第19回MF文庫Jライトノベル新人賞入賞作『多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉』眞田 天佑先生にインタビュー。SFや美少女ゲームへの熱い想いが語られる。
- 文
- 米澤崇史
- 公開日時
2023年11月25日にMF文庫Jから発売された小説『多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉』(著者:眞田天佑先生、イラスト:東西先生)。作者である眞田天佑先生のインタビューをお届けします。
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『多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉』は、第19回MF文庫Jライトノベル新人賞の佳作に入賞した作品。
とある事故をきっかけに並行世界を自由に移動する力に目覚めた主人公・湯上秀人が様々な世界を行き来して、異なるヒロインたちと交流を深める、SFと青春ラブコメの要素があわさった世界観が特徴となっています。
今回実施したインタビューでは、その著者である眞田天佑先生を直撃。本作がどのようにして執筆されたか、作家を目指したきっかけから好きなゲームジャンルまで、様々なお話を伺うことができました。
ヒロインの朝美は、最初はアイドルという設定ではなかった
――デビュー作となる『多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉』が刊行となりました。現在の心境はいかがですか?
眞田天佑先生(以下、敬称略):未だに実感が湧いていないというのが正直なところです。自分が見ているのは夢なんじゃないかというか、まだピンと来ていないと言いますか……。
――知り合いからの反応はいかがでした?
眞田:友人には一応、「本を出したよ」と話したんですけども、私が本を出すということ自体は前から知っていたのもあって、「おめでとう」の一言で終わってしまったり(笑)。
一応読んではくれたのですが……普段SFを読まない人たちなので、内容もよくわからなかったみたいで。私も多分そうだろうなと予想はしていたんですが(笑)、これも実感が湧いていない理由のひとつかもしれないですね。
――そのあたりの実感はこれから……といったところかもしれませんね。続いて本作についてのお話を聞いていきたいと思います。まずは本作はどういったアイデアから生み出されたのかを教えていただけますか?
眞田:元々SFが好きで、いろいろなジャンルのSFを読んでいました。最近は並行世界モチーフにした青春モノがいろいろ出ていて、そこから「いろんな並行世界がひとつに混じり合ったらおもしろいんじゃないか?」というアイデアを思いつきまして。
その上でこのアイデアを生かすなら、いわゆるハーレム、ラブコメモノをかけ合わせれば、おもしろいものができるんじゃないかと考えたのが始まりですね。
――インタビューに際して作品も読ませていただきました。ネタバレになってしまうので詳しい内容は伏せますが、とにかく美しいラストシーンが印象的でして、本作のストーリーはどういったところから決めていったのでしょうか。
眞田:あのラストについては、割と早い段階から決まっていました。
並行世界ものを描くとしたら、ラストはこういう終わり方がやっぱり綺麗かなと。最初にアイデアを思いついたすぐ後には、もう終わりも見えていたような感じでした。
――始まりと終わりが最初に決まり、その後から経過を作っていったと。
眞田:そうですね。「このゴールを一番綺麗に見せるには、途中経過はどうしたらいいのか」を念頭に、間の展開を考えていったという流れでした。
――応募の時点での『不確定性青春』からタイトルが変更されています。これにはどのような経緯があったのでしょうか。
眞田:タイトルはすんなり思いつく時と、書き終えても全然思いつかないパターンがあるんですが、今回は完全に後者のほうだったんです。応募原稿を書いている時からずっと考えてはいたんですけど、全然いいのが思いつかなくて……。
『不確定性青春』というのも、応募の締め切りギリギリまで考えて決めたものではあるのですが、自分でもあまりいいタイトルじゃないなとは思っていました。なので担当編集さんから「タイトル、変えませんか?」という話をいただいた時は、二つ返事でOKしました。
――確かに、『不確定性青春』だとちょっと内容が想像しにくいですね。
眞田:はい。ただ、本当に大変だったのはそこからでして、本当にいろんなパターンを考えましたね……。
語感を重視するのがいいのか、エモさを重視するのがいいのかなどと悩みつつ、若干自分のワガママも聞いていただいて、現在の『多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉』に決まりました。
――新しいタイトルも、眞田先生がご自身で考えられたのでしょうか。
眞田:“多元宇宙的青春の破れ~”までは自分の案だったのですが、これでもまだどんな作品なのかわからないという話になりまして。後半の“唯一の君がいる扉”の部分は担当編集さんからアイデアをいただきました。タイトルの候補は、だいたい30個くらいは考えた記憶があります。
――タイトル以外に、受賞後に変えた部分はありましたか?
