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『Wo Long』発売1周年記念インタビュー。描きたかった三国志や散りばめられた小ネタからなど、発売1年経った今を訊く

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 コーエーテクモゲームスは、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam、Microsoft Store)用ダーク三國アクションRPG『Wo Long: Fallen Dynasty』のゲーム本編と追加DLC全3本などを収録したコンプリート版『Wo Long: Fallen Dynasty Complete Edition(以下、CE)』を、2月7日にダウンロード版専売で発売。

 また、3月3日には『Wo Long』が発売されてちょうど1年を迎えました。

 これを機に本作の開発スタッフである、プロデューサー兼ディレクターの平山正和氏と、プロデューサーの山際眞晃氏にインタビューをしてきました。

  • ▲プロデューサー兼ディレクターの平山正和氏
  • ▲プロデューサーの山際眞晃氏

※インタビュー中は敬称略

――1周年おめでとうございます。この1年いかがでしたでしょうか?

山際:この1年間、ほとんど収集と分析でした。データから分析できるものだけでなく、開発陣でプレイヤーの方の動画やX(旧Twitter)などのSNSの投稿を見たり、サイトの意見をチェックしたりしていました。こういう楽しみ方があるなとか、これは感触が良くないななど、意見が多い部分を分析してどうやってアップデートしていこうかという連続でした。面白そうなアイデアを形になるまで自分たちでテストして修正しての繰り返しでした。

――この1年を通して、国内の反響というか感触はどうでしたか

平山:発売当時に関しては一番驚いたのはプレイヤーの皆さんのプレイスキルの上達が予想以上だったという点です。新規IPというところもあってとっつきやすさ、純粋にアクションに集中していただけるように、というのは結構意識して制作しましたが、実際に発売されて化勁をバンバンとるという映像などは、やっぱり印象的でした。

山際:たしかにプレイヤースキルが上手な方が多い印象はあります。プレイヤーに触っていただく機会は東京ゲームショウ2022が最初でしたが、『仁王』とはまた違った化剄中心のゲームというのもあって、「これぐらいの難易度だったら多分クリア率これぐらい」みたいに想定してたところが全然違くて(笑)。クリアした方にプレゼントする景品Tシャツがかなり早くになくなっちゃいました。
 反響という点では、国内の情報は言語や時差の影響がないぶん集めやすいので、まずはじめの反応として確認することは多かったと思います。

――Xの場合、自分から『Wo Long』で探しに行くのですか?

山際:探しに行くことが多いです。『Wo Long』という検索ワードを軸に、もちろん感想のみで詳細が分からないこともありますが、パッチ出した直後は、ここが良かったとかこれが分からなかったとか、伝わってなかった部分みたいなところとかは拾いやすかったですね。
 もちろん意見そのままを調整するわけではありませんが、チームのメンバーと相談して、もしかしたらこういうところが伝わってないのかなとか、こういうところが受けてるのかななど、判断材料として活用してます。

平山:チーム内に中国人や英語圏のスタッフも在籍していますので、中国のSNSをはじめ外国語のできるスタッフに反応をまとめてもらって、適宜チームみんなで見ることはやっていました。

――国内と反応が大きく違うことはありますか?

山際:欧米は三国志のストーリーが広く浸透していないこともあり、アクションに関する意見やDLCの新武器や追加コンテンツに対する感想、フィードバックが多かったです。
 逆に中国は想像以上にストーリーへの熱量が高かったです。なかでも時代考証に対する部分ですね。「歴史的背景も含めて開発陣は分かってる」みたいな意見があったのは本場に認めてもらえたようでうれしかったです。

――今回のストーリーでもっと深掘りしたかったけど収録できなかった話や内容はありますか?

平山:まず『Wo Long』に関しては、「三国志は知らないけどアクションゲーム好き」という各国のプレイヤーにも遊んでいただきたいと考えていましたので、開発序盤から三国志の冒頭(黄巾の乱)から描こうと決めていました。

  • ▲後漢末期に猛威を振るった黄巾の乱の乱から物語が描かれます。

 そのため、ゲーム自体は三国志の物語の途中でエンディングを迎えます。『Wo long』以降の時代は、まさにこれから三国鼎立して大勢の軍師が出てきて、戦略が巡るような盛り上がりをみせていくのですが、そういった時代は今回の物語とは別の魅力がある時代だと思っていますので、そこはタイミングがあれば描いてみたいと考えています。

