『龍が如く』インタビュー。『龍が如く7 外伝』で遊べる『龍が如く8』体験版は『龍が如く7.5』に該当!? 阪本氏&堀井氏が語った驚きの情報とは?

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 9月20日に開催された“RGG SUMMIT FALL 2023”で、『龍が如く7 外伝 名を消した男』と『龍が如く8』の新情報が公開。続く東京ゲームショウ2023(TGS2023)では、両作品の体験版やステージイベントなどが用意され、『龍が如く』シリーズ最新作に対するファンの期待値は爆上がりしていると言っても過言ではないでしょう。

 そこで今回はTGS2023の会場で両作品のプロデューサー(シリーズチーフプロデューサー)である阪本寛之氏、ディレクター(チーフディレクター)である堀井亮佑氏へのインタビューを実施。『龍が如く8』を中心に、ファン目線で気になるアレコレを伺いました。

  • ▲右からプロデューサー(シリーズチーフプロデューサー)の阪本寛之氏、ディレクター(チーフディレクター)の堀井亮佑氏。堀井氏は“RYO”としてステージ出演中の合間を縫っての取材となりました。

※“RYO”の詳細は“龍が如くスタジオ公式X”のコチラでチェック!

 なお、電撃オンラインでは『龍が如く8』と『龍が如く7外伝 名を消した男』のプレイ動画も掲載しているので、あわせてチェックしてみてください。

詳細をお披露目できる日が待ち遠しかったほど自信のある作品となった『龍が如く8』

――まずは『龍が如く7外伝 名を消した男』、『龍が如く8』で阪本さん、堀井さんがご担当されているパートをお聞かせください。

阪本寛之氏(以下、敬称略):私は『龍が如く7 光と闇の行方』ではチーフプロデューサーという立場でしたが、『龍が如く7 外伝』と『龍が如く8』でも同じように、おもにプロジェクトの設計やいろいろな大枠の中での仕様といった部分を設計しています。

堀井亮佑氏(以下、敬称略):僕は『龍が如く7』でチーフディレクターでしたが、今回は2本ともディレクターを担当しています。

――それは作業量的にもかなり大変だったのでは?(笑)

堀井:そうなんですよ。でもやはり関連した作品ですし、『龍が如く7 外伝』では『龍が如く8』に至るまでの桐生一馬をよりわかるようにする必要がありまして。そうなると、両作品をしっかり理解して齟齬が出ないようにしないとダメなんですね。そういう意味もあって「両方やりましょう!」と。

――なるほど。しかし、3カ月間隔で発売される作品を両方ディレクションされるというのは、作業量的にもなかなか想像がつきませんね。

堀井:開発途中はもうバタバタしていて、どちらの作品のバグをチェックしているのかわからない状態にもなりました(笑)。でも、いっしょに並行して作業するからこそ、「ここでこういうことを言っているから、こっちではダメだよね」という発見ができた感じです。だいぶ細やかに作業をやらせてもらいました。

――そんな大変な作業が進む作品ですが、先日の“RGG SUMMIT FALL 2023”での発表、およびTGSビジネスデイを経て一般公開日を迎えた今の、トレーラーや試遊などの反響の手ごたえはいかがですか?

阪本:6月に開催した“RGG SUMMIT SUMMER 2023”では『龍が如く7 外伝』の詳細をお伝えしました。そして先日の“RGG SUMMIT FALL 2023”では、前回公開した春日が全裸で登場するムービー以外で、初めてさまざまな情報を出し惜しみせずに出し切った形でお見せしました。これはいままでと違うアプローチですね。

 公開してからは、ストーリートレーラーもゲームトレーラーも、ワールドワイドで非常に反響がよくて。今回のストーリートレーラーは約10分という長尺ですが、ほとんどの方が最後までしっかり見てくださっていて、「『龍が如く8』は最後どうなるんだろう?」という期待感など、ダイレクトに反響が届いています。だから、このタイミングで“RGG SUMMIT FALL 2023”を開催したことは、本当によかったなと。

堀井:すごく良い反響をいただけていると感じています。そして、これでようやく“ヤドカリを操作して、春日の股間を隠すゲーム”じゃないことがわかっていただけたかなと(笑)。

