【サガ エメラルド ビヨンド】インタビュー。回復もショップもないガチ仕様!? 今回のサガも普通のRPGじゃなかった【前編/サガエメ】
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スクウェア・エニックスがNintendo Switch/PS5/PS4/Steam/iOS/Androidで2024年4月25日に発売予定の『サガ エメラルド ビヨンド』(サガエメ)。『サガ』シリーズ総合ディレクターの河津秋敏氏と、『サガ』シリーズプロデューサーの市川雅統氏へのインタビューを2回にわたってお届けします。
『サガ エメラルド ビヨンド』(サガエメ)は、8年ぶりとなる『サガ』シリーズの完全新作。種族や目的も異なる6人5組の主人公から好きなキャラクターを選び、自分だけの自由な冒険が楽しめます。
“ひらめき”や“連携”に加え、新たにモンスターやメカなどの多様な種族が加わったタイムライン式のバトル。プレイヤーの選択や周回によって、まったく異なる展開が待ち受ける物語。フリーシナリオの分岐部分を可視化しつつ、目的の導線がプレイヤー自身に見える“エメラルドヴィジョン”など、シリーズの集大成的な要素もありつつ、これまでにない斬新なシステムも用意されており、初心者から濃いファンまで幅広い層が遊べる作品となっています。
発売日も決まり、ファンの期待も日に日に高まっている本作の詳細を、『サガ』シリーズファンならおなじみの河津秋敏氏と市川雅統氏に直撃! 前編では、バトルの仕様から主人公たちそれぞれの物語まで、気になる点をインタビューしてきました。
河津秋敏氏(以下、敬称略):斬新なアイデアと骨太のゲーム性でファンを魅了する『サガ』シリーズ総合ディレクターにして、シリーズの生みの親。『サガ エメラルド ビヨンド』ではディレクターを担当。
市川雅統氏(以下、敬称略):『ロマンシング サガ リ・ユニバース』や各種コラボなど、シリーズの総合的な監修を手掛けている『サガ』シリーズプロデューサー。本作でもプロデューサーを務めている。
前編では、前作の『サガ スカーレット グレイス』からよりパワーアップして遊びやすくなったタイムラインバトルや、フリーシナリオを可視化するエメラルドヴィジョン、ショップを排除した新たな探索要素といったシステム面を掘り下げ。インタビュアーですら驚く、さまざまな要素についてうかがってみました。
連携しやすいけど手ごわいバトル。『サガ スカーレット グレイス』とも違うプレイ感
──ついに発売日が発表された『サガ エメラルド ビヨンド(以下、サガエメ)』ですが、まずはいつ頃から開発が動き始めたのかについてお話しいただければと思います。
河津:プロジェクト自体は、PS Vita版の『サガ スカーレット グレイス(サガスカ)』が出た直後から始まっています。準備自体は、その後の『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望(以下、緋色の野望)』と並行で進めていました。
実作業的には『緋色の野望』を作り終わってからです。どんなゲームにしようかという話は、その段階から始めていました。そこから考えると、2017年から作り始めているので結構長いですね。
──『サガスカ』と同時進行だったのですね。本作のタイトルには『サガスカ』のスカーレット(赤)という単語と同様に、エメラルド(緑)という色が入っていますが、こちらもシリーズの共通点として準備段階からつけられていたのでしょうか?
河津:タイトル自体も、その時に決めていました。最近はナンバリングしていくのもいまいちピンと来ないところがあるので、なんとなく共通性を持つようにスカーレットの次でエメラルドにしようと。市川さんにも「次のタイトルは『サガ エメラルド ビヨンド』ですよ」という話はしていたのですが、その時はゲームの中身がどうなるのかはまったく分からない状態でした。
市川:お話自体は河津さんのなかで漠然とした構想があるところからうかがっていたのですが、「ああ、そうか。次は緑なんですか」という感想が最初です。
──なるほど。これは『サガ』シリーズ自体に共通した特徴だと思うのですが、発表されたあとでもどんなゲームなのかいまいち予想がついていない部分があります。ベース自体は『サガスカ』に近い印象もあるのですが……?