山際:私は「蒼天航路」が好きなので、郭嘉や荀彧といった軍師のキャラクターを深掘りしたかったです。ただ、今回は時代的に描きにくかった部分ですが、三国志において軍師のポジションはやっぱり特別感があると思うので、もう少しエピソードを入れたかったですね。

※蒼天航路:曹操を主役に据え、独自の解釈で三国志を描いた傑作漫画。全36巻。文庫版全18巻。

 あとは本編で描き切れなかった部分は、DLCで深堀りしています。もちろん最初からDLCに回そうと決めていたわけではなく、物語を作っていくうえで泣く泣くカットしたエピソードをDLCに収録したという流れです。私は孫策のエピソードがとても好きなので、DLCで実現できたのは嬉しかったですね。

平山:私の好きな武将は甘寧ですが、本編で描く時代的にやや脇で登場する形になってしまうので泣く泣くあきらめていました。DLCでは孫権、孫策陣営と各陣営でのサイドストーリーみたいな描き方にしたので、ここで登場させられるんじゃないかと思って入れたところはありました。

山際:あとはあれです。横山光輝氏リスペクトなので「げえっ!」ていう台詞を入れたかったんですよ(笑)。最初「げっ! 趙雲!」という台詞があったのですが、ここは「げえっ!」にしようと。そういった『横山光輝 三国志』を知ってる方だったら、ちょっとにやけてしまうシチュエーションは要所には入れたいなと思っていました。

  • ▲原典となる『横山光輝三国志』では、曹操が赤壁の戦いに敗れて敗走に敗走を重ねた挙句、最後に出会った強大な敵関羽。まさに「げぇ!関羽」。その大人気シーンをオマージュしたのがこの「げぇ! 趙雲!?」のシーン。

――1年を通して色々進化してきたと思うんですけど、特に成功したと思っている点と逆にやり込みが足りなかった部分ってありますか?

山際:アップデートでよくなった点だと士気システムでしょうか。発売当初は、本作独自の成長システムによる戦略性を評価いただいた一方で、仙術の制限をはじめ、縛りの要素がやや強かった部分がありました。
 制限があることで「この術は今使えないけども後々使えるかもしれないから保持しておこう」とか、「序盤で有利だから終盤には使えないかもしれないけど、この仙術を積んでいこう」などの試行錯誤が面白くなるので狙いは悪くないと思うのですが、強すぎたのかなと。CEから遊ぶ方にはより楽しんでいただけるのではないかなと思います。

――CEから『Wo Long』を始める人に向けて、どこに注目していただきたいでしょうか

平山:本編プラスDLC3つ。あと各社とのコラボレーションのコンテンツをはじめ、大ボリュームになっている点でしょうか。発売からこの1年間のアップデートを通じて遊びやすさの改善やバトルシステムの改良など、根幹の部分をしっかり磨いてきたところもあるので、知ってはいたけどまだ手に取ったことがないっていう方に関してはぜひ触ってみていただきたいです。
 あとは三国志を知らないっていう方に関しても、三国志の頭から描くようなストーリーになっているので、入門編として手に取っていただけたら嬉しいです。


  • ▲DLCで追加された武器は、手甲、長剣、長鞭の3種。画面写真は長鞭を使用しているところ。ほかの武器とは全然異なる特性を持つ、ちょっと上級者向けの武器。

山際:PC版にはCEの体験版がありますので、気になる方はぜひ触っていただきたいです。DLCで追加された武器種も使えるので、アクションの手触りなどを確認していただけると思います。また体験版のセーブデータは製品版に引き継ぐことが可能なので、一旦手に取っていただいて続きが気になったら、ぜひ製品版をプレイしてみてください。

  • ▲アクションゲーム『Lies of P』とのコラボ武器。
  • ▲アクションゲーム「NARAKA: BLADEPOINT」とのコラボ装備。

 中国のアクションや武術を、どうやったら気持ちよくゲームに落とせるかなと目指していた部分があるので、さまざまな武器からその気持ちよさ、楽しさに酔いしれてもらいたいですね。

――“コンプリート”エディションということで、完了、完成ということになると思いますが、これ以降『Wo Long』はどうなるのでしょうか?

