『魔法少女まどか☆マギカ scene0』シナリオ・下倉バイオ氏インタビュー。愛生まばゆの性格は? まどかやほむらとの関係は?【電撃秋アニメ×ゲーム:マギレコ】
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アニプレックスの手がけるiOS/Android向けアプリ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(以下、マギレコ)』。
本作の6周年を記念するトークイベント“Magia Day 2023”にて、注目の新プロジェクト『魔法少女まどか☆マギカ scene0』の情報が公開され、イベント実装も近づいてきました。
今回は、『魔法少女まどか☆マギカ scene0』のシナリオを担当しているニトロプラスの下倉バイオ氏のインタビューをお届けします。
下倉氏と『魔法少女まどか☆マギカ 』との出会いや、キーキャラクターとなる愛生(あき)まばゆのお話など、たっぷりとうかがいました。
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『魔法少女まどか☆マギカ』との出会いは、異例の制作発表前!
――まず、下倉さんと『魔法少女まどか☆マギカ』の出会いを教えてください。
PCゲーム『スマガ』(成人向け・2008年発売)を作っていたときに、『魔法少女まどか☆マギカ』の脚本を担当している虚淵玄もデバッガーとして参加していました。
そこで「今度やるアニメ企画で、内容に似たようなところがあるのだけれど大丈夫だろうか?」と相談され、監督もスタッフも知らないまま、どんな風になるのか大枠を聞いたのが最初です。
『スマガ』にはいわゆる魔法少女モノの要素がありましたし、魔女と呼ばれる存在がモンスターになるギミックがあったり、ループものの要素があったりと、いくつか『魔法少女まどか☆マギカ』と類似する部分もあったため、虚淵玄が気をきかせて確認をとりにきてくれた流れですね。
そのときゲームとアニメは全く違うものなので、気にしなくていいと話しました。
――正式な発表前から存在を知らされたという、とても珍しい出会い方ですね。『魔法少女まどか☆マギカ』は、世にいう“魔法少女モノ”と雰囲気が異なり、シリアスな作品になることも最初から聞いていたのでしょうか?
そこまで詳しいシナリオ構成までは聞きませんでしたが、虚淵玄という作家は、いい意味でひねくれたところがあります。PCゲーム『沙耶の唄』(成人向け・2003年発売)でも、女の子をたくさん登場させると言いながら……アレでしたからね。
ファンの想像をどう裏切るか、超えるかを考えている人物なので、何かやるだろうなとは思っていました(笑)。
――リアルタイムではなかったそうですが、実際に『魔法少女まどか☆マギカ』のテレビアニメを全話鑑賞されていかがでしたか?
自分はテレビアニメを放送終了後にまとめて一気に見るタイプでして。嬉しいことに『スマガ』もご好評いただき、一部のファンの間では『魔法少女まどか☆マギカ』との類似点が指摘されていました。事前に相談されて把握していたものの、そういった部分が実際にどうなっているのかも気にしながらアニメを見ていった部分はあります。
ただ2つの作品を比べると、力点が全く違いましたね。似た題材を扱っても、アニメではこういう展開や面白さが見せられるのかと、オリジナリティに惹かれました。
両作品とも“ループもの”ですが、『スマガ』はゲームの性質をいかして、主人公=ループする人間となっています。それに対して『魔法少女まどか☆マギカ』は、あえてループするのを暁美ほむらにして二人称にしているのが、アニメに合わせた表現で上手いなと思いました。
――ちなみにお気に入りや、特に印象に残っているキャラクターは?
