頭を軽く使うパズルを解き、怪物に追いかけられて廃墟を逃げ惑う……。覚めない悪夢のなかをビクビクさ迷う『闇夜永夢』が、ガチでコワイ!

まさん
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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はMagic Fish Studiosが開発、Astrolabe Gamesが販売を手掛け、Nintendo Switchで配信中の『闇夜永夢』をご紹介します。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

トラウマを乗り越え、恐怖を受け入れる悪夢の旅。背筋も凍る王道のホラーアドベンチャー

 本作は、PS4/PS5/PC(Steam)で配信中の『In Nightmare』をNintendo Switch向けに移植したタイトルです。自分が遊んでみた限りではシステムやストーリーなどの大幅な変更はなく、ほかのハードと同様に遊べる作りになっていました。

 物語の主役は、暗い悪夢のなかに迷い込んでしまった少年・ビル。家族の崩壊から心を壊してしまったビルは、自分の潜在意識が作り出した悪夢の中に閉じ込められてしまいます。そこは、自らのトラウマが生みだした怪物がひしめき、トラップが仕掛けられた地獄のような世界。しかも、怪物の手を逃れて悪夢の世界から脱出しなければ、現実に戻ることも目を覚ますこともできないのです。悪夢の中に囚われてしまったビルは、現実に戻るために蝶のような姿をした“夢精霊”の力を借り、この恐ろしい世界を探索していきます。自分自身の心や真実に向き合いながら、悪夢をさ迷うビル。彼は、現実に戻ることができるのでしょうか……?

 もはや、ホラーゲームでは定番ともいえるトラウマが生みだした悪夢の世界。現実ではありえない不条理な光景や恐ろしい怪物が出るのは、悪夢の世界だから。たとえ、そうやって前提を説明されているとしても、やはり不気味なものは不気味ですね。陰鬱で気持ち悪い風景や、馴染みのある建物なのに形がおかしい。悪夢ならではのロケーションにそそられます。

 ゲームは見下ろし型のアクションアドベンチャーで、ジャンプやアイテムを使ったアクション要素も存在。怪物から逃げ惑うステルスゲームのような遊びもあり、パズルのような仕掛けも満載です。パズル部分はしっかりしており、きちんと考えれば解けますが、適当に選んだだけでは先に進めない難易度。怪物とのステルスでは、追われる焦燥感と気持ち悪さが付きまとうホラーらしいシチュエーションが楽しめます。

 もちろん、常に追われるわけではなく、館や学校を探索して現実で起きた出来事の手がかりを探す場面もあります。断片的に用意されたテキストを読み集めて、物語を紐解く。こうしたホラーゲームが好きな人にはたまらない収集要素ですね。

  • ▲探索していると、過去の光景がフラッシュバックすることがあります。日記の記述と合わせて過去を見ていくと、ビルのトラウマが見えてくるかもしれません。

 自分の家や学校など、チャプター(ステージ)ごとに異なる舞台は夢ならではの歪な構造。常識ではありえない形をしています。とはいえ、ご安心を。構造はおかしくなっていますが、道に迷うようなゲームではありません。

 理不尽に襲われるホラーではありますが、進行自体は理不尽ではないのです。むしろ、エンディング分岐や進行に関するヒントは親切。十字ボタンの上を押すと進むべき道が足跡として示されるので、後を追っていけば出口に辿り着けます。攻略するだけなら夢の出口となる階段を目指し、広間のような場所まで戻ればOKです。ただし、これはあくまでも最短ルート。道中にある隠しアイテムや隠し部屋などは教えてくれないのです。

  • ▲どこへ行けばいいのかわからない。そんなときは、夢精霊の力を借りて足跡を表示させましょう。足跡を追いかけていけば、ゴールが見えてきます。それでも詰まった場合は、近くにパズルがあるかも?

