馬にまつわる逸話にはいつも張飛の影…。馬へのこだわりが伝承を残させる!?【三国志 英傑群像出張版#22-2】
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三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。
英傑群像出張版では、わたしが中国各地で集めた三国志武将の民間伝承の古書から、日本で知られていないものを厳選して文章をまとめて紹介しています。
今回は「水にまつわる蜀の武将たち」の民間伝承を集めて紹介しています。その2週目です。
夜馬池(やばいけ)の2つの伝承
梓潼(しとう)県臥龍山(がりょうさん)には清らかな泉が湧き出る池があり、人々はこれを“孔明泉”や“夜馬池(やばいけ)”と呼ばれている。
諸葛孔明が軍を率いて祁山へ出るとき、梓潼の南西の山尾根を通った。日が暮れヒョウやオオカミが吠え、兵を少し怖がらせたため、諸葛亮は山で兵士を休ませた。
彼らは一昼夜歩き続け、疲れきって喉が渇いていたが水がない。諸葛亮は剣を抜いて空を差して言った。「神よ!蜀を滅ぼしたいのなら、私をここに閉じ込めてください。しかし国を助けてくださるなら出口を与えてください!」
そう言って山腹を剣で刺すと、たちまち山腹に清らかな水が溢れ出した。諸葛亮らはその夜ここに滞在し、馬や兵士のために清らかな泉の水を飲んだ。
この地の人々は諸葛亮を追悼するために、“諸葛廟”を建て孔明の像を祀った。
この山は“臥龍山”と呼ばれ、諸葛亮が剣で切り出したこの泉は夜に水を兵馬が飲んだ池という意味で“夜馬池”と呼ばれるようになった。
“夜馬池”の民間伝承はもう一つある。夜遅くになると水面から馬の蹄の音が聞こえ、その音は遠くまではっきりと聞こえるという。
この馬は張飛が四川で穀物を運んでいたときの馬で、張飛の死後、山に放されてここに来たという。
涪江(ふこう)の水の味
綿陽(めんよう)の銀馬渡(ぎんばと)大橋の両側にある涪江(ふこう)の渡し場は当時、成都へ向かう唯一の川の渡し場であった。
劉備が成都に蜀を建国した後、張飛は閬中(ろうちゅう)を守るよう命じられた。のちに、兄の関羽が呂蒙に捕らえられ殺されたことを知ると激怒した。劉備と復讐するため昼も夜も休むことなく成都に駆けつけた。
張飛がこの“涪津の渡し”の東端に到着したとき、彼の馬は鞭で打たれたにも関わらず乗船を拒否した。
張飛は不機嫌になり、「忙しい時に馬が動かないので俺は腹を立てている」と言った。しかし人馬とも疲れていて水と食べ物が必要だった。
そこで彼は水を飲ませるために馬を川辺に連れて行き、自らも手で川の水を飲んだ。しばらくすると、馬は水を十分に飲み、いなないた。
張飛もあたかも高級酒が空腹を潤したかのように、涪江の水を数掴み飲むと、突然気分が爽快になり、エネルギーが満ち溢れているように感じた。
彼はもしかしたら、涪江の川の水には魔法の力があり、部下や馬がより強力になるのではないかと考えた。
そこで彼は船の浜辺に【張飛と馬が水を飲む場所】という大きな文字で立札を立てた。翌日、地元の誰かがこの文字を見て、その噂を広め今に至るのである。
張飛は馬から落ちて靴を失う
張飛は任務報告のため閬中から成都に移動した。諸葛亮は“演武鋪(えんぶほ)”という場所で大量の軍馬を運び、漢中を守る魏延と閬中の張飛に送る準備をしていた。
その場所に張飛はたまたま通りかかった。張飛は諸葛亮が既に馬の割り当てをしているのを見た。まだ漢中行きの馬が出発していないのを見て良馬を自分で選びたいと思った。
張飛は諸葛亮を説得するために贈り物をしようと考えた。さっそく部下に命じて地元閬中の干し牛肉(張飛牛肉)と饅頭を数十個の籠に入れて諸葛亮に運ぶように手配した。
諸葛亮はその考えを察知し部下を集めて夕食として出するように指示した。(皆に配ることで張飛からの賄賂を回避したのだ!)。そして諸葛亮は微笑んで張飛に言った「張将軍、もし他の馬を選びたいのであれば、私は従うが一つだけ条件があります。猛々しい馬【点白紅】という馬を飼いならすことができたなら馬を選べる事としましょう。」と。
それを聞いた張飛は笑って「俺なら手なずけない猛馬はいない。軍師約束だぞ!」と言うと、諸葛亮は「決して冗談ではありませんぞ」と言う。
しばらくすると輪の中から背の高い馬が連れてこられた。体は赤く、頭には白い毛が生えており、身長は張飛よりも高い。
