『無双OROCHI3 Ultimate』は前作での要望を詰め込んだタイトルに。庄さんが開発のポイントや苦労話を語る
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- kbj
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コーエーテクモゲームスから12月19日にPS4/Nintendo Switch版、2020年2月14日にPC(Steam)版が発売される『無双OROCHI3 Ultimate』。本作の開発者インタビューを掲載する。
『無双OROCHI3 Ultimate』では、『無双OROCHI3』のすべてが楽しめる他、『無双OROCHI3』で語られなかった真実に迫る新たな物語やさまざまなキャラクターが活躍する舞台裏のエピソードが追加されている。
プロデューサー/ディレクターの庄知彦さんへのインタビューを実施。本作での新キャラや新要素について、開発中のこだわりなどを聞いているので、『無双』ファンはご覧いただきたい。
兼任するからこそ行えるスピーディーな判断
――まず最初に、これまで庄さんがかかわられたタイトルについてご説明いただけますか?
最初は初代対戦格闘の『三國無双』でプランナーを担当しました。当時は現ω-Forceブランド長の小笠原(小笠原賢一)とプランナーは2人だけで、登場キャラクターの半分のアクションを担当しました。
次に対戦アクションゲーム『DeSTReGA(デストレーガ)』をやり、PS2『真・三國無双』まで小笠原の下で開発を行っていました。『真・三國無双』は『2』から『5』まで、リードプランナー、ディレクターとして開発し、その他は『ジルオール インフィニット』の戦闘の手伝い、『トリニティ ジルオール ゼロ』、PS Vita『真・三國無双 NEXT』、DS『That’s QT(ザッツ キューティー)』などもデイレクターとして手掛けました。
そして、スクウェア・エニックスさまと一緒に作った『ドラゴンクエストヒーローズ』シリーズではディレクターを担当し、『ドラゴンクエストビルダーズ2』では、コーエーテクモ側のプロデューサーを担当しました。
――開発チームが社内にあるとはいえ、『ドラゴンクエストヒーローズ』『ドラゴンクエストビルダーズ2』では社外とのやり取りがこれまで以上に多かったと思うのですが、それらを経て、理解したことや変わったことはありますか?
いろいろと気づきがありました。特に、堀井雄二さんの物づくりに対しての考え方から学ぶことは多かったです。
『無双』シリーズを作っていた時も、続編とはいえ初めて遊ぶ人を想定して、ユーザー目線で作っていたと思っていたのですが、本当の意味でのユーザー目線にはまだ及んでいなかったと気づかされることが多く、“目から鱗”なことばかりでした。特に1作目の『ドラゴンクエストヒーローズ』は顕著でしたね。
堀井さんやスクウェア・エニックスの皆さんから勉強させていただいたことは、本作にも生かされていると感じています。
――本作でプロデューサーとディレクターを兼任した経緯は?
プロデューサーとディレクターで仕事の内容がまったく違うので、物量、質というどちらの面でも大変です。ただ、両方を1人でやっているからこそ、スピーディに判断できて、プロジェクトを進められるのはいい所だと思います。
本作は『Ultimate』という位置づけで、ベースとなるものがあるため、物量という点では助かりました。兼任できるできない、した方がいい悪い、というのはケースバイケースだと思いますが、本作はうまくハマったケースですね。
前作を遊んで感じたポイントを開発に反映
――本作の特徴についてお話ください。
物語とキャラクターがあたらしくあるうえで、遊びやすくなっているのが特徴です。オリジナル版を遊んだ人が、ピュアな気持ちで楽しめるのは物語と、新たなバトル。さらにアクションや爽快さを望む人に、やり込み要素や遊びをしっかり作るのがポイントです。
本作の開発メンバーでオリジナル版をしっかり遊んで、いいところ、気になるところをリストアップした結果、ゲームをやりこみたい人に向けた遊びがもっとあった方がいいだろうということになりました。本作で用意したインフィニットモードやチャレンジモードは、それを受けて制作しました。
――今回、オンラインでのアップデート購入という販売方式になりました。
時代の変化、流れを考慮した結果ですね。
『無双OROCHI3』が出て1年で、そこまで時間は経っていません。そのため、前作をご購入いただいた方が再度フルプライスで出すのは適さないかなと。そして、ダウンロード版だからこそできる価格というポイントもあります。それで今回は、アップグレード版のみでご購入いただける形をとりました。
なお、前作を遊んでくださった方は、セーブデータを引き継いでプレイしていただけるので、安心してアップグレード版をご購入いただければと思います。
――開発にあたってのテーマはありますか?
