電撃オンライン

『頭文字D』の激アツバトルにアドレナリンどっぱどぱ! 『MFゴースト』開始前におさらいしない奴はアウト・オブ・眼中【サブスクアニメ道】

タダツグ
公開日時

 令和も5年目へと突入した現在、さまざまなサブスクリプション動画サービスにより、最新のアニメから往年のアニメまで多くの作品が定額制で見放題になっています。

 しかし、なかにはあまりに数が多すぎて「どれを見たらいいのかわからんッ!」とお嘆きの方もおられるのではないかと。そんな方に“サブスクで視聴できるオススメアニメ”をレコメンドするというのが、この“サブスクアニメ道”の企画コンセプトです。

 今回オススメするのは『頭文字D(イニシャルディー)』シリーズ。2023年10月1日を皮切りにTVアニメが放送スタートする期待の新作『MFゴースト』の前日譚であり、車の運転、そしてバトルを通して成長していく走り屋たちの生きざまが描かれる珠玉の人間ドラマです。個人的に大好きな作品なので、いくらか長文になりそうな気もしますが、よろしければ読んでいってくださいませ。

『頭文字D』(First Stage~Final Stage):秋名のハチロクを知ってるか──? 何もかもが挑戦的だった深夜アニメ界の流星

 深夜にしか書けないテキストがある──かどうかはわかりませんが。少なくともこのコラムで『頭文字Ð(イニD)』をピックアップするにあたり、太陽が出ている時間に原稿を書くつもりは毛頭ありませんでした。峠の走り屋たちの時間は“夜”。合わせて、僕も真夜中のテンションで書かなきゃ、彼らの物語の魅力なんて伝えられるわけないんですよ。イニシャァールD!(アイキャッチも大好き)

 ということで、この『イニD』。原作はしげの秀一氏による走り屋をテーマにしたコミック作品で、アニメは第1作目(便宜上“First Stage”と呼称)が1998年に深夜枠で放送されました。当時はまだ深夜アニメ黎明期の時代でしたが、若者を中心に高い人気を獲得。のちに“Second Stage(1999年)”、“ Third Stage(劇場版/2001年)”、“Fourth Stage(2004年)”、“Fifth Stage(2012年)”、“Final Stage(2014年)”とシリーズは続いていき、原作の物語をしっかりラストまで描き切っています。

  • ▲こちらは原作1巻の書影。コミックスは全48巻ですが、今から購入する人には全24巻構成の新装版がオススメかも。

 “ Fourth Stage”から“Final Stage”までは地上波ではなく、CS放送チャンネルのアニマックスがPPV(ペイパービュー)、およびVODサービスで提供していたのも印象的。きっと、アニマックス社内に熱狂的な『イニD』ファンが居るのだとにらんでます。朝まで酒を酌み交わしたい。

 物語は、端的に言ってしまえば車を運転するドライバーたちの熱いドッグファイトが描かれるドライブバトルストーリー。コースを走るレースものではなく、あくまで“公道最速”を競う特殊性が目を引きました。まあ、現実世界では色々とアレな設定ではあるのですが、マンガやアニメはあくまで架空の物語ですから(笑)。

 主人公は、高校3年生の藤原拓海(CV:三木眞一郎)。普段こそぼーっとしているものの、いざ車を運転させると別人のように冴えた表情を見せる彼は超天才肌で、最初から作中トップクラスのテクニシャンであったことも斬新でしたね。

 拓海は中学時代から家業のとうふ屋の配達を手伝うため、ずっと車を運転していたという設定があるんですけど。これまた架空の創作作品だからこそ許される系の設定ですが、よくもこのアイデアを思いついて、さらには企画を通したものだと感心します(編集さんもさぞ優秀な方だったのでしょう)。

 高校生にして数年ものあいだ毎日運転してきたというキャリアを持ち、さらにはかつて伝説の走り屋だった父親による英才教育を受けていて、実際かなりのチート主人公でした。そんな彼が、強敵たちとのバトルを乗り越えることでさらに加速度的に成長していくのが最高なんですよね。

 アニメ放送当時、車を運転していた『イニD』好きなら1度はやったんじゃないかな。ドリンクホルダーにコップを置いて、水をこぼさないようにして走るやつ!(もちろんすぐにこぼれる……笑)