虚淵玄という作家が反映されていると感じた部分では、まどかのお母さんやキュゥべえですね。『まどか』のテーマの1つは大人と子どもの立場の対立だと思っており、まどかのお母さんは大人の立場として虚淵玄の言葉を代弁している部分があると感じました。
キュゥべえはゲームでいうところのルールのようなもので、ここにも虚淵玄の考えが見えて、印象に残りましたね。
メインキャラクターでは、ほむらが印象に残っています。当時、虚淵の作品は物語に比重が置かれ過ぎていて、想像の余地がないためか、ファンアートや二次創作が少なかったんです。「(本編の)この話があるから満足」というある種の固さをほぐすきっかけを作ってくれたのが、ほむらじゃないかな。
「ほむらのこんな表情が見たい」や「こんなことをしていたはず」とファンが思ってくれたことが、続編に繋がった部分もあったと感じています。虚淵玄の作家性的に物語を完結させることがうまく、『魔法少女まどか☆マギカ』という作品もテレビアニメでしっかりと完結していました。
そういう作品に対して続編が展開されていったことにも、正直にいえばとても驚いたのですが、その理由の一端は、ほむらがファンと制作側を上手く橋渡ししてくれたからじゃないかと思っています。
――今でこそニトロプラスはマルチなコンテンツを手掛けるイメージがありますが、当時はアニメに関わること自体が珍しかったですよね。ニトロプラス=尖った美少女ゲームを出すクリエイター集団という印象が強かったです。
珍しかったですね。今でこそニトロプラスの脚本家が自社以外でのゲームやアニメにコラボ的に携わることも増えていますが、私が『STEINS;GATE』シリーズ(1作目は2009年発売)で外部のゲームの構成やシナリオに携わったのもレアなケースでした。虚淵玄が2008年時点でアニメに携わっていたのは、本当にニトロプラス的に特殊な例だったと思います。
かくいう自分も、のちに自分がアニメに関わるとは思っていませんでした。
※下倉バイオ氏は2022年放送のアニメ『東京24区』のストーリー構成・脚本や、2023年放送の『Buddy Daddies』ストーリー原案・シリーズ構成などを担当。
――やはり、『魔法少女まどか☆マギカ』も会社全体でアニメに携わっていく動きのきっかけになったのでしょうか?
当時、虚淵ともそのことを話しました。1つのゲームで複数のライターがシナリオを担当するのも当たり前のなか、ニトロプラスでは1人が1作品全体を受け持つことも多かったんです。そのため全体の構成から絵作りまでイメージして、ディレクターや監督の感覚も持ちながら、ライティングする必要があります。
そういうゲームならではの経験が生きる現場だから、ニトロプラスはアニメもどんどんやるべきだと虚淵は言っていました。
虚淵氏やファンを意識しつつも、作品に新たな光を当てる新プロジェクト
――『マギレコ』の新プロジェクト『魔法少女まどか☆マギカ scene0』に参加されるきっかけにも、アニメ作りが関わっているとうかがいました。
アニメ『東京24区』のストーリー構成・脚本をやらせていただいた縁で、アニプレックスの鳥羽洋典プロデューサーに“ループもの”アニメのアイデアを相談していました。
でもなかなかアニメの形での実現が難しそうなときに、鳥羽さんが「このお話、『魔法少女まどか☆マギカ』なら出来ますよね」と言ってくれたんです。最初は「すごいこと言うな」と思ったんですけど(笑)、でもそれをきっかけに続編や外伝のアイデアとして使えるかもと考えるようになりました。
――最初は、アニメの企画だったんですね。
そうなんです。ただし、すでに多くのファンがいる作品なので、最初からアニメを作るのは怖いとも感じました。
そんななか『マギレコ』の新展開として、ゲームシナリオとして作ってみないかというお話になりました。それなら自分の経験も生かせますし、スタッフの方に協力・監修をいただけることも心強いということで、ゲームの形で表現をしていくことになりました。実際、自分としてもやりやすかったですね。
――アニメは完結したものの、その後も広がり続けている作品だけに、大変なことも多そうです。制作が決まった際に、虚淵氏と改めてお話をされたんですか?
話をして、筋を通しました。ただし虚淵は完成した作品に対しては放任主義の部分があるので、比較的自由にやらせてもらっています。
「こういうシステム出来ませんか。こんなキャラ出したいです。この設定はこう解釈できませんか?」とかなりワガママを言わせてもらって、監修や開発の皆さんは大変だったと思います。アニプレックスさんには多くの部分でサポートをいただきましたし、ゲーム開発のf4samuraiさんにも仕様の追加や演出の相談などについて対応していただき、本当に感謝しています。
――下倉さんのやりやすい環境で、シナリオ制作ができたのですね。
そうですね。ただし自分が表現したいことだけでなく、やらないといけない部分、ファンが見たら嬉しい部分を描くことも強く意識しました。自分が見たいもの、好きな展開だけでは、ファンの想いとズレるので、作品としてよいものになることだけを考えました。
先ほども少し話しましたが、10周年を迎えた『魔法少女まどか☆マギカ』はファンの皆さんに長い間愛されているコンテンツです。そこに自分が参加するのは緊張するし、ドキドキするところもあります。
――虚淵氏は暗めの作品が多いですが、下倉氏は明るい話やハッピーエンドもよく描かれています。おふたりの化学反応もファンとしては楽しみです。
テレビアニメ本編『魔法少女まどか☆マギカ』のエンディングを、どう解釈するかもファンによって分かれますからね(笑)。
オリジナルである虚淵の持つ作品の倫理に、自分の持つ作家性、視点から別の光を当てられないか……。作家性の強いコンテンツに、自分はどんなアンサー、視点を加えられるか意識しています。
ファンの皆さんのことをしっかり念頭におきながら、自分なりのオリジナリティを出せるように精一杯やらせていただきました。あえて描かない方やいいと思う方もいるかもしれませんが、見えなかった部分に新たな鉱脈があるという意識で関わらせてもらっています。
――シナリオはもう完成しているのでしょうか?