眞田:一番大きいのは、ヒロインの朝美のキャラクターをガラッと変えたことですね。実は朝美には、もともとアイドルの設定はなかったんです。
――そうなんですか!? アイドル設定は、ストーリーにも深く関わっている要素だったので驚きました。
眞田:元々アイドルはいたんですけど、朝美とは別のキャラクターだったんです。朝美はあくまでも幼馴染で……。というのも、これは審査員の先生からもご指摘をいただいた点なんですが、朝美のキャラクターが弱かった部分があったんです。ここは自分でも弱点だとわかってはいて、ずっと悩んではいたところだったので、それならいっそ2人のキャラクターを合わせてみようと。結果、割といい感じに収まってくれたので良かったです。
――キャラクター以外の要素はどうでしょうか?
眞田:ストーリーの後半も少しエンタメ性というか、わかりやすい盛り上がりを作ったりはしました。ただ、大まかなストーリーライン自体は変わっていません。“並行世界を使う”というアイデアと物語の結末はそのままに、それ以外の部分に手を加えた形でした。
イラストを見て衝撃を受けた、樹里の短いツインテール
――本作は主人公の湯上秀人と、ヒロインの友永朝美が物語の中心となっているかと思います。2人のキャラクターはどのように固まっていったのでしょうか。
眞田:主人公の湯上は、“並行世界を移動できる”という設定が先にあったので、普通の男子高校生が並行世界移動できるとなったら、どうなるかを想像しながら作ったキャラクターです。
だから最初は割と調子に乗っていたりするんですけど、物語が進むに連れて並行世界を移動できることは、実はいいことばかりではないとわかってくるような作りになっています。
――湯上が並行世界を行き来している動機として、「美少女ゲームでヒロインの反応を見るためにセーブして全選択肢を試す」的な記述もありましたが、あの部分はすごく共感できました(笑)。
眞田:ありがとうございます(笑)。私自身も美少女ゲームをやる時は、大体選択肢でセーブしておいて、明らかに外れの選択肢から選ぶんですよ。
そこからロードして他の選択肢も試し、最後に一番良さそうなものを選ぶというプレイをよくやるので、もし現実で同じことができたらやるだろうなと、あの描写を入れました(笑)。
――朝美についてはいかがでしょうか?
眞田:朝美は主人公と対比するようなキャラクターとして設定しました。
主人公が結構根暗な性格なので、ヒロインは逆に明るい感じにしようとは最初から考えていたんですが、そこにアイドルという独自性がくっついたことで、より2人の対比が強く出るようになったのはうまくいったかなと思っています。
――ヒロインであると同時に、ヒーロー的な面も持っているキャラクターだと感じました。
眞田:そうですね。書いていた時は全然考えてなかったんですけど、改めて考えてみると、朝美は3つぐらい側面があるんです。
まず、主人公に近しい幼馴染としての存在というのがひとつ、アイドルという公共的な存在であるというのがひとつ。
最後のひとつはネタバレに関わるので詳しくは言えませんが、一種のボーイ・ミーツ・ガール的要素というか。主人公とともに困難に立ち向かっていく存在という役割もあり、それぞれ違う3つのヒロイン像のいいところ取りをしたキャラクターでもあるなと、今になって思いましたね。
――元々、2人だったキャラクターを合わせるのに苦労された部分はあったのでしょうか?
