『FFXIV』中村悠一氏もゲスト出演した第6回14時間生放送レポート&開発スタッフミニインタビュー

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 2019年。最新の拡張パッケージ『漆黒のヴィランズ』が世界的高評価を受け、オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV(以下、『FFXIV』)』が大いに盛り上がった1年。その1年を締めくくるイベントとして、スクウェア・エニックス本社および近隣のスタジオにて、合計14時間超の生放送が行われた。

 『FFXIV』は毎年8月末~9月頭に周年を祝う14時間生放送を配信してきたが、今回は夏期イベントの過密っぷりから年末にスライドした形。昨年までは一部プレイヤーがスクウェア・エニックスに招待されるリアルイベント的な特徴も帯びていたが、“新生”6周年となる今年はあくまでも生放送に注力する形で、ゆっくり気楽に楽しめるバラエティ番組としての色を強めたスタイルだった。……とはいえ技術的には『FFXIV』生放送として(筆者が記憶している限り)初の外部スタジオ&レポーター役との生中継も盛り込んでいたりとチャレンジングな姿勢も垣間見えるあたりは、じつに『FFXIV』チームらしいと言える。

  • ▲本放送と併行してドマ式麻雀大会の生放送も実施。会社的に偉い人・スゴい開発者の方々が罰ゲーム有りのカオスな戦いを繰り広げていた。カオス。だがそれがいい。
  • ▲レベルファイブの日野社長を探して会場に招待するため、コミュニティチームのもっちーこと望月氏とアイテム班の林氏が(自由意志で)福岡まで旅する企画も併行。『FFXIV』のtwitterアカウント&ペリスコープで道中をレポートするなど、これまでにない試みで楽しませてくれた。……いや、いろいろとお疲れ様です。

 というわけで本記事では、写真中心の簡単なレポートに加えて、『FFXIV』プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏も含む、開発コアスタッフへのミニインタビューもお届け。来年への抱負などなど語っていただけているので、生放送と同様、こちらもぜひゆるゆるとご覧いただきたい。

■第6回 14時間生放送 公式の案内はコチラ

冒険者数ついに全世界1800万人突破! 新情報の公開&おじさんたちが楽しく遊ぶ生放送

 といったところで、14時間生放送のタイムテーブルがこちら。放送の冒頭で吉田P/Dも言っていたとおり、今回の14時間生放送は、新情報を第56回プロデューサーレターLIVE(以下、PLL)に集約し、あとは基本的にのんびりゆるく楽しむ番組といった趣だ。なお、この時点で『FFXIV』の累計登録アカウント数(日本・北米・欧州・中国・韓国の 5 リージョンの累計アカウント数。フリートライアル版のアカウントを含む)が1800万を突破したと発表。2018年9月の時点で1400万だったことを考えると、新生から5年目~6年目の1年ちょいで400万も伸びているのは素直に驚き。それだけ『漆黒のヴィランズ』の威力が高かったということだろう。喜ばしい。

 こちらはオープニングスタート直後の1コマ。グローバルコミュニティプロデューサーであるモルボルこと室内氏のコスプレ姿(フォーギヴン・ムロウチ)と、それに対するニコニコ生放送コメントの反応を見て、モニタを眺める吉田P/Dが声を出さず静かに爆笑。

  • ▲松田社長の挨拶ののち、開発スタッフがひと言ずつコメントするオープニングの様子。ここに集った方々に、のちほど全メディア合同で短時間のインタビューをさせていただいた。


 PLL後半からのゲストは、サウンドディレクターの祖堅氏。楽曲実装時の秘話満載なので、お時間あればぜひ直接放送を見てほしい。個人的には第一世界の環境音にまつわるお話にとくに「おお……」と声が漏れた。シナリオでフィールドに夜を取り戻した際は頭上を抑えていた蓋が外れたような安堵を感じたものだが、こういった工夫がされていたとは……。

 PLLでは、新たなファンフェスのお知らせも!



 こちらはNGCのコーナー。『FFXIV』のハウジングを用いたすごろくゲームが行われた。へいy……いや、やめておこう。ハウジングで舞台とルールを作り、さらに他人を楽しく遊ばせるというのはとても難しいように思うが……昨年に続いての凝りっぷりはシンプルに「いや、すげえわ」という感想だった。ラップバトル(?)は必見!?



