『ラストラビリンス』ファンミーティングレポート。初期案の少し芋っぽいカティアが明らかに!?【電撃PS】
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2019年12月1日、あまた株式会社は“『Last Labyrinth』SPECIALファンミーティング”を開催! 会場となったサウンドインスタジオには、抽選で選ばれた約30名のファンが駆け付け、ミニライブやトークセッションを楽しんだ。ここでは『Last Labyrinth』SPECIALファンミーティングの様子をレポートしていく。
11月13日に配信を開始したPS4/PC用『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』は、謎の少女カティアの導きのもと、見知らぬ館からの脱出を目指すVR脱出アドベンチャーだ。
菊田氏はまるで“超能力者”!?
トークセッションでは、事前に募集された質問に開発スタッフが答える形で進行。最初のセッションは“『Last Labyrinth』を彩るサウンド”をテーマに、プロデューサー兼ディレクターの高橋宏典氏、カティア役のステファニー・ヨーステンさん、テーマソング作曲・編曲を担当した菊田裕樹氏、サウンドデザイナーの花岡拓也氏が登壇しました。
まずテーマソングの制作について、「ゲームの概要を聞いている間に曲のメロディが降りてきていた」とは菊田氏のコメント。以前から菊田氏のファンだった高橋氏がオファーをしたのがきっかけで始まったテーマソング制作は、なんと初回の打ち合わせ時点で菊田氏の頭の中で曲ができあがっていたのだそうです。
そのため、質問では「曲を作るうえで苦労したこと」が投げかけられましたが、菊田氏は曲自体には苦労をしておらず「逆に、苦労して作る曲はよくない」と回答。そうした曲を作れるようになるまでの苦労は当然あると前置きしつつ、「本当にいい曲は迷わずに作れる」と語りました。
そんなテーマソングを聴いた感想を問われると、高橋氏は「あまり細かく発注をしたわけではなかったが、作品にハマっていて、すごいと思った」と絶賛。
ステファニーさんは「メロディだけでも、違う国の文化に触れたように感じました。雰囲気のある曲で、『Last Labyrinth』に合っていると思います。」と回答し、菊田氏は「それが一番うれしいほめ言葉です。想像の中にしかないゲーム独特の世界を読み取って、超能力みたいに具現化してみせる。それが僕の力だと思ってください」と返しました。
花岡氏は「神秘とか透明感というと月並みですが、底知れぬ奥深さを感じました。静かな曲なのに圧倒される感じが、あの物悲しいメロディで成り立っているのは、イチ音楽家として聴いたときに、ものすごいポテンシャルを秘めた曲だと思いました」とコメント。これには菊田氏も「すごいでしょ!」と満足顔でした。
テーマソングは独自の言語で歌詞が構成されているため、「難しかったのでは?」という質問がステファニーさんに投げかけられると、「難しかったです」と回答。やはり歌詞を覚えるのが大変だったそうで、「歌詞に込められた意味を理解しながら、気持ちを込めて歌った」とのことでした。
菊田氏も、作詞した高橋氏から独自の言語でやりたいと相談された際、「正気か!?」と初めは驚いたのだとか。異国後っぽくするためにオランダ語風に発音するなど、さまざまな工夫がなされ、形になっていったそうです。
菊田氏は「普通の言語なら込められた感情が理解しやすいけど、謎の言語だとそれがわからなくなる。その謎の感情をどうやって曲に乗せていくのかには悩んだ」とコメント。高橋氏は「そんな無理難題にも、超能力のある菊田さんになんとかしてもらいました」と、笑いを誘いました。
なお、歌詞の内容については意味があるものの、あえて謎のままプレイヤーの解釈に委ねられており、カティアの話す言語についてもノーコメントの姿勢でした。
ワナに使われている効果音について質問がおよぶと、ワナを材質や機構に分解して考え、ライブラリ音源や実際の録音から組み合わせていったことを花岡氏が解説。スピードや音量変化による演出も映像に合わせて都度調整していったそうです。使われた音のなかには、掃除機などの家電製品や、歯科医が使うドリルなども使用し、イヤな音を出すことを意識したとのこと。
ゲームの性質上、怖さを引き立てる“イヤな音”を出す必要がありますが、花岡氏には音楽家ゆえのせめぎ合いがあり、高橋氏に「もっと不協和音っぽくしてほしい」とオーダーされることもあったのだとか。
セッションの最後には、テーマソングが主要ストリーミング&ダウンロードサービスにて配信されたことを告知。また、菊田氏によるテーマソングのジャズアレンジが、年末の冬コミにて頒布されることも発表されました。
VRならではの“臨死体験”
続いてのトークセッションでは“死の館”というテーマで、高橋氏とステファニーさんに加え、リードエンバイロメントアーティストの草場美智子氏、リードデザイナーの雨森梓氏とパク・デゴン氏が、謎解きや死のギミックについてのトークを展開しました。
冒頭、雨森氏から作中の謎解きについて、最初のネタ出しを主に考えるのはレベルデザイナーで、そのあと全員で議論しながら進めていったことが解説されました。また、高橋氏から「簡単そうに見えるけど引っかかってしまうもの」というオーダーが出され、苦労したそうです。