『無双OROCHI3』を遊ばれた人が満足していただけるだけのアップグレードをしつつ、まだ遊ばれていない人にも1本のまとまったゲームとして楽しんでいただけるタイトルにする……この主題のために、物語、システムも含めて、どうやって構築していけばいいかが課題でした。
――物語、システムとも手を加えられたと。
そうなんですが……特にストーリーの追加、変更は大変でした。
『無双OROCHI』シリーズは、『真・三國無双』と『戦国無双』のキャラが邂逅する、新たな物語が展開するため、ストーリーを楽しみにしているユーザーさんが特に多いのです。それもあって、オリジナル版をプレイした方から、ストーリーの追加や掘り下げに対するご意見、ご要望が多数寄せられました。
前作の物語はそのままに、要素を足して補完することで、既に遊んだ人にも納得してもらえることを心掛けました。……今回のストーリーに求めるものは人それぞれで違うとは思いますが、1つの答えとしてやりきったと思っています。
あとは、アクションや成長、操作系統を含めて、システムにも手を入れたいところが多くあったのですが……ゼロから作り直さないと変えようがない、かつ、ゼロから作り直すことが現実的にできないところもあり、そこも悩まされましたね。ここは遊んでくださっている人には関係ない内部事情になるのですが、そういった問題をどうするかを考えて、さまざまなアプローチで何とか実現していくのは苦労しました。
――新シナリオは30本以上あるということで、多く用意されていると感じました。
まず、オリジナル版ではメインストーリーが50本、サイドストーリーが20本ありました。本作ではそれに加え、しっかりキャラを描くために30本追加する必要があるという話に一度なったのですが、アップグレードパックとして考えたときに求められるボリューム、内容など、いろいろ考慮した結果、最終的に35本となりました。
――新たなキャラが加わったビジュアルの並びについてお聞きしたいのですが、どのようにして決めましたか?
キャラの並びには意味があります。このタイトルは『真・三國無双』シリーズと『戦国無双』シリーズのキャラたちの物語で、趙雲と幸村が話のコアにいるので、それを踏まえたうえで新しいキャラをどのように見せるか……前作を担当したプロデューサーの古澤正紀にも確認して決めました。
アクションを楽しんでもらうために神器の変更を可能に
――新キャラの選定理由について教えてください。
先ほど話したように、新たな物語は35本用意することになりました。その中で、キャラをどれくらい掘り下げられるのか……もともといるキャラを掘り下げつつ、新キャラを立てて物語を成立させられる人数は、2~3人が限界だろうと判断しました。
ただ、キャラがたくさんいることは『無双OROCHI』シリーズの最大の特徴。お祭り的なタイトルなので、新たなキャラを楽しみにしている人は多いです。話を彩ったり、影響を及ぼす範囲で出す人数を考えて、メインキャラ以外にゲストキャラ3人を加えることを決めました。
メインキャラの3人については、物語の軸としてガイアとハデスはすぐ決まったのですが、3人目は悩みました。『真・三國無双8』や『戦国無双 ~真田丸~』から1人だけ出す訳にもいかない……最終的に既にいるキャラとの絡み、日本でもアジアでも有名なキャラということで、楊戩にしました。
発表後は国内だけでなく、アジア圏でも大きな話題となり、うまくハマってよかったです。
――参加キャラは、開発チームで会議を行って決められたのですか?
今回に関してはトップダウンで決めています。
チームの中で意見を募集することはあるのですが、基本的に開発に責任をもつディレクターが考え抜いて決めて、それを示すべきだと私は考えています。提示されたキャラに対して、開発のメンバーが膨らませていき、魅力的に作っています。
――ゲストキャラとして、ジャンヌ・ダルク、リュウ・ハヤブサ、アキレウスが登場します。こちらの経緯は?
『無双OROCHI2』シリーズに出ているゲストキャラはいたほうが、楽しいし、お祭り的な雰囲気が出ますよね。物語をより彩るような形でゲストキャラを入れられればと考えました。
本作の物語はギリシャ神話なので、まずアキレウスは出したいな、と。また、『無双OROCHI3』はワールドワイドで遊んでいただいているのですが、リュウ・ハヤブサは北米欧州のユーザーさんや海外販社などからの要望が強く入れることにしました。
ただ……こちらも3人目は迷いましたね。忍者のリュウ、有名なアキレウスときて、3キャラ目は誰だったらバランスが取れるのだろう……と。最終的に、男女のバランス、実在の人物でワールドワイドで有名な人物ということで、ジャンヌ・ダルクに決めました。
――誰か他に迷ったキャラはいるのでしょうか。
個人的には『ジルオール』のネメアを入れたかったですね。『2』のネメアは自分が作った『ジルオール トリニティ ゼロ』のネメアがベースなので、強い思い入れがあったのですが、世界観や知名度など全体のバランスを考慮して、ジャンヌ・ダルクが適していると判断しました。
――新キャラの武器選びの理由は?
