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感想:『SAO オルタナティブ グルメ・シーカーズ』は美味しいものを食べるだけ…ではなく《料理スキル》で生きるプレイヤーをていねいに描いた良スピンオフ

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 “電撃の新文芸”から11月17日に発売された小説『ソードアート・オンライン オルタナティブ グルメ・シーカーズ』の感想をお届けします。

 本作は、川原礫先生が執筆する電撃文庫『ソードアート・オンライン』のスピンオフ作品。執筆するのは、MFブックスより『八男って、それはないでしょう!』や『野生のJK柏野由紀子は、異世界で酒場を開く』などをリリースしているY.A先生。イラストは『神様のミスで異世界にポイっとされました ~元サラリーマンは自由を謳歌する~』の長浜めぐみ先生です。

 本作は、VRMMOでの料理を体験しようと思ったら、運悪くデスゲーム――《ソードアート・オンライン》に閉じ込められてしまったゲーム初心者の姉弟・ユズとヒナを中心に、料理好きなプレイヤーたちが《SAO》をどうプレイしていたのかを描いた作品です。

『SAO』でグルメものって、どういう切り口でくるんだろう? と思ったら……

 『ソードアート・オンライン』でグルメものって、どういう切り口でくるんだろう? ということで本作を実際に読む前に想像していたのは、《ラグーラビットのシチュー》的な「強敵ではないけどレアで美味いものを捕まえて食べる」のようなモノでしたが、そんなストレート過ぎる予想をしっかりと外して、《料理》スキルをプレイのベースに置いて生きていくプレイヤーたちのお話になっていました。

 物語は、《SAO》内でプレイヤーが経営するレストラン“安達食堂”に訪れたとあるプレイヤーの食事風景から始まります。出てくるメニューはチャーハンや豚のショウガ焼き、ミックスフライ定食……その他にもメニューにはハンバーグや鳥の唐揚げ、ナポリタンなどもある様子。

 安達食堂では、《SAO》の食材でいわゆる“町の洋食屋”を再現したメニューを提供しています。店を切り盛りするのは、全員が料理スキルを持つパーティー《食の探求団》。メンバーは、ユズとヒナの姉弟に加えて、現実世界ではグルメレポーターをしている初老の男性・ロックと、スーパーの総菜売り場で働く主婦・チェリーの4人です。

 さて、『ソードアート・オンライン』の小説やアニメなどを読んでいる方には、彼らと同じく《料理》スキルを持つアスナが醤油やマヨネーズの味を再現したことにキリトが驚いていたシーンは記憶に残っているかもしれません。

 それだけ現実世界の味をゲーム内で作り出すことは難しいわけですが、はたして《食の探求団》はどのようにしてレストランを開業するに至ったのか? 『ソードアート・オンライン オルタナティブ グルメ・シーカーズ』では、そんな彼らの足跡がデスゲームの初日から描かれていきます。

SAOファンには印象深い、あの食材の話も

 小説では、ユズとヒナがどんな経緯でゲームにログインしたのかであったり、パーティーメンバーであるロックやチェリーとの出会いからしっかりと描写されています。

 『SAO』ファンにとっては記憶に残っているであろう、黒パン――キリトがアスナに「クリームをつけると美味しい」と紹介していたアレです――にまつわるエピソードも『グルメ・シーカーズ』には登場します。キリトもクリームをつけることで美味しく食べていたこのパンを、ゲーム開始直後の彼らがどう料理するのかも見どころのひとつです。

 また、デスゲーム開始直後のお話については、ヒナの立ち回りがとてもおもしろいなと感じました。現実世界での彼女は飲食チェーンを展開する企業で働くサラリーマンなのですが、「飲食業は生き馬の目を抜く世界なんだから!」「プレイヤーとして一番に料理を作って販売したというトロフィー、知名度が、今後のお客さんの数を左右する」という彼女は、なんとデスゲーム開始直後からプレイヤーたちの胃袋をつかみにいこうとします。

 これって、しっかりと社会人経験を詰んでいないと出てこない発想ですし、実際、社会人経験のないであろう弟のユズはピンと来ていません。加えてヒナはVRMMOゲームの中で仕事をしようとするべく、きちんと下調べとかをしていたんだろうな~と思わされました。

 その他、高価な砂糖の代用品をどうやって見つけ出すかであったり、彼ららしいやり方でのスキル熟練度アップの方法や、日本人の多くが好きであろうカレーにまつわるエピソードなど、いかにも《アインクラッド》の中で起きたことだと感じられそうな、“食”を切り口にしたエピソードが満載です。

 ……そして最後には何やら《食の探求団》のライバルになりそうな存在も……? 続きがとても気になります!!

Y.A先生&長浜めぐみ先生のタッグによる、もうひとつのグルメな『ソードアート・オンライン』

 ちなみに、同じくY.A先生&長浜めぐみ先生のタッグによる『もしアスナがレストランを開いた場合の、キリトの立ち位置的なお話』という作品があり、こちらは11月10日発売の電撃文庫『ソードアート・オンライン IF 公式小説アンソロジー』に収録されています。本作に興味を持った人は、こちらもあわせてチェックしてみてはいかがでしょうか?

『ソードアート・オンライン オルタナティブ グルメ・シーカーズ』概要

『ソードアート・オンライン?オルタナティブ?グルメ・シーカーズ』

著者:Y.A
イラスト:長浜めぐみ
原作・監修:川原 礫

定価:1,430円(本体1,300円+税)
発行:KADOKAWA(電撃の新文芸)
発売日:2023年11月17日

あらすじ

 VRMMOでの料理を体験してみたかっただけなのに、運悪く《ソードアート・オンライン》に閉じ込められてしまったゲーム初心者の姉弟、ユズとヒナ。

 二人が取った選択は――《料理》スキルを極めること!?

 同じく料理好きなプレイヤーとともに《食の探求団》という名のパーティーを結成。

 美味な食材やレアな調理器具が報酬となるクエストをこなしたり、現代日本の料理再現に挑んだり……料理に全振りな日々を過ごし、屋台をオープン。

 創意工夫を凝らしたメニューで、攻略プレイヤーたちの胃袋もわし掴み!

 SAO世界でのまったりグルメ探求ライフ、開幕!

©KADOKAWA CORPORATION 2020

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