馬を引き寄せたとたん、ひづめで地面を蹴り砂埃が舞い上がり、たちまち四つの大きな足跡が出来た。長いうなり声は耳を劈(つんざ)いた。それを見た張飛は「おい、こいつはちょっと気が強いな!」と気を引き締めた。
彼は馬をたたき、飛び上がって乗ろうとした。しかし馬は首を振り、しゃがみ、後ずさりすると、馬に乗りこなそうとした張飛は振り落とされた。2度目も落とされた。その姿を笑うものはなく真剣にその戦いを凝視した。
張飛も英雄にふさわしい人物で、馬の尻を強く打った。馬は痛みを感じて身をかがめた。張飛はすかさず飛び上がり馬の背に乗り、たてがみをしっかり持ち、両足を締めて手のひらを鞭のようにした。
馬は斜面を登って尾根が見えたら飛び、森の中をぐるぐる回って、1時間もしないうちに、万碗泉山(わんせんざん)の頂上についた。
頂上には大きな平らな石があり、真ん中に泉があり、澄みきっていて霧がかすかにかかっている。馬は走って喉が渇いたのか、突然止まり、前蹄を高く上げ再び張飛を地面に投げ落とした。
張飛は振り落とされた際に、靴が外れ岩の上に転がり落ちた。諸葛亮が派遣した従者たちも到着し、張飛がしゃがみこみ、馬が水を飲んでいるのを目撃した。そこで張飛の負けが決まった。
諸葛亮は事前に馬に興奮する薬草を与えていたことで張飛も制御できなかったのだ。それを知らない張飛は諸葛亮の姿を見るたびに非常に恥ずかしくなり、二度と強さや競争を主張しなくなった。
その脱げた靴は時間が経つと石になった。今この地を[建新郷靴村(くつむら)]と呼ばれている。
いかがだったでしょうか?
“夜馬池”の2つの伝承。どちらも三国志にまつわる内容で二つあるって凄いですね。英雄が地面をたたくと泉がわくって話は古今東西ありますね。
今回取り上げませんでしたが関羽にまつわる泉にも行ったことがあります。実際のところ、孔明や関羽が土木工事を行い泉や池を整備したというような事なのかもしれません。
民間伝承は場所に関する由来が多く、結果としてオチがつかない話もよくあります。今回、3つの話ともに、張飛と馬が登場する所も面白いです。張飛の馬へのこだわりからできた伝承なのかもしれません。
【点白紅】は【赤兎馬】ばりのすごい馬でした。張飛の馬になって欲しかったなという事を思ってしまいました。
次回もお楽しみに!
第17回三国志祭 開催概要
今年も三国志祭の季節がやってきました。第17回となる今回は11月4日に開催しますので、ぜひご参加ください。
ちなみに、『三国志ドラフト会議』というオリジナルの三国志カードゲームを作りました。三国志祭でも販売しますので、お越しの際はこちらも見ていってくださいね。
開催日:2023.11.4(土)
時間:11時~17時(観覧無料)
【当夜祭(予約制):18時~20時半(有料)】
場所:KOBE鉄人三国志ギャラリー周辺
サイト:三国志祭特設サイトはこちら
イベント情報
◆鉄人広場会場 11時~14時
三国志祭 中国武術大会
魏呉蜀3チームに分かれて対抗戦
総勢100名以上の武道家が大集合
◆ピフレホール会場 13時~14時
・三国志講談&三国志朗読
◆三国志ギャラリー会場 11時~17時
・三国志関連展示
・制作体験・三国志占い・ゲーム体験など
・講演会・朗読など
◆KOBE鉄人三国志ギャラリー前ステージ 11時~17時
・アニマル三国志キャラクターショー、三国志朗読会など
◆すまいるネット会議室(元交流館)11時半~17時
・「横山光輝三国志」ビンゴ大会、制作者秘話トークショー
・三国志シンポジウムや三国志講演など
ドラマ「パリピ孔明」とコラボが決定!
フジテレビの人気ドラマ「パリピ孔明」(毎週水曜10時放送)とのコラボ決定しました!
KOBE鉄人三国志ギャラリ-で「パリピ孔明 三国志パネル展」を10月20日~12月28日で開催いたします!
劉備(ディーン・フジオカさん)の衣装や番組内で登場したカードも展示! ドラマは漫画やアニメより三国志要素が増えていて、三国志ファンにはうれしいドラマとなっています。今後の展開も楽しみですね。
明日より開催されますので、ぜひ遊びにいらしてください。
観覧無料※ただし施設入場料1人100円必要
岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!
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