レビュー:『マーダーミステリーパラドクス このひと夏の十五年』は体験版から「やられた!」を味わえてたまらない。マダミスの魅力を高レベルで再現したシステムも好印象

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 アニプレックスから、2023年10月10日に発売予定となっているPC(Steam)用推理アドベンチャー『マーダーミステリーパラドクス このひと夏の十五年』。『Fate/Grand Order』にも携わっていた塩川洋介氏が制作に関わることでも話題となっている本作の体験版レビューをお届けします。

【注意】なるべくネタバレは避けますが、この記事を読むと体験版のチュートリアル部分で起きる事件や、チャプター1でわかることがうっすらとわかってしまう可能性がありますので、その点に注意してご覧ください。

マーダーミステリーのシステムを落とし込んだ正統派推理アドベンチャーゲーム

 本作は、一般にアナログで遊ぶゲームジャンルである“マーダーミステリー”をPCで楽しめるようにデザインされているアドベンチャーゲームです。体験版では、本作のプロローグとチャプター1を遊ぶことができました。

 マーダーミステリーとは、“人狼ゲーム”やボードゲームのように実際に対面しながら、他プレイヤーとの駆け引きを楽しめるアナログゲームです。

 とはいえまだまだ成長途中のジャンルなので、ボードゲームなどと比べると「マーダーミステリー(マダミス)ってそもそも何?」という人が多いとは思います。

 かくいう自分も、こちらの初心者向け体験レポで初めてマーダーミステリーに参加したくらいです。

 そんな自分が把握している、ザックリとしたマーダーミステリーの流れは下記のようなもの。

■マーダーミステリーの流れ(あくまで一例)

①台本を読み込み、世界観や自分が演じるキャラの設定を把握する
②事件が起こる
③手がかりを探す
④参加者が2人きりで密談して手掛かりを交換する
⑤全員で集まって議論する
⑥結論を推理する

 最大の特徴は、密談による手がかりの交換ですね。

 お互いが持っている情報を明かしながら(ウソもあり)、駆け引きを繰り広げることによってプレイヤー同士に信頼感や猜疑心が生まれ、最終的な推理にも影響が出るのがおもしろいポイントです。

 ちなみにリアルでのマーダーミステリー体験がどんなものかは、初心者向け体験レポで説明されているので、あわせて読んでみてください。

 基本的には対面でのコミュニケーションを前提としたゲーム性であり、この魅力をどうデジタルゲームに落とし込むのだろう? と疑問に思っていました。

 しかし本作をプレイしてみると、非常に高いクオリティでマーダーミステリーの魅力をシステムに組み込んでいて驚き! 密談や推理の流れだけではなく、プレイヤー同士の信頼感まで表現されているのがすごいです。

【注意】ここから先のテキストでは、ゲームの内容について触れていますのでご注意ください。

プロローグでマーダーミステリーの基本を学べる! 被害者は…スイカ!?

 マーダーミステリーをプレイしたことがある人ならその再現度の高さに驚く本作ですが、まったく経験がない人でも問題なく楽しめます。というか、このゲームでマーダーミステリーがどういうものなのか知るのもアリなレベル。

 推理のシステム自体はマーダーミステリーを踏襲しているものの、対人でのコミュニケーションを必要とはしないので気軽に遊べますしね。

 マーダーミステリーを再現しているため、システムはかなり独特に思えますが、基本的には一般的なシングルプレイ用の推理アドベンチャーゲームと思っていただければ大丈夫です。

 マーダーミステリーならではの独特なゲーム進行も、プロローグを進めながら学ぶことができます。

 プロローグでは、主人公がある事情から親族の住む島を訪れるところから物語がスタート。

 同年代の親族と和気あいあいとした雰囲気の中、これでどうやって事件が発生するのかと思っていたら……事件が発生します。

 そう……五切れあったはずのスイカが、四切れしかなくなっているという事件が。

 そんなこんなで親族全員で集まって話し合い、消えたスイカの謎に迫っていくことに! ほのぼの!!

 チュートリアルにふさわしいハードル低めの事件なので、プレイヤーとしても気楽に進められます。

 マーダーミステリーといいつつ、マーダーがまだ起こってない! スイカの行方不明事件発生後にすごく緊迫感のあるBGMが流れますが……まだ流すの早い気がします(笑)。

 と、どこかほっこりしていたわけですが、推理部分はけっこう本格的。時系列を整理しながら、事件の謎や矛盾を追っていきます。

情報が整理されているおかげでリアルよりもとっつきやすいマーダーミステリーが楽しめる!

 リアルのマーダーミステリーでは情報を覚えておくのが大変ですが、ゲームでは自動的にメモを記録しておいてくれるのが親切。この機能、現実にも実装されませんかね!

 とくに情報の時系列が整理されているのがわかりやすくていいですね。各キャラクターの行動やアリバイを確認しやすいので、推理がスムーズです。

 事件の全容も把握しやすく、しっかり手がかりを追っていけるので物語にも入りやすいです。

 ゲームの流れとしては、まず“各キャラクターが抱いている疑問”を解決することを目指します。疑問を解決するとキャラクターから信用が得られるほか、新たな手がかりが入手できることも!