 人気声優の中村悠一氏をゲストに迎え、吉田P/D&モルボル氏とともに『FFXIV』を遊ぶ“ゆういち散歩”のコーナー。“YoRHa: Dark Apocalypse”複製サレタ工場廃墟と希望の園エデン:覚醒編零式1を和気あいあいで攻略していた。その後、本社での生放送行程を終え、吉田P/Dたちはドマ式麻雀決勝に向けてスタジオへ移動。決着後は焼肉屋とんつうでの打ち上げを経て、第6回14時間生放送は無事にお開きとなった。

 

常に新しい風を。新生6年目にして最高の盛り上がりを見せた2019年を振り返るミニインタビュー

 以降では、放送の合間を縫って行われた吉田P/Dをはじめとする開発・運営のスタッフの皆様へのミニインタビューをお届け! 1人ごとの時間が限られるということで、“今年1年を振り返ってみて”と“来年以降への抱負”という共通の質問+αを投げさせていただいた(なお、本項でのお名前はすべて敬称略)。


吉田直樹(プロデューサー兼ディレクター)
室内俊夫(グローバルコミュニティプロデューサー)

――お疲れ様です。まずは今年がどんな年だったか、今振り返ってみてのご感想をお聞きしてもよろしいでしょうか?

吉田:正直いろんなことがありましたし、『漆黒のヴィランズ』がセールス的にも評価的にも過去最高を記録したというのが何よりもうれしいです。ただ、まだまだ日々あまりにも忙しいので、すでにそれが“過去のこと”になってしまっていて……。この14時間生放送でようやく年内の大きな仕事はひと区切りかなという感じですので、今日は普通に楽しんでいけたらなと思っています。あとは、『FFXIV』スタッフは本当によくがんばってくれていると思いますし、みんなものすごく成長しましたので、それが今年は何よりうれしかったなと感じています。

室内:吉田からもあったとおり、『漆黒のヴィランズ』が出たのがもはやはるか過去のような……1年くらい前なんじゃないかって感じてしまうくらい、今年は時間がたつのがとくに早いと感じました。イベントごとが多かったせいもあると思うんですけれども、まあ、楽しく忙しくやれたかなと。来年に向けては……前回のアレから2年たつということは、また大型イベントの年なのかな、と(笑)。

吉田:そう。そうだね……。

室内:その準備をしなきゃいけないなということで、そろそろ……。“そろそろ”と言いつつそろそろ全力で走らないといけない頃になってきたので、準備を進めていきたいと思っています。

吉田:なんだろう。これまではこう勢いで行けたところがあって……「シバき倒したら次! シバき倒したら次!」といった感じだったんです。けれど、最近は比較的正気に返ってきたせいで“やらなきゃいけない感”が出てきていて、それはよくないなと。やっぱり、どうしても飽きるんですよね。やってるほうが飽きるのはよくないと思うので……来年は大きなことはもちろんやるんでしょうけれど、それもありつつ、またちょっといろいろ趣向を凝らしていけたらなと思っています。僕らが楽しそうに企画して……もちろん大変は大変なんですけれど……楽しそうにやっているほうが、結果的にみなさんも楽しいはずですので、そこは忘れずに、来年も“定常業務”みたいにならないようにしていきたいなと。パッチも、かなり先までいろいろと計画ができていますので。お楽しみに。

――吉田さん的に「今年は例年と比べて特別だったな」と思うことはございましたか?

吉田:自分的には今年かなり変わったなと思うところがありまして……スタッフの成長というところが、やはり一番大きいです。彼らからの提案というのも、今までからすると一段レベルが高くなっています。

 僕としてもある種、MMORPGを手掛けたりMMORPGを遊んだりしてきた経験上で「自分だったらこうするのにな」と思っていた部分というのは、ほぼほぼ『漆黒』までに突っ込めたかなと思っていて……。ここからはまた新しいステージに向かっていかないといけないと思っているので、ほかのMMORPGがやっていないこと、あるいは『FFXIV』でしかできないことを作っていかないといけないなと。そう考えていくなかで自分の引き出しをひっくり返し直したりというのは、今年苦しんだ部分と言えば苦しんだ部分かもしれません。で、それと同時にスタッフからいいアイデアが出て来たりして、「じゃあこれと組み合わせてどう作っていこう」とか、「これらでインパクトを出すのって本当にこのタイミングで大丈夫なの?」とかを組んでいったりしています。

