『三國志14』越後谷Pインタビュー。AI、成長要素、コラボなどに迫る!
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『三國志14』連載企画第3回は、プロデューサーである越後谷和広氏に本作が目指すもの、開発の苦労談などさまざまなお話を聞いてきた。令和世代最初の『三國志』はどんな形となったのか。その実像に注目していこう!
※このインタビューは2019年12月28日発売の電撃PlayStation Vol.683に抜粋して掲載しているインタビューの全文掲載版となります。
――まずは改めて、『三國志14』が目指したものを教えてください。
『14』は領地の奪い合い、取り合いをいかにおもしろく遊んでもらうかに力を入れた作品になります。過去シリーズで言うと『Ⅸ』『11』から受け継いだ1枚マップ制をより進化させ、勢力の攻防を色塗りで表現して直感的にわかりやすく遊べるものにしています。
――シリーズでは1枚マップ制のものと、全国地図と戦闘画面を切り替えるものとの2種類がありますが、1枚マップ制のメリットはどこにあるんでしょうか?
1枚マップのおもしろさは、自分の動きに対して周囲の複数の勢力が影響を受け、よりカオスな状況が起こりやすいことにあると思います。いろんな勢力の思惑が目に見えてわかりますし、複数の勢力が入り乱れると戦いも盛り上がりますよね。逆にデメリットというわけではないんですが、1枚マップ制は画面がどうしても地味になりがちでもあります。これは企画段階の時点で社内からも指摘があった部分で、見た目にどう盛り上げていくかはとても苦心した部分です。
――確かにゲーム的なおもしろさと、見た目のおもしろさは必ずしも一致するわけじゃないですよね。とても画面映えがするのに実際プレイすると内容が薄いものもあれば、逆に画面は地味でも内容の厚いゲームもあります。
SLGとして“おもしろく”作るのは当たり前で、それをどう“おもしろそう”に見せるかは苦心した部分ですね。SLG好きなら、ヘックスで駒が動いているだけの画面でもアルゴリズム的なおもしろさを感じてもらえると思うんですが。でも、SLGに詳しくない方、シリーズに初めてさわる方にもおもしろさを伝える“わかりやすい演出”ってやっぱり必要なんです。
――具体的にはどんな部分でしょうか?
例えば、カメラのアップの度合いは最終的にかなり寄れるようにしました。いかにも戦争しているような場面を演出しているので、そこはぜひズームで見ていただきたいです。本来そこまでズームにする予定ではなかったので、追加で作り込みをお願いしたモデル担当には「ううっ」って顔をされましたが(笑)。そのぶん、さらにズームにできるようになったことで細かい部隊操作がより指示しやすくなったので、これはやってよかった調整でした。
――開発面で大変だったことと言えば?
いろいろありますが、やっぱりAIは最後まで手こずりました。プレイヤーが裏をかこうとすると付いてこられない部分がどうしても出てきてしまうんです。それを1つずつ潰して、開発側が思いつくことはすべて調整しました。あとは発売後、多くのプレイヤーの方に触ってもらっていくなかで他のパターンが現れたときは、それはアップデートで対応していきます。
――システム面での話ですが、今回副将システムを採用しなかったのは何故でしょうか?
本作では、武将にマイナスの個性を出したのですが、もし副将がいるとしたらそれを相殺するような武将を選びますよね。それが前提の運用になると、バランスを取るために強い部分をスポイルしなければならなくなります。武将の強みと弱みをハッキリ出すために、今回は主将のみとなっています。それと武将の数で面を押し上げていくときに、副将を入れる余裕はないんじゃないかなと。正直副将に関しては開発内では議論にもなっていなくて、ゲームバランスとして今回は副将なしのシステムとなっています。
――前作『13』のときは、とにかく強い塊、強い部隊を作って敵にぶつけるようなある意味おおざっぱな戦いになっていました。確かに副将無しだと運用にいい意味で気を使いそうですね。
実際、周りの味方を助けるような、副将的な個性を持つ武将もいます。それは主力に随伴させるなど連携させて動かしてほしいという方向ですね。ただ、もし本作をすごく遊んでいただいたなかで、副将システムに別の膨らませ方があるなら、先々副将システムを追加していいかもしれません。絶対やらないわけじゃなくて、今は絶対なきゃいけない仕様ではない、ということですね。
――公式サイトでは計略や外交のシステムが公開されていますが、今回はわりとスタンダードな形ですね。
そうですね。今回は1枚マップでの戦争をしっかり仕上げようという意識が強くて、外交や計略面はそんなにひねったことはしていません。計略に関して言うと、じつはシブサワ・コウが計略に対して思い入れが強くて、“駆虎呑狼”や“二虎競食”は是非あの名前そのままでと直接オーダーを受けました(笑)。シリーズでは『2』からずっとある計略コマンドで、言葉にロマンがありますよね。
――武将の成長要素はどのようなものがありますか?
