このボドゲは極上だ。『スパイ教室』ボードゲームをレビュー。灯メンバーの能力が不可能任務クリアの鍵!

カワチ
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 KADOKAWAが販売・運営する新しいアナログゲームブランド“カドアナ”より、8月31日に発売されるボードゲーム『スパイ教室 ボードゲーム《ダークリープ》』をひとあし先に遊ぶ機会に恵まれたので、そのレビューをお届けします。



『スパイ教室』の世界観をボードゲームにしっかり落とし込んだ作り!

 富士見ファンタジア文庫のライトノベルでシリーズ累計部数は100万部を突破し、TVアニメ2nd seasonも放送中の『スパイ教室』。世界中の国々が“戦争はコスパが悪い”と認識を改めて、剣や弓を用いた光の戦争ではなく、スパイたちの情報戦である影の戦争が繰り広げられている世界観のストーリーが描かれます。

 燎火(かがりび)というコードネームのクラウスが、不可能任務を専門とするスパイチーム・灯(ともしび)を創設するという展開で、灯に選出されたメンバーは養成学校で落ちこぼれとみなされた少女たちばかり。さらに燎火は卓越した技能を持つ一方で、すべてを「なんとなく」と感覚的にこなしてしまうため、指導は苦手という設定。物語が進むなかで少女たちのバックボーンが描かれ、彼女たちの葛藤や成長のドラマが注目のポイントになっています。

 ライトノベルらしいキャラクターの可愛さを持つ一方でスパイものならではのサスペンスも満載で独自の魅力を放つ作品になっています。原作もアニメもおもしろいので、まだ見ていない人はぜひチェックしてみて欲しいです。

 その『スパイ教室』を題材にした『スパイ教室 ボードゲーム《ダークリープ》』は8人の灯からひとりのキャラクターを選び、数々の任務に挑む協力型ボードゲームになっています。そう、8人。『スパイ教室』の灯のメンバーは、最初は7人として描かれており、じつは8人めのメンバーであるエルナが存在していたことが明かされるのが序盤の驚きポイントでした。

 原作1巻の表紙にはエルナは描かれていませんし、アニメでも第3話で正体を表すので驚いた人も多いでしょう。そんなエルナは本ボードゲームにもしっかり登場しており、キャラクターのひとりとして選ぶことができるのでファンは安心してください。

 基本的なルールは立ち塞がる敵を倒しながらマップを移動し、敵国に隠された“不可能任務”の正体を探るというもの。残り日数が0日になるか、不可能任務をすべて達成するとゲームが終了。達成した任務の数や倒した敵の数、残り日数などが点数になり、スパイランクが決定します。

ゲームの流れ

 ソロプレイもできる本作ですが、ここからは2~4人で遊ぶときのルールで内容を解説していきます。

 このゲームは協力プレイですが、手札をほかのプレイヤーに見せたり、内容を伝達することはできません。また、自分だけ確認した“捜査メモ”もほかのプレイヤーに見せたり、内容を伝達することができません。

 そのため、言葉ではなく出すカードや移動する場所によって、やんわりと仲間に「自分はこの目的を達成できる」、「このカードが欲しい」というものを伝えることになります。このルールにより、『スパイ教室』の灯のメンバーとなって仲間たちとともに不可能ミッションに挑んでいる雰囲気をしっかり味わえます。

 手番のプレイヤーはイベントフェイズ→アクションフェイズ→エンドフェイズの順番に行動し、足りなくなったカードは山札から補充することになり、その山札が無くなると1日が経過する仕組みです。

イベントフェイズ

 イベントフェイズはダイスを振って、出目の数字と対応したマスにある捜査メモが変化。捜査メモが裏であった場合は表の状態になり、どうすればマスの任務が達成できるのか判明します。

 すでに捜査マスが表で敵のコマがある場合、敵が敵国マスに移動。敵国マスに記載された数だけ山札の上からカードを引いて捨て札へ捨てないといけないので、その分残り時間が減ってしまうというデメリットがあります。なお、敵のコマがない場合は病院から同色の敵コマ1体をマスに移動させることになります。せっかく倒した敵が復活してしまうということですね。

 なお、サポートカードの“仲間の手助け”を使うことで出目の結果を無効化することも可能。いちど使ったサポートカードは不可能ミッションをひとつクリアすると復活。再度使えるようになります。

アクションフェイズ

 アクションフェイズは移動、捜査、連携という3種類のアクションを最大3回まで実行できます。また、現在地に敵コマがある場合は敵コマと同色のアクションカードを捨て札に敵コマ1体を病院に移動させることができ、この操作はアクション回数に含まれません。

 移動アクションは自分のマーカーを隣接マスに進めるというもので、現在地に敵コマがある場合は実行できません。捜査アクションは現在地の捜査メモを自分だけ確認し、そこに記載されたアイコンと同色・同数のアクションカードを持っているか判定できます。

 持っている場合はアクションカードと使用し、任務を達成できます。なお。、“暗躍”は任意の色として使用できるワイルドカードとなっており、任務を達成しやすくなります。

 任務を達成すると任務レポートエリアから現在地の捜査メモと同じ名前の任務レポートを獲得。アクションカードとして何回でも使用できる手持ちのカードが手に入ります。自分の成長を感じられるRPG要素になっていて楽しいです。