河津:斜め見降ろしの画面で操作する点など、変えなくて良い部分は変えないようにしようという話はしていました。もともとは主にバトル周りへ手を入れて、イベント周りはあまり変えなくていいという話で進めています。ただ、UIは思い切って変えようと決めていました。アイデアの時点から「エメラルドヴィジョン」で緑の線が出るというのも決めていて、UIデザインも、全部そこを中心に動いています。
市川:正直に話すと、最初は『緋色の野望』のパワーアップ版のようなゲームになると思っていたんですよ。ですが、完成してから振り返ってみると、全然違うものになっていました(笑)。
河津:途中までは、その想定で作っていたんですけどね(笑)。変えるところはパワーアップして、変えなくていいところは変えない。なるべく開発期間を短く作ろうと言う話をしていたのですが、結果的に時間もかかり、いろいろと変えるつもりがなかったところまで変わってしまいました。
市川:最初はそうだったんですよね。結果として出来たものは『緋色の野望』とも全然違うプレイ感ですし、パワーアップしているというのがプロデューサーとしての手応えです。
──プレイ感で言うと、前作の『サガスカ』はかなり歯ごたえのあるバトルが楽しめましたよね。今回も期待しています。
河津:基本的には、前作と同じ歯ごたえですよ。今はバランスの最終調整をしている段階ですが、1戦ごとに勝つ満足感、充実感を重視した作りなのは変わっていません。時間つぶしにバトルを繰り返すようなことは、いっさいない作りです。
──前作はバトル自体が厳しいこともあり、3パーティくらいをローテーションしながら攻略する想定だと感じていました。もっとも、慣れてくると野イチゴを食べてLPを回復するといった抜け道もありましたね。
河津:もちろん、メンバーの入れ替えもできます。ただ、前作ほどたくさんメンバーを入れ替える形ではありません。主人公によっても違いますが、ある程度初期メンバーを重視してじっくり育てていった方が攻略しやすい主人公もいれば、新しく入ってきた仲間をどんどん入れ変えて使ったほうがいい主人公もいます。いろいろなバリエーションがありますよ。
──“連撃”ではなく“連携”になっているという違いもありますが、タイムラインバトルの仕組み自体は前作と同じなのでしょうか。
河津:前作は、挟んで倒して連撃するというパズル的なバトルでした。アレはアレでパズル的な攻略法で楽しめたのですが、バトルの本質から言えば少し外れている気がしていて……。もうちょっと、何とかならないかなと思っていたんです。
とくに、ボス戦では挟んで倒すという性質上、敵が1人になってしまうと連撃が使えない制約もありました。ボスと戦うのがメインなのに、どうしても攻略法のためにザコ敵を周囲に置かないといけなかったんですよ。
いろいろな制約があったので、そこを見直していった結果、今回のタイムラインはまた新しい形になりました。連撃ではなく、今までの『サガ』シリーズのような王道の連携という形に戻っています。
──ということは、前作の連撃に比べると連携自体はしやすそうですね。
河津:すぐに連携できますし、見た目で繋がるかどうかもわかります。今までのシリーズの連携だと、キャラが連続して行動しても連携が発生するかはわからなかったのですが、今回は行動を繋げれば確実に連携が発生します。
もちろん邪魔されることもありますが、バトルが始まったときには繋がらなかった連携が、相手を倒すことで繋がったり、敵の位置を移動させるような技で味方同士が繋がったり、まず連携を中心に全体的な攻略を考えていく。これが、基本のゲームになっています。
──前作では“ひらめき”が発生すると、1回分余計に攻撃できるメリットがありました。その代わり、武器によってひらめきが制限されていましたが、今回はどのような形になっているのでしょうか?
河津:どうしても2Dのころと違って、3Dだと無限に技を作るわけにはいきません。なので、ある程度制限されているところはありますが、前作とはひらめきの意味合いが違っています。ひらめくことで連携がさらに伸びていくので、ひらめきは、すごく重要です。
──タイムラインバトルには“恩寵”という運が絡む要素もあったのですが、これは続投しているのでしょうか?
河津:バトルによっては、戦闘に参加しているパーティーメンバー以外の要素が発生します。恩寵とは全然違った仕組みですが、外部の支援などがイベントバトル的に発生する形です。
市川:運が絡むものではないですが、今回は孤立したキャラが1人で連携を起こす“独壇場”というシステムが入っています。恩寵は最後に発動する逆転要素だったのですが、こちらは狙って起こせる最後の逆転要素ですね。
河津:“独壇場”は、敵が1人になったときにこっちが連携するだけだと単純におもしろくないので入れました。場合によってはこちらもやられて1対1になることがありますが、そういったときでも何か大きなものを起こせるのが“独壇場”というシステムです。実際に遊んでもらえれば、逆転したときの快感がかなり高いものになっています。
──前作のタイムラインバトルだと、とくに術が強力でしたよね。その代わり、仕組みをわかっていないと、なかなか使いこなせない物でした。
河津:術は、今回も非常に強力なものが多いです。連携が繋ぎやすかったり、詠唱時間というデメリットを解消できたりする優位な点もたくさん用意されているので、うまく使いこなしてくれるとバトルが楽しいですし、有利になりますよ。術は、少しコマンドRPGに慣れている人のほうが楽しめるかもしれませんね。
──術に限らず、コマンドバトルのなかでも『サガ』のタイムラインバトルは特殊ですからね。『サガスカ』では回復手段がほとんどないので、1人やられると立て直すのも大変でした。
河津:自分は最近、バトルに回復はいらないとますます確信を持っているんですよ。だから、戦闘中の回復はありません!