眞田:いえ、そこまで難しくはなかったですね。自分でも、やっぱり幼馴染属性のみだった時の朝美はキャラクターが薄くて、セリフを考えるのにも苦労していたのですが、アイドル属性が加わったことで、むしろ書きやすくなったくらいでした。
担当編集さんからは、あるシーンで出てくる「私、この世界でセンターじゃなくなってるんだけど!」って詰め寄るアイドルのキャラクターのセリフが良かったという意見をいただいていたことがあって、それならその要素を朝美に合体させてみようと、自分から提案させていただきました。
あとは、「可哀想なところがすごくかわいかった」ということもおっしゃっていただいて、確かに可哀想な女の子ってかわいいよなと自分でも思いまして。それならヒロインをいろいろかわいそうな目に合わせてみるかとの考えに至った形でしたね。
――書いていて動かしやすかったり、楽しかったキャラクターはいますか?
眞田:割と皆書きやすくはあったんですが、具体的に挙げるなら……◯◯◯◯の樹里とか、◯◯◯◯の朝美とか。……すみません、これ大分ネタバレですね(笑)。
――ではそこは実際に読んでいただくことにしましょう(笑)。今話に出た樹里は、自分もお気に入りです。インパクトもあって、物語上ですごくいい役割をやってますよね。
眞田:あとは、最後の章に出てくるとあるキャラクターもすごく書きやすかったですね。中盤のあたりからとても筆が乗っていたと思います。
――各キャラクターのビジュアルについてもお聞かせください。初めて東西先生のイラストをご覧になられた時はいかがでしたか?
眞田:本当にびっくりしましたね! 実は、キャラクターの具体的なイメージとか髪型の指定をくださいを言われた時、キャラクターのビジュアルのイメージを全然持ってなかったんです。
朝美だったら朝焼けの明るいイメージとか、具体的な外見というよりもキャラクターの雰囲気に近い抽象的なイメージのテキストを送ることしかできなくて。
「本当にこれで伝わるのかな」という不安は正直あったんですけど、自分の中でなんとなくもっていたイメージをすごく的確に読み取っていただいて、東西先生には本当に感謝しかないですね。
――とくに印象的だったデザインのキャラクターはいますか?
眞田:樹里に関してはとくに驚きました。元々、ツインテールという髪型の指定はしていたんですけど、私の中ではツインテールって長いイメージだったんです。
長さの指定をまったくしていなかったのもあるんですが、東西先生に上げていただいたイラストを見た時、ツインテールの短さに驚きました。こちらのほうが今風だしかわいいなと思ったので、そのデザインを採用させていただいたのですが、私の想像を超えてきたような感じでしたね。
田中ロミオ氏の小説をきっかけに美少女ゲームに大ハマリ
――本作は美少女ゲームというジャンルのメタ的な構造を生かした作品でもありますが、美少女ゲームへの思い入れはありますか?
眞田:そうですね。私と同世代のオタクはだいたいそうじゃないかと思うのですが、大学生だった頃、18禁の美少女ゲームくらいはやっておかないと、オタクを名乗れないみたいな風潮がありまして。
――(深く頷いて)すごくわかります(笑)。あくまで当時は……という話にはなりますが、オタクとしての一種の教養みたいな形になっていたところはありますよね。
眞田:今はそんなことはないと思うんですけどね。その当時の流れもあって自分もいろいろ美少女ゲームをプレイしたんですが、田中ロミオ先生のシナリオにすごく惹かれました。中でも、『最果てのイマ』は本当に何十回もプレイしましたし、定期的に好きなシーンを何度も見返すくらい好きですね。
――プレイされたのはPSP版ですか?
眞田:最初にプレイしたのはPC版で、後からPSP版もやりました。リアルタイムではなく、発売から結構時間が経ったタイミングですが。
――それはかなりハマっていますね。プレイしたきっかけはあったんでしょうか?