 拓海の愛機が、劇中ですでに型遅れ車種であるスプリンタートレノAE86(通称ハチロク)であったことも、人気のポイントでした。戦闘力の劣る車をドライバー自身のテクニックで限界性能まで引き出し、強敵たちを次々とブチ抜いていく……これ以上なく「俺TUEEEEEEEE」を味わえる極上展開に胸が躍らないわけがない。

 バトルを観に来ているギャラリーたちが「すんげえ~! あのハチロク、ツッコミ重視のとんでもないカミカゼ走法だ!」みたいな、センスバツグンの煽りを入れてくれるのも大好きです(笑)。この手の煽りによって、拓海の凄さがさらに引き立つわけですよ。

  • ▲原作3巻の書影で確認できるハチロクの雄姿。白と黒のツートンカラーからなる“パンダトレノ”に、当時憧れた方もいるのでは。

 ”峠の最速マシーンがとうふ屋のハチロク”という設定はじつにキャッチーで、文字で見ただけでインパクトがあると思いませんか? 主人公が高校生の天才ドライバーという点もしかり。しげの氏の、おもしろさ重視なフロンティアスピリッツには敬意しかない(笑)。

 僕自身、原作を紙、電子書籍の両方を揃えるくらい好きなこの『イニD』。じつはアニメ版はある意味、原作を超えるレベルで好きだったりします。実力派声優陣によって命を吹き込まれたキャラクター。当時はまだまだ斬新だった3DCGでさまざまな名車を再現し、セル画描写と融合させた挑戦的なビジュアル。そして、バトルを彩る珠玉のユーロビートサウンド……。今になってあらためて観ても、最高にカッコいいアニメです。

 ユーロビートにいたっては、むしろ今テキストを書きながらオリジナルサウンドトラックをかけているほど大好き。マジでアドレナリンどっぱどぱです。サウンドに関してはエイベックスが全力で取り組んでいて、オープニング、エンディングテーマの殆どをm.o.v.eが手掛けていたのも最の高。

 “Gamble Rumble(Third Stageの主題歌)”なんかはかなりの人気を誇りましたし、極端な話『イニD』を知らない人でもどこかで耳にしたことくらいはあると思います。“Outsoar The Rainbow(Final Stageの主題歌)”は、今でもずっとヘビロテしてしまうくらい大好きな曲ですね。もっと自由に飛びたくなっちゃう、マジでインフィニティな名曲!

 正直、僕が音楽に造詣が深ければ『イニD』のユーロビートサウンドが日本の音楽史に与えた影響なんかもしたためていきたいところなんですけど。残念ながらそっち方面には明るくないので、代わりに誰か書いてくれないかなあ。マニアックかもしれないけど、僕が読みたい……。

  • ▲つい先日発売されたばかりの廉価版Blu-ray BOX。イチファンとして、思わず買ってしまいそうになっている自分がいます……(笑)。

アイツとのバトルが忘れられない……個人的名ドッグファイト3選

 ちょっと駄文が長くなってしまいましたが(ぶっちゃけ僕は延々と書いてられますけど)、ここからはファン向けの企画として。僕が好きなバトルを3つほど書かせていただき、このコラムを締めようと思います。まだアニメをご覧になっていない方は、ぜひサブスク視聴してから読んでみてほしいところ。

 なお、わかる人にはわかると思いますが、とても3つになんて絞れないんですよ、本来は。イカしたドッグファイトがあまりに多すぎるのでね。ということで、ここはすべての始まりである“First Stage”に限定してお送りしようと思います。

“First Stage”で好きなバトル その1:vs.高橋啓介(RX-7 FD3S)

 第4話~5話で描かれる、記念すべき拓海のファーストバトルです。最初に戦った高橋啓介(CV:関智一)が、のちに最強のライバルであり最高の相棒になるという“プロジェクトD”編の展開もめちゃくちゃエモかった記憶。そこまでにらんだうえで外せないバトルといえるでしょう。ちなみに兄である高橋涼介(CV:子安武人)も含め、ファンの間では髙橋兄弟の人気は絶大。彼らの存在あってこその『イニD』人気だとも思っているのですが、これはもう仕方ないんだよなあ。本当にイケメンなので。顔もそうだけど、人間として。

 なお、このバトルの中盤付近でかかる“RUNNING IN THE 90'S”が、イントロからして耳に残るこれぞユーロビートなサウンドで僕は大好き。今聴いてもかっちょええとか、本当にどうなってるの? 