──えっ!? 回復はなし!?
河津:回復という行動は、無駄に1ターンを過ごしているんです。回復を重視してダラダラ長く続くくらいなら、潔く終わったほうがいい。回復しなきゃ勝てないようなら勝てないんです!
その分、どこでバフを使う、どこでデバフを使う、誰を守る、誰と連携を取る……。頭を使うところは、たくさんあります。とにかく回復してやられないようにしておけば、いつかは相手にダメージが溜まって勝てる。そんな頭を使わなくていいゲームには出来ていないので、しっかり考えてクリアしてください。
市川:とはいえ、序盤から中盤くらいまでは『サガスカ』よりも遊びやすいから安心してください(笑)。前作と同じようにインタラプト技などの特殊な技もありますが、通常のコマンドバトルのように何も考えずにプレイしてもある程度は遊べるようになっています。
だいたい、合間合間にいろいろな仕組みを理解していく作りになっているので、はじめての人でもすごくやりやすいのではないでしょうか。『サガスカ』を遊んでいない方や『ロマンシング サガ リ・ユニバース(以下、ロマサガRS)』から入った人にも、かなり遊びやすいゲームになっていると思います。
──コンソール版のファンだけではなく、運営型ゲームの『ロマサガRS』や『インペリアル サガ エクリプス』から入った新規のファンでも、本作からはじめて大丈夫と。
河津:全然大丈夫です。たぶん、難しい局面になるまでにはゲームの仕組みをご理解していただけているレベルデザインになっていると思います。そこまで行っていただければ、戦略を練って戦える中ボスバトルもありますよ。
──逆に『サガ』シリーズの濃いファンは、難しいバトルを求めている人もいますよね。真サルーインや真ファイアブリンガーくらいの強敵も、やり込んで倒しているじゃないですか。そういった楽しみもありますか?
河津:はい。バトル担当の柴田さん(柴田伯一氏)が物凄く強いボスを用意してくれているので、ぜひチャレンジしてみてください。
市川:まさに一昨日くらいに「強すぎるんじゃないか」「いや、これでいけます」という議論が、社内でありました。ものすごく強いです。過去作の真サルーインや真ファイアブリンガーのような本作最強の敵に関しては、リアルタイムでギリギリまで強くしてから弱くしつつ調整しているところですね。現状だと、あまりに強すぎて「これって、バグなんじゃないか?」とか言われそうなくらい強いので。
河津:普段は「テスターが倒せれば、開発者が誰も倒せなくてもいいよ」と言っているのですが、今回は意外とバトル班も倒せているので大丈夫だと思いますよ(笑)。実際に一度プレイしていただいて、強い敵に勝つ快感を感じていただければと思っています。そうすると、次にまたもっと強い敵と戦いたくなってもらえる。そういうゲームになっています。
楽勝でサクサク倒せて楽しいゲームとは違うのですが、歯ごたえがあるうえで「こんなに強い敵を倒せるなんて、俺は強い!」と自分を褒めてもいい強敵が続々と出てきますので、そこを楽しんでもらえればと。
──前作は、ラスボスも相当な強敵でした。初見だとどう対処していいのかわからなくて、絶望した覚えがあります。
河津:今回はタイムラインの作りが違うので、前作以上に工夫する余地は幅広いと思います。
──種族もたくさんいるので、バトルがより楽しそうですよね。個人的には、“クグツ”と“短命種”という新種族が気になっています。
河津:その2つは、新しいものも入れておこうということで入れました。“短命種”は、名前の通り短命。バトルで倒されることで寿命が尽きてしまうかもしれませんが、ちゃんと生き返りますよ。植物が種を残して枯れてから、また生えてくるような形で生命が続いていく。そんな種族です。
──“クグツ”のほうも、変わった特徴がありそうですが?
河津:クグツは、文字通り傀儡(くぐつ)。ほかの生き物の魂を自分のなかに入れて動いている、意思を持った人形です。人形なのでひらめきもありません。魂を身につけることで強化できるんですよ。ちょっと特殊な仕組みで、種族というよりも人形ですね。
──なかなか思い切った種族ですね。そういえば『サガスカ』だと、バトル中にコマンドを選んだあと「ピンピンピンピンピン!」という演出が入りましたよね。自分は結構好きだったのですが、今回あの演出はありますか?