平山:不具合対応などは実施するかもしれませんが、大型のアップデートをする予定は今のところありません。

――今回メインストーリーが、袁紹まで(官渡の戦い)と三国志的にはこれからが本番だと思うのですが、今後の『2』といった構想はあるのでしょうか。

平山:この1年間は本当に毎週毎月アップデートをしていたので、そこにずっと注力してた1年間だったのもあり、現状計画自体はないっていうのが正直なところでして……。先にも少し話題がでましたが、それ以降の軍師の時代や三国鼎立の物語もすごく魅力的だと思ってますし、その時代だからできるゲームの解釈みたいなのもいっぱいあるだろうなと思ってはいるので、機会があれば描いてはみたいと思ってはいます。あとは、諸葛孔明の時代を締めくくる五丈原の戦いは描きたいですね。

山際:大きな戦いとして「赤壁の戦い」がありますよね。やっぱりあそこは描きたいよね、という話は常にしています。過去に『レッドクリフ』など映画化もされていて有名ですし、欧米の方にも興味を持っていただき遊んでもらえる入り口になればいいなと思っています。

――ちなみに、ユーザーに気づかれてない小ネタとかってあったりしますか?

山際:『横山光輝 三国志』ネタとかもそうですが、結構みんなそこら辺はしっかり気付いていただいてて。気づいてくれて嬉しかったみたいな話でもいいですか?

――ぜひ!

山際:張譲という分身するボスが登場します。三国志には「張譲を中心とした十常侍という権力を持つ宦官の集団」の話があるのですが、それで10人用意するのはさすがになぁとなり、アクションゲームとしてどう落とし込んだら面白いのかと考えた結果、じゃあ分身させようとなりました。で、それにプレイヤーの方たちが「これ十常侍のネタじゃない?」とか指摘があって、スゴいなと。

平山:キャラクターのデザインの特徴に結構気づいてくれる人がいて嬉しかったです。例えば、周瑜の腰には笛を入れる筒みたいなモノが付いています。彼って笛を吹いたりとか多芸な逸話があったりしていて、それで笛入れみたいなモノを付けていたりとか。

  • ▲周瑜の腰についているのが、笛入れの筒。ちなみに正史「三国志」によると、若いころから音楽に精通していた周瑜は、酒に酔っていても楽団の演奏に間違いがあると、それを聞き分けて演奏者を振り返ったそう。チラチラ周瑜。

 そして甘寧。海賊みたいな見た目してると思いますが、その中でカラスを象徴的に使ったデザインにしています。あれも三国志の逸話の中で彼の屍をカラスが守ったみたいな話がありまして、そういう所からデザインモチーフを引っ張ってきていたので、気付かれている方がいると嬉しかったですね。

  • ▲甘寧の肩には烏の羽が。こういったデザインにも三国志好きをニヤリとさせる要素が散らばっているそうです。

 あとは日本の方だとほぼ気付かれてなくて、中国の方が気付くような要素もありますね。死亡した後のロード画面で漢字が流れているのですが、じつは意味がある中国古典の漢詩が流れていまして、いわゆる戦場で敗れた兵士の嘆きを歌った詩が流れているのです。そこに気付かれるのは、やはり本場の国の強みだなと感じましたね。

  • ▲日本人でもかなりの教養がないとわからない漢詩が描かれています。こちらは、戦場で倒れた兵の嘆きの歌を綴った「戦城南」という漢詩です。※編集部調べ

――最後に『Wo Long』ファン、Team NINJAファンに向けてのメッセージをいただいてよろしいでしょうか

平山:本編から遊んでいただいた皆さんと、1年間のアップデートも含め長きに渡り遊んでいただき改めて感謝いたします。この度CE版が発売になりまして、アップデートを通じて遊びやすく改善していたり、いろいろプラスしたりした要素も多くありますので、ぜひ興味のある方は手に取っていただければ幸いです。このタイミングで『Wo Long』の物語は一段落となりますが、Team NINJAとしては幕末を舞台にした『Rise of the Ronin』(販売:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が3月22日に発売となりますので、是非をよろしくお願いします

山際:今回、CEを発売させていただきました。発売できたのも本編から遊んでくださった方々のおかげだと思っております。CEからゲームを始める方たちと、本編から長く遊んでくださっている方々で、オンラインで一緒に遊ぶこともできます。難度の高いゲームなので、ときには共闘したり、ときには敵対したりしながらで一緒に盛り上がっていただければ嬉しく思います。本日はありがとうございました。

――ありがとうございました。

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