『RPGツクール』は『RPG Maker』へ。新機能“アセットシェアリング”の強みや操作性のこだわりを聞く【RPG MAKER WITH・開発者インタビュー】
- 文
- sexy隊長
- 公開日時
Gotcha Gotcha Gamesより2024年4月11日にNintendo Switchでリリースされる、RPG Maker(旧:『RPGツクール』)シリーズ最新作『RPG MAKER WITH』。本作の開発者インタビューをお届けします。
『RPG MAKER WITH』は、「プログラミングなしでゲームが作れる」ゲームコンストラクションツールとして、1990年から開発が続けられている歴史あるシリーズ『RPGツクール』の最新作です。
これまで『RPGツクール』の名で親しまれてきましたが、ワールドワイドで名称を統一し、装いも新たに『RPG Maker』となりました。
そこで電撃オンラインでは、本作の開発を手掛けるGotcha Gotcha Gamesの黒田有氏へのインタビューを実施。本作を開発するきっかけや、“WITH”という名前の由来、新システムの話など、さまざまなことをうかがいました。
本作の魅力はゲーム体験としての面白さ。“WITH”に込められた想い
――自己紹介と、経歴などをお願いいたします。
黒田有氏(以下、敬称略):はじめまして、Gotcha Gotcha Gamesの開発部、黒田有と申します。『RPG MAKER WITH』のディレクターです。
私の役割はユーザーの皆さんが楽しんで頂ける製品を「考える」ことと、スタッフの皆さんのお力を借りながら「届ける」ためのとりまとめ役をしています。2020年発売のPC版『RPGツクールMZ』でもディレクターを務めております。今回の『RPG MAKER WITH』でもPC版の経験を活かしております。
――『RPG MAKER WITH』は、CS版『RPGツクールMV Trinity』の次にあたる最新作という位置になると思うのですが、PC版で発売している『RPGツクールMZ』との違いなどはあるのでしょうか?
黒田:PC版『RPGツクールMZ』との違いは、コントローラー操作やタッチ操作に最適化して作りやすいことと、作品の一部(マップ、イベント、データベース)を共有する“アセットシェアリング”を使い、色々なクリエイターの力を借りやすいことです。
PC版は自由度の高さが魅力です。一方で家庭用はゲーム体験としての面白さを大切にしています。たとえば同じ素材でも使い方の工夫で全く違う表現ができる、アイディアを見せる面白さがあります。
――『RPGツクールMV』から『RPG MAKER WITH』を開発することになった経緯など、よろしければお教えください。
黒田:きっかけは前作『RPGツクールMV Trinity』(以下MV Trinity)です。課題・改善を整理したところ、内容が広範囲に及ぶため『MV Trinity』のバージョンアップでは難しい状態でした。
それであれば時間をかけて丁寧に、ユーザーの皆さんに楽しんで頂ける新しいMaker(ツクール)をお届けしようという運びになり、新作として『RPG MAKER WITH』がスタートしました。
――『RPG MAKER WITH』の“WITH”という部分は、本作から登場したシステム“アセットシェアリング”で「みんなと作れる」というところに由来するのでしょうか?