はい。意外に早くて、去年(2022年)の年末には全部仕上がっていました。その後、時間をかけて監修していただき、大変助かっています。ゲームに落とし込む部分もf4samuraiさんが丁寧に対応してくれました。
――今回ゲームアプリのシナリオを担当されて、アニメやPCゲームでの経験が活かされたり、逆に違いを感じたことはありますか?
PCゲーム出身だと、どうしても物語の長さの問題にたどり着きます。昔は長ければ長いほどよかったところもあるのですが、今はスマホでプレイするので、シナリオもなるべくコンパクトにした方が良いですよね。純粋に一行の長さも短いので、その点は慣れるまで苦労しました。
――なるほど、表示できるのは会話ウィンドウぐらいですからね。
でも本作に登場するのは中学生の女の子たちなので、難しい長ゼリフなんて言わないんですよね。登場人物の魅力が出るように、頑張って書かせていただきました。
あとは、素材や背景を増やし過ぎないこと。ゲームはリソース管理も大事なので、なんでもかんでもゼロから作るというのは現実的ではありません。これまで『マギレコ』というゲーム内に用意されている素材で、いかにお話を構築するかが大事です。冷蔵庫の材料で、どれだけ美味しい料理を作れるかと似ていますね。
すでに愛されるキャラクターや長年作られてきた背景など、最高の材料がそろっていました。どうすれば効率よく出来るかは今までのスキルが活かせたので、ありがたい環境で書かせてもらえたなと思います。
まばゆは“あるあるネタ”がわかる映画オタク!?
――“Magia Day 2023”を通して、新たなメインキャラクター・愛生(あき)まばゆの情報が少しずつ明らかになってきました。2021年のイベントで公開された最初のPVでは“存在が消された魔法少女”と、かなり特殊な立ち位置だと紹介されています。
PVはシリアス目で、少しカッコよかったですね(笑)。彼女は世界を守る、非業の運命を背負っているということはなく、等身大の親近感の持てる人物です。
ざっくりと説明してしまうと、陰キャな映画オタク。コミュニケーションが苦手で、自宅で映画ばかり見ている、「こんな子いるよね」と思ってもらえる子になっています。
――その設定を聞くと、一気に普通の女の子だなと感じますね。一般的な普通というか、オタク寄りの“普通”ですけど。
そうです。普通の女の子より、もっとオタク寄りです。ゾンビ映画の登場人物たちは、作中で「ゾンビ映画で見た!」なんて言わないですよね。でも、まばゆは“ループもの”の映画もたくさん見ているので、「この展開は……」と気がついてしまいます。そんな、あるあるネタを知っているキャラクターです。
――早見沙織さんがボイスを担当しています。収録に立ち会われたそうですが、印象深いエピソードなどありますか?
収録にはほぼすべて立ち会いましたが、すごくいいお芝居をしていただきました。
どんな作品でもそうだと思うのですが、最初はちゃんとやらなければと思って、かわいい女の子を演じてくださったんです。でも「もっとはじけていいですよ」と話したら、どんどんキャラの地の部分が出てくるような、聞いていても楽しい演技をしてくださいました。
――それは聞くのが楽しみです! 『魔法少女まどか☆マギカ scene0』というタイトルから考えて、やはりアニメ本編の前日譚的なお話になるのでしょうか?
そうですね。アニメはほむらによる二人称でしたが、今回は三人称の立場で物語を追ってもらおうと思っています。そのため、まばゆは主人公というよりも、観察者的なポジションですね。
――まばゆはもちろんですが、鹿目まどかや暁美ほむらたち、見滝原の魔法少女たちも活躍しそうで期待が高まります。
まばゆは見滝原中学の3年生なので、2年生のまどかたちにとっては先輩にあたり、学校での絡みもあります。そこでいろいろな出来事があって、魔法少女の存在に気づいていく物語です。
――最後に、物語を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
愛生まばゆを通して、『魔法少女まどか☆マギカ』がより立体的になるように、工夫を凝らし、さまざまなご協力をいただいてシナリオを作りました。作品の広がりを楽しんでいただけたらなと思います。よろしくお願いします。
――ありがとうございました。
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