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アニメ『豚のレバーは加熱しろ』松岡禎丞さんインタビュー。豚は「自分の全部を出し切らないと存在を確立できない」役だった?

てけおん
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 10月7日土曜24時30分より、各局にて放送開始予定のアニメ『豚のレバーは加熱しろ』。本記事では、豚役を務める松岡禎丞さんのインタビューをお届けします。

『豚のレバーは加熱しろ』とは?

 豚のレバーを生で食べて意識を失った冴えないオタクな主人公が異世界転生し、まさかの豚に⁉ なにもわからないまま豚小屋で転がっているところを、人の心を読むことができる“イェスマ”のジェスに助けられます。

 王都へ行けば人間に戻れるかもしれないと、豚とジェスは王都を目指して旅立ちます。が、ジェスは命を狙われており、この世界は平和ではない様子……。無事に豚は人間に戻ることができるのでしょうか?

 元は冴えない理系のオタクで童貞だったが、異世界転生してただの豚に。魔法も剣も使えないものの、ガッツと知識でジェスのピンチを救う⁉

「ンゴー!」に関する意外な事実も。“豚”を演じることなどについて質問

――原作を読んだ印象はいかがでしたか?

松岡:正直な話、衝撃ですよね。まさか豚に転生するなんて誰が考えられるんだろうか……というか、ズレてるなと(笑)。最初はギャグコメディなのかなと思っていたんですけど、ひとつひとつの情報を読み解いていくと、意外と危ない世界というのが見えてくるんですよね。

 原作を読んでないとギャグコメディだと思われる方もいるかと思うんですけど、そんなことはなく、結構シリアスな話なので度肝を抜かれましたね。

――松岡さんから見て、“豚”というキャラクターの魅力はどんなところにありますか?

松岡:もともと“いいヤツ”だったんだな、というのはそこかしこから感じさせてくれますね。ヒーローになりきれない男の子が豚になった結果こうなった、というような印象です。

 理系ということもあって頭が回りますし、探求心もあって、ピンチのときは自分の知識をフルで活用してジェスを助ける……いい意味でまだ大人になりきれない子ども、というイメージですね。それでジェスに怒られたりするんですけど(笑)。

――モノローグの部分とそうでない部分(ジェスとのやり取りなど)とのセリフで、演じわけなど気をつけた部分はありますか? その他演技に際して留意している点がありましたら教えてください。

松岡:台本を最初に見た時点では明確にわけようと思ったりもしたんですが……。すべてが筒抜けなのでわけられませんでした。自分が思っていることをジェスはわかっているから、という気持ちが入ってしまうという感じですね……。

 なので、もうすべてをさらけ出しています。もしもジェスじゃなかったら……それこそ普通の豚のように誰かの口に入ってしまう運命だったかもしれませんね(笑)。

――本作の演技はかなり自由にやっていらっしゃると、“電撃文庫 30th 夏の祭典”でおっしゃっていましたが、松岡さんの過去のキャリアを見返してみて、どのくらい自由な演技をされましたでしょうか?

松岡:この現場は僕の中では、自分の全部を出し切らないと豚としての存在を確立できないなと感じました。

――それは……かなり気になる表現ですね。詳しく聞いてもいいですか?

松岡:初めてのアフレコのテストで演じた時は今と同じように演じたんですが、「クールで知的な感じでやってもらえませんか?」というディレクションがあったんです。理系の学校へ行っているから、知的な人物像にしてほしいとのことだったので。

 やってみてこれはこれでアリだとは思ったんですけど、直感的に「これだと途中から視聴者さんは見るのが辛くなって来ないだろうか?」と感じていたところ、今のカタチに落ち着きました。

――なるほど。そんな現場での調整もあって世に出て来た“豚”の鳴き声は、公開中のPVでも特にコミカルに感じた部分でした。もしこだわりのポイントなどありましたらお聞かせください。

松岡:コミカルに振っていますが、無理やりではなくて、人間って普通に「ンゴー!」って言っているのでは? ということに気が付いたんですよね。

――えっ、どういうことでしょう?