河津:いや、あそこまでロード時間がかからないのでありません。
市川:懐かしいですね……(笑)。
河津:『サガエメ』は、処理やロード時間が一番長くなるハードでもチェックしていますが、それでも『サガスカ』のように10回くらいピンピンと鳴ることはないです。アレはアレで、戦闘が始まる前に何かが起きる予告になっていたので、自分は好きな演出だったんですけどね。うまく連撃が繋がると回数が増えるので、よし行ったぞ、今回は長いぞという気持ちになれたので。
戦闘のテンポ自体は、前作よりも少し早くなっています。じゃあ、何も考えずにボタンを押していれば勝てるのかと言われれば、そんなことは絶対ありません。ただボタンを押しているだけだと全滅の文字を見ることになってしまうので、ちゃんと考えて戦ってください。
次に何をすればいいのか迷わないエメラルドヴィジョン。やらされている感じもないし、ショップも存在しない!?
──本作には、クエストラインを目で追える“エメラルドヴィジョン”というシステムがあります。これは、いわゆるメインのラインがあって、そこに沿っていけばメインルートをこなせるガイドラインと考えていいのでしょうか。
河津:いえ、オススメのルートや簡単に終わるルート、寄り道的なルートなど、本当にいろいろな線が同時に出ます。どれを選ぶかは、プレイヤーが自由に選んでもらっていいものとして作っているんですよ。
もともと、ゲームの内部には必ずルートが用意されていて、なんでもかんでも自由にできるようには作られていませんよね。どのゲームも絶対そういう風に作られているので、それならルート分岐も含めて最初からすべて見せてしまおう、という意図があります。
普通に考えればストーリーの先がわかるものは隠しておくのですが、そうじゃない。最初から全部見せちゃって、プレイヤーには主体的に選んでもらう。次に起きるイベントのタイトルを見て覚悟してプレイしてもらう。シナリオ自体もプレイヤーが事前に想像した通りになったり、ならなかったりするのを楽しんでもらう。そうした、今までとは違う遊び方を体験してもらいたいと思って作りました。
市川:たとえば、画面に5本の線が出ているとしたら、その線を1つずつ順番で終わらせていくのかな、と思うじゃないですか。じつは、全然違います。何か1本の線を選んだら、ほかの4本は全部消えちゃうこともあるんですよ。
だから、特定の線をたどるとあっという間に終わるというものではないです。『サガスカ』の時は、マップのあちらこちらに行ってポップアップしていくイベントを選んでいく形式でしたよね。今回は、その時間すらも短縮してしまってフリーシナリオを体験できる。そこが、ものすごく変わったところではないかと。
──お話を聞くと少し複雑そうな印象も受けるのですが、いかがでしょうか?
河津:いや、迷うことはいっさいありませんよ。プレイヤーが、次に何をすればいいのか。どこへ行けばいいのか悩むこともないです。だからと言って、やらされている感じや引っ張り回されている感じもないと思います。自分でも、作りながら「やらされている感じが出てしまうかもしれない」と心配していたのですが、意外とそうならなかったですね。
──迷わないのはありがたいですね。『サガスカ』の時はイベントの条件が複雑で、公式設定資料集+攻略ガイドの『緋の天啓』(スクウェア・エニックス刊)の2P目左下に「ゲームの性質上、本書どおりの展開にならない場合もありますことを、あらかじめご了承ください」と書かれていて驚いた記憶があります。
河津:出ていた線が消えることはありますが、線をたどっていけば間違いなく終わりに向かって行くので、そこは安心して遊んでもらえます。
フリーシナリオの『サガ』は「正しい道を歩いているのかな。これで合っているのかな」と、ドツボにハマっているんじゃないかという不安があったかもしれませんが、今回は決してそういうことはありません。
市川:話を進めるうえで詰まることはないですね。最初に、河津さんからエメラルドヴィジョンを導入するという話を聞いたときは、自分も選択している感じや冒険している感覚がでるのか少し心配でした。
ところが実際に遊んでみると、ちゃんと自分で運命を切り開く雰囲気や、冒険している感覚があります。ここは、実際に早くユーザーの方にも触って確認していただきたいですね。バトルもそうなのですが、導入に関してはかなり遊びやすくなっているフリーシナリオだと思います。
──導入に関しては……?
