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アニメ『ダンジョン飯』4話感想。“食”を架け橋にして生まれる世界の調和。本作のよさが詰まった良エピソード!(ネタバレあり)

カワチ
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 TVアニメ『ダンジョン飯』の第4話“キャベツ煮/オーク”の感想をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ダンジョン飯』第4話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。

オークのゾンが初登場!

 九井諒子さんの人気コミック『ダンジョン飯』をアニメ化した本作。前回の第3話までは劇場先行上映されていたので知っていたファンもいると思いますが、今回の第4話からは誰も観ていない未知の展開に突入しました。

 なお、今回の第4話からコミックス2巻の内容になります。

 前回の第3話はTRIGGERの著名スタッフが多数参加する、じつにTRIGGERらしい作画が印象的でしたが、今回の第4話はYostar Picturesも作画に参加しているそうで、『ダンジョン飯』の雰囲気はしっかりと再現していながらも、前回とも雰囲気の異なるものになっていましたね。

 4話の演出を務めた河野友紀さんは今回が演出デビューで、Yostar Picturesの原画マンも入社1~3年めの新人だったとのこと。第4話は素晴らしい出来でしたし、今後もいろいろな作品で今回のスタッフのお名前を見ることになりそう。

 第4話はゴーレムで作った“キャベツ煮”を食べる前半と、食べきれない野菜を物々交換に持っていく後半に分かれていました。

 第3話の動く鎧”どう食材に使うのか分からないものを見事に“食”に関連したエピソードにしていましたが、今回のゴーレムもうまかったですね。99%が土で出来ているゴーレムの体でセンシが野菜を栽培しているとは思いませんでした。

 これまで登場したモンスター食はどこかグロテスクな部分もありましたが、今回のゴーレムの体で栽培された野菜を使った“キャベツ煮”は普通の野菜と変わらないので美味しそうでした。マルシルも満足そう(笑)。

 今回の第4話はセンシの良さも詰まった回。魔法で火を起こそうとするマルシルに対し、火打ち金を使う選択をしたセンシが、「何かを手軽に済ませると何かが鈍る」「便利と安易は違う」と語るシーンは印象的でした。

 また、食事が終わったあと、センシがトイレの清掃をしたり、肥料を撒いていることも明らかに。ダンジョンの秩序を守るため、誰もやりたがらないことを人知れずやっていたセンシの実直さや誠実さが伝わりましたね。

 なお、勝手にゴーレムを動かしていたセンシにマルシルが怒るシーンがありましたが、原作コミック7巻の巻末マンガ“モンスターよもやま話”ではゴーレム技術者たちの苦労が描かれています。

 こういう細かいネタも『ダンジョン飯』の魅力なので、アニメと原作を合わせてチェックしてみて欲しいですね。とはいえ、前回の第3話は本編のなかに“モンスターよもやま話”が上手に組み込まれていたので、ゴーレム技術者の話もいずれアニメで描かれるかも。

 見どころは後半の展開。大量の野菜を持ち運ぶ一行ですが、首と鎧の間ににんじんを刺すライオスやフードにキャベツを入れるマルシルなど、そのビジュアルがすでにおもしろかったですね。

 原作でも面白かったですが、アニメでカラフルな色が付くことでより滑稽に。ライオスたちが物々交換のために訪れる酒場は理由があって地上に戻れない冒険者が多い淀んだ空気が特徴で、そのなかに体中に野菜をまとったライオスたちが訪れるというシチュエーションがシュールでした。

 商人のもとを訪れるライオスたちですが、そこに食料を略奪するオークが現れ、酒場の客たちが殺されていきます。食べることが題材の『ダンジョン飯』は明るい雰囲気のアニメですが、根幹にあるのは死と隣り合わせであるダンジョンRPGを模した世界であることを思い出させます。

 また、ファンタジー作品で描かれ続けてきたテーマである、異なる種族間の抗争は『ダンジョン飯』でも重要な要素として出てきますが、今回はその複雑な種族問題がはじめて浮き彫りになりましたね。

 この酒場を襲ったオークですが、じつはセンシの知り合い。家族を食べさせるためにライオスたちの食料も奪おうとするオークですが、センシは食べ物を分け与える代わりにオークのキャンプに泊めて欲しいと提案。じつはセンシの目的はパンを作りたいだけで、深く物事を考えていないのも彼らしくてよかったですね(苦笑)。

 オークのキャンプに着いてからは、オークの“かしら”であるゾンが息子に人間やエルフの争いに敗れてダンジョンへと逃げることになった経緯を話し、そのことに対してマルシルがオークが略奪を繰り返していたからであると正当性を主張する展開。

 緊迫感あるシーンですが、マルシルもゾンもパンの生地をこねていたり、センシがマイペースに準備をしていたりと、どこか滑稽。

 ただ、“お互いに、どんな種族であり、どんな過去があっても、それぞれ食事をして生命活動をしていることには変わりがない”ということが伝わる大事なシーンでもありました。

 準備が出来たあと、出来上がったパンを奪おうするゾンですが、息子が彼にある素朴な疑問を投げかけることに。ここはゾンが“迫害され、奪われてきたものの立場”を思い出すシーンになっていてうまかったですね。声優陣の芝居もいいので、ぜひアニメで!

 今回は前半でダンジョンの調和が保たれている理由を描きつつ、後半で自分たちも変わらないことを描くという素晴らしい構成のエピソードでした。

 次回は原作通りならあのキャラクターが登場……!? 今から楽しみです!


カワチ:RPGとビジュアルノベルが好きなゲーマーで、誰にも気付かれないようなマニアックな小ネタを記事に織り込むのが好き。深みのあるゲームが好きかと思えば、本当は肌色が多ければなんでもいいビンビン♂ライター。


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©九井諒子・KADOKAWA刊/「ダンジョン飯」製作委員会

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