一同:(笑)。

堀井:ずっと『龍が如く8』を開発し続けてきて、「これはちゃんと情報を出したら絶対みんな驚くから、早く情報を出したいな」と思っていたんですね。僕たち自身が「おもしろい!」と感じながら作っていたので、その想いをみなさんに正しく伝えられたことはとてもうれしく思っています。

――『龍が如く8』の発売日が2024年の1月26日というのはすごく驚きました。そんなに早くリリースされるんだと。

阪本:正直に言うと、『龍が如く8』は『龍が如く7』の発売後から裏でずっと作り続けていたんです。期間的にもけっこう長いプロジェクトでした。ですが、開発を進める過程で、やはりそこに至るまでの桐生の裏の物語を描かないと『龍が如く8』での桐生を理解しにくいし、彼のパーソナリティをわかったほうが絶対におもしろくなるだろうと。

 なので、これはちょっと異例の差し込みにはなりますが、『龍が如く7 外伝』というプロジェクトを新規に立ち上げることを決めました。けっこう無理な感じで、しかもやるならば『龍が如く8』の前に出すしかないとなり、1年それを目指して突っ走ってきた感じです。

――これは今までにない流れですよね。

阪本:どちらかと言えば『龍が如く6 命の詩。』を作りながら『龍が如く 極』を出した形に若干近いですが、こちらは完全に時間軸が違う作品ですよね。でも、『龍が如く7 外伝』と『龍が如く8』は続いている話なので、物語の設定も時間軸もすべてつながった形で作る必要がありました。

 しかも発売日も『龍が如く8』より前にする必要があるし、やはり『龍が如く』シリーズは年始あたりに出したいなという想いもありました。そこで逆算してギリギリのタイミングで11月ならば、連作という形で遊べていいのかなと。

――そうなると『龍が如く8』は、どのぐらいの開発期間になっているのでしょうか?

堀井:『龍が如く7』の発売後だから2020年から?

阪本:そうですね。ただ、いかんせんコロナ禍での開発でしたので……。いろいろなところでもお話していますが、今回の舞台がハワイじゃないですか。私たちも本来は現地取材をする予定でしたが、渡航制限がかかっていけなくなりまして。

――2020年だとちょうどコロナ禍が始まり、海外への渡航ができない時期でしたよね。

阪本:ようやく行ったとしても日本に戻ってきたら2週間隔離とかされてしまいますし。でも、そこで作業を止めるわけにもいかないので、あらゆる手を使って素材を集めてステージを再現しました。ただ、手間は従来の倍ぐらいかかりましたね。

“人生最後の戦いに挑む男”と“どん底から再び這い上がる男”を描くドラマ

――龍が如く8』の開発を進めるにあたり、最初のテーマなどはどのような形でスタートしたのでしょうか?

阪本:1年前にティザームービーを出したのを覚えています? あれは脚本や設定などを固めた後に作ったもので、じつは収録もあの時点から始まっていたんです。

 今回は桐生一馬と春日一番のダブル主人公で、かつ『龍が如く7』の後の話であるというところから企画が出発しています。春日が自分の母親である茜を探すために国外を旅をすることもあり、物語的な都合でロケーションはどこがいちばんいいだろうと考えました。

 そこで、日本人である茜が裏社会から逃げて潜伏できるような場所ということで、ハワイがいいだろうとアウトラインを固めていった感じです。

――発端としては、桐生と春日のふたりの『龍が如く7』の後の物語を描くというテーマがあったわけですね。

阪本:『龍が如く7』もいったんはあの形でエンディングになりましたが、その後の春日の物語を描くにあたり、やはり桐生が登場しないのはさすがに盛り上がりが欠けるかなと。桐生は『龍が如く7』にも出てきますし。

 トレーラーには桐生がガンであると告白するシーンがありますが、その部分が本作の桐生のテーマで、桐生を代表とする過去のヤクザが、それにあたってどう生きていくのかが描かれます。一方で春日はヤクザではありませんが、彼らのような立場の人間がその想いをどう背負っていくのか、というのもテーマになります。

――公式サイトでは“再びどん底から這い上がる男、春日一番”、“人生最期の戦いに挑む男、桐生一馬”と記載されていますが、やはり桐生の最期がどう描かれるのか気になります……。絶対にまだ言えないと思いますが(苦笑)。

阪本:それはやっぱり言えないです(笑)。ただ、トレーラーのラストで“世界一、運が悪くて 世界一、ハッピーなヤツらの物語”という言葉がありますが、あれはけっこう的を得ていると思います。いろいろな顛末はありますけが、幸せだと感じられるような読後感が味わえるドラマになっています。