市川:そこはやはり、だんだん手応えが出てくるのは『サガ』ですから(笑)。当然ながら、難しい局面もあります。
河津:今回は、マップ上を歩いてもらう意味や無駄に歩かせないことを意識して作っています。とはいえ、自分の足でキャラクターを操作して、何かを成し遂げていくのがビデオゲームの一番のおもしろみでもありますので、そこも結構意識して作っています。
──フィールドの移動は『サガスカ』の見下ろし型マップに見えますが、世界と世界を繋いでいる“連接領域”は3Dのダンジョンのようなカメラワークですよね。
河津:ほかの部分は、斜め見下ろしの『サガスカ』と同じ形式です。連接領域だけは、世界が繋がっていることを体感してもらうためにカメラを含めてフル3Dの空間になっています。
──前作では建物や街だけではなく、謎の×印がボコっと出てきたり、人や犬がポコンと出現したり、イベント自体が湧いてくるのが斬新でした。今回も同じような形なのでしょうか?
河津:我々は“AR”と呼んでいますが、イベントが発生する場所にはビジョンが見えています。これはプレイヤーにも見えているのですが、実際に主人公自体がビジョンを見ているという設定なんです。単なるUIではなく、その世界の中でキャラクターが見ているビジョンをプレイヤー自身がARで共有して見ている、という仕組みになっています。
──なるほど。マップと言えば、気になっているのがショップの存在なんですよ。公開されている画像を見ても、ショップらしきものがまったくないんですよね。前作でもアイテムを売る店や資金の概念はなかったのですが、鍛冶屋のようなショップ自体はあったじゃないですか。今回は、どのようなショップがあるのか教えてください。
河津:ショップは、思い切って辞めました。
──えっ!? まったくない!?
河津:買い物で歩くのはやめて、その代わりというわけではないのですがアイテムを常時トレードできる仕組みを用意しています。トレード自体は、もともといらないアイテムを処分する場所なんですよ。どちらかと言うとゴミ箱に近いです。そのトレードで、いらないものをフリーマーケットへ出すような形で取引できるようになっています。だから、ショップはまったくありません。
──それはまた思い切ってますね。ショップはないということですが、装備自体は前作と同じくらいの種類があるのでしょうか?
河津:はい。いろいろなものがバトルやイベントで手に入ります。素材を使って強化したり変化させたりする遊びもそのままです。そこへトレードする要素が入ってくるので、遊んでいるとキリがないところでもありますよ。
──河津さんと『サガ』なので、めったなことでは驚かないと思っていたのですが、こうしてお話をうかがうと驚かされてばかりです。
河津:今回はワールド自体が違いますから、ショップを用意しても価値観が合わないんですよ。通貨体系も合わせようがないので、交換のベースが存在し得ない。無理矢理用意しても嘘くさい店になってしまいますし、ここにはお店なんて絶対ないだろうというワールドもあります。じゃあ、そこだけ店がなくてもいいのかという話になるくらいなら、いっそのことまったくないほうがワールドを作る制約もなくなりますからね。
ショップがなくても成立するバランスで作っていますし、なくてもちゃんと楽しめるようになっていますよ。「でも、自分は買い物するのが大好きなのにな~」という人は、ぜひ現実世界で買い物をして楽しんでいただければと(笑)。
──河津さんって、本当にコンピュータRPGの常識に捕らわれないですよね。どちらかと言えば、発想がテーブルトークRPGのような自由さを感じます。やはり、源流はそちらの方から来ているのでしょうか?
河津:そうですね。テーブルトークRPGのゲームマスターをやっていると、お店で売っているものを設定するのが非常に面倒くさいんですよ。何でも売るわけにはいかないじゃないですか。「なんでこんなものを売っているんだよ」と言われてしまう。お店自体にリアリティがないと、世界観が成立しません。そこを考えていくと、いっそのことない方がいい。だから、今回はもうあえて取っ払いました。その代わり、そこを代用するのがトレードになるのかなと思っています。
──言われてみれば、確かに……。今回はゲームボーイ時代の『サガ』シリーズや『サガフロンティア(以下、サガフロ)』のように複数の世界があるので、統一したショップや通貨があると逆にリアリティがないですね。そういえば、発表されている情報を見ると『サガスカ』のヴァッハ神を思わせる“ヴァッハ神(コピー)”というキャラクターがいますよね。もしかして複数の世界の中には『サガスカ』の世界もあるのですか?
河津:いや、直接行けるわけではありませんよ。過去の『サガ』シリーズを遊んだ人が「おや?」と思うようなネタとして入れています。ヴァッハ神(コピー)は、その1つですね。コピーなので本人ではありません。本人が出てくるかどうかは、遊んでもらえるとわかります。
©SQUARE ENIX
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