眞田:田中ロミオ先生が書かれた『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』を読んでハマり、「他にはどんな作品があるんだろう?」と過去作を遡ったのがきっかけでした。『CROSS†CHANNEL』もプレイしましたが、これもめちゃくちゃおもしろくて……。本当に、目標と言ったらおこがましいのですが、あんな作品を作りたいなという思いはあります。
――そこから、どんどん他の作品にも興味を持たれたと。
眞田:『CROSS†CHANNEL』は、やっぱり過去作の名作とかで調べたら絶対出てくるタイトルですから。
自然と、他に名作と言われているタイトルにも興味が湧きますし、おもしろそうだなと思いましたね。私自身もそうですが、同じ年代には似たような人が結構いるんじゃないかなと。
あとは、割とあの頃の作品って、最初18禁のPCゲームだったのが、PSPとか他のハードに全年齢向けとして移植されていますよね。そこから興味を持つ人も多いのかなと。
――本作を読ませてもらった時に最初に感じたのが、2000年代から2010年くらいの美少女ゲーム的な空気感だったんですが、お話を聞いてこれはあながち的外れではなかったなと思いました。
眞田:そうですね。自分では意識したわけではないんですけども、とくにその頃の作品からは影響を受けているので、自然とそういう雰囲気が出ているのかなと思います。
――美少女ゲームの中には、本作のようにメタ構造を生かしたゲームもありますし、そうした部分から“そういう雰囲気”を感じ取ったのかもしれません。
眞田:私もそこまで詳しいわけではないんですが、一人のヒロインのルートに入ってしまうとそのヒロインを救えても別のヒロインは救えない問題とかがたまに語られますよね。『CROSS†CHANNEL』では、SF的な設定でその問題を解決していると思っています。私としても、平凡な世界にSF的な設定を使ってそういうメタ構造を作ってみたい思いがあったのは、本作にも少なからず影響している気がしますね。
――作中では量子力学の話も結構でてきますが、以前から興味をもたれていたのでしょうか?
眞田:そうですね。SFを読んでいれば、嫌でもたどり着く題材のひとつですから。『CROSS†CHANNEL』もそうですが、他にもグレッグ・イーガンの『宇宙消失』とか、量子力学や並行世界を題材にしたSF小説を読んでいたので、馴染みはありました。
とはいえ、専門に勉強しているわけではないので、かなり穴のある知識ではあるんですけど、並行世界をネタに出す以上は量子力学に触れておきたかったという気持ちはありました。
――実在する学問を作品の中に組み込むのって、結構大変そうなイメージがあります。
眞田:SFにおける量子力学って、モチーフとしては結構ありきたりなものだと思っているんです。例えばファンタジー小説には、北欧神話をモチーフにした名前とかが当たり前のように出てくるじゃないですか。私の中では、SFにおける量子力学って、あれと同じようなイメージで使わせてもらった部分があります。
小説を書き始めてすぐに電撃大賞に応募していた
――ここからは、主に先生ご自身の話もいろいろお聞きしていければと思います。最初に小説を書き始めたきっかけは何だったのでしょうか?
眞田:もともと小説は好きで、小学生の頃には『ハリー・ポッター』シリーズが流行っていたのもあり、ファンタジー小説をよく読んでいましたね。
そこから年齢が上がるに連れて、SF小説もちょこちょこ読むようになっていったんですが……小説を書いたきっかけというと難しいかもしれないですね。本当に自然に「ちょっと書いてみたい」と思うようになっていたというか……。
――具体的な転機のようなのがあったわけではないと。
眞田:はい。ただ、「このネタを使って、自分だったらこう書いてみたい」といった欲求のようなものは子どもの頃からありました。『ハリー・ポッター』のファンタジー設定を読んで、「自分だったらこの展開をこういう風にしたい」「このキャラクター同士が戦ったらおもしろいんじゃないか」という妄想はよくやっていたので、そこから発展して小説を書くようになった流れだったんじゃないかと思います。
――タイミングとしては、実際に書き始めたのはいつ頃でしたか?