最初に決めたのはガイアでした。地母神ということで、神様としてのパワフルさ、豪快さを目指したかったのと、他キャラとの差別化でヘカトンケイルにしました。
ハデスのデスサイズはすんなり決まりましたね。ハデスの武器といえばバイデントが有名ですが、鎌を持っているイメージも強いので鎌にしようと。とはいえ、バイデントはゲームに入れたかったので、神器として入れることにしました。
楊戩は逸話上、三又の刀と哮天犬がメジャーなのでそのまま起用しています。
――神器を付け替えられるようになりましたが、こちらは開発からあがった要素だったのでしょうか? ユーザーから多かった要望なのでしょうか?
どちらからもありましたね。好きなキャラを使うのであれば、自分の好きな神器を使いたい。ただ、キャラの個性がなくなるのではという懸念もあり、付け替えについては開発内部でも意見がわかれました。
最終的に、好きなキャラで自分の好きに気持ちよく遊べることを重視して、やることにしました。
――ただ、キャラ数が多い本シリーズで付け替えができるというのは、大変になるのでは?
はい、おっしゃる通りで大変でした(苦笑)。チェックするだけで時間とお金がかなりかかりますが、神器の付け替えを行えるようにすると決めた以上、やるしかないな、と。また、問題がないのかだけではなく、気持ちよくハマるのかどうかも確認しないといけないので、苦労しましたね。
――今の話とも重複するのですが、キャラが多いことはシリーズのポイントの1つ。だからこその苦労はどこでしょうか?
やはり何につけても作る数も確認する数も膨大になることです。バリエーションの多さ、アクションの調整、不具合の調査、修正には苦労しました。そのうえで、改めていろいろな要素を見直すことにも時間をさいています。
それと、物語で各キャラの出番がどうしても足りなくなることですね。出てくる時間や回数を単純に平等にすることは現実的ではないので、各キャラのファンに喜んでいただける場面、状況をできるだけ用意することを意識しています。ただ、新しいエピソード中に全キャラに対してそれを実現することも難しいので、取捨選択に苦労しました。
――キャラが多いうえで、いいところはどこですか。
たくさんのキャラで遊べる、ということが当然ありますが、同じシナリオでもキャラを変えていろいろと楽しめるのはいいところですよね。選ぶ楽しみ、組み合わせる楽しみがあり、掛け合いが変わったり、アクションの攻略が変わったり、と。あと個人的には、キャラを育てるのが好きなので、いろいろなキャラをいっぱい育てられるのもいいところだと思っています。
――インフィニットモードでキャラの組み合わせを考えるのは、キャラが多いからこそ楽しい要素ですね。
キャラの特殊組み合わせはストーリーモードにもありますが、インフィニットモードでは、経験値や属性パーツが多く入るようになります。本作では組み合わせの自由度の幅をより楽しんでいただけるとうれしいですね。
――多数のキャラがいますが、育てるオススメポイントは?
インフィニットモードを進めれば進めるほど、リワードを得られるようになります。終盤では多くのストック経験値を得られるので、できるだけ短時間で先に進めた方がキャラを成長させやすいです。キャラの数は多いですが、遊んだ方が好きなキャラを育てきったと感じられるような作り、バランスになっています。
ただ、全キャラを転生させてレベルを最大にするのは、相当な時間がかかるとは思いますが(苦笑)。
ユーザー目線と開発目線で本気で挑んだ開発チーム
――新要素ではありませんが、UIの変更や、武器の分解や売却などの機能が使いやすくなりました。何度も行うだけにありがたい変更ですね。
UIの変更などはキャラが多いからこそ、少しでもわかりやすく快適にできればと思った要素です。武器の分解・売却も繰り返し行うため、1回あたりにかかる時間、手数が多いと遊びにくくなります。ここについては、以前よりも快適になったと思います。
――開発を振り返って、どのようなチームでしたか?