パク氏は、おもしろそうな案を実際にVRに実装してみると、思いのほかつまらないことが多く、「VRで見るまでわからない」ことに苦労したとのこと。草場氏は、パズルの仕組みだけが決まっている状態で部屋のデザインを進めることが多く、イメージをつかむことに苦心したそうです。
作中では謎解きに失敗すると、プレイヤーとカティアが“ひどい目”に合ってしまいます。そこで、そんなワナを考えたスタッフは誰なのかという質問が投げかけられると、手を挙げたのは雨森氏。全員でアイデア出しをするなかで、一番率先して考えていたのだとか。雨森氏はあくまでもカティアをひどい目に合わせる目的でなく、「VRでしかできない臨死体験をしたかった」と熱弁。ギロチンのワナがお気に入りらしく、当初切り離された首が胴体を見上げるという案があったものの、高橋氏がレーティングや酔い防止などの観点から実装は見送られたというエピソードも披露されました。
また「高橋さんはホラーではないって言っていますけど、ホラーですよね?」という質問に対しては、「ホラーでもいいかなと思っていますが、ホラーじゃないです」と回答。企画の初期段階では脱出ゲームがベースで、カティアが七つ道具的なものを持ち、協力して脱出していく、といった展開を考えていたとのこと。そこから死の要素を含めた現在の仕様に変遷してきた経緯を踏まえ、ホラーとは少し違ったテイストになっていることを説明。しかしステファニーさんが「ちょっとホラーだと思う」とコメントすると、高橋氏は「じゃあホラーです」と冗談っぽく返す一幕も。
ホラーが苦手な草場氏も『Last Labyrinth』はプレイできるようで、ステファニーさんも「ホラーが苦手な人向けのホラーかも?」とまとめました。ちなみに開発現場を訪れたステファニーさんは、死に方について楽しそうに話している高橋さんたちの姿にとても驚いたとか。
「印象に残る死に方」を問われたステファニーさんは、「蛇が出てくる部屋は少し笑えるのでお気に入りかもしれない」と回答。終盤のイヤな死に方についても印象に残っているそうですが、ネタバレを避けるため明言はされませんでした。
また、パク氏は「恋人の部屋はカティアがずっと目の前にいるのでイチオシ」とコメント。雨森氏はギロチンのほかに、プレイヤーに突き刺さる刃物について再び熱弁。刺さる角度や深さなど、さまざまな工夫を凝らしたそうです。草場氏もギロチンが印象に残っていると回答。また、虫が登場する部屋も挙げ、「VRならではのゾッとする感じがある」と話しました。
最後に、本作の見どころについて質問されると、パク氏はロープの部屋を挙げ、デバックを3人がかりで2週間以上行い、調整に苦労したエピソードを明かしました。雨森氏はカティアのかわいい仕草について注目してほしいと回答。さまざまなバリエーションでボイスの収録がされているため、魅力を味わってほしいと語りました。草場氏は、「部屋にある床のシミなど、バックボーンが感じられる仕上がりになっているため、隅々まで見てほしい」と答えました。
キャラクターのVRならではの“存在感”
最後のトークセッションは“カティアという存在”をテーマに、キャラクターアーティストの田中達麻氏、キミア・タバリ氏、リードキャラクターアニメーターの福山敦子氏、アニメーター兼テクニカルアーティストのアレクシス・ジャスミン・ブロードヘッド氏を加え、キャラクターのモデルやアニメーションについてトークを展開しました。
カティアのデザインについては社内のコンペで案を出したのち、田中氏が3Dモデルで作ったとのこと。VRでの存在感を大事にした結果、2Dでラフデザインを描かずに制作したそうです。VRでモデルを見た高橋氏は、ピンクの靴を履かせる提案をしましたが、“緑の頭髪にピンクの靴”という組み合わせが開発チームのなかで大不評だったそうで、田中氏がリボンを加えていったことで、今までにないデザインに昇華していったのだとか。
ちなみに、初期案の“ちょっと芋っぽいカティア”の話題が上がり、福山氏は初期案もお気に入りだと語りました。
続いてファントムのデザインに関して、タバリ氏が解説。「ファントムが怖い」という感想に対して、ホラー的なキャラクターデザインを目指したわけではないと答えました。どちらかといえば“謎な人物”を意識してデザインしたと説明。VR用にデザインしたのは初で、暗い館の雰囲気と合うように何度もVR上で確認しながら調整を繰り返した苦労を明かしました。
そんなカティアの声を演じたステファニーさんは、「独自の言語で話すのは難しい」とは言いつつも、高橋氏いわく、かなり早い段階で声を入れられていたとのこと。「慣れれば自然に話せるようになる」と話すステファニーさんには驚いた様子でした。ステファニーさんは普通のセリフよりも、ひどい目にあう際の演技でカティアが本当にかわいそうだと思い、大変だったそう。
「カティアのかわいさを表現するために工夫したことはなんですか?」という質問に対しては、福山氏が「自分の好みで作っています」と回答。ステファニーさんも収録の半年の間でかわいくなったと感じていたようで、その理由については、「仕草のなかで、カティアの手が“パー”から“グー”になったことかも」と、福山氏とブロードヘッド氏は答えました。