 疑問の解決には複数の手がかりを組み合わせて、正解を導き出す必要があります。手がかりはキャラクター同士の密談や質問などで入手可能。

 物証の裏付けがとれる証言を見つけたり、複数の証言の矛盾点を探ったりと、理詰めで正解を見つけていくのがパズルのようで楽しいです。

 体験版の時点では、各キャラの話をしっかりと読んでいれば解けるバランスで、謎解きの難易度はそれほど高くないと感じました。証言や物証などを組み合わせることで推理を進めていくのですが、その推理が相手の疑問を解消できるものであれば花マル、そうでなければ△……といった具合に表示されるのもハードルを下げてくれる印象でした。

 プレイヤーによって謎解きに差が出るというよりは、“決められた順番に正しい推理を導き出していって真相にたどり着く”という設計です。

 あくまでチュートリアルをプレイした段階では……の話にはなりますが、正解への筋道がしっかりと定められているため、ひらめきよりも、ていねいな思考をして違和感を発見していくことが大事だと感じました。チュートリアルということもありますが、プレイの敷居は低め。

 キャラクターとの会話や推理にはそれぞれ時間経過の概念があり、調査フェーズ全体の制限時間内に真相を解明するための手がかりをつかむ必要があります。

 制限時間があると言ってもリアルな時間ではありません。例えば制限時間が180分であれば、持ちポイントが180ポイントあって、各行動で決められたポイントを消費すると考えてもらえばいいでしょう。実際の時間で3時間経ったらゲームオーバー! というわけではありませんのでご安心を。

 また、プレイヤーが使える時間(ポイント)にもかなり余裕があり、あるていどミスしてしまっても大丈夫! 手がかりが得られる行動のヒントはわかりやすくなっているので、謎解きが苦手でも詰むことはほぼないです。

 調査フェーズ終了後は全体議論フェーズへ。得られた手がかりを元に真相を解明していきます。

 このフェーズは、どちらかというと答え合わせのようなもの。しっかり事件の流れを追えていれば問題なく突破できるはずです。

 ただし犯人以外の人間を疑うような選択肢を選ぶと、大きく信頼を損ねることも。選択肢が重要になるので、心配な人であれば事前にセーブしておくことを推奨します。

 全体議論フェーズが終了すると全員で犯人だと思う人物に投票します。

 その結果、無事に犯人を指名できればストーリーが進行。犯人以外の人物に票が集まってしまうとバッドエンドになります。

 もちろん主人公自身も容疑者の一人なので、誰が犯人に指名されるのか緊迫感があります。全体議論フェーズでいかに正しい手がかりを提示し、信用を得られるかが重要に!

チャプター1の内容は……なんも言えねえ!

 そうしてプロローグでスイカ失踪の犯人捜しを終えると、チャプター1へ。

 ついにマーダーミステリーらしく凄惨な殺人事件が発生するのかと思ったら……もっとはるかに驚きの展開が待っていました。それこそ、ゲームそのもののジャンルが変わるほどのものが!

 チャプター1に関しては、内容についてわずかでも書けばネタバレになるくらい、最初から衝撃の展開の連続。1枚でも画面写真を見たらネタバレになるくらいです。ネタバレなしでプレイしてこその衝撃展開なので、詳細は伏せますが……タイトルの意味もわかり、ぺーんと膝を叩きましたね。

 マーダーミステリーのあとの“パラドクス”、そしてサブタイトルである“このひと夏の十五年”。

 サブタイトル“ひと夏”の“十五年”ってよくよく考えれば意味が矛盾していますよね? 自分はてっきり、ミステリーっぽく意味深なタイトルにしているだけかなと思っていましたが、しっかり意味がありました。

 このチャプター1の衝撃の仕掛けが、体験版の大きな見どころです。こればかりは、ぜひ自分の目で確かめてみてください!

マーダーミステリーの楽しさを詰め込みつつ驚愕の“仕掛け”もあって傑作の予感がプンプンする!

 マダミスの謎解きの楽しさを、オフライン用のアドベンチャーゲームとして無理なく再現した本作『マーダーミステリーパラドクス このひと夏の十五年』。

 マーダーミステリーファンはもちろん、アナログゲームには抵抗はあるけれどアドベンチャーゲームや推理小説は好き! という人でも楽しめます。ぜひ気軽に体験版をプレイしてみてください。

 個人的には、各キャラクターの信頼度が見えるのはちょっとプレイヤーに優しすぎるかな……? という気もしました。このへんは好みの問題でもありますが、マーダーミステリーや推理系アドベンチャーの初心者にとっては非常に親切と言えるでしょう。

 アナログゲームの難点である敷居の高さをなくし、万人が楽しめる形にしているのがうれしいところです。

 そしてチャプター1の衝撃の展開ですよ。ネタバレゆえに、くわしく内容を書けないのがもどかしいっ! さらに体験版の最後にも衝撃の展開が待っていて……とにかく続きが気になりすぎるので、発売日が本当に待ち遠しいです。

🄫Aniplex

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