堀井:ガンになった事実には衝撃を受けるかもしれませんが、決して暗い話というわけでもありません。『龍が如く7 外伝』では身体は元気だけれども名前がなく、好きな人にも会えないっという“桐生の孤独”を描く作品です。逆に『龍が如く8』では、ガンで苦しみながらも仲間がいて、支えてくれる人たちがいるわけです。

 そういう状況に置かれた時、孤独だった頃と比べて桐生はどちらが幸せなんだろうか……。そういったところを、両方の作品をプレイしていただけるとより深く感じていただけると思います。

阪本:幸せの定義でやはり人それぞれですよね。寿命が長ければ幸せなのかとか。幸せをどう感じられるか、実感できるかみたいな考えは、それぞれの登場人物ごとに異なる描かれ方になると思います。

――トレーラーには遥を回想するシーンも挟まれていましたが、彼女についても本作では触れられていく感じでしょうか?

阪本:もちろんです。いままでの桐生の人生はなかったことにはできませんし、すべてを背負ったうえで桐生がどう選んでいくのかが描かれます。

―― “RGG SUMMIT FALL 2023”では横山(昌義)さんと黒田(崇矢)さんが、「病気ではあるがわりと前向きで悲壮感がない」といった内容をお話されていました。舞台がハワイということもあり、明るい雰囲気がすごく印象的です。SNSでも「トレーラーで桐生ちゃんが楽しそうでよかった」なんてコメントがありましたし。

阪本:『龍が如く7 外伝』なんて号泣してますからね(笑)。

――なのに『龍が如く8』ではカラオケで「うぇい♪」なんてやっていて(笑)。

堀井:『龍が如く7 外伝』のトレーラーでは、そういった部分を抽出していますから。『龍が如く8』は病気と向き合う中で、前向きに生きる姿や希望を見出す姿が描かれていますし、そんなにシリアスなシーンばかりでもなく、かといって病気を軽く扱っているわけではありません。

――これは余談ですけれど、ネットでは「桐生ちゃんがガンになったのはきっと俺たちのせい(エナジードリンク、ファストフード、酒などをプレイ中に過剰摂取させたため)だ」というコメントがあって、『龍が如く』プレイヤーならではの感想だなと(笑)。

堀井:たしかになあ。

阪本:でもこれって誰にでも起こり得ることなんです。『龍が如く6』では遥が子どもを産んだことにもいろいろと反響がありましたが、彼女もひとりの女性として1作目の『龍が如く』から登場して、歳をごまかさずにシリーズで人生を送ってきました。その中で誰にでも起こり得ることをドラマに描いたわけなんです。

 桐生のガンもそれと同じですし、『龍が如く8』でもものすごくリアルな物語として語られています。“絶対に治らないガンが、なぜか突然スーパーナチュラルに回復していった”、みたいな感じにはなりません。

日本人が紛れても違和感のない場所として選出された国外初の舞台・ハワイ

――つぎは舞台についてもう少し深くお聞きしますが、春日が母を探す旅を描くにあたって検討した結果、舞台がハワイになったというお話でした。この“旅”という要素は企画の当初から意識されていたのでしょうか?

阪本:そうですね。春日の物語をロードムービーとして描くことは『龍が如く7』からはじまっており、前回は横浜・伊勢佐木異人町に放り出されて、そこからひとりで成りあがっていくストーリーでした。これが彼のパーソナリティでもあるので、『龍が如く8』になっても基本は“人を捜しに行って、見知らぬ土地で人脈を広げる”ところがやはり春日の物語の基本要素になります。

 今回の舞台がハワイなのも、そこにいちばん説得力があり適しているからですね。もちろん、いろいろな候補がありましたよ。ほかにも日本人が多くいるような、たとえばバリ島とかですね。

――ヨーロッパ近辺よりもアジア近辺のほうがよかったと?

阪本:日本人が多くいるほうが紛れられてバレづらいのかなと。そういう場所のなかでもハワイはいちばんなじみがありますし、じつはけっこう理詰めで選んでいます。

――舞台の選択時には“リゾート感”もある程度意識されていたのでしょうか?