松岡:例えば「ん―⁉」という驚きの声があったときに、よく聞いたら無意識に「ゴ」って言ってない? と思ったんです(笑)。なので、実際台本には「ンゴー」とは書いていないんですよ。

 この辺は脊髄反射で対応していると言いますか……。例えて言うなら、お話がギャグ寄りになっている時には「ンゴー!?」になって、シリアス感のあるシーンだと「ん⁉」寄りになりますね。

――鳴き声ひとつでもその時々の状況に応じて変化があると。そのあたりも視聴者の方には注目してみていただきたいと思います。続いて、松岡さんから見た、ジェスの魅力についてもお聞かせいただけますでしょうか?

松岡:ジェスは“いい子すぎる”と思いますね。あの世界でこんな子に育ったというのは奇跡というのが率直な印象です。人を信じすぎるがゆえに危うい部分もあって、「豚が隣にいないとヤバいのでは!?」とついつい思ってしまう、そんな感じですね。

――WEBラジオも今後実施予定とのことですが、こちらについても何かコメントをいただけるようでしたらお願いいたします。

松岡:僕は決してラジオが得意なほうではなく、ましてや楠木さんと2人でラジオを収録するのは初めてですが……きっと楠木さんがまっすぐ引っ張ってくださると思います。ですので、僕はそれに「ンゴー!」と言いながら引きずられていきたいと!(笑)

松岡さんが豚以外に転生してみたいものは……?

――“豚になる”転生はかなり斬新な設定だと思いますが、ご自身がもし転生するとしたら、何かなりたいものはありますか?

松岡:鷲になりたいですね。鳥の中でも最強の部類で、空を飛んでても襲われることがないらしいんです。

 鷲の背中にGoProを付けてみた、という動画があって、それを見たらなんだか「人間って小さいんだな。こうなれたら気持ちいいだろうなぁ」と思いましたね。ですが、小動物は食べたくないです。

――ありがとうございます。そんな中、ちょっと空気を軽めにする質問で恐縮ですが……。「優しい妹が毎日献身的に作ってくれるお弁当」と「普段は豚扱いしてくる妹が、昨日は宿題手伝ってくれてありがとう……今回は特別なんだからねっ! と言って作ってくれるお弁当」。豚は後者がいいそうですが、松岡さんはいかがでしょうか?

松岡:僕は前者ですよ! この仕事をして色々な役をしてきた結果、人をめちゃめちゃ疑ってしまうので……優しくしてほしいです。

松岡さんからジェスと楠木さんの演技について

――楠木さんのお芝居について、一緒に収録していて感じることはありますか?

松岡:すごいですね。ジェスって、演じる側からするととても難しい役なんですよ。演じ手がブレさせられる幅が少ないというか……。

――“幅”というと……詳しくお聞かせいただいてもいいですか?

松岡:役によって、“演技で大きくブレさせてもこのキャラはこのキャラだ”と見る側に認識してもらえるキャラとそうでないキャラがいて、ジェスは後者に当たる、幅が少ないキャラだなと僕は思いました。あまりやり過ぎると、それはジェスではなく“楠木さん”になってしまうと言いますか……。

 かといって、演じる側がそのブレをまったく入れずに演じてしまうと、どこかAIのような無機質なものになってしまいます。楠木さんのお芝居は、その間にある薄い皮1枚の“幅”を見極めて繋げていくような、そんな演技なんです。ジェスらしい、ウィスパー加減を維持しながら演じていますが、それができるのは、楠木さんだからだなと尊敬しています。

――このあと楠木さんにもインタビューをする予定なのですが、この機会に何か松岡さんから聞いてみたいことはございますか?

松岡:そうですね……。世界にはいろいろな豚の種類がいますけど、豚の背中に乗ってみたいですか? あと、豚の骨は硬いらしいですよ! 

――わかりました(笑)。質問してみます。それでは最後に、放送を楽しみに待っているファンに一言お願いします。

松岡:「ずっと一緒にいてくださいね」というワードがとても大事になっている作品です。どういう意味なの? と思われるかもしれませんが、ボディーブローのようにじわじわと効いてくるんですよね。

 最初はギャグコメディなイメージを持たれる方が多いと思うのですが、ぜひ5話まで観てください。「この作品……ギャグじゃない⁉」となる要素が増えてくるので。あまりのシリアスさにどこに笑いをいれようか考えてしまいました(笑)。もちろん、無理やり笑いを入れているわけではなくて、豚としての心情描写は壊さないようにしています。

 最終話を観た時に「まさかあの1話からこうなるとは!」と驚きを感じられる作品になっていると思いますので、見ていただけると嬉しいです。

©2023 逆井卓馬/KADOKAWA・アニプレックス・BS11

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