黒田:その通りです。“WITH”という名前は、「みんなと一緒に(つくる・楽しむ)」という意味を込めました。
当初このプロジェクトは『Revolution』という仮タイトルで始まりました。これは新しいMakerシリーズを通じて新鮮なゲーム体験を提供したいという熱望からスタートしたためです。
しかし企画が進行するにつれ“アセットシェアリング”によりアイディアを共有し、クリエイター同士が連携しながら作品をつくる流れに光を当てるようになり、「WITH、これだ!」と社内で意見がまとまり、決定に至りました。今振り返っても、社内での一体感とこの製品に込められた思いが蘇るエピソードですね。
“アセットシェアリング”システムで広がるコミュニティと孤独な制作作業からの開放
――新システムの“アセットシェアリング”について、改めて、どんなシステムなのかおうかがいできればと思います。
黒田:“アセットシェアリング”とは、ユーザーが自分の制作したゲームの一部を他のユーザーと共有できる機能です。
具体的には、ゲーム内の“データベース(例: スキル、アイテム、武器、防具、敵など)”・“マップ(例: お城の1階、町、民家、ダンジョンなど)”・“コモンイベント(例: 会話イベントやショップの処理の組み合わせなど)”の3つのカテゴリーを共有できます。
この機能により、例えばマップ作成が得意なユーザーが自作のマップを公開することで、他のユーザーはそれを利用して自分の得意な分野に集中できるようになります。
さらに、“アセットシェアリング”はゲーム制作のモチベーションを維持する助けにもなります。
ゲーム制作は完成に至るまで長い時間を要し、その過程の多くを一人で過ごします。制作中には「途中経過を誰かに見てもらいたい」といった気持ちが湧くこともあるでしょう。そうした時にアセットシェアリングを通じて作品を共有し、他のユーザーからの反応(ダウンロード数やいいね数、ランキング掲載など)を得ることが、完成へ向けての大きな励みになると考えています。
この機能が、発信する側も受け取る側も満足できる、使いやすく心地よいものであることを目指しています。
――“アセットシェアリング”のほかにも、注目のシステムがあればお教えください。
黒田:ボタン操作回数を減らす工夫、画面切り替えのスムーズさ、ロード時間の短縮などはこだわったポイントです。これらはゲーム制作の時間が楽しい体験になるように、という思いから、開発会社のジュピターさんと一緒に取り組んだ箇所です。
『WITH』ではイベント、マップ、データベースにおいて、コピー、貼り付けで作業効率化ができるようになっています。0から1の作業は操作性の改善で快適にできるように、1を10にする作業はコピーや貼り付けを使い時間短縮できるように心がけています。
ほかにもテストプレイの際にタイトル画面をスキップするなど、1つ1つは小さい工夫ですが、積み重ねることで大きな時間短縮に繋がるようになっています。
本作から初めてプレイする初心者からシリーズファンの経験者も楽しめる!
――本作からプレイを始めるSwitchユーザーが多数いると思うのですが、初心者にオススメの機能やシステムはどんなものがあるのでしょうか?
黒田:初めてゲーム制作をする方にオススメしたいのは、「みんなの作品」というオンライン機能を利用して、他のユーザーが制作した作品を遊んでみることです。
ほかのクリエイターの完成作品を遊ぶことで、制作プロセスを理解しやすくなり、アセット探しや自身のゲーム制作がスムーズに進むことと思います。
また、作りながら苦手な部分を見つけたら、その部分をアセットで補うことも良い方法です。特にマップ制作とデータベース作りは異なる技術ですから、自分に合った制作方法を見つけ、ゲーム作りを楽しんで頂きたいと思います。
――本作を使用しての作品やコミュニティなど黒田さんが楽しみにしていることはありますか?
黒田:『RPG Maker』シリーズにはいつも、開発の予想を超える創造的な作品が登場します。『WITH』では、アセットシェアリングを活用することで、初心者でも短期間で規模の大きな作品を完成させる可能性があります。初心者、ベテランを問わずどんな作品が集まるのか楽しみです。
コミュニティについては、X(旧Twitter)上で「#rpgmakerwith」というハッシュタグを使用したスクリーンショットが広がり、それを見た人が『RPG MAKER WITH』を始めて頂けたら嬉しいです。
家庭用のシリーズではユーザーの皆様が自主コンテストを企画してくださる嬉しい場面をお見かけしておりますので、コミュニティに負けないように公式も励んで参ります!
――本作の開発で難しかったことや悩んだ部分をお教えください。また本作でなくなってしまったシステムなどあるのでしょうか?
黒田:開発の過程で最も難しいと感じたのは、PC版との操作性の違いでした。
PCではマウスとキーボードを使って簡単に操作できることも、家庭用では複数のボタン操作が必要になる場合が多く、素材や機能を追加するたびにユーザーが行う選択操作が増え、どの機能を残し、どの機能を省くかは非常に難しい問題でした。
この課題を解決する過程で、『WITH』では、煩雑な操作を必要とするキャラクタージェネレーター(パーツを組み合わせてオリジナルキャラクターを作成する機能)をオミットしました。
この難しい選択をする代わりに、イベントコマンドの範囲選択やコピーペースト、そしてアセットシェアリングなど、ユーザーに実際に役立つ機能の充実に注力しました。
結果として、これらの改善は、初心者から経験者まで幅広いユーザーにとって楽しく使いやすい環境を提供