基本的にはいつもの形です。経験値を稼げば少し増える程度で、年齢などによって劇的に変化することはありません。呂蒙のイベントは今回もありますが、例外的に張飛などはシナリオによって能力が変化します(※第2回に掲載)。漢中争奪戦で知力が大きく上昇しています。あ、私は張飛が好きですけど、別に私の指示じゃなくてスタッフが、しれっと入れてきた仕様なんですよ(笑)。
――武将の能力の話なんですが、諸葛亮が知力100、呂布が武力100というのは鉄板として、統率100や政治100がいつも不在なのは何故でしょう?
抜きん出た存在がいないということです。100という数字の持ち主はゲーム中の1番という意味だけではなく、後世に伝説として伝えられるような唯一無二のステータスという意味なんです。諸葛亮や呂布はまさにそれで、統率や政治といったほかの能力に関しては三国志演義にそこまでの存在はいないと思っています。
――今回『プレイデータ収集版』というシリーズでは初の試みが行われましたが反響はいかがでしたか?
思った以上によかったです。日本語限定、Steam限定という条件で、世界中から何万人もの方々に触っていただけて。もちろん収集したデータ、みなさんの意見もものすごく参考になりました。
――その中でもとくに参考になった意見は?
AIの方向性ですね。どんなアルゴリズムが好ましいかのアンケートで、その武将らしい動きをする、キャラクター性を反映させたAIが望ましいという意見が圧倒的だったんですよ。単純に強いAIがいいといった別の意見でもっと票が割れると思ったんですが、そんなことは全然ありませんでした。
――すでに調整が発表されていますが、提案コマンドは強すぎたと思いました。
そうですね。実際、プレイデータ収集版の反応で、提案はすごく意見が集中した部分でした。バランスブレイカーとも言われたんですが、提案自体はいいですよ、っていう意見も多かったんです。その結果、一部の提案は進行フェイズまでいかないと発動しない、成功確率を抑え目にするなど、収集版の結果を受けていい形で煮詰められたと思っています。もともと提案コマンドは『14』の特徴の1つにもなれるようなシステムで、ここを整えられたという1点だけでもプレイデータ収集版をやった価値がありましたね。
――ほかに多かった意見はありますか?
難易度が簡単と言われました(笑)。配布前に「難しいです」と煽っていたこちらも悪いんですが、全然そんなことなかったという人たちは多かったですね。じつはリリース直前はもっと難しい難易度だったんですが、強すぎるとデータ収集にならないんじゃないかと難易度を落としたんですよ。結果的に、そんな手加減は不要でしたね(笑)。
――興味で聞くんですが、収集版をダウンロードした方のうち何割くらいがアンケートに答えてくれたんですか?
3割くらいですね。世界中から、本当にさまざまな意見を頂けました。
――話は変わりますが、『ライザのアトリエ』や『銀河英雄伝説』とのコラボが発表されて驚きました。『三國志』とまるで世界観が違う作品ですよね。
今までの作品でのコラボは、世界観との親和性の高さも考えて選んできました。でも、コラボってそうじゃないところと組んだ方がゲーム的にも話題的にも広がりを持てるんです。ヘタに内容が想像できるコラボよりも、いい意味で「これどうなっちゃうの?」と予想できない組み合わせのほうが、ずっとおもしろいと思っています。
――そうですね。実際『銀河英雄伝説』のコラボはSNS上では大きな話題になったように思います。
世界観的な親和性はなくても、世代的な親和性はあったのかなと(笑)。好意的な声が多く、ホッとしているところでもあります。
――そもそも『銀河英雄伝説』のコラボはどういう経緯で始められたんですか?
『14』のとあるスタッフが言い出しっぺですね(笑)。あと私自身も『銀河英雄伝説』が好きだったということもあります。
――ちなみに好きな提督は……?
ビッテンフェルトですね(笑)。
――ビッテンフェルトは張飛と似たところがありますね(笑)。ちなみにコラボは2月から始まるようですが、発売後のアップデートやいわゆる『パワーアップキット』の展開はどのように考えていますか?
アップデートは作品の鮮度を落とさないことが何より大事なので、定期的に続けていきたいと思っています。今まで『パワーアップキット』でできたアレンジレベルのことはDLCという形で配信して、『パワーアップキット』を出すときはこれまでと違い、まったく遊び方が変わるようなエキスパンション的な内容にしていきたいですね。AIの調整は発売後も行っていきますし、末永く遊んでいただける作品にしていくつもりです。
――個人的にはシナリオやイベントなどのエディター的な要素をユーザーに開放すると、より長く遊んでもらえるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
今時点では開発に手いっぱいでそこまでは考えられないですが、そういうものもニーズ次第で検討していきたいですね。ただ、例えば『13』のシナリオコンテストであるとか、過去の作品でやってきたことは『14』でもできると思っています。
――では最後に本作を楽しみにしているみなさんにメッセージを一言お願いします。
収集版のみなさんのご意見もあり、ちゃんと仕上がったものとして『14』を完成させることができました。社内での評判もよく、みなさんもぜひご期待いただければと思います。
越後谷Pからさまざまな話を聞けたインタビュー。発売後もコラボや調整アップデートなどが行われ、長く遊べる作品になりそうだ。
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三國志14
- メーカー: コーエーテクモゲームス
- 対応機種: PS4
- ジャンル: SLG
- 発売日: 2020年1月16日
- 希望小売価格: 8,800円+税