 アイテムや隠された道を見つけるには、夢精霊の力を借りる必要があります。隠されたアイテムは、光り輝くスポットが見えたときにZRボタンを押し続けると出現。隠された道や足跡は、ZLボタンを押し続けることで表示されます。隠されたアイテムをすべて見つけないと“悪いエンディング”を迎えてしまうので、最終的には隅々まで探索することが必須です。

 常に夢精霊の力を使いながら探索すれば、大丈夫だと思うでしょう? そう簡単にはいきませんよ。夢精霊の力は無限に使えるわけではないのです。夢精霊を単独で操作して遠くにいる怪異などを調べていると、あっという間にエネルギーが尽きて使えなくなってしまいます。消費してしまったエネルギーは、アイテムがないと回復できないので使いどころを間違えると困ることに。もっとも、回復アイテム自体は割と細かく置いてあります。よほど無駄遣いしない限りは、完全に枯渇してどうしようもない……という状況にはならないでしょう。

 しかし、隠しアイテムを見つける力を回復するには“夢境エッセンス”。隠しエリアを見つける力の回復には“意識の流れ”という別々のアイテムが必要になる点にはご注意を。使ってしまった力に対応するアイテムが、常に置いてあるとは限りません。さらに、力をどこまで消費したのかも、エネルギーが空になるまでわからないのです。ゲージや数値では表示されないので、そうした意味でも緊張感がありますね。

  • ▲夢精霊の力を使っている間だけ表示されるアイテムや、隠しアイテムまでのルートを示した足跡などもあります。怪しい場所を見つけたら、使ってみましょう。

 なお、本作はマルチエンディングになっています。注意深くプレイしても、1周目から“良いエンディング”を迎えるのは難しいでしょう。1つ1つのステージは広すぎるほどではないのですが、ちょっと進むと扉が閉まって後戻りできなくなる場所が多く、初見ではすべてのアイテムを集めるのは難しいと思います。最初から完全クリアを目指すよりも、1周目は“悪いエンディング”になっても仕方がないかな、くらいに軽くとらえて遊ぶのがオススメ。部屋の位置や敵を把握するためにひと通りプレイしてみるくらいの気持ちで探索しましょう。

 収集アイテムにこだわらず、ただクリアするだけならそこまで難しくはないので安心ですよ。「ホラーゲームは好きだけど、難しすぎるのはちょっとなあ……」と思っている人でも遊べると思います。もっとも、エンディングの分岐はアイテムの収集が条件になっているので、いざグッドエンディングを見ようと思うと大変かも。そこを考えると手ごわいゲームではあると思いますが、ゲーム中に提示されるヒント自体は親切です。足りていないアイテムや“よいエンディング”を迎えるための条件なども、最初から開示されていますからね。

  • ▲メニュー画面では、現在どれだけアイテムが足りていないのか。いくつ手に入れれば、よいエンディングを見られるのかが一目瞭然。

 自分も頑張ってはみたのですが、1周目では普通のエンディングまでしか行けませんでした。悪い、普通、良いの3種類のエンディングがあるので、まあ頑張ったほうかな? 1周目をクリアすれば、ステージの途中でも拠点となる“ドリームホール”に戻れるようになりますし、そこから好きなステージに行けるのでクリア後にやり直しもできます。最初はあまり気にせず気楽にプレイして、主人公がおかれている境遇を把握したら、2周目としてアイテムを集める旅に出ましょう。

  • ▲ドリームホールには、アイテムを集めることで条件を満たす仕掛けがいくつかあります。すべて集めた時、果たして何が起きるのか……?

逃げ惑うステルス要素やパズルに、苦戦するボス戦。何度でも挑戦できるので諦めるな!

 気楽にプレイして……なんてことを書いてしまいましたが、正直なところ本作はとても怖い! ホラーとしてはガッツリ怖がらせてくるので、そういう意味では気楽に遊べません。怖いゲームを求めている人なら、きっと満足できると思います。悪夢を題材にしているだけに、出てくる怪異やマップの構造も不条理極まりない。あり得ないような建物が歪な形で繋がり、そうした構造を利用することで逆に窮地を脱することも。

  • ▲抜け道や隠れられる場所もあるので、頑張って逃げ回れば仕切り直せる場面も多いです。もし、捕まったとしてもリトライが早いから諦めないで!