 あとはアレですね。振り返ってみたらコンテンツボリュームの横幅がものすごいことになっていて。単純な定常アップデートをかけるだけでも、例えばテキスト類の総文字数がこれまでの1.3倍とかになっていたりするんです。かつてはこのローテーションでローカライズができていたのが、「もうむりですよ!」って。もっと増員しないと回らないよね、と。定常アップデートでオーバー気味なのに、さらに新コンテンツ作るなんてことになったらますますキツいですし。

 ですので、今年はそのあたりをあらためて見直す1年になったかなと。ここで見直さないと近々破綻してしまいかねないかなと思いますし、『FFXIV』の規模が、当初想定していたより外側に膨らんでいますので。そのぶん現在はちょっと至らぬところが出始めているかなとは思いますけれど、この規模になってくるとさすがにある程度は仕方ないのかな、と。それを全部完璧にやろうとするほうが、全員疲れて破綻してしまいそうな気もするので……うまくそのバランスをとりたいなと。そのように、内部的にはけっこう変化のあった1年かなという気がします。

――室内さんとしては、2019年ならではの部分で思うことはございましたか?

室内:どうしても今の吉田の言葉と似てきちゃうんですけれど、いろんなことをやってくれるスタッフがいて、充実度がすごく上がったかなというのは如実に感じています。国内のイベント企画ごともそうですし、海外イベントも。我々は吉田が動くときとかは一緒にアテンドしてサポートしたりとか、インタビュー対応のときに通訳の方と「こういうふうにやろうね」と連携して動いたりというような裏方をやるんですけれど、そういった部分に関しても、私以外にやってくれるスタッフが格段に増えたと思いますし、そういう意味では、層が厚くなった1年かなと思っています。

吉田:しかし……特殊だよね。よくその恰好で「私は何もおかしなものは着ておりません」という顔で話せるよね(笑)。俺、そこは尊敬する。

室内:それはですね、あまり自認できないからというのがありまして……しかも、仮面かぶっちゃってますから。なんなら強気ですよ(笑)。

吉田:ああ、なりきってるってことか(笑)。一昨年のジバニャンのときも「よくできるなあ」と思ってたけど……日野さんのあの冷たい目、覚えてる?

室内:あれは怖かった。過去の14時間生放送で一番怖かったのは、日野さんの目です(笑)。「あ、笑ってない」と。「よくそれをジバニャンって言ったよね」と。

――そんな室内さんの今日の衣装……着心地は、いかがですか?(笑)

室内:(笑)。これね、朝着てみたときは意外と涼しいなと思っていたんですが……今、暑っついです(笑)。とくに頭、そしてマスクの頬への接着面。

吉田:あの……gamescomのために11~12年くらい毎年ドイツに行っているんですけれど……。開催地のケルンで、我々が毎回常宿にしているホテルのすぐ近くに、“こういったモノしか売っていない”お店がございまして。なぜか毎年、そこで室内が着る衣装を買うという。

室内:地上2階地下1階の3フロアくらいあるかなりデカい路面店なんですけれど、ほぼほぼこういうモノばかり置いていて。古くは、吉田対間(『ディシディア ファイナルファンタジー NT』などを手掛けた間 一朗プロデューサー)でgamescomでのゲーム対決をやり、負けたら恥ずかしい服を着る……という企画をやったときの服がそのお店のものなんです。それ以来、すっかり毎年1回行くお店ですね。

吉田:あれね、ホント納得いかないのが……高いんですよ意外と。これ、フルセットで3万円以上するんです。で、なぜか領収書が切れなくて。なんとなく切れないわけですよこんなの(笑)。なのでわりと毎回ポケットマネーで支払って……。なにやってるんだろうなと。誰か止めてくれればやめられるんですけど……。

室内:そうですね、まったくです(笑)。

――それ、止まらないやつですね……!

