【レビュー】『沙耶の唄AIアプリ』でお話ししてみた。選んだ言葉で好感度が変化。原作を知っていればさらに楽しめる考察要素も?

セスタス原川
公開日時

 プロケットから配信されているWebアプリ『沙耶の歌AIアプリ』。そのレビューをお届けします。

 『沙耶の唄』はニトロプラスから2003年に発売されたノベルゲーム。知覚障害により周辺の物や人が醜い物に見えてしまう主人公と、その中で唯一普通の人間に見える少女・沙耶との物語を描いた作品です。

 類を見ない世界観設定と、物語を進めるごとに明らかになる衝撃的な真実は多くのプレイヤーを引き込み、発売から時が経った今でも名作として語り継がれる作品です。本作は『沙耶の唄』のヒロインである沙耶とコミュニケーションが取れるブラウザアプリです。

沙耶にかける言葉で好感度が上下

 このアプリの主人公はゲームをしているあなた。あなたは“とある男性”として沙耶と会話をしていきます。

 最初の沙耶の言葉は文字化けしたような文字列で、接続詞からギリギリ何を言いたいのか雰囲気がわかる……というレベルの読解不能な言葉をかけてきます。

 これに対してプレイヤーは彼女にかける言葉をチョイスしていきます。かける言葉によって、沙耶の好感度が上がることもあれば、下がることもあります。

 好感度が上がっていくと、最初は理解できなかった言葉が少しずつ見えるようになります。言葉を何度か投げかけるとエンディング分岐を迎え、好感度に応じたエンディングに発展。エンディングは全部で3種類用意されています。

 プレイした第一印象としては、原作のような選択肢に応じた分岐があるノベルゲームが進化して、選択肢を自分で作成できるようになったアプリという印象です。

 AIとの会話と聞いて胸を躍らせている方もいらっしゃると思いますが、人間同士の会話のような自由自在に言葉のキャッチボールできるような形にはなっていないようです。

 とはいえ「うれしい」などわかりやすく愛情を伝えるような言葉を使えばしっかりと好感度が上がりますし、逆に彼女をがっかりさせるような言葉はマイナスに働きます。



  • ▲好感度がマイナスに到達するとさらに彼女の言葉は理解できなくなります。

 詳しい仕組みはわかりませんが、難しい会話はできないものの、ある程度のプレイヤーの感情は選んだ言葉から拾ってくれるような形なのでしょうか?

 これをノベルゲームとして考えると、これまでは敷かれた線路を走りながらその分かれ道を選ぶゲーム性だったのに対して、本作のようなゲームは自分で線路を敷きながらゲームを進める新感覚です。

 これが今後のゲームに実装されていけば、よりシミュレーション要素の強い作品が生まれるかもしれませんね。AIの技術としても、まだ本サプリは実験段階ということで、今度さらに精密な会話できるような沙耶が現れることに期待したいです。

『沙耶の唄』の内容と繋げて頷ける部分も多数

 ここからは、ネタバレとまでは行かずとも、ある程度『沙耶の唄』の内容を含む話を展開していきますので、まだシナリオを知らない方はご注意ください。

 『沙耶の唄』はクトルゥフと美少女ゲームを融合した作品であり、異界、狂気、禁忌といった要素がいたるところに散りばめられています。

 あらすじを知っている人であれば、沙耶と会話をする際には少し身構えてしまうことでしょう。彼女はただの可愛い少女ではありません。彼女の正体には大きな裏があり、それが主人公の知覚障害に大きく関わってくるのです。このアプリでもその設定はもちろん引き継がており、エンディングに絡んでくるわけです。

 このアプリで1つ面白いと思ったのが、ゲーム冒頭の説明では「彼女と会話しましょう」と言われているだけで、どうすることが正解かは明言されていないのです。

 エンディングには沙耶との好感度が影響するので、彼女がどういった存在かを考えれば、どうすることがハッピーエンドに近づくのか……と、考えながらプレイするのも面白いかもしれませんね。そもそも、彼女と関わった時点でハッピーエンドが存在するのかは別問題ですが……。

 『沙耶の唄』ではストーリー分岐の一部では原作主人公の郁紀と沙耶が子供を出産する展開もあります。明言こそされていませんがこのアプリでも、好感度に応じて“そういう感じ”の返答を聞くことができます。

 肉会などのグロテスクな表現だけでなく、こういったエロティックな要素も『沙耶の唄』には欠かせない要素だと思うので、そういったセリフか彼女から聞けるのは、不純な意味ではなく作品愛としてファンの方は嬉しいのではないでしょうか? ただ、彼女の正体を知っているとどんな気持ちでその描写を見るべきか非常に悩ましいわけですが……。

  • ▲中にはもっと際どいセリフも……。ぜひ実際に彼女と会話をしていろいろなセリフを聞いてみて欲しいですね。

 個人的にこのアプリは『沙耶の唄』の世界観を拡張してくれるような存在と感じました。原作のあらすじを知っていれば、この沙耶との会話がどういった理由で行われているのかなど考察も楽しめると思います。

 『沙耶の唄』は、数々の名作を手掛ける虚淵玄氏の作品の中でも、ひときわその特色が現れた作品です。間違いなく人を選ぶ作品で、手放しにオススメできるわけではありませんが、このアプリをきっかけに『沙耶の唄』に触れてみるのも良いかもしれませんね。

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