 中盤から挟まれるステルスは、怪異が音に敏感なので難しく感じる人もいそうですね。相手の動きを止められるアイテムなどもありますが、主人公の動作にクセがあるんですよ。移動速度は問題なく、走っていれば怪異を振り切れるのですが、いざ追い込まれてアイテムを投げたり、ギミックを動かしたりしようとするとガシッ! グサッ! ボカッ! 緊急回避のアイテムを投げるまでにワンテンポあり、こちらを見つけたあとの怪異の動きは素早いので投げる間に捕まってアウトなんてこともよくあります。

  • ▲ギミックを解除するのもトラップアイテムを投げるのも、少し時間がかかります。その間に近寄られるとアウト! まずは、しっかりと距離を取ることが大切です。

 よく見ると怪異の動きが大きいので、逃げに徹していれば回避して横をすり抜けたり、物陰に隠れてやり過ごしたりと、回避自体はできます。ですが、逃げながらギミックを動かすステージもあるのが意地悪。背後まで迫っているのに、この机を動かさないと逃げられない! スイッチを押さないと扉が閉まってる! なんてシチュエーションがよくあります。だから、焦る、焦る。うおおおおおお、レバーが下がらねえ(焦っているので、調べるポイントがズレてるのに気づいてない)と叫びながら、後ろから来る怪異に怯える。そんな光景もよくあること。

  • ▲相手に見つかっていない状態なら、タンスなどに隠れてやり過ごせます。見つかった状態で隠れてしまうと、すぐに引きずりだされてしまうので、早めに隠れること。

 常に追われるようなゲームではなく、怪異が襲ってくるシーンは決まっているのですが、それでも怖いものは怖い。しかも、終盤は逃げ惑うだけではなく、ボス戦として正面から立ち向かう場面も出てきます。これがまた、初見だとボッコボコにされるくらい手ごわい。

  • ▲相手を直接倒す手段はなく、ギミックを解くことでダメージを与えられます。ボス戦が始まったら、逃げ回りながらいろいろ試してみましょう!

 ボス戦は高難易度ではないものの、主人公が炎に当たって倒れたり、見えない床を踏みはずしたり、ちょっとしたことで力尽きるので苦戦します。最後のほうは「ムキーッ!」と言いながらリトライしてました。冷静になれば大丈夫なのに、よく見ないとトラップに引っ掛かってやられちゃうんですよ。落ち着いて見られる状況じゃないってば!

  • ▲個人的にラスボス戦よりも苦戦した、青い光で照らさないと見えない足場をわたるステージ。ボス戦でも出てくるので、足を踏み外すことが多くて……。

 ボス戦自体はそこまで多くないですし、ボスごとにギミックや攻略も違うのでアクセントになっています。むしろ、人によっては通常のパズル的な謎解きのほうが悩むかも。パズルは、かなりわかりやすくヒントもあるんですよ。画面内に直接書かれていたり、別の場所にヒントがあったりするのですが、ヒントだとわかっていても解けないときだってありますよね。

 パズルを解かないと先に進めないので、謎解きが苦手な人はしばらく悩むかもしれません。どうしても進めないときは時間を置いて、いったん頭をリフレッシュさせてから考え直してみるのもアリですよ。たぶん、発想は合っていると思います。見方や考え方の角度を変えてみるのが正解なのです。

  • ▲難解ではなく、どれもわかってしまえば単純。ですが、引っ掛けのようにちょっと見方や考え方を変える必要があるパズルもあって頭を使います。

 この手の系統のホラーゲームだと、あまりにもパズルが難しすぎて解けない場合もありますよね? 本作にもホラーゲームらしいパズルはありますが、冒頭でも書いたようにそこまで難しいものではありません。もちろん、解けないと先に進めないのですが、試行錯誤して何回か再挑戦すれば解けるはず。解いてみると「こんなに簡単な答えだったのか!」と驚いてしまうでしょう。意外と素直な解答なんですよ。ホラーとしての理不尽さはあってもルールとしての理不尽さはないゲームだと思います。

 主人公の悪夢の原因は何か。フラッシュバックする想い出から見えてくる過去に何があったのか。日記やカルテを集めていくことで少しずつ明らかになっていく物語は、夏にぴったりの王道ホラー。追われる恐怖もガッツリと味わえます。真のエンディングを見るためにはアイテムをしっかり集める必要があるので、探索や収集要素のあるホラーゲームをやりたい人にも向いている作品です。寝苦しい真夏の熱帯夜。あえて眠らずに夜更かしして、ゲームの中で悪夢を体験してみるのはいかがでしょう?

(c) 2020-2023 Magic Fish Studios
(c) 2023 Astrolabe Games

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