室内:止まらないどころか、最近は私も試着しちゃってますし(笑)。

吉田:なんだったら今年は一緒に行って、本人に試着させながら「今年はフォーギヴンだな……」って(笑)。まあ、まだ今はただの罪喰いですから。この上に大罪喰いとかが待っているので……ぜひこのあとの室内にもご注目ください。

  • ▲直後のプロデューサーレターLIVEに登場した室内氏。大罪喰い(イノセンス)に進化していた。ブロンドのヅラも完備なり。

――ありがとうございました!


祖堅正慶(サウンドディレクター)

――まず、今年1年を振り返ってみてのコメントと、来年の抱負をぜひお願いいたします。

祖堅:今年は『漆黒のヴィランズ』が発売されたんですけれど、開発と、オリジナルサウンドトラックと、このオーケストラコンサートの仕事が同時進行だったので……開発始まって以来のしんどい上半期でした(笑)。で、後半は……パッチの制作もいつも通り大変なんですが、それに加えて今回はシステム的なコンフィグやフィルターを入れたりと、基本のシステムに手を加えていたりしていたので、今までやれてなかったところをやっていってるといった感じです。今回のコンサートをやって思ったのですが、新規のお客さんがすごく増えていまして。「オーケストラコンサートというものに初めて来ました」という方が半数くらいいらっしゃったんです。引き続きいろんなお友だちを誘って、冒険したあとに音楽も聴いていただけるとうれしいなと思っています。来年に向けてはとくにノープランですけれど(笑)。開発もがんばりつつ……やりたいですね、コレ(THE PRIMALSのTシャツを示しながら)。

――今回、『漆黒のヴィランズ』制作にあたって、夜の楽曲をピアニストのKeikoさんが手がけていたり、そのほかの曲も祖堅さんや髙田さん以外の新しいコンポーザーの方が手がけていたりと、人が増えてらっしゃるんだなという印象でした。新たなスタッフの方々に向けて、祖堅さんからのコメントをいただいてもよろしいでしょうか?

祖堅:じつはそうなんですよ。サウンドで新しい方を採用するにあたって、効果音のスタッフはこれまでもずっと募集していたんですけれど、コンポーザー(作曲家)枠として新人を採るということがあまりできない環境だったんです。ですが、今回それが叶って新しいコンポーザーが『FFXIV』に参加してくれることになったので、いろいろアレンジの幅も広がりました。……とはいえ教えなきゃならないことは山ほどありますし、彼ら自身も『FFXIV』のクオリティというのがものすごく高いということが身に染みてわかってきたようで、今ものすごく悩んでいるんですけれど……。彼らはとても若いので、その若いエキスを『FFXIV』につぎ込んでもらいたいですね。おじさんばっかりになっちゃっても仕方ないのでね(笑)。そうして新しい風を入れたりして、みなさまに楽しいサウンドをお届けできればと思います。僕にはなかなかできない表現もたくさんあるので、それは彼らがきっとやってくれるはず。僕自身も楽しみにしています。

――祖堅さん的に、これまでと比べてもかなり力を使った年だったかと思いますが……来年さらにチャレンジしてみたいことなどはございますか?

祖堅:オーケストラコンサートもそうなんですけれど、サウンドの形として、BDのようなパッケージング以外の何かができればいいなと思っています。というのは、パッケージだと海外のお客さんには物流的に難しいところもあったりするんですよね。なので、この中身をオンデマンドでどこかにアップできるといいな……などなどいろいろ模索はしているんです。が、技術的に難しいところもあったりしまして。期待はしてほしくないのですが、いろいろトライしようとしている最中ですので、もしやれたらいいなと。あとは、冒頭にも言ったんですけれど……『漆黒のヴィランズ』という大きな拡張パッケージを作った、サウンドトラックも作った、インストアイベントもやった、オーケストラコンサートもやった。あとは! コレ(THE PRIMALSのTシャツを示しながら)をやらないと! 光の戦士たちはたぶんコレを待っていると思うので、早く実現したいです!

――ありがとうございました!


