『モンハンNow』開発者インタビュー。郊外でも遊びやすく、マルチプレイに力を入れたシンプルなスマホゲーに!【モンスターハンターNow】

電撃オンライン
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 Nianticとカプコンによる新作スマートフォン用位置情報ゲーム『モンスターハンターNow(モンハンNow/モンハンナウ)』。

 本作の開発の経緯や、魅力などをNianticの大隅栄プロデューサーと菅野千尋ディレクターを中心に、カプコンの砂野元気プロデューサーも交えてお話を伺いました。

大隅栄氏:チームのマネジメントや外部へのアサイン、今後の展開のプランニングなどを担う。
菅野千尋氏:運営に必要なサービスを含めた、ゲーム開発の全体の取りまとめ役。

現実世界で遊ぶ『モンハン』とはなにか?

──『モンスターハンター(モンハン)』を位置情報ゲームに落とし込もうと思った開発経緯をお聞かせください

大隅栄氏(以下、敬称略):さかのぼると私がまだNianticに入る前の2018年、河合(河合敬一氏)と「一緒になにかやりたいですね」と漠然とした話をしていたのがきっかけですね。

 その後企画を進めていくなかで、河合と私がお互いに『モンハン』が好きだったこともあり、今の『モンハンNow』につながるプロジェクトをカプコンさんに提案したのが2019年。そこからカプコンさんと協力して開発に取り掛かりました。

──カプコンと協力して開発を進めていくなかでの、意見の食い違いなどの苦労話があれば聞かせてください。

大隅:食い違ってもめるようなことはほとんどありませんでした。むしろ、お互いにこうしたらいいんじゃないかという提案を出し合って、そこから絞り込んでいく建設的なやり取りの方が多かったですね。

 そんななかで、現実世界での『モンハン』とはどういう体験なのかという定義を詰めていくのには苦労しました。

 現実世界でモンスターと出会って、狩って仲間と喜びをわかちあうことを楽しめたらおもしろいという大前提はありつつ、外で遊ぶときにどういう体験がストレスになるかや、楽しさよりもストレスが勝らないようにするにはどうすればいいかなど何度も議論を重ねました。

 また、『モンハンNow』の情報をアウトプットしていくにあたり、『ポケモンGO』の『モンハン』版として『ポケモンGO』とひとくくりに見られるようなものにはしたくありませんでした。

 そのため、逆にどういった形にすると“モンハンGO”になってしまうのかと自問自答することもありました。

菅野千尋氏(以下、敬称略):地図などの現実世界の情報をどう取り込むか試行錯誤しましたね。4年間開発を進めるなか、作って壊したもの、作ってあきらめたものはほかにもかなりの数あります。

 『モンハンNow』は、現実の地図を使った『モンハン』としてユーザーのみなさんが想像するものに近いと思います。

 ただ、当初から着地点を決めていたわけではなく、今の『モンハンNow』のプロトタイプのようなものも作りましたし、まるで違うものも試しました。そういった行ったり来たりを繰り返して、最終的にユーザーさんに体験してほしいものを積み上げていったら、今のような形になったんです。

大隅:日常生活のなかで手に取ってもらいやすい形になったという実感を得るまでに時間がかかりましたね。

──狩猟時間は75秒と、コンシューマ機の『モンハン』シリーズや以前に配信されていた『モンスターハンター エクスプロア』と比べるとかなりコンパクトになっています。あらためてこの制限時間を75秒にした理由を聞かせてください。

菅野:外で遊ぶゲームであることや『モンハン』らしさを感じてもらうこと、そしてスマホで遊ぶうえでの最適解を考えるうえで、プレイ時間は非常に重要な要素でした。

 ハンターのみなさんは、必ずしも屋内で座って遊べるわけではありません。公園で遊ぶこともあれば、駅で電車を待っている間に一狩りということもあるでしょう。そういったさまざまなケースを考えて、我々も実際に外に出てプレイを重ねました。

