『バーンブレイバーン』1話感想。鑑賞後の“してやられた”感がすごい。この懐かしさと新しさは『勇者』シリーズファンにはこれ以上ないほどぶっ刺さる(ネタバレあり)

米澤崇史
公開日時

 2024年1月11日(木)より放送開始されたTVアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』。第1話“待たせたな、イサミ!”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『勇気爆発バーンブレイバーン』1話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

 本作の監督を務めるのは、日本を代表するトップメカアニメーターでもある大張正己さん。筆者は、生まれて初めて視聴したロボットアニメが、大張さんがオープニングアニメを手掛けた『伝説の勇者 ダ・ガーン』だったこと、数々のハイクオリティなアニメを多数制作しているCygames・CygamesPicturesとのタッグということもあり、個人的にも発表時から注目していた作品です。

 最初にこの『勇気爆発バーンブレイバーン』というタイトルを見た時、『勇者エクスカイザー』からスタートした『勇者』シリーズ系統の新作ロボットアニメかと思ったのは筆者だけではないはず。ところが、1話が放送されるまではブレイバーンの存在は徹底して隠されており、事前のビジュアルやPVから感じられた雰囲気は『装甲騎兵ボトムズ』のようなミリタリー色の強い世界観だったんです。

 ケレン味の強い、ヒロイックなロボのイメージの強い大張さんが監督を務めるのも含め、タイトルと内容のギャップを狙った作品なのかな……と事前に予想していたので、1話を見終えた時には完全に「してやられた!」と思いましたね。

 前半は、事前のビジュアルやPVの通り、自衛隊や米軍で運用されるティタノストライド(TS)と呼ばれる人型兵器の戦闘と、パイロットであるイサミ・アオとルイス・スミスの出会いやドラマが描かれていました。

 演習のシーンでは、ルイスのライノスが撃破された砲撃をギリギリのタイミングで避け、そのまま直接反撃に移りながら攻撃を寸止めするという、凄まじい動きを見せています。。

 このイサミの24式がジャンプするシーンは、メカ好きとして胸が踊った部分でもありました。よく画面を見ると、TSの足で地面を蹴るのではなく、脚部に備え付けられた杭のようなものを地面に打ち付けた時の反動と、背面のブースターのあわせ技で空中に大きく飛び上がってるように見えます。

 空自ではなく陸自で運用されているあたり、TSは航空機ではなく戦車の発展形に近いカテゴリーの兵器だと思われますし、演習が終わった後、イサミの24式が特別な改造がされているのではとルイスが疑った描写から考えるに、あの大ジャンプは本来想定されていない、イサミが独自で編み出した動きである可能性が高いかなと。

 こうしたギミックの使い方で、イサミのパイロットとしての技量がどれほど突出しているかを伺いしれますし、「あれを地面に打ち込んで、機体を固定させれば射撃の安定性が高まりそうだな……」とか、TSがこの世界でどのように運用されるのかの妄想が広がったり、メカ好きとしてワクワクする要素が満載でした。

 イサミとルイスが演習後に酒を飲み交わすシーンでは、全然噛み合っていない二人のやりとりも面白いんですが、ルイスが着ていた“トリコロール”と日本語で書かれた面白Tシャツが気になりすぎて、若干それどころではなかったのが正直なところ。

 トリコロールといえば、ロボアニメ好きとしては主役メカの定番カラーを思い浮かべるのですが、公式サイトのルイスのキャラクター設定には、ロボットアニメ好きということも書かれています。

 描写がないので完全に妄想になってしまいますが、トリコロールカラーのロボットに憧れがあり、日本に観光に着た時に文字を見て思わず買ってしまったのかもしれないなと。そう考えると、すごくルイスに親近感が芽生えてきますね。

最後に登場する真の主役メカに心躍らないメカ好きはいない

 後半では、正体不明の謎の敵の攻撃が始まってから雰囲気が一変します。前半であれだけ凄腕のパイロットとして描かれていたイサミは何もできず、敵増援によってTS部隊も瞬く間に壊滅状態に。

 そんな絶体絶命の窮地に現れる、それまでのミリタリー色の強い世界観にとって“異端”ともいえるヒーローメカであるブレイバーン。この流れにワクワクしない人はいないでしょう。