“First Stage”で好きなバトル その2:vs.庄司慎吾(シビック SIR-II EG6)

 第14話~15話で描かれるバトル。ガムテープで右腕をステアリングに固定して走るという『イニD』のなかでも絶対に真似してはいけないヤツ筆頭ともいえる“ガムテープ・デスマッチ”が印象的でした。バトル相手である庄司慎吾(CV:藤原啓治)は、登場時点ではクッソむかつくデンジャラスキャラでしたが、拓海とのバトルを機に改心。チームメンバーの中里とともに、仲良く(?)拓海のバトルをギャラリーする姿に萌えるってファンも一定数はいるんじゃないでしょうか。

 このガムテープ・デスマッチにものすごい速さで対応していく拓海は、慎吾も真っ青の相当なクレイジーっぷり。主人公補正があるにしても、こいつはマジでやべーヤツだってわからせてくれるバトルでもありました。

 かなり序盤で「そうか、このバトルのコツがつかめたぞ!!」って指でステアリングをスターンってたたく覚醒描写があり、観ているこちらもテンションが上がります。そこまでしばらく静かなBGMが流れていたのに、拓海の覚醒にシンクロするように“DON'T STAND SO CLOSE”が流れるのが鳥肌なんですわ……。

“First Stage”で好きなバトル その3:vs.中里毅(スカイラインGT-R“R32型”)

 個人的に原作の表現をアニメが超えたと思ってしまったのが、第8話~第10話で描かれる中里毅(CV:檜山修之)とのバトルです。終盤まで、中里のイン側を抜かせないブロックによって後塵を拝してきた拓海のハチロクが、複数回のゆさぶりで中里の意識をアウト側に向けさせ、その一瞬のスキを見逃さずにインを突くシーンがもう最ッ高に好きなんですよね。

 原作でもカッコいいシーンなのですが。ハチロクのヘッドライトの光の動きで拓海がアウト→インへとラインを変えるシーンが描写されるアニメ版は、本当に演出が素晴らしい。「ハチロクが……消えた!?」という中里のセリフが最高に気持ちいいこのオーバーテイクシーンに、名曲“HEART BEAT”まで重ねてくるとか……音効さん、あなたが神か? イントロが最高に盛り上がる瞬間にハチロクがGT-Rに並び立つあたり、マジでシンクロスコアレベルの演出なんですよ。スタッフは絶対にわかったうえで狙ってますね。

 当時、マジでここのシーンだけVHSのテープが擦り切れるくらい見直しまくりでした。アニメでしかできない演出にやられたわけです。数あるバトルのなかでもトップレベルで好き! サブスク視聴なら、画質の劣化を気にせずに観られるのがうれしいです。マジで今、現在進行形で何度も観直している(笑)。

 ……ぶっちゃけまだまだ書き足りないというか、好きなユーロビートランキングや個人的に紹介したい名ゼリフ集など、『頭文字D』だけでいくらでも企画の引き出しはあるんですけど。記事見出しにも使わせてもらいましたが、「アドレナリンどっぱどぱ!」や「アウト・オブ・眼中!」など、しげの氏のセリフ回しって本当に独特かつ、センスの塊なんですよね。ついつい真似したくなっちゃうんだ……。

 ひとまず、この記事自体はだいぶ長くなってしまったうえ、太陽も顔を見せてしまったので、今回はここまでですかね。

  • ▲今回のチョイスは“First Stage”に限定しましたが、U-NEXTであれば全Stageを視聴できますよ(※2023年9月現在)。

 前述のとおり、今年の秋アニメにラインナップされている個人的にも期待の一作『MFゴースト』は、本作と世界観を共有するいわば後継作。『イニD』を知らなくても楽しめる構造になっているとは思いつつ、知っていればより深く物語に感情移入できるのはもまた間違いないところと思います。10月の『MFゴースト』をご覧になるという方は、事前に『イニD』を予習しておくことを強くオススメしたいです。

 それでは、本日はこのへんで!

© しげの秀一/講談社・エイベックス・ピクチャーズ・オ―ビー企画
※記事内で紹介している配信情報は掲載時のものとなります。

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら