『姫様“拷問”の時間です』1話感想。カッコいい冒頭から拷問に屈する姫様の落差がデカすぎる&この時間の飯テロは視聴者にも効く

米澤崇史
公開日時

 2024年1月8日より放送がスタートしたTVアニメ『姫様“拷問”の時間です』。第1話の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『姫様“拷問”の時間です』1話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

あっさり拷問に屈する、ちょろ可愛くて面白い姫様の魅力

 春原ロビンソンさんが原作、ひらけいさんが漫画を担当する、『少年ジャンプ+』にて連載中の人気コミック『姫様“拷問”の時間です』。国王軍最強の騎士でもある“姫”が、魔王軍に捕まってユニークな拷問を受ける日々がコミカルに描かれた作品です。

 連載が開始されたのは2019年ですが、2020年には“次にくるマンガ大賞”のWEB部門で2位に入賞するなど、古くから注目を集めていた作品でもあり、筆者もその頃に原作を読んで人気となるのも頷けると感じていました。

 原作は1話完結型の短めの読み切りのエピソードで構成されており、どちらかというと10分程度のショートアニメ向いているというのが個人的な印象でした。なので30尺のTVアニメとしてどうまとめるかに注目していたのですが、まずいきなりの姫様の戦闘シーンからスタートしたのには驚かされましたね。

 しかもこの戦闘シーンのアクション作画が途轍もない気合の入りっぷりで、「見るアニメを間違えたか?」と一瞬思ってしまったほど。このアバンを見た後、ほのぼのギャグ展開が待ち受けていると予想できる人はまずいないでしょう。

 アニメは原作とは少し異なる導入になっていて、最初に姫様のカッコいい姿を見せておくことで、その後の展開とのギャップがより際立つ構成になっていると感じました。

 そして待ち受けるのが、最初の“拷問”であるトースト。本作における“拷問”は、魔王軍から出される食べ物を始めとする様々な誘惑を指しており、姫様はそれにことごとく屈して情報を提供してしまう……というのが本作のお約束とも言える流れにとなっています。

 トーストという誰もが日々食しているであろう食べ物ですが、作画の素晴らしさも相まってめちゃくちゃ美味しそう。グルメ系のアニメも増えてきた昨今、あまりにクドすぎるとまったく美味しくなさそうに見えることが結構あり、演出のバランスが難しいと感じることも少なくないですが、本作は食べ物の演出が主張しすぎず地味すぎずのちょうどいい塩梅に抑えられていて、食欲をかなり唆られました。

 最初こそ耐えていた姫様でしたが、ビーフシチューの残りにトーストをつけて食べるところで完全に轟沈。必死に抵抗して悶え苦しんでいる時の姫様のリアクションにもかなり力が入っており、とくにシチュー漬けのトーストを目の前で食べられた時のヨダレを垂らしながら絶叫するシーンは、白石晴香さんの熱演も相まってインパクト抜群。

 やはり本作は、ちょろ可愛くて面白い姫様の魅力が作品の軸でもあるので、ここにしっかりと力を入れてくれたのは安心感がありました。

リアルタイムで視聴すると姫様と同じ拷問を受ける気分に

 後半でも、たこ焼き、家系ラーメンと次々と待ち受ける拷問にあっさりと屈服する姫様。個人的にとくに良いなと思ったのが、たこ焼きをうまくひっくり返せて喜ぶ姫様と、それを拍手する拷問官補佐官・ダターマの描写です。

 さりげないシーンながらも、姫様のかわいさ、優しさに溢れた世界という、2つの本作の魅力が1発で伝わってくる秀逸な演出になっていたと思います。

 原作だと、家系ラーメンによる拷問はもう少し話が進んでから行われていたもので、初回にこのエピソードをもってきたのには、「“飯テロ”という拷問を視聴者に仕掛けてきた」という明確な意図を感じましたね。

 リアルタイムで本作の放送を視聴する場合は深夜0時スタートになるのですが、この時間帯もなかなか絶妙で、夜食を取るにはちょっと遅いので空腹に耐えないといけないんですね。

 途中までは作中の姫様と心境がシンクロしつつも、結局その姫様は呆気なく陥落して美味しそうに飯を頬張り始めるわけですから、この拷問を耐えきるのは至難の業といってもいいでしょう(視聴後、拷問に屈してコンビニにダッシュして姫様と同類になってしまったのはおそらく自分だけではないはず)。

 なお拷問の結果、姫様は割と国王軍にとって洒落にならない重要情報も吐いていたのですが、魔王軍が弱すぎたり、強すぎる武器は怖くて使えなかったり、魔王軍がまったくその情報を活かせない理由も毎回笑わせてくれるポイント。

 ただ、トーチャーのセリフをよく聞くと「手に入れた情報が役に立たなかったから、姫様の釈放は延期にする」ということも言っていて、魔王軍がもう少しちゃんとしていれば、姫様は第1話で釈放されていたのかもしれません。まぁ騎士をやっている時よりも幸せそうなので、それが姫様にとって良いのか悪いのかは微妙なところですが……。

 また、1話を通して姫様の相棒であるエクスを演じる小林親弘さんのツッコミが本当にいい味を出してます。個人的にアニメのギャグシーンは、ツッコミ側の上手さによって面白さが決まる部分が大きいと思っているのですが、本作のエクスのツッコミは150点といってもいいくらいの完璧な出来でした。

 とくにラーメンが食べたくて地団駄踏み始めた姫様に対して、迫真の「姫様ー!」連呼、さらに姫様の動きにあわせて連呼が止まるシーンは、アニメだからこそ生み出せるギャグシーンの気持ちよさが詰まっていると感じました。

 第1話では、拷問官のトーチャーが食事系の拷問を担当していることもあって食事ネタで統一されていましたが、拷問には食事以外のバリエーションも登場します。いわゆる純粋な“飯テロ”系作品とは結構毛色が違う部分が多いので、毎回違った楽しさを提供してくれのではないかと思います。

 すでに新しい拷問官もちらりと登場しており、今後はどんなユニークな拷問が飛び出して姫様を陥落させるのか楽しみです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

©春原ロビンソン・ひらけい/集英社・国王軍第三騎士団

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