鈴木健夫(リードアーティスト)

――まず、今年1年を振り返ってみてのコメントと、来年以降の抱負をお願いいたします。

鈴木:今年1年は、やっぱり前半は『漆黒のヴィランズ』を作るまでがけっこう大変だったなというのがあります。自分が担当していたところだと、背景……第一世界のフィールドだとか、カットシーンまわりだとか、新種族周りをアニメーションも含めて見ていたりしました。拡張パッケージというのは長い期間をかけて作っていくので、そこを“作り切る”というのがすごく大変ではありました。ただ、自分が期待し予想していた以上に多くのプレイヤーさんから称賛をいただいたというか、楽しんでいただけたようなので……その反応を受けて、今年の後半は個人的にとてもうれしい期間でした。拡張パッケージのタイミングでないとフィールドは追加できないわけですが、そのフィールドを実装することができ、そして楽しんでいただけたということもありますし、今回4年振りくらいの新種族追加も達成できたので、それもよかったです。思いのほか、カットシーンやシナリオを見てくれた方から「すごくよかった」という評判をいただいているので……本当にカットシーンもがんばったかいがありました。

 そして、来年以降についてですね。今回高評価を得られたのって、これまで積み重ねの結果なのだと自分では思っていまして。私だけでなく開発スタッフそれぞれが積み重ねてきたものがあったからこそ、今回の評判につながっているのかなと。それこそカットシーン1つ1つとっても、これまでと何か大きく変えたかというと、じつはそうではないんです。あくまで延長線上なんですね。このまま積み重ねていって、いいものを作り続けていければいいな……というのが来年以降の抱負になります。

――みなさん『漆黒のヴィランズ』制作はとても大変だったかと思いますが……拡張パッケージ3本目ということで、これまでの『蒼天編』『紅蓮編』と比べていかがでしたか?

鈴木:これまでと比べて……1、2位を争うくらいやっぱり大変でしたね。毎回大変なんですよねそういう意味では(笑)。

――『FFXIV』は、拡張パッケージを追うごとに規模も作業量も増えている印象がありますね。

鈴木:そうですね。ジョブなどが増えていくので、どうしても後半になるにつれて苦しむ量が増えていく傾向にあるんですよね、開発目線で言うと。新しい武器を作るにしても、前回の拡張に比べて、新ジョブのぶん……2種類ずつ余分に追加されているわけです。そういう意味ですと、やはりどの拡張パッケージよりも大変にはなってきます。

 また、“それぞれの拡張パッケージで特徴を持たせる”というのも苦労するポイントでして。1回目の『蒼天のイシュガルド』は、フライングマウントを導入できる背景作りにチャレンジするというのがまず大変だったんですね。それと、“画作りの方向性を新生時から大きく変えていく”というのがものすごく苦労した点です。

 その次の『紅蓮のリベレーター』時も、これまでのものを単に積み上げていけばいいというわけでなく、今度は泳いだり、潜ったりしてゲーム体験を変えていきながらストーリーを見せていくというのが大きな変化点でした。

 『漆黒のヴィランズ』の今回は“そういう追加はなし”ということで「じゃあ大丈夫かな……」と思っていたんですが、天候が“無尽光”で、ずっと同じ天候を引っ張ったまま画作りしていくっていうのが、逆に大変なんですよね。今までは昼から夜へ変わっていく画変わりや、天候が変わっていく画変わりだとかに頼れる画作りっていうのもあったんですよ。そうして変わっていくからこそ、プレイヤーがいろいろな体験をできるというのもあった。けれど今回はストーリーを追っていくときに……もちろん“光を掃って夜を取り戻す”という瞬間ではものすごく大きなゲーム体験ができるというのはあるんですけれど、そこまでは無尽光が続いているわけで。いくつものフィールドが同じ見た目ではおもしろくないですし、無尽光があったうえで世界を冒険していくっていうのを作るのは大変でした。また“大変だった”っていう話になっちゃいましたけど(笑)。なので、『漆黒のヴィランズ』が大変だったなと思う部分は、自分にとってはどれもがんばれた拡張だったかなと思っています。

――ありがとうございました!


