レビュー:『The Cosmic Wheel Sisterhood』はドット絵で描かれた世界観が魅力的。自作のタロットでゲームを進めるのが最高に楽しいアドベンチャー【電撃インディー#484】
- 文
- 柏又
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電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、Deconstructeam開発、Devolver Digital発売のNintendo Switch/PC(Steam、GOG)用アドベンチャーゲーム『The Cosmic Wheel Sisterhood』のレビューをPC版をもとにお届けします。
なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!
自作のカードで未来を占い、運命を切り開くシステムが独特!
本作は占い師の魔女フォルトゥーナとなって物語を進めるアドベンチャーです。彼女が暮らしているのはなんと宇宙空間! この世界の魔女は、人間をはじめとするもとの姿から“昇醒”した存在で、それまで暮らしていた場所から遠く離れた宇宙でコヴンと呼ばれる集団を形成しています。
主人公は所属するコヴンの崩壊を占ったために危険視され、さらに遠くの小惑星へ1000年の流刑に処されますが、孤独のあまり禁断の存在ベヒモスと契約。カードを自作して再び占いを始めるところが物語のスタートです。
ゲームは、エネルギーを消費してカードを作成し、来訪者を占うことで進行します。
絵心がなくてもそれなりのカードが作成可能!
主人公は、流刑にあたり占いに使っていたタロットカードをすべて失ったため、占いを再開するにはそれに代わるカードの作成が必要です。カードは背景となる“スフィア”、メインの絵柄である“アルカナ”、前者2つの構成に魔力を与える“シンボル”の3要素から構成されていて、これらをプレイヤーが自由に配置して作成できます。
配置を終了すると、各要素の配置などからそのカードのキーワードや意味が自動的に判定されてそれっぽいカードが完成します。作成には指定された属性のエネルギーが必要ですが、これは占いをしたりベッドで休息すると入手可能。
実際に作ってみると、絵柄の配置や表示の優先度、素材のグループ指定や拡大縮小までいろいろな操作が簡単にできツール機能がよくできていている印象。適当に配置してもそれっぽい感じの意味合いのカードができてしまうのも興味深いですね。
カードの“引き”だけではなく“解釈”で占うところがポイント
物語の進行に重要な占いは、占う事柄に対して“カードを引いて配置”して“カードの意味を読み取る”ことで行われます。つまり、カードの“引き”の運だけではなく、“配置”と絵柄の“解釈”によって、結果をプレイヤーの意図する方向へある程度引き寄せることが可能というわけです。
突き詰めてしまうと従来のアドベンチャーに、ある会話選択式の一種ともとれてしまうシステムではあるですが、そこに自作のカードを使うという要素があることで“運命を自分の手で切りひらいていく”という占いの魔女らしいカタルシスが得られるあたりが本作最大の魅力だと筆者は感じます。
占いを通して来訪者とかわす会話が楽しい!
占いを再開させたことと前後して、主人公は処遇が改善されて来訪者を迎え入れることが許可されることに。彼女のもとには親友のダリアやジャスミンをはじめとする魔女たちがやってきます。
ゲーム中盤は彼女たちとカード占いをまじえて会話を楽しむことで進んでいきます。会話の内容は占いの結果によって変化することもあるので、同じ相手でも同じ会話になるとは限りません。
じつは“昇醒”してしまえばもとの種族や性別とは関係なく魔女になれる、などゲーム中の世界観は来訪者との会話で少しずつうかがい知れる構成になっていてプレイヤーの知識欲をいい感じにくすぐってくれますね。占いの結果で会話が変化することもあり、2度目は主人公の振る舞いを変えて相手の反応を楽しむリプレイ要素もしっかりとあります。
本作はスペインの開発会社の手によるものですが日本語訳は読んでいて違和感がなく、会話をバッチリ楽しめると思います。
最後までプレイヤーを飽きさせない展開に注目!
待遇は改善されたものの、依然として流刑の身である彼女ですがゲーム終盤では所属するコヴンの長を決める選挙戦に出馬することに。住んでいる小惑星から離れられない主人公は、姉のパトリスの協力を得て選挙活動を行います。
選挙戦では、パトリスに指示を出して特定の支持層の票を切り崩したり、影響力のある人物を迎え入れて支持を訴えたりできます。本作は基本的にアドベンチャーゲームですが、有限の期間内で選挙シミュレーションゲームのような展開になるのはなかなかに楽しいですね。
また選挙戦では、親友のダリアとジャスミンとも争うことになってしまうのもポイント。親友相手にどこまで非情に戦うのか、そのジレンマのこの展開もおもしろさだと感じました。
変わった世界観のゲームを求めている人にオススメ!
ここまで紹介してきた『The Cosmic Wheel Sisterhood』。魔女+宇宙という一見ミスマッチな要素をまさに魔女の鍋で煮込んだようなカオスな世界観のもとで、多様な性格や出自をもつ魔女たちとの会話を楽しむという先の読めないアドベンチャーゲームに仕上がっています。筆者の初回のプレイ時間は6時間ほどでしたが、休まずに一気にラストまで進めてしまったほど夢中になれる内容でした。
カードの作成要素は、絵心のないプレイヤーでも簡単にオリジナリティのある絵柄を作り出すことができます。さらに作製したものを実際に使ってゲームが進めていくシステムは、手軽にクラフトゲームのだいご味を感じられる素晴らしい内容だと筆者は感じました。
従来の作品の型にはまらない変わった世界観のゲームを求めている人や、アドベンチャーゲームでもとくにバリエーション豊かな会話を楽しみたい人にオススメしたいですね。
本作の対応機種はSwitch/PC(Steam、GOG)ですが、Steam版では無料のデモも用意されているのでそちらからチェックしてみるのもありだと思います。
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