眞田:ちゃんと書き始めたのは大学2年生の頃でした。自分は電撃文庫の作品もよく読んでいたので、その頃には書いた小説を電撃大賞に送ったりもしていました。
――すぐ賞に応募されるというのはすごいですね。1本の作品を完成させるだけでも、なかなかハードルが高いと思うのですが。
眞田:人によっては、1本書くだけでも大変という話も聞くんですけど、私はそういう悩みをもったことがないタイプでして。もちろん苦労がないわけではないですが、とくに意識せずとも、一度書きたいと思ったら最後まで書いていましたね。
――大学2年というタイミングには何かあったのでしょうか?
眞田:きっかけは他にもいろいろあったと思うのですが、それなりに自由な時間があり、その頃にちょうど美少女ゲームをやるために自分専用のパソコンを買い、いろんな作品をプレイしていました。時間と環境、あとはモチベーションの3つが揃ったタイミングだったのが大きいのかなと。
――本格的に作家を目指されたのはいつ頃なのでしょうか? 賞に送るとなると、すでに決意が固まっていたのではないかと思うのですが。
眞田:作家になりたいという願望だけだったら、小学生の頃くらいからあったんです。ですが、実際にはあまり動いてはいなかったという感じでした。
というのも、私が小学校くらいの頃、村上龍さんの『13歳のハローワーク』という本がすごく売れていて。いろいろな職業や、その職に就くにはどういう意識を持てばいいかということを紹介している本なんですが、その時に真っ先に読んだのが作家だったんです。そこでは“作家は、誰もがいつでも目指せる最後の職業で、子どもの頃から目指さなくてもいい”という趣旨の内容が書かれていて、それを真に受けていたというのはありますね(笑)。
だから作家になりたいという夢はあったけど、若い内から目指す必要はないのかな? と考えたりもして、くすぶり続けた思いがずっとあった感じです。いろいろ環境が整った大学2年のタイミングで、もう「今やるしかないな」と。
――影響を受けた作品や作家さんはいらっしゃいますか?
眞田:細かいところを挙げると本当にたくさんあるので、ひとつというのは難しいですが……。
今回の作品を書く上で参考にさせてもらったものを挙げさせていただくと、伴名練先生の『なめらかな世界と、その敵』、小松左京先生の『地には平和を』に『果しなき流れの果に』、フィリップ・K・ディックの『流れよ我が涙、と警官は言った』、アルフレット・ベスターの『虎よ、虎よ!』などで、章のタイトルや一部の用語でパロディ的に使わせていただいています。
あとは今までの話でも出ましたが、田中ロミオさんから受けた影響はすごく大きいと思います。
――美少女ゲームの話題が何度か出ましたが、普段どんなゲームを遊ばれるのでしょうか?
眞田:ゲームについては、やっぱりノベル系が多いですね。最近やった中だと、アトラスさんの『十三機兵防衛圏』とか、スパイク・チュンソフトさんの『AI:ソムニウム ファイル』はすごくおもしろかったです。
あとは、私はソーシャルゲームって普段あまりやらないんですけど、『メギド72』は楽しくプレイさせていただいています。
――やはり、ストーリーに重点を置いたタイトルが多いですね。
眞田:ただ、RPGとかは結構苦手でして、実は『ドラゴンクエスト』とか『ファイナルファンタジー』もやったことがないんですよ。レベル上げとかが必要になると「こっちはストーリーを楽しみたいのに!」という気持ちになってしまって(笑)。なので、基本読むだけでいいノベルゲームを中心に遊んでいるところはあります。
これまで、他人に小説を読んでもらった経験がほとんどなかった
――新人賞を応募された、MF文庫Jというレーベルにはどんな印象を抱かれていましたか?
眞田:……これはすごく話しづらいことなんですが、大学生になってからは主にSF系の小説を読むようになっていったので、実はあまり読んでいなくて……。なので今回、こういう形でご縁ができるとは、まったく思ってなかったんです(笑)。
一同:(笑)。
眞田:でも『ゼロの使い魔』は好きで読んでいました! その頃の印象もあって、キャラクター小説が多いイメージだったんですが、今は変わった作品もたくさんでていますし、最近はいろいろな開拓をしようとしてるのかなと勝手に思っています。新人賞についても、すごく力を入れていただいていると感じています。
――実際に担当編集の方とやりとりをされれていかがですか?