阪本:ハワイのどこを舞台にするかと決めたとき、いわゆる原生林が映えているような、ハワイ感がない場所にはしないようにしました。決まったあとは“ザッツ・ハワイ”といったような、ハワイを象徴する要素は、なにかしら実装していく必要があると考えました。

堀井:抽出部分はストーリーを基本に決めていますが、ハワイには「ここならばこういうこともできそうだよね」みたいな、ゲームとして発展させやすい部分が多くありました。

阪本:そこは正直に拾っていった感じですね。例えばハワイと検索したらまず“ワイキキビーチ”の風景が出ますよね。ですから多少加工はしつつも、建物とかを私たちがリアルに再現して、パッと見て「あ、ハワイだ」とわかるように、説得力を持たせなくてはいけません。

 でも、ワイキキビーチは半分海じゃないすか(笑)。ですからキャラクターを歩かせたときに、「透明な壁があって海には入れません」となると、さすがに楽しめないなと。だから海に入れるようにしたりと、必要なものを足していきました。

――たしかに体験版ではビーチからすぐに海で泳げましたね。すごく気軽に海に入れてビックリしました(笑)。

堀井:服の早脱ぎは『龍が如く』ならではのウリですから(笑)。

阪本:あれは最初にこだわったところでした。いままでの事例もあって、最初は「海には入れなくてもいいですよね?」と言われたのですが、「いや、ハワイで海に入れないのはダメだろう」と。『龍が如く6』の尾道は海に入ると死んじゃいましたが(笑)。

 ビーチでは自分たちの横で泳いでいる人々もいますし、海を満喫できないのはけっこうなマイナスだろうと。ここは初期から手を加えた部分です。

――マップのモチーフはホノルルがベースに?

阪本:そうですね。ハワイのホノルルを軸にして、そこから取材を基にデータを作っています。そこに物語的に必要な架空の要素なども実装しています。

――TGSの体験版で移動できた範囲は本編の中でほんの一部みたいな感じでしょうか?

堀井:3分の1くらいですかね。体験版ではポーズメニューでマップを出すと、左の方が真っ暗になっていましたが、そこも基本全部移動できるようになります。

阪本:もちろん建物の中に入ったら別の大きなマップもあります。それも含めて『龍が如く7』の約3倍というスケールですね。

堀井:もともとハワイはデカいですからね。その中で、実際のハワイにある少し危ない地域のエッセンスも凝縮しています。

――中華街や浜公園をひとつの街に凝縮して、伊勢佐木異人町を作ったときのようなイメージですか?

堀井:そうですね。だからずっとビーチが舞台になるわけでもないですし、綺麗な場所の中にもけっこう危ないエリアとか、いわゆる夜の街っぽい『龍が如く』らしい要素もたくさん入れています。

――ちなみにハワイ以外には伊勢佐木異人町が登場するようですが、神室町や蒼天堀は登場しますか?

阪本:神室町は出てきますが、蒼天堀は今回の物語には絡まないので出てきません。

――神室町もいままで通り歩けますか?

阪本:はい。神室町は今回の物語にも絡みますので。

――あとは天候の変化もシリーズで初登場の要素ですが、こちらはランダムで変わる感じでしょうか?

阪本:晴れたり雨が降ったりという天候の変化はハワイの特徴でもあるんです。突然スコールが発生して、止んだら光が差し込んでくるというような表現も用意しています。これはもともとやりたかったことで、「ああいった空気感はリゾート地を舞台にするからにはこだわらないといけないよね」と。

――今回はハワイが舞台ということで、英語を話すキャラクターが多く登場しますが、春日たちがどのように彼らとコミュニケーションをとるのか、言語面についても気になります。

阪本:基本的に日本語を話せる人物たちと行動して物語を進めていきますが、英語しか話せない人物はそれに合った形でのコミュニケーション表現しており、そこはうまくミックスしています。全員が日本語をベラベラと話せるわけではないですし、とくに街の住人などは日本語を話せません。

――たしかにジェスチャーで住人とやり取りするシーンがありましたね。

阪本:指のジェスチャーだけでもけっこうコミュニケーションできるんだ、みたいな感じになるかと思います(笑)。

パーティメンバーは物語の展開に合わせて加わるキャラクターが変化

――パーティメンバーはイメージビジュアルの“8”の中に描かれている10人で、右上が春日パーティ、左下が桐生パーティとの情報が明かされています。ただ、物語の途中には春日と桐生が同じパーティにいることもありそうですが、展開にあわせてフレキシブルに編成が変わっていくのでしょうか?

