感想:『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』1話は2回見ると夜霧の表情の変化がよくわかる&知千佳との会話が気持ちいい

米澤崇史
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 2024年1月4日(木)より放送がスタートしたTVアニメ『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』第1話“即死チート”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』1話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

オーラだけはメインヒロインな賢者シオンの見た目がドストライクすぎる

 本作は、アース・スターノベルより全14巻が刊行中の、藤孝剛志さんによるライトノベルを原作としたTVアニメ。

 元々は『小説家になろう』で連載されていた作品(現在は削除済)で、様々な“異世界チート”系の作品がヒットを飛ばしていた2018年頃に掲載がスタート。命じただけであらゆる対象を即死させるという、主人公の能力のぶっ飛び具合が連載当初から話題を呼び、その後刊行された書籍版のシリーズ累計発行部数は140万部を超える人気作品となっています。

 筆者も最初にタイトルを目にした時は、「チート能力もここまで来たか……」と思ったのですが、いざ原作を読んでみると、どんな戦いでも一瞬で決着が付く即死の能力が、物語を面白くするためのギミックとして巧みに使われていて、本当によく出来ているんです。

 個人的には、異世界チート系のジャンルが苦手な人にこそ読んでもらいたい作品と思ったほどで、今回のアニメ化も非常に楽しみにしていました。

 そんな第1話は、主人公・高遠夜霧の能力であっさりとワイバーンが即死するインパクトのある展開からスタート。回想ではクラス丸ごと異世界に転移し、クラスメートに“ギフト”と呼ばれるチートスキルが与えられたことも判明しますが、ここで登場する賢者シオンがとにかく邪悪です。

 異世界転移や転生モノにおいて、主人公に力を与えてくれる存在といえば、神様や女神であったり善的な存在が多いですよね。

 対して本作の賢者シオンは、「賢者が足りなくなったから補充する」だけの理由で異世界に呼び寄せ、理不尽な理由で先生や運転手を殺し、ギフトを授かれなかった生徒を切り捨てるという容赦のなさっぷり。異世界ものというよりは、今にもデスゲームを始めそうなノリです。

 ですがこのシオン、とにかく見た目がかわいいんですよね。事前の情報を一切知らない人に、キャラの一覧を見せて「本作のヒロインは誰か?」を訪ねたら8割以上がシオンを指すのではないかと思えるほど、圧倒的な正統派ヒロインオーラを漂わせています。

 堀江由衣さんのヒロインボイスの力もあいまって、やっていることは外道そのものにも関わらず、シオンが映るとドキドキしっぱなし。見た目と声の力で、ここまでキャラクターが魅力的に見えるのかと痛感しました。

圧倒的な強者でも、即死チートの前に成すすべなく死んでいく

 ただこの作品、酷いのはシオンだけではなく、クラスメートもなかなかです。リーダーの矢崎が誘導した事情があるとはいえ、ギフトを授かることのなかったヒロイン・壇ノ浦知千佳たちをあっさりと囮にしたのはもちろん、先生や運転手がシオンに殺されたことを悲しむような描写もないんですよね。

 クラス丸ごと異世界転移する場合、少しずつ本性が曝け出されて……みたいなパターンが多いですが、本作は割と初期の段階からその状態になっている印象です。

 知千佳をゾンビにして操ろうとした東田、福原、花川の3人組も、まさにその本性を表した典型。

 3人は一度異世界転移を経験し、魔王を倒した実績まであるという、普通なら物語の鍵を握る重要キャラになりそうな存在なのですが、そんな強者でも夜霧の即死チートで実に呆気なく殺されるギャップが、本作の面白いところでもあります。

 個人的には、作品の名物キャラである花川が、下野紘さんの熱演も相まって生き生きと描かれていたのも良かったです。

 花川のギフトは回復系なので、放置した時の危険性が低かったおかげもあると思いますが、比較的常識人の知千佳も花川の扱いに対してはシビアだったので、いつ殺されてもおかしくない状況でした。夜霧の即死チートが本物だと判断し、すぐに完全服従した洞察力と変わり身の速さが生死を分けたなと。

 また、夜霧は知千佳を助けた理由として、「抱きつかれた時に胸が柔らかかった」ことを挙げていましたが、冒頭の映像を見返すと、確かに胸が触れた瞬間に夜霧の表情が変わっているのが確認できます。もしこの時に知千佳の胸が夜霧にあたっていなかったら、本作はまったく違う物語になっていた可能性がありますね……。

 あっさりと強者が倒されるギャップ、コメディタッチなのに次々とキャラクターが死んでいく容赦のなさ、最強だけどちょっと天然ボケな夜霧とツッコミ気質の知千佳の漫才コンビのような気持ちいいやりとりなど、本作の魅力を短時間でうまく凝縮した1話になっていたと思います。

 原作にはなかった、夜霧の過去のエピソードを冒頭に入れたのも、人を殺すことに躊躇がない夜霧のバックグラウンドを理解する上で非常に効果的でした。

 即死チートという主人公の強さに目がいきがちな作品で、実際に主人公の能力は間違いなく“最強”ではあるんですが、殺すことだけに特化しすぎているので、決して“万能”ではないというのが、本作の一番の魅力だと思っています。

 強すぎるが故に生まれる制限と、そこから解き放たれた時のカタルシスが、アニメでどのように表現されるのか楽しみです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

©藤孝剛志/アース・スター エンターテイメント/即死チート製作委員会

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