感想:『姫様“拷問”の時間です』5話。姫様がイケメンに見える日が来るなんて…。健気に待ち続けるマッドカイザーさんの姿には胸が痛くなる(ネタバレあり)

米澤崇史
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 2024年2月5日に放送されたTVアニメ『姫様“拷問”の時間です』第5話の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『姫様“拷問”の時間です』5話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

姫様と拷問官たちの現在の関係性が垣間見えるほっこりエピソード

 まず初っ端からトーチャーに川岸へと連れてこられ、川遊びを期待してがっかりする姫様がかわいい。拷問の内容が焼きマシュマロと知り、川遊びへの変更を自分から提案する姿は、もはや最初から屈する気満々にしか見えません。

 しかしその姫様はマシュマロがさほど好きではなかったということで、少しは抵抗できるかと思ったのですが、マシュマロに焦げ目がついた瞬間に勝負がつくのはあまりにも早すぎました。

 速攻で姫様から情報を引き出したトーチャーでしたが、今回は2回目の拷問を命じられることに。「城の門番は炎に弱い」という情報が魔王様のお気に召さなかったようで、人間は普通火に弱いと言われたらそれはそうなんですが、一応は弱点を言っているだけ、今まで聞きだした情報の中では比較的マシな方なのではないかという気もします。

 しかし、その2回目の拷問を命じられ、思い悩むトーチャーの姿は非常に良いです。姫様が一方的に絆されている印象もありますが、トーチャーだってあんな幸せにしてあげたくなる存在である姫様と接し続けて、何も感情が動かないわけがないですからね。

 そしてそんなトーチャーの様子を察して、自ら進んで秘密を話す姫様。拷問を躊躇っている様子のトーチャーを「甘い」と断じる時の達観した表情は、姫様がこれまでハードな世界で生きていたことを改めて思い出させてくれます。まさか、姫様が心からイケメンに見える日が来ようとは。

 トーチャーに「貴様に落ち込んでいる顔は似合わんぞ」と告げて、立ち上がって手を差し伸べるまでのシーンの作画も素晴らしい。姫様の表情の変化だったり細かい髪の揺れがすごいのはもはやもちろんなのですが、個人的に感心したのが姫様が立ち上がった瞬間のカットです。

 姫様が地面に腰掛けているところから立ち上がる瞬間は、上半身のアップに画面が切り替わっているので、足元がまったく見えないんですが、姫様の身体の運び方だけで「立ち上がる瞬間にジャンプして着地した後、もう一回小さく飛んで身体の向きを変えたんだな」というのがなんとなく分かる動きになってるんです。

 こういうさりげない動作がめちゃくちゃ自然に描かれているのが本作のすごいところだなと。なんかもう毎回「作画すげぇ」と繰り返し言っているような気がしますが、実際本当にすごいので許していただきたい。

 加えて印象的だったのが、陽鬼と陰鬼が合流する時のやりとりです。姫様が二人の姿を見た時の姫様の心から嬉しそうな様子、「結構あらがったけど屈したよぉ」とあっけらかんに話すところは、もう完全に二人を拷問官としては見なしてないですよね。

 流れを考えると、進んで秘密を話してくれた姫様へのお礼として、仲良しの二人を呼んだんじゃないかと思いますが、もしそうなら連絡があった瞬間に爆速でやってきたことになり、二人も姫様との時間を楽しみにしているのがよく分かります(トーチャーが元々呼んでいて、遅れて到着した可能性もありますが、それはそれでトーチャーの優しさが溢れてて良いと思います)。

 あとは、マシュマロに焦げ目ついた瞬間には即墜ちてましたが、姫様にとってはあれが「結構あらがった方」なのもツッコミどころでしょうか。

てぇてぇ空間の裏で犠牲となったマッドカイザーさんを僕らは忘れない

 後半のサウナのエピソードは、貴重な日焼けした姫様の姿を見ることができました。並んでいるママが大きいのも手伝って、夏休みに遊びまわって帰ってきた小学生にしか見えなくなってきますが、前半で川遊びしていた時のノースリーブのシャツにあわせた日焼け跡になっているのは、さすがの拘り。

 確かにサウナは今までの中では限りなく拷問に近いと思いましたが、いきなり水風呂まで行くのはなかなかレベルが高いですね(筆者もたまにサウナは入りますが、出た後はぬるま湯派です)。

 ただこのエピソード、何か足りないなと思っていたのですが、エクスおらず姫様を制止する存在が誰もいなかったことに終わった後で気づきました。ツッコミ役が不在となると、また普段と違った雰囲気になりますね。

 肝試しと思わせて陽鬼のお見舞いがメインとなったエピソードは、前半で陽鬼たちと姫様がどれだけ仲良くなっていたかが描かれていたので、姫様が速攻で秘密を吐いても「そうなるよね」という納得感があります。もはや友達を通り越して、完全に親友といえるようなレベルになっています。

 ただ、そんなてぇてぇなやりとりが繰り広げられる裏で、姫様への復讐を果たそうとしていたマッドカイザーさんのことを思うと胸が痛みます。西の塔のボスで、真っ二つにされても再生できる回復能力を考えると相当に強い魔物だと思いますが、姫様はともかくトーチャーにすら存在を忘れられていたのが泣ける。

 肝試し参加者の中で、唯一事前にお面を用意していたくらいですから、前から姫様を脅かせる日をウキウキで待っていたのでしょう。エンディングが流れた時、「マッドカイザーさんは!?」と焦ったのですが、Cパートでなんとか思い出してもらえて安心しました。

 魔王軍がタイムカード制じゃなかったら、マッドカイザーさんはこの先も永遠に姫様を待ち続けていた可能性もあったかもしれません。きちんとした勤務体制が構築されているのはさすが魔王軍で、きっと時間外の手当などもしっかり出してくれるでしょう。

 5話は前半が川遊びという一つのエピソードにまとまっている、少し変則的な構成になっていたのですが、川遊び→日焼け→サウナ、川遊び→仲良く遊ぶ→お見舞いと、前半で描いた描写が後半の2つのエピソードへの流れとして生かされていて、30分アニメとしての繋がりを今回もしっかり感じとれるのが本当にうまい作りになっているなと。

 冒頭のアバンでマッドカイザーさんを出して不穏な空気を漂わせるのも効果的で、最後まで見終わった後に最初から見直すと、冒頭が面白シーンに早変わりします。是非、冒頭からマッドカイザーさんの勇姿を見返してみていただきたいですね。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

©春原ロビンソン・ひらけい/集英社・国王軍第三騎士団

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