織田万里(世界設定/メインシナリオライター)

――まず、今年1年を振り返ってみてのコメントをお願いいたします。

織田:本来であれば『漆黒のヴィランズ』の反応などについてお話したいところなのですが、すでに半ば忘れかけていて(笑)。あまりの忙しさに、次のパッチさらに次のパッチ……と追われております。設定とかシナリオ側というのはどうしても上流工程(システム開発・設計において最初に行う工程)になってくる都合上、方々からせっつかれていまして。感慨にふけっている場合ではない状態になっていますね。なので、今の自分としては今年は“次への仕込みの1年”といった印象が強くなってしまっていて……もう前半に『漆黒のヴィランズ』追い込みとリリースとがあったわけですが、そこから通り過ぎてしまっている感じですね。

――その流れで、「来年以降こうしていこう」といった抱負がございましたらお聞きしたいです。

織田:運営期間が長いタイトルなので、作っている側にも慣れといったものがでてきてしまいがちです。ですので、常に新しい挑戦を忘れないことと、あとはプレイヤーさんの動向を常に見守りつつ、寄り添っていければなというところを強く思っています。

――『漆黒のヴィランズ』のプレイヤーさんの反応について、世界設定面で織田さん的に「あ、こういうところに注目されるのか」と思った部分はございますか?

織田:とくに海外での反応なのですが、例えばラケティカ大森林で中南米メソアメリカの神話をモチーフにした設定を使ったことが、やたらと刺さった印象があります。海外のインタビューなどでは「中南米などを取り扱ってくれてありがとう」とも言われて。こちらとしてはそんなに意識してなかった部分でもありますし、日本人が古代文明といってイメージするものとして、「インカとかアステカとかって、かなりメジャーなんじゃ?」と思っていたので、意外な反応だったなと。

――昨年はCEDECでも講演されておられましたが、またああいったところでお目にかかれる可能性はありますか?

織田:お声がけいただければというところと、通常業務との兼ね合いといったとことでございまして……(笑)。ただ、ああいう場に出ていくということは業界的にも大切なことかと思いますし、新しい仲間をお迎えする意味でも重要な場であると考えていますので、そのあたりはよき機会とよきタイミングがあればと思っています。

――お答えしにくいかと思いますが、世界設定本の次の展開などは……。

織田:なかなかお伝えしにくいところではございますが「ありがたいことに、続編を楽しみにされている方がたくさんおられるということは承知しております。」としか言いようがなくてですね……。自分はもともと出版業界にいた人間ですので、たくさん本を作っていきたいという意思があるんですね。ゲームの仕事に追われていると、唐突に本を作りたくなる病気のようなものもありまして(笑)。で、作りたい作りたいという話をするんですけれど……グッズの統括をしている方がですね、「絶対に、通常業務を遅らせるな」と。「それをやるようだったら、どんな状態であろうが取り上げる」と脅しをかけられておりまして……! いろいろと、自分で作りたい本があって企画書とかを出したりもするんですけれど、それが前向きに……自分としてはやりたいけれど、それが実際形になるかどうかっていうのは、取り上げられるかどうかにかかっているかなといったところでございます。今はちょうど仕込みの時期になっているので、忙しくやりつつ、どうにか何かしらの本ができないか狙ってはいます。それが世界設定本かどうかは、まあ置いておいて……。

――密かに楽しみにしております。ありがとうございます!


石川夏子(メインシナリオライター)
髙柳早紀(クエストデザイナー)

――まず、今年1年の振り返りと、来年以降の抱負についてお聞きできるとありがたいです。

石川:とにかく今年は『漆黒のヴィランズ』をリリースできたことですね。あとは気がついたら『FFXIV』のキャラがヒートテックを着ていて……(笑)。駆け足な1年だったなと思います。来年はとりあえずまず2月にパッチ5.2があり……パッチにバリバリ並走しつつ、この勢いを続けていけたらと思うので……休めない(笑)。めっちゃ師走っているので、がんばりたいと思います。

髙柳:今年は……同じように『漆黒のヴィランズ』で上半期ずっと走り続けていて、もうホントに、親の声より聴いた“ラヒッ”(笑)。大変でしたが、これだけプレイヤーさんに喜んでもらえたなら、もう何よりかなと思う1年でした。私はパッチ5.1から“YoRHa: Dark Apocalypse”のクエスト実装をやっていて、来年以降はこれから続いていくヨコオさんとのタッグクエストを盛り上げていけたらなと思っています。

――今年『漆黒のヴィランズ』がリリースされて、あらためて『FFXIV』の物語のよさが再認識されたと思います。そのあたりの声はやはり伝わってきましたか?