 そして、最終的に行きついたのはやはり体力との勝負ですね。ゲームが楽しかったという体験が、炎天下の気温に耐えたという体験に上書きされてはいけません。

 また太陽光の下ではデバイスが熱くなりますので、その点でもあまり制限時間を長く設けてはよくないなと5分程度から始めて3分、2分としだいに制限時間を短くしていきました。

大隅:2分辺りまではスムーズに制限時間を詰めていったのですが、そこからは『モンハン』らしい体験を提供できるかを考えて慎重に制限時間を見定めていきましたね。ただ、外で遊んでいると2分が意外と長かったんですよ。

 これは、真夏や真冬に実際に歩かないとわからないところですね。私自身も実験台になりつつそういった数々の人体実験の末、制限時間は75秒になりました(笑)。

──狩猟時間を減らしていくことに抵抗感などはありましたか?

菅野:当初からまったくなかったと言えばウソになります。ですがコンシューマなどの『モンハン』では、ベースキャンプからクエストを開始して、ターゲットの元まで移動して狩猟を行いますよね。さらに言えばモンスターが逃げ出したり、ハンターが体制を立て直すために移動したりして、といった移動時間も含めて数十分で体験するものになっています。

 これを『モンハンNow』に置き換えた場合、モンスターの元に行くという過程に制限時間外でハンターのみなさんが時間を使っていることになりますよね。あえて言えば家を一歩出た瞬間からクエストが始まっており、片手剣を振ったりハンマーを振り下ろしたりしているのは、そのなかでのハイライトの一部。

 そこに気が付いてからは、無理に長い制限時間を設けなくても濃密な狩猟体験を提供できればよいという考えにシフトしていきました。

公園やモールにモンスターがわきやすくすることで、郊外でもマルチプレイを遊びやすく

──リリース時の登場モンスターを見ると『モンスターハンター:ワールド(MHW)』がベースになっているようですが、ほかの作品のモンスターの登場予定はありますか?

砂野元気氏(以下、敬称略):『モンハンNow』は全体の接続となるタイトルであり、運営が続くなかで一番シリーズのモンスターと出会えるタイトルになってほしいと考えています。

 リリース時の13体のモンスターから『MHW』が中心に見えるのは自然でしょう。ですが、アップデートと重ねてモンスターが増えていくなかで、しだいに特定のタイトルのモンスターに偏っているという印象は消えていくと思います。

大隅:極論を言えば『モンハン』シリーズすべてのモンスターが、実装予定のモンスターです。そのなかから、属性やゲームバランスも含めて、どのモンスターが出てくるかという驚きや喜びを提供できるように、実装順を検討しています。

 四半期に一度、大きなアップデートを予定しているので期待していただければと思います。

 あと、『MHW』が中心に見えるのは、プロジェクト自体が4年前から始まったというのも理由にありますね。もう少し開発の始まりが遅ければ、リリース時に『モンスターハンター ライズ サンブレイク』初出のモンスターが登場していたかもしれません。

──位置情報を用いたゲームではしばしば都会の方がプレイを進めるのに有利という声を聞きますが、本作では地方のユーザーに向けての施策などはありますか?

菅野:『ポケモンGO』などのこれまでの位置ゲーでは、ウェイスポットというランドマークを“ポケストップ”などのゲーム内でキーになる場所として設定しています。

 『モンハンNow』も同様ですが、さらに一定以上の大きさの公園やショッピングモールのような商業施設にモンスターが出現しやすくなっています。また、こういった場所では、モンスターが一度狩猟されてから再出現する感覚が短いのも特徴です。

──ショッピングモールにモンスターが出現しやすいなら、いつもの外出のついでに『モンハンNow』という遊び方もしやすそうですね。

菅野:郊外でも、人が住んでいる場所には公園や大きなモールがあることが多く、日常で散歩する場所にしている人も多数います。

 そもそもの人口の差から地域によって遊びやすさに差が出るのは、正直なところ仕方のない部分はありますが、地方や郊外にいる人も遊びやすいように注意しています。

大隅:ちなみに、マッチングを行える距離は100mから200m程度なので同じ公園内でマッチングしたとしても、誰とマッチングしているかはわかりませんので気軽に遊んでもらえれば。

──特定の地域であるモンスターが出やすくなるなどのイベントは用意されてますか?

