孔明が教える、優秀な人材の使い方とは!?【三国志 英傑群像出張版#23-1】

電撃オンライン
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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。



 英傑群像出張版では、わたしが中国各地で集めた三国志武将の民間伝承の古書から、日本で知られていないものを厳選して文章をまとめて紹介しています。

 今回は【蜀の武将たちの“能力”についての民間伝承】を集めてみましたので、2週に渡ってお送りします。

孔明直伝 優秀な人物の扱い方

 西暦221年、劉備が皇帝を称した後、巴西を守るために張飛を派遣した。ある日、諸葛亮と法正は巴西の国境を視察するために、米倉道(閬中~漢中)に向かった。

 張飛は二人がとても仲睦まじく、その態度からすると孔明は法正をとても尊敬しるようで、張飛は嫉妬した。

 張飛らは防衛線を見てまわった。その後、張飛は諸葛亮を奥の部屋に通した。その間に、彼は法正を連れ出した。法正はちょっとした事件があったと張飛に言った。

 彼が雨の中を歩いていると、犬に躓いたのを見て笑った男がいた。法正はその人物を見つけ出させて逮捕し20回殴らせたという。そんなことを3つ、4つ張飛は聞いた。

 張飛は諸葛亮と二人の時に、法正は専制的で視野の狭い人間であまり信用しない方がいいと提案した。諸葛亮はそれを聞いて、ひげを触りながらこう言った。

 「それは学者の弱点でもあるのです。些細な恨みも忘れないが、恩も忘れないものです。あなたは彼らの長所と短所を理解するべきです。我々は彼らを利用しなければならない。蜀漢が成立した理由は龐統(ほうとう)、杜微(とび)、許靖(きょせい)、そして法正、みんな有名な学者でした。」

 「彼らがあなたの兄(劉備)の蜀漢建国を助けました。彼らは偉大な功績を残したのです。法正を贔屓しているわけでありません。将軍はもっと学ばなければならない。もっと勉強し将軍が戦略家を使いこなさなければなりません。孫子の兵法にあることを実現するのです。」

 「“武力を用いずに相手を制圧する”事が最善の策であり、そのためには戦略を用いる必要があります。米倉道を維持するために、巴西を守るために、人を使いこなすのです。私は成都に戻ってあなたにいくつかの書籍を送りましょう。もう少し学んでください。」

 この言葉に張飛は深く感銘を受けた。

 張飛は息子の張苞(ちょうほう)を孔明と法正が成都へ戻るのに同行させ書籍を手に入れるようにした。当時は紙が開発されていたがまだ普及しておらず、大半は絹布や竹や木に書いたものが主流だった。

 紙の書物も少しだけあったが全体を輸送するのも重く嵩張る。張苞は荷物を運ぶ一行を護衛しながら成都から張飛のいる閬中に戻ろうとした。

 鶏の鳴き声とともに旅を始め、日没とともに宿に泊まるという毎日が続き、6月中旬のある日、梓潼城の南にある長卿山の麓に到着した。

 南河が増水し、多くの商人や旅人が立ち往生していた。張苞らは水が引くまで、川の南岸にある龍王廟で3、4日待たなければならなかった。

 ある時、水位が下がり川に小さな橋が現れた(のちに天仙橋と名付けられた)。張苞はすぐに兵士に荷物を選んで橋を渡るように指示した。

 紙の本や絹の本を運ぶ兵士はうまく通り過ぎたが、足元は滑りやすく木簡や竹簡を運ぶ兵士は橋の上で振り回された。

 張苞は落とせば罰金だと叫んだ。彼らは手をつないで列を作り、荷物を運ぶものを皆で引っ張ったが、張苞と兵は書簡の一部を河の中に落としてしまった。(白虎の叫び声がしてそれに驚き河から小さな竜が空中に飛び出したのを兵士たちが見て驚いて落としたのだと言われている)

 張苞は一部の書簡はあきらめ、他の書簡を張飛のいる閬中に持ち帰った。ただ張苞が置いてきた書物は、よりによって未来を予知する書であり、風水の書だったと言われている。張飛はこの書を見る事が出来なかったため、部下に暗殺されてしまった。

 落とした書はやがて石になり風化してしまった。毎月30日に川の中にその石が見えるという。孔明の死後、岐山から成都まで72基の偽の墓が建てられ、現在は梓潼には3基が残る。

 孔明がここを通りかかり、この“石の書”を読んだ事がきっかけで、墓も建てられたとも言う伝承がある。

 いかがだったでしょうか? 法正に対する孔明の話は、正史にも三国志演義にも登場します。

 ただ張飛がクレームをいれるという話は、新しいものでした! かつ孔明の真意を深く知る事ができた良いお話でしたね。

 たしかに優秀な人ほどすべてを記憶していて、良くも悪くも作用してしまいがち。それら人材を使いこなす事の大事さは現代の経営者でも生かすことができそうです。

 それにしても突然の白虎と龍という神獣の登場にびっくりしました。嵐などの自然現象が当時の人にそのように見えたのかもしれません。

 しかし今回の輸送に関しては軍事的に急ぐことでもなかったので、張苞も無理をする必要がなかったのではないか?

 大事な資料紛失のほうが問題であるのではないかと思わざるを得ないお話でもありました。

 次回もお楽しみに!

ドラマ「パリピ孔明」とコラボが決定!

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 明日より開催されますので、ぜひ遊びにいらしてください。

観覧無料※ただし施設入場料1人100円必要

場所KOBE鉄人三国志ギャラリ-


岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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