石川:はい、それはすごく。ホントにありがたいと感じました。私はもともとオンラインでない売り切りのゲーム開発にいたんですが、そういったタイトルの場合、リリース後3週間もすれば話題はなくなってしまうものなんです。『FFXIV』の場合はMMORPGっていう特性がいい方向に働いているのか、話題が途切れず聞こえてきて、さらにそれを聞いた別の人がプレイしてくれたりしてまた感想をいただき……。私の開発経験で例のないことをしているし、“書く”側としてもこんなに長く連載していることってなかなかないので……新鮮な喜びをいただいております。書く側としても、感想をいただく身としても。

――6年目でさらに評価が上がる作品っていうのも稀有なものですよね。

石川:そうですね、本当にびっくりです。

髙柳:私はメインストーリーのかたわら、カットシーンがあまりないサブクエストのプロットや実装を担当させていただいているんですが、サブクエストについてみなさんに好評のお声をいただき……。自身満々で作らせていただいた“闇色シロップ”のクエストをみなさんに拾っていただきまして。プロット初挑戦だったので、石川さんに「大丈夫かなあ……」と尋ねながらこわごわと毎日過ごさせていただいたので、ご好評いただいて本当にありがたいなと思っています。

――お2人に、これからチャレンジしてみたいと思っていることがありましたらぜひお聞きしたいです。

石川:私じつは2019年のエイプリルフール企画“イシュガルド学園”漫画の原作依頼をずっと待っているのですが……ついに1年なんの連絡もないまま次のエイプリルフールを迎えようとしているので……。お話、お待ちしております(笑)。

髙柳:私は……来年こそ、好みのミッドランダーを特注発注したいなと(笑)。

石川:彼女ヤバいんですよ。疲れてくると全部イケメンにするので、一時期スリザーバウのNPCがすべてイケメンになったり。「ヤバくない!? ちょっとアベレージ下げてくれる?」みたいな。

髙柳:5.0で、じつはイベント班に内緒でミッドランダーの顔を新しく作って。夏子さんに「作ったよ」って(笑)。

石川:ヤバいんですよ。疲れるとすぐにイケメンを作って……。

髙柳:次回は、それこそエレゼンの新しい顔を作るのもいいし。でも私はミッドランダー大好きなので……ミッドランダーとハイランダーの新しい何かを……今これを言ったらキャラ班の方がザワッとするかもしれませんが、どうにかキャラ班の方と仲良くして作っていけたらなと思っています。

石川:ルガディンの子どもとか設定してみたい(笑)。

髙柳:そこはまず織田さんに相談してください(笑)。

――ありがとうございました!


市田真也(リードアーティスト)

――まず、今年1年の振り返りと、来年以降の抱負についてお聞きできるとありがたいです。

市田:今年1年を振り返って……。そうですね、無事に5.0を作り切ることができて、そのあと5.1、そして5.2に向けて進んでいますけれども、そこを日々、チーム全体でうまく進めていくことができてホッとしています。それと、(吉田)直樹さんがさきほど「みんなが成長してきている」と言っていましたが、自分も若手やベテランが力を伸ばしてどんどんいいものを作れてきていると感じるので、この力をうまくまとめて、さらにいいものを作っていきたいなと思っています。来年は……MMORPGって基本的に同じサイクルを繰り返すことにはなるので、自分の中で大事にしているのは、常に新しい体験をプレイヤーのみなさんに届けたいというところです。新しいグラフィックであったり、新しい体験であったり……そういうものを常に入れられrるようにというのを大事にして、やっていければと思います。来年も出し続けられるように、がんばりたいなと。……堅い話ですみません(笑)。

――ずっと『FFXIV』チームで開発を続けてきて……今年とくに変化した点などがございましたらお聞きしたいです。

市田:新しくチームに加わってきてくれているメンバーのうち、『FFXIV』をもともとプレイしてくれていたうえで“開発に参加したい”と思って来てくれているスタッフの数が大きくなってきていまして。そういった新しい方によって“外部から見た『FFXIV』の良さ”のようなものを客観的に教えられることが多いです。また、逆にもともといたベテランのスタッフも、そうした外からの風によって『FFXIV』の魅力をあらためて気づかされ、そこで気づいたことを「ああ、そうなのか。じゃあこうしよう」という形で制作物に生かしたりしています。そうしたなかで、これまでに見られなかった活気が生まれていますね。

――なるほど、開発の第二世代的な活気が生まれていると。

市田:そうなんですよ。若手がすごく押し上げてきてくれて。どの部署もそういう傾向にあると思います。自分自身もありがたく感じています。

――5.0で新種族が追加されていますが、市田さんのお仕事的に、とくに記憶に残っている印象深いモーションはどんなものでしょう?