阪本:物語に合わせて合流したり、分離したりはあります。

――となると、ベースがこの5人ずつという形が多いと?

阪本:いえ、そうではないですね。

堀井:パーティを編成してこっちは誰、みたいに分けるわけではないです。「お前が行くなら俺もいくぜ」というような感じで、ストーリーをちゃんと描く中で別れたり合流したりします。

阪本:ちなみに最初は春日ひとりですね。

――となるとハワイではまさに裸一貫で、ペンダントしか身に着けていない状態から始まるんですね(笑)。

阪本:あ、でも物語の冒頭は『龍が如く7』の後からになるので、本当の最初は横浜・伊勢佐木異人町からスタートします。

――たしかにトレーラーでは春日がハローワークで働いている姿がありました。あとはパーティメンバーで言えば、鎌滝えり以外の全員が続投というのはかなりうれしい発表です。なかでもソンヒが加わったのは、前作での反響を受けてでしょうか?

阪本:そこは物語側の都合で、春日を助けたり協力したりするにあたって、『龍が如く7』に出てきた仲間が意味もなく欠けるのはダメだろうと。前作ですでに仲間としての結束が生まれているので、春日が新しい問題にどうかかわっていくかをストレートに描くにあたり「やはりメンバーになるのが自然だよね」と考えました。

堀井:引き続き「春日のストーリーをまた作るぞ!」となった時に、困った春日をこいつらが助けてくれないわけがない。もちろん、ソンヒについて反響があり、要望をいただいているのは当然知ってはいましたけれど、あくまでもドラマを優先しての決定になります。

――あとはパーティメンバー以外もかなり個性のある方々が出るようで、中でもキャラクターとしては紹介されていませんが、トレーラーに出てきたVTuber・多々良ひそかの存在が非常に気になります。ゲーム発売時の“いま”の時代を描く『龍が如く』シリーズらしい存在ですよね。

阪本:いまはネットを介した情報入手や拡散、印象操作がすごいじゃないですか。だから、もし極道の人たちがなにかしらの情報展開をする場合は、そういった存在を頼るのもありなんじゃないかと。うまく物語的にリアリティがあるような感じを狙っていきました。

堀井:脚本は3年前くらいから書きはじめていたのですが、ある意味、いまの時代に合っていましたね。

『龍が如く8』では物語のテーマ的にも必然的にRPGのコマンドバトルを引き続き採用

――――バトルは前作に引き続きRPGのコマンドバトルを採用しています。ですが桐生については“絆覚醒”するとアクション操作になる点に驚きました。ほかにも今回のバトルで前作から手を加えた部分や、注目してほしいポイントはありますか?

堀井:いちばんはやはり移動ですね。先ほど話題に出た桐生の“覚醒”もそうですが、やはりベースとなる移動については注力しました。前作にもあった“キャラクターの近くに看板があると自動で蹴ってアタックできる”要素などは、ほかのRPGにはない『龍が如く』らしい要素でしたが、「目の前にあるのにアタックが取れないなあ……」という不自然な部分も多かったのです。

 そこの課題は最初の段階から認識していました。またテンポ感なども、もっと良くなるだろうと思ってはいたので、その伸びしろを純粋にしっかり伸ばして完成形に持っていくことを意識しています。

阪本:『龍が如く7』を作り始めた段階で、すでにみんなこう(腕を顔の前で組んで考えるポーズ。いわゆる碇ゲンドウのポーズ)なり始めていたんですよ(笑)。「あれを解決しないとダメだよな」と、みんな宿題をいっぱい持っていました。それで「どこから手を付ける?」となったときにいちばん声が大きかったのが移動でした。

――体験版では移動範囲が円で表現されてわかりやすくなった印象でしたが、そのあたりも修正のアイデアが反映された部分ですか?