 なお、任務を達成できなかった場合は拠点ますに戻ることに。さらに敵国マスだった場合は日付マークがひとつ進むのでかなりリスクを伴います。まずは通常の任務をクリアしていき、残ったものから敵国にある不可能任務を推理していくのがセオリーの進め方になります。

 連携アクションは敵コマ1体を病院に移動させる“襲撃”や自分のマーカーを敵コマを無視して2マスまで進める“潜入”などのカード効果を使用するもので、使用したアクションカードを自分以外の任意のプレイヤーに渡すことができるというもの。後述しますが、各キャラクターはそれぞれ得意なことが異なるので、積極的に連携アクションでカードを回していくのが本作の醍醐味になります。

連携アクションのカード効果

襲撃
 任意のマスの敵コマ1体を病院に移動させる。

潜入
 自分の少女マーカーを敵コマを無視して2マスまで進める。

調査
 任意の自国マスの調査メモ1枚を自分だけ確認する。

追跡
 自分の少女マーカーを敵コマにある任意のマスに進める。

誘惑
 捨て札からアクションカード1枚を選んで獲得する。

暗躍
 山札の上からアクションカード1枚を獲得する。

エンドフェイズ

 手札が2枚以下の場合は手札が3枚になるように山札からアクションカードを獲得します。また、自分の裏の状態の任務レポートをすべて表の状態にします。

 基本的なルールは以上となり、気になるキャラクターの能力は以下になります。しっかり原作の能力が再現されており、本人になりきるロールプレイが楽しめるようになっています。

キャラクター

リリィ

能力:
発動条件:連携アクション“追跡”を使用
効果:“追跡”の効果に加え、移動先の敵コマ1体を病院に移動させることができる。

ジビア

能力:窃盗
発動条件:連携アクション“襲撃”を使用
効果:“襲撃”の効果に加え、捨て札の一番上のアクションカードを獲得できる

グレーテ

能力:変装
発動条件:連携アクション“調査”を使用
効果:“調査”の効果に加え、調査したマスに自分の少女マーカーを移動させることができる。

モニカ

能力:盗撮
発動条件:連携アクション“潜入”を使用
効果:“潜入”の効果に加え、移動先の捜査メモを全体公開できる(敵国以外)。

ティア

能力:交渉
発動条件:連携アクション“誘惑”を使用
効果:“誘惑”の効果に加え、手札から任意の枚数を選び、山札の下に戻して引き直すことができる。

アネット

能力:工作
発動条件:捜査アクション
効果:手札のうち任意の2枚を暗躍1枚として扱うことができる。

サラ

能力:調教
発動条件:移動アクション
効果:手札から任意の1枚を捨て、移動先の敵コマ1体を病院に移動させることができる。

エルナ

能力:事故
発動条件:連携アクション
効果:暗躍の効果に加え、ダイスを2回振ることができる。対応するマスの敵コマを病院に移動させることができる。

各キャラクターの能力が強い!

 上記の能力を見てもらえれば分かる通り、各キャラクターの能力はかなり高く、それぞれの得意な役割りも原作と同じようなものになっています。

 今回は複数回ゲームをプレイしてみましたが、各キャラクターの得意なことを把握していなかった序盤のプレイよりも、全員のキャラクター能力を把握した後半のプレイのほうがあきらかに上手なプレイができ、スパイランクを上げることが出来ました。

 最初のプレイではサラを使用しましたが、能力の使いどころがよく分かっていなかったので、“襲撃”で敵を病院に送っていましたが、彼女は調教の能力で移動しながら敵を病院に送れるので、“襲撃”はジビアに渡し、彼女の“窃盗”能力で襲撃のときに捨て札の一番上のアクションカードを獲得してもらうのが良さそうでした。

 次のプレイはリリィを使用し、“追跡”で敵を積極的に排除していき、モニカに潜入、アネットに任務を任せることで効率のいいプレイができました。また、強力なサポートカードも使いどころが分かってくると心強いですね。

 ゲームが分かってくるとスパイランクを上げるための効率的なプレイをするのが楽しいですが、ダイスによる不確定要素があるのですべてが思うようにいかず、頭を悩ませることも多く、それがとても楽しかったりします。

 分かりやすい例で言うと、次のターンで任務をこなせるようにカードを調整していたのに、ダイスの出目のせいで病院から敵が復活するようなことが多々あり、そのアクシデントにどう対処するか、仲間に行動を託すのか考えるのが醍醐味があります。

 キャラクターによって立ち回りが変わってくるので、いろいろなキャラクターを使いたくなる魅力を持っています。また、自分のキャラクターはもちろん、ほかのプレイヤーがどのキャラクターを選んだのかというのも重要になっているので、何度プレイしても新しい刺激があります。

 原作のファンで集まってプレイするのが楽しい作品ですが、ソロプレイ用のルールも用意されており、ひとりでじっくり遊ぶことも可能になっています。

 『スパイ教室』の作品が持つ魅力を見事にボードゲームに落とし込んでいる作品だと感じました。気になる人はぜひチェックしてみて欲しいです!

製品情報

『スパイ教室ボードゲーム《ダークリープ》』

  • ジャンル:協力型“スパイ・ストラテジー”
  • 価格:6,050円[税込]
  • 発売日:2023年8月31日
  • プレイ人数:1~4
  • 企画:株式会社KADOKAWA
  • ゲームデザイン:明地宙




©竹町・トマリ/KADOKAWA/「スパイ教室」製作委員会
©KADOKAWA CORPORATION 2023

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