さんや花火職人のおじさん、いつも荷物を背負った山じじいなど、どの登場人物もひと癖もふた癖もあるので、彼らと話すだけでも愉快な気持ちになります。

 興行不振にあえぐサーカスの手伝いをすることもできますし、散策で稼いだお金をつぎ込んで盛り立てていくというのも悪くありません。きっとパパさんやヒメさまも喜んでくれるはず! もちろん、町には同年代の子どもたちもいますし、彼らと力を合わせて“探偵クエスト”をこなすことも。

 さらに、よもぎ町には不思議な伝説も伝わっています。不思議なものを見たという話もよく出てきますし、もしかするとそんな存在とも出会えるかも……!?

 目標が明確でないとゲームを投げ出してしまいがちという人にとってはとっつきづらそうに見えますが、『なつもん!』は“何をしてもいい”わけですし、本作を遊んでいると「目標がないならダラダラと花火を眺めるだけでもいいんだ~」というぐらいリラックスした気持ちになってくると思います。

 実際のところ、せっかちな筆者も気が付いたらそういった遊び方をするようになっていました。

 一方で、昆虫採集や高所の制覇、探偵クエストなど、目標を持とうとしているユーザーにはしっかりと道筋を用意しているのも『なつもん!』の魅力。やれることはいっぱいあるけど、やるかどうかは自由だよ~みたいな制作者のメッセージを感じます。

 そういう意味では“夏休みの自由研究のようなアドベンチャーゲーム”と表現するのが適切なのかもしれません。

 そして、8月が終わる頃には、プレイヤーはよもぎ町一帯のことがホームタウンのように恋しくなっているはず。

 「ここの塀を越えれば近道ができるんだよね~」みたいな知識も備わっていると思いますし、その下地になっているのはこの町を毎日のように散策した思い出だと思うんです。

 だからこそ、9月を迎えたくないなぁ……なんて後ろ髪を引かれる思いになったり。住人だけでなく、過ごした土地や思い出が愛おしくなるというのは、本作ならではの醍醐味だなと感じました。

 とにかく楽しくて、そしてちょっぴりノスタルジックな気持ちを味わわせてくれる『なつもん!』。ぜひみなさんも童心に返ったつもりで、かけがえのないひと夏を過ごしてみてください。

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