阪本:移動できますと言っても、移動できる範囲が小さすぎたらあまり意味がないですし、めちゃくちゃデカくしても簡単に背後を取ることができてしまう。そうなると「もうアクションでいいんじゃね?」みたいになって(笑)。

――たしかにさじ加減が難しいですね(笑)。

阪本:リアルタイムで変化していく良さと、自分が作為的に行う“してやったり感”をどう両立するのかがずっとテーマにありまして。『龍が如く7』は、ライブ感はあるものの、けっこうランダム的な要素も強く、「運が良かったからこうなった、救われた」という部分が多くあったんです。

「運が悪いといいダメージや攻撃がくり出せない割合が多すぎた」という意見があったので、もう少し狙ってダメージを出せるようにしたいなと。今回は極技も方向が矢印で表示されており、敵をどれだけ巻き込めるかという情報などもビジュアル化しました。

 最初はこのあたりはぼかしていたのですが「効果がわかるように」という調整は、かなり細かくやっています。じつは移動範囲の円も、キャラクターが強くなると広がります。

堀井:さらにキャラクターによっても違いますね。

――仲間と敵を挟み込むと挟撃が発生しますが、これも絆によって変わってくるのでしょうか?

阪本:変わります。

堀井:絆が高いとボンボン発生します。

――ちなみに桐生のバトルで“絆覚醒”の表示がありましたが、これは絆を深めると使えるシステムなのでしょうか?

堀井:そうですね。桐生も今回新しい仲間と出会い、絆を深めていくので、絆が芽生えるほど本気を出せるようになっていくという感じです。

――ちなみに、前作での春日は仲間たちとすでに絆を結んでいる状態ですが、またゼロから絆を深めていく形になるのでしょうか?

阪本:そこはキャラクターによって多少の差異はあります。やはりナンバや足立とパーティを組んだとき、“なんだかそっけない”感じになってしまうのは不自然ですから。

――たしかにそんな対応だと悲しいですよね。

阪本:ですから絆については、キャラクターによってある程度下駄をはかせている感じです。

――あとは新ジョブとしてハワイらしいものが増えていますが、前作に登場したジョブも登場しますか?

堀井:全部ではありませんが、春日の勇者のような専用ジョブや特徴的なジョブはあります。

――TGSの体験版では、アクティビティを体験することで新ジョブを習得していました。

阪本:『龍が如く7』では伊勢佐木異人町のハローワークで職業斡旋してもらい、それがジョブチェンジという形になっていました。ですがハワイにハローワークを置くわけにはいきませんからね。

堀井:ハワイに行って仕事を探すわけでもないですし……。

阪本:そこで、リゾート体験をすることでジョブをひらめくようにするアイデアが生まれました。

――サーフィンを体験するとマリンマスターのジョブをひらめくわけですね。

阪本:サーフィンを体験してマリンマスターをひらめくというのは、けっこうストレートな流れじゃないですか。ですが中には「え、どうしてそうなるの!?」と驚くジョブもたくさんあるのでぜひご期待ください(笑)。

堀井:サムライが、いちばんネタ出しがきつかったですね。

阪本:きつかったけれども、その結果いちばん笑える内容になりました。だってサムライなんて、普通はリゾート体験からつながらないじゃないですか(笑)。

――楽しみにしておきます(笑)。あとはミニゲーム系についても伺います。数多くの遊びが用意されていますが、その中でも“スジモンバトル”は注目度が高いと思います。あれは前回にあった“スジモン図鑑”で集めたスジモンを戦わせられるというイメージでしょうか?

堀井:前作は戦って倒した相手が単に登録されるだけでした。

阪本:モンスター図鑑みたいなものですね。

堀井:今回もそういう要素はありますが、倒した後に仲間になる場合があるんです。そうすると、本編とは別の“スジモンバトル”というコンテンツで、戦わせることができるようになります。もちろん育てることも可能で、「最強パーティを作って大会で優勝しよう!」という感じですね。育成はしっかり楽しめる内容になっていて、そこはご期待以上のものだと思います。

――大会で優勝すると本編のプレイが楽になるような要素などはありますか?

阪本:はい。ゲームトレーラーのジョブ紹介では、召喚士がスジモンを召喚していますよね。詳細はまだ明かせませんが、あれは“スジモンバトル”に関係しています。そこはとっておきのお楽しみかなと。

――それ以外ではデラックスorアルティメットエディションの特典として、新シナリオ“ファイナルハワイダンジョン”があると発表されています。こちらはどういった内容でしょうか?