また、ボイスなしで制作していたため、実際にボイスが入った際、福山氏は「カティアが思ったよりもしゃべる」と驚いたのだとか。しかし、ステファニーさんがカティアに魂を吹き込むうちに、だんだんとカティアが話さない部分がさみしく感じられ、当初の予定よりもボイス量が増えていったというエピソードも。
「カティアが死ぬときのアニメーションを作っていて辛くありませんでしたか?」という質問には、先ほどのセッションのスタッフを引き合いに出し、福山氏は「かたわらから見たらサイコパス集団ですよ」と、会場の笑いを誘いました。アニメーションを作りながら「カティアをこんな目にあわせるなんてひどい!」と思いながら作ったのだとか。ブロードヘッド氏も「体の大きなファントムが小さい体のカティアに対してひどいことをするのは複雑な思い」としながらも、プレイヤーに恐怖を与えるために苦労したと語りました。
また、ファントムの動きについてはわざと不器用に描いていることも明かされました。詳しくはネタバレになってしまいますが、“自分の体をうまく使いこなせていない感じ”を意図しているそうです。
最後に見逃せないポイントを問われると、ブロードヘッド氏はカティアとプレイヤーが“どうぶつしょうぎ”で対戦しているシーンを挙げ、そのときに隣にいるファントムの指先の動きや若干の仕草にまでこだわっているので注目してほしいと回答。
福山氏は後半の部屋の、ソファーでのんびりしているカティアの様子を見て休んでほしいとコメントしました。タバリ氏も“どうぶつしょうぎ”のシーンなどで、キャラクターのモデルをじっくり見てほしいと語りました。
田中氏は「『ICO』の大ファンなので、これだと思った」と、『ICO』のアニメーションを手掛けた福山氏が担当した、カティアの首を振るモーションを例に挙げました。
ステファニーさんは、ファントムの存在感に触れ、「近づいてくるファントムが一番怖かった」とコメント。また「そのあとカティアと2人きりになると安心する」と、カティアのやさしさについても語りました。
イベントの終わりには高橋氏が「『Last Labyrinth』はVRのゲームですので、実際に遊んでいただかないと伝わらない部分もあると思います。まだまだ始まったばかりのゲームですので、ぜひ周りの皆さまに広めていただけると幸いです」と、感謝とともにしめくくりました。
イベント後のインタビュー
イベント終了後の高橋氏、菊田氏、ステファニーさんへの合同インタビューの様子をお届けしていきます。
――イベントを終えられての感想をお聞かせください。
高橋宏典氏(以下、敬称略):ファンの方たちはあたたかいなと思いました。
ステファニーさん(以下、敬称略):皆さん早速プレイしてくださっていて、いろいろな反応を聞くことができました。「カティアと言葉が通じなくても、コミュニケーションができている気がする」という声を聞いたときは、とてもうれしかったですね。
菊田祐樹氏(以下、敬称略):ゲームとプレイヤーの距離感が近く、昔っぽいですよね。今はネットが発達して便利な反面、距離感が離れている気がします。今回のように顔を合わせて会話ができるのはいいなと思いました。
――今日いろいろなお話を聞いて、印象に残ったことはありますか?
高橋:事前に募集した質問なども読んでいて、カティアやファントムに対して、こちらが思っているよりも愛着を持ってもらえていることがわかったので、開発側としてはうれしく感じています。
ステファニー:細かいお話を聞いて、スタッフの皆さんの愛がこもっているなと感じました。
菊田:僕は今回のゲームがどうできあがるのかを考えたときに、もっと血も涙もないような感じに仕上がるのかと思っていましたが、案外そうでもありませんでした。プレイヤーの皆さんの反応を見ていると、血も涙もないような感じにしなくてよかった(笑)。VRは新しいメディアで、プレイヤー世界の距離感を縮めることが難しい。そこで僕が音楽を作ることで、距離感を縮める手助けできたかなと思います。
高橋:菊田さんからは曲をどういう意図で作ったか、ラフの時点でコメントをいただいていて、そこからエンディングに反映したものや、若干ゲーム内容に影響を与えたところはあります。
――話題にもなっている“どうぶつしょうぎ”とのコラボレーションですが、どういった経緯でゲーム中に登場することになったのでしょうか?
高橋:対戦をするという重要なシチュエーションで出てくるもので、元々はオリジナルのゲームも考えていたのですが、“シンプルだが奥深い”ゲームとして、以前から認知していた“どうぶつしょうぎ”は対戦にピッタリでした。
――今後、『Last Labyrinth』の体験会などの予定はありますか?
高橋:年内に1、2回ほど、一般の方に体験していただけるような機会は予定があります。また、Steam以外のプラットフォームでの体験版を順次配信予定です。それから、VR機材を置いている全国各地のTSUKUMOさんで体験することができますので、店員さんにひと言声を掛けていただければと思います。
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