眞田:実は、他人に小説を読んでもらうという経験が今までほとんどなかったんです。なので、自分の作品に対して「ここがおもしろかったです、ここは直したほうがいいと思います」という意見をもらうのがすごく新鮮で……「嬉しいんだけど気持ち悪い」みたいな変な感覚がありますね(笑)。でも、本当にありがたいことだと思っています。
――お話を伺っていると、小説を書かれてすぐに電撃大賞に応募していたりと、かなり賞を意識されている印象があります。そのあたりについてはいかがでしょうか?
眞田:そうなんです。今考えると本当にバカなことをしていたなと思うんですが、あの頃は誰かに読ませるつもりは一切なくて。ひたすらいろいろな新人賞に応募して、結果に一人で一喜一憂していました。
本当なら知り合いに頼んで、意見をもらうほうが絶対に良かったと思うのですが、今思うと恥ずかしかったのかなと。「読んでもらうなら、ちゃんと本になってからがいい」みたいな思いもあって、半分意地になっていたのかもしれません。
――今は、小説投稿サイトに公開されている作家さんも多いですよね。
眞田:いわゆるWeb小説系ですよね。Web小説の場合、ちゃんと読んでもらうには毎日投稿する必要があるというイメージがあって、それは自分にはちょっとしんどそうだなと。
私の場合は、スタートとゴールが明確なほうが書きやすいのもあって、自分なりに完成したものを書いて、新人賞に投稿するスタイルのほうが合っていると感じたので、Web小説というのはあまり考えていませんでしたね。
――今の話にも関わりますが、眞田先生はご自身をどんなタイプの作家だと分析されていますか?
眞田:作品にもよるので、必ずしもそうとは言えないのですが、先程お話しした、スタートとゴールがある程度見えているほうが書きやすいというのがまずひとつでしょうか。
あとは、作家っていろんな書き方の人がいると思うんですが、その中だと自分はアイデアとかを重視するタイプかなと思っています。ひとつのアイデアが出たら、それを膨らませていくような書き方をすることが多いです。
人によっては、「このキャラクターを活躍させたい」みたいな動機で書き始めるタイプもいいて、そこから「おもしろいキャラクターができたから、これを生かせる舞台を考えて……」と広がっていったりもすると思うのですが、そういうタイプではまったくなくて。基本はアイデアとか世界観ありきで、その後にキャラクターを作っていくというタイプの作家だと思っています。
――設定に関してはいかかでしょうか? ある程度書きながら固めていくとか、書く前にガチガチ固めるとかいろいろタイプがあると思うのですが。
眞田:そこまで事前にガチガチに固めるタイプではなくて、最初はふわっとした形でも、ある程度アイデアが固まって来たら書き始めることが多いですね。
ただ、作品によるところはあります。例えば今回の場合は現代が舞台のSFなので、「並行世界に移動できる」というふわっとした設定から始めているんですが、これが遠い宇宙やファンタジー世界を舞台としたものであれば、もっとしっかりと固めてから書き始めていたと思います。
――SF以外に書いてみたいジャンルはありますか?
眞田:たくさんありますね。SF要素がない普通の青春ラブコメとかも書いてみたいですし、戦記モノも結構好きなので、そういったジャンルの作品も書けたらおもしろいのかなと思っていますね。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
眞田:最初に、本が出ている実感がないという話をさせていただいたと思うのですが、読んでくれている人が本当にいるのかという不安もまだあります。
SF好きの方はもちろんですが、今までSF小説を読んだことがなかったけど、本作をおもしろいと思ってくださった方もいるのではないかと思うので、本作がいろいろなSF小説を楽しんでいただくきっかけになれば嬉しいです。
――ありがとうございました。
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©眞田天佑 イラスト:東西
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