『どうする家康』39話感想。酒井忠次が託した願い…最後の最後まで家康のためを思う姿に感動

びえ
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 毎週日曜20時からNHKで放送の大河ドラマ『どうする家康』。第39回“太閤、くたばる”のレビューをお届けします。

酒井忠次が託した願い。最後の最後まで忠義を尽くす姿に涙

 前回は、ようやく侵略の手を止めて明との和睦を決意した秀吉のもとに、茶々が再び身ごもったとの知らせが飛び込んできたところで終わりました。

 今回は、せっかくの平穏もつかの間、またもや秀吉が不穏な動きを見せるところからはじまります。

 無事に生まれた拾(後の秀頼)を溺愛するあまりに、再び暴走しはじめる秀吉。明との和睦にも無理な条件をつけ、実際にその対応にあたっている石田三成らは頭を悩ませます。

 そんななか、秀吉のように一人の権力者がすべてを取り仕切るのではなく、知恵のある者が話し合いで政治を行っていく仕組みを作ってみたいと夢を語る三成。

 それが実現すれば、このような無駄な戦に人が振り回されることもなくなるのでしょうが、今はまだ遠い夢のようにも感じます。

 場面は変わり、家康は息子の秀忠を連れて、ある人物のもとを訪れました。その人物とは、京に隠居している酒井忠次です。

 老齢なこともあり、ほとんど目が見えなくなってしまった忠次ですが、それでも明るく面倒見のよいところは変わらず。久しぶりに“海老すくい”の踊りが見られて、心が和みました。これが最後というのが、ちょっと寂しいですが。

 これまでたくさんの努力を積み重ねてきた家康のことを、そばで見守り続けてきた忠次だからこそ、最後に託せる願いにはつい目頭が熱くなりました。家康のことを信じているからこそ、たとえ重い責任が伴うことが分かっていても、天下を取るように願いを託したのでしょうね。

 雪が降りしきる中で、家康のために戦支度をする忠次の姿は、涙なしには見られませんでした。本当に最後の最後まで、家康のことを思ってくれている人でした。

暴走を繰り返した天下人の末路…茶々の本心はどこに?

 さて、和睦の証として明からの使者が秀吉の元を訪れますが、実はこれは小西行長らがでっちあげた偽物。

 自分から戦を仕掛けたにも関わらず、なにも手に入れられなかったことがどうしても認められない秀吉は、賭けだと言って再び朝鮮に攻め入ろうとします。

 無理な戦を続け、非道な行いをも辞さない秀吉のやり方に、とうとう国内でも不満の声が。家康はそれでも秀吉のことを信じようとしますが、それもそろそろ限界のように思えます。

 そんな折に、とうとう秀吉が倒れてしまいました。周りの人々が心配して秀吉のほうへ駆け寄るなか、どこか冷めた眼差しで、離れた場所からその光景を眺める茶々の姿が非常に印象的でした。

 家康のことを利用しようと近づいてきたこともありましたが、もしかしたら秀吉のこともまた、利用していたに過ぎなかったのかもしれません。

 遺言を作ることを決めた秀吉は、石田三成に意見を求めます。そのときになってようやく、三成は自分の夢を話すことができたのでした。

 話し合いで政治を行うことを提案した三成に対し、やってみろと促す秀吉。またとない機会が巡ってきました。家康と前田利家の協力をあおぎ、なんとか夢を形にしようと知恵を絞る三成。

 当然のように引き受けてくれる家康たちのおかげで、明るい希望が見えてきたように思えます。

 しかし、秀吉の容態は悪化する一方でした。自分の死を前にして、もはや秀頼のことしか考えていない彼のことを、家康は一喝します。好き勝手に世の中を乱したうえ、すべてを放り投げようとする秀吉に、怒るのも無理はありません。

 それでも、最後には相手を認める言葉を残すのが、なんともこの二人らしいと言えますね。秀吉もどこかで、家康のことを羨ましいと思う気持ちがあったのかもしれません。

 家康が秀吉のことを許そうという姿勢を見せたぶん、その後の茶々の恐ろしさがよけいに際立ちました。

 血を吐きながら苦しむ秀吉を冷たく見下ろし、人を呼ぼうとするのを阻止する場面では、思わずゾッとしてしまいました。その一方で、亡くなった秀吉を見るとすぐに涙を流しはじめるのですから、ちょっとチグハグな印象を受けます。

 まるで、この時だけお市の魂が茶々に乗り移ったとでもいうような、なんだかほんの一瞬だけ人が変わっていたような……茶々の本心がどこにあるのか分からず、思わず考え込んでしまうシーンでした。

 そんな茶々の様子に不安を感じつつも、忠次の言葉に背中を押されて天下人となる決意をした家康。いよいよ表舞台に立つときが来ました。次回も楽しみに待ちましょう。

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