菅野:地域の特色を出したイベントも予定しています。普段出てこないモンスターが特定の場所に出現するというようなものを行っていきたいですね。

 例えば鳥取砂丘でディアブロスを狩猟できたら、ちょっとテンションが上がりますよね。ほかにも海沿いの地域で水棲のモンスターが出現したらなどいろいろと考えています。

砂野:少し補足になりますが、1日ごとに生態系エリアが切り替わるので、地域性にかかわらずいろいろなモンスターを狩猟できるようになっています。
 
 そんななかである特定の地域でなにかが起きるというような施策はバランスを考えながらやっていきたいですね。そのほか、昼夜や天気などいろいろな現実の要素をゲームに取り込めるリアルワールドならではの『モンハン』にしていきたいですね。

──ラオシャンロンやラヴィエンテなど超大型のモンスターについてなにかお聞きできることはありますか?

大隅:まだ具体的なことはお話できませんが、これまでのすべてのモンスターは出したいというのはカプコンさんとの共通認識です。

 ただ、超大型モンスターに限らず、どんなモンスターも登場させるなら、その特徴も同時に組み込みたいと考えています。

 例えばですが、イビルジョーが登場するなら地図上でイビルジョーの元に向かうだけでなく、なんらかの形で乱入してきた方がより“らしさ”が出ますよね。

 これはカプコンさんの認識でもありますし、我々としても『モンハン』ファンですから遊んでガッカリするようなものにはしたくない。そういった特徴を大事にしていきたいんですよ。

砂野:続けて例えばの話になるのですが、『モンハンNow』にはAR機能があるのでラオシャンロンを実際のサイズ感で現実の光景に投影できたらテンションが上がりますよね。というような話をナイアンテックさんとしたこともあります(笑)。

大隅:サイズ感と言えば、ARという機能がありますので、今遊んでいるハンターさんには、現在実装されているモンスターのスケール感も確認してみてほしいですね。

 ARで見て見ると、クルルヤックでさえ思った以上の大きさにきっと驚いてもらえると思います。

──最後にユーザーのみなさんにメッセージをお願いします。

砂野:本作は『モンハン』のいろいろな要素に今後触れられる可能性があるタイトル。これまでのファンが触れば思っている以上に『モンハン』だなと思ってもらえるはずです。

 また『モンハン』ファンに触ってほしいのはもちろんですが、スマホで遊べるようにシンプルにシンプルに落とし込まれており、初めての『モンハン』としても遊びやすくなっています。

 ぜひ、これまで『モンハン』を知らなかった人にも手に取ってもらいたいですね。

菅野:本作はマルチプレイに非常に力を入れています。ハンターのみなさんのなかには知らない人とリアルで遊ぶのは怖かったり、恥ずかしいと感じる人もいると思いますが、狩りのお誘いが来ると“一狩りいこうぜ”というアイコンが表示されて、それをタップすると即座に狩りへ。狩りが終わるとすぐに元の画面に戻ってくるという気軽なつながりでマルチプレイを楽しめます。

 ソロハンターのみなさんもぜひ、パーティを組んで狩りをしていただきたいですね。

大隅:みなさんの持っているスマホで手軽に誰でも楽しめるように作っています。我々が目指してるもっとも大きなところは、リアルワールドで狩りをすること。

 家族、友人、同僚など一緒に遊んでハイタッチといった体験をしていただければと思います。

 なにかしら毎月、毎四半期、新しいものを提供できるように継続していくので、まずは遊んでみてください。


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