阪本:前作にあった“ファイナルミレニアムタワー”のイメージに近い感じと思っていただいてかまいません。やり込み要素の強化版みたいな感じですが、詳細は後日公開するのでお待ちください。

 前作はそういったクリア後の楽しみを用意させていただいたので、『龍が如く8』ではさらにパワーアップさせたいなと。ハワイという舞台を含めて、より満喫できるものにしたいと考えています。

――実際のプレイでは何十時間も楽しめそうで、ワクワクがとまらないですね(笑)。

阪本:じつはとても入りきらないので、ゲームトレーラーはすべての要素を紹介していないのです。いま全部を紹介してしまうと、訳がわからなくなくなってしまうと思うんですよ。いまですらあらゆるベクトルの要素が入っていますからね。

堀井:情報過多で混乱してパンクすると思います。

――となると“シリーズ史上最大級のボリューム”と断言してもいいかもしれませんね。あとは『龍が如く7 外伝』をクリアすると『龍が如く8』の体験版がプレイできるようになりますが、そちらの内容も気になります。こちらはTGSの体験版と同じものでしょうか?

堀井:こちらの体験版はスペシャル体験版となっていて、TGSで遊べた体験版とは違う内容です。買っていただいた方だけが楽しめる要素が詰まっています。『龍が如く7 外伝』をクリアする前はプレイできない作りになっており、『龍が如く8』の物語につなげるために用意したものになります。

 具体的には、桐生側のちょっとしたストーリーを収録しています。これは『龍が如く8』の本編にも入っていませんし、TGS体験版にも入っていないものです。

阪本:ある意味“龍が如く7.5”に近いようなイメージかなと。クリアしないと遊べない理由としては、『龍が如く7 外伝』のエンディングが重要なんですよ。その流れでスペシャル体験版を遊んでいただけると、「なぜここにこいつがいるのか」とか、そういう流れが見えてくる内容になっています。

――となると「『龍が如く8』の製品版をプレイするつもりだから体験版はやらなくてもいいや」とは思わず、絶対に遊んだほうがいいということですね。

阪本:はい。『龍が如く8』の物語を隅々まで体験して理解できる作りになっています。ただし、これまでにあったような遥の救急箱がもらえたり、レベルが継承されたりというような、いわゆるゲームシステム的なメリットはあえて入れていません。物語が続いている点にだけフォーカスさせてもらっています。

堀井:これまで主人公だった桐生の、いままでに描いてない部分が描かれます。『龍が如く8』でも主人公として自分を重ねる存在になるので、この体験版で桐生の心情などを知っていただければ、より感情移入ができるのかなと。

――では最後に、物語的に連作となる『龍が如く7 外伝』と『龍が如く8』について、このインタビュー読んだ方に期待してほしいこと、注目してほしいことをお願いします。

堀井:今回は連続して2本を出させていただきますが、中でも『龍が如く8』はシリーズ最高傑作だと思っています。僕はいまこれ以上のゲーム作る自信がまったくないぐらい本当におもしろいと感じていますし、“龍が如くスタジオ”でしか作れない作品になったと手応えがあります。

 そして『龍が如く7 外伝』は、アクションゲームとして僕らの持つ技術を全部つぎ込んで、“一番気持ちいい桐生”が味わえる形に仕上がりました。ドラマでは桐生の寂しさなどを含め、彼の感情をすごくたくさん描いた作品です。これを遊んでいただければ絶対に『龍が如く8』がよりおもしろくなると思います。ぜひ両方ともプレイしていただきたいです。

阪本:昔から我々は「ゲームジャンルにこだわってないのが、私たちのゲーム制作スタイル」だと言っていきました。『龍が如く7』以降がRPGになったのも、仲間とともに積み上げて成り上がっていくことをテーマにした物語が、RPGというジャンルであることが必然的だったからです。それは『龍が如く8』も同じですね。

 そして『龍が如く7 外伝』でアクションを選んだ理由は、アクションのほうがいちばんおもしろくこの作品を作れるからなんです。そんな中で『龍が如く8』では桐生だけが“覚醒”するとアクション操作に切り替わります。私たちは物語などをいちばんいい形で楽しめるスタイルを、ゲームシステムやジャンルを考えながらある意味“身勝手に”作ってきたので、それが結果として表れたものだと言えるかもしれません。

 本編や体験版にどんな想いが込められているのかは、結局のところプレイさえしていただけたら理解いただけると考えています。純粋にゲームのスタイルやスケールの大きさを含めて、『龍が如く』シリーズならではの作品の全体像を、これを機会に味わっていただけたらうれしいです。

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