やる気に満ちた少数精鋭のいいチームでしたね。ただ、立ち上げの時は正直なところ「厳しい開発になるかもしれないな」と思っていました。
――具体的にはどういうことでしょうか。
今回のメンバーにオリジナル版をずっと作っていたプランナーは1人もいませんし、プログラマーについては2人だけでした。
前作の開発を終えたメンバーは、すでに他のプロジェクトに組み込まれていたためですが、ユーザーの皆様から『無双OROCHI3 Ultimate』を期待する声を多くいただいていたため、新たにメンバーを集めてチームを作ることになりました。
そのような状況なので、若手からベテランまでやる気のある信用できるメンバーを集めました。本作のような特殊な状況、限られた状況でさまざまな苦労があるなか、みんな前向きに取り組んでくれました。若手とベテランの力が融合し、ユーザー目線と開発目線で本気で開発に挑んでいたのが印象的で、結果として本当によかったですね。
――開発時には古澤さんに相談しつつだったのでしょうか?
古澤も青木も付き合いの長い後輩でコミュニケーションをとりやすい関係なので、前作での仕様や意図などについては適宜、確認、相談しながら進めました。といっても本作の責任者は私なので、先輩であることをいいことに彼らの意見や要望を無視したことも多数ですが(笑)。
――庄さんは、開発時に枷(かせ)がある時のほうが燃えるタイプだと感じているのですが、いかがでしょうか?
どうでしょう……どんな状況でも、どんな制限がある中でもベストを尽くさないと気が済まないので、そういう意味では燃えるタイプといえますが、本音を言えば枷のない環境で自由にやりたいです(笑)。
すべてのタイトルで言えるのですが、ビジネスである以上、好き勝手に開発できるわけではなく、コストやスケジュール、ルールや制限は必ずあります。大変なことはもちろんあるのですが、やりがいもあり、楽しくもあるのがゲーム開発のいいところです。
先ほども軽くふれましたが、本作は自分たちがもとを設計したタイトルではないので、プログラム的に変更が現実的に厳しいことや、自分と異なる考え方、ゲームデザインで構築されているところが多々ありました。それをすべて自分の思う通りにするにはゼロから作り直すレベルの話なので、どのようにして自分の思い描く内容にするか、ユーザーの皆さんからの要望に応えるかについては、本当に苦労しましたし燃えましたね(笑)。
――ロキとペルセウスについての物語を加えた経緯をお話いただけますか。
気にされない人もいるとは思いますが、私はオリジナル版をプレイした際に、「本物のペルセウスの話が何もないまま終わっちゃうの!?」と強く思いました。私は伏線を回収しないまま終わるゲームが嫌いなので同じような思いを抱いている人に、スッキリしていただきたいと考えて、本物のペルセウスを加えることを決めました。
そのうえで、ロキとは別のキャラクターとしてペルセウスをプレイアブルにしました。見た目や基本の動きはオリジナル版とほぼ変わりませんが、アクションの戦い方は変わるようにしているので、ぜひさわってみてください。
――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
本作は自分たちもユーザーとしてプレイして、そのときに思ったことを活かすのと同時に、ユーザーの皆さんからお寄せいただいた意見も参考にさせていただきながら制作しました。そういう意味では、本作ならではの、ゼロから作るゲームとは違うアプローチ、開発ができたと思っています。
本作は前作を遊んでくださった皆さんに、より気持ちよく、より満足していただきたいと思って作りました。なので、前作を遊んでくださった皆さんにはぜひプレイしていただきたいです。
また、それだけでなく『無双OROCHI』シリーズ、『真・三國無双』シリーズ、『戦国無双』シリーズが好きな人にも楽しんでいただけるように作りました。前作を購入されなかった人や、爽快な『無双』シリーズをやりたいと思っている人にも遊んでいただければ幸いです。
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無双OROCHI3 Ultimate
- メーカー: コーエーテクモゲームス
- 対応機種: PS4
- ジャンル: アクション
- 発売日: 2019年12月19日
- 希望小売価格: 7,800円+税
無双OROCHI3 Ultimate
- メーカー: コーエーテクモゲームス
- 対応機種: Switch
- ジャンル: アクション
- 発売日: 2019年12月19日
- 希望小売価格: 7,800円+税
無双OROCHI3 Ultimate(ダウンロード版)
- メーカー: コーエーテクモゲームス
- 対応機種: PS4
- ジャンル: アクション
- 発売日: 2019年12月19日
- 価格: 7,800円+税
無双OROCHI3 Ultimate(ダウンロード版)
- メーカー: コーエーテクモゲームス
- 対応機種: Switch
- ジャンル: アクション
- 発売日: 2019年12月19日
- 価格: 7,800円+税