市田:新種族に絡めると……ロスガルは猫背で独特の形状をしているので共通リソースがあまり使えなくてですね。専用に作らなければならないものがけっこうあり、苦労したなというのがあります。あとは手が大きいので、武器のグリップやマウントの手綱などがおかしくなる場合があり、それを全部あわせたりだとか、新種族ならではの苦労がありました。

――ありがとうございました!


松澤祥一(リードプロジェクトマネージャー)

――まず、今年1年の振り返りと、来年以降の抱負や意気込みをお聞きできるとありがたいです。

松澤:今回『漆黒のヴィランズ』が出て、ビジネスの面でもコミュニティの面でもすごく活気がでました。これはMMORPGのような長期運営するタイトルだからこそのものだと思っていまして、“開発だけでなくプレイヤーの方々とも一緒に作っていけている感覚”というのをすごく感じられるんです。この1年は、それを強く実感できたというのが印象に残っています。

 そして来年に関して言うと、次のファンフェスの発表もありましたけれど、じつはそろそろいろいろな仕込みの準備をしなければならないんです。とくにプロジェクトマネージャーのメンバーは長めのスケジュールを今から組まなければならないので、楽しみであるのと同時に、今からすでに心配事もいろいろ出てきていて……頑張って対応しなければなと思っているところです。

――松澤さんはキャリア的にはかなり長いですが、今年ならではの変化というか、今年象徴的だった出来事などはございますか?

松澤:そうですね……。プロジェクトマネージャーのチームですとか、宣伝のチームもそうですけれど、今いるメンバーがみんなすごく成長を遂げていまして。“チーム”として仕事が進むようになった感覚が強くあります。個人的にはとても助かった1年だったなと。

――今日のお話を聞いていると、吉田さんや祖堅さんもですが、若手の台頭というか、メンバーの成長について“助かっている”と感じている方が多かったようです。

松澤:『FFXIV』はプロジェクトとしての規模がやはり大きいので、1人1人の担当している物事って、全体のうちの一部分ではあるんです。なので、“表に出てきてはいないメンバーがすごく大勢いたうえで成り立っているプロジェクトなのだ”というのは、これまでもすごく思っておりまして。

 例えば少人数のプロジェクトですと、自分が引き受けている割合がかなり大きくなったりもするのですが……『FFXIV』はそうではなく、自分以外の誰かや別のチームの仕事も鑑みた感覚値をうまく作れるかが大事なのだと思っています。プロジェクトマネージャーは、プレイヤーの方々がtwitterなどでフィードバックしてくださったことをまとめてプロジェクト全体に送っていたりとかするんです。そういう、プレイヤーの方々とともに作っているんだということを実感しつつ、次の1年も頑張っていければと思っています。

――『FFXIV』は現在世界で大きな評価を得ていますが、『FFXIV』がこれから目指すべき展開として、松澤さんが今一番気にしているところはどういった部分でしょうか?

松澤:言いたいことはたくさんあるんですが……言えないことばかりなんですよ(笑)。ただ、『FFXIV』は国産のMMORPGとしてはかなり稀有なポジションにいると思っておりまして。例えばフリートライアルを14日間から無期限にするなど、ほかのタイトルがやっていない試みも「うちがやるしかない」と思っています。ここからさらに攻めの姿勢を続けていければと思っているので、ぜひ新しいことに挑戦したいです。とはいえまだ何に挑戦するかは言えないので、それは追々、きっと吉田の口から発表されると思います(笑)。

――ありがとうございました!


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  • 対応機種: PS4
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  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2017年6月20日
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ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: MMORPG
  • 発売日: 2019年7月2日
  • 希望小売価格: 4,200円+税

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: 4,200円+税

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Windows
  • ジャンル: MMORPG
  • 発売日: 2019年7月2日
  • 希望小売価格: オープン

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Windows
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Mac
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ コレクターズ・エディション(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Mac
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Mac
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

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