 これ以上ないほど王道の展開が繰り広げられる一方、コクピットに座らされたイサミが終始困惑しているのが、ロボアニメの世界に迷いこんだ普通の人感があってまた面白い。

 中でも、ブレイバーンの歌が流れている時にイサミが発した、「さっきからなんなんだこの歌は!」の台詞は、ここ数年のアニメで一番笑ったかもしれないくらいツボでした。

 実はこの台詞、イサミ役の鈴木崚汰さんのアドリブだったそうで、あまりにもセンスがありすぎると驚かされたのですが、そのアドリブを採用した大張監督の判断もすごいなと。

 状況をみると、ブレイバーンが意図的にコクピットに流しているかと思うのですが、ボーカルもブレイバーンなので、事前にどこかで収録してイサミに聞かせる日が来るのを待っていたのかと思うとなかなかシュールです。

 イサミが用途不明のレバーを引こうとした時に、ブレイバーンが「まだその時じゃない」と静止するシーンも面白すぎましたが、これはあのお約束の展開で使うためのものと予想します。作品のタイトルが“バーンブレイバーン”なのに、まだ“ブレイバーン”しか出てないですからね(歌ではバンバン言ってるのでそのことかもしれませんが)。

 真面目な部分では、イサミはブレイバーンのことを一切知らないのに対して、ブレイバーンは昔からの親友のように語りかけている二人の温度差が、どういうところから生まれているのかが気になるところ。

 初の実戦だったことを差し引いても、戦闘時のイサミの怯えようは普通ではないようにも見えたので、イサミには何か特別な過去が隠されている可能性は高いのではないかと思っています。

 1話全体を通した印象として、いわゆる『勇者』シリーズ系のロボットであるブレイバーンのインパクトは大きいのですが、大張監督が手掛けた『銀装騎攻オーディアン』に通じる要素も多い印象も受けました。

 『オーディアン』は、いわゆるリアルロボット系の世界観からスタートし、ストーリーが進むに連れてスーパーロボット的な要素が強くなっていくという挑戦的な作りのロボットアニメでして、『ブレイバーン』はそれを1話に圧縮して独自の面白さを加えたような作りになっているなと(『オーディアン』は00年代のロボットアニメに多いミステリアスな作風でもあったので、雰囲気はまったく違いますが)。

 OPに映っているイサミのパイロットスーツも、どこか『オーディアン』を連想させるデザインですし、もう一人の主人公ともいうべきイケメンの仲間がいるという共通点もあり、少なからず意識された部分はある気がしています。

 ただ、もし本作が『オーディアン』のセルフオマージュ的な作りだった場合、ライバルポジションにあたるであろうルイスが今後どうなるのか、かなり不安になりますが……。

 一方で、ブレイバーンが“自我を持ち人間と会話できる巨大ロボット”なのも、『ダ・ガーン』をきっかけにロボットアニメに触れた筆者にとって嬉しいポイントでした。

 『勇者』シリーズのロボットも、人間乗り込んで操縦するものから、人類が作ったAI、宇宙からやってきて地球の乗り物と融合する等、いろんなパターンがあるのですが、“自我を持った巨大ロボット”という存在は、ほぼどの作品にも通じる要素になっています。

 実は大張さんが監督を務められた作品のロボットは人間が操縦するタイプが中心で、ロボット自体が自我をもっているというパターンはほとんどなかったので、ブレイバーンはかなり珍しい存在です。

 大張監督があえて今そのテーマに挑戦するというのにも、ファンとしてエモさを感じますし、ロボットアニメというジャンルの立ち位置が変化した今だからこそ描ける、新しいエンタメ性を感じさせてくれる、素晴らしい1話になっていたと思います。

 また、OP映像の中に『勇者特急マイトガイン』のOPを連想させるカットがあったり、『超重神グラヴィオン』で主人公・紅エイジを演じた鈴村健一さんがブレイバーン役だったり、これまで大張監督が関わってきた様々な作品の集大成という側面もあるように感じられました。

 ここまでブレイバーンの存在を隠して、1話放送後に大きな反響を起こしたCygamesのプロモーションも見事の一言で、この制作陣ならまた面白い仕掛けを用意してくれているんじゃないかという期待感も高まります。

 ロボットアニメファンはもちろんのこと、ロボットにあまり触れてこなかったというアニメファンにとっても、注目の作品になりそうです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

©「勇気爆発バーンブレイバーン」製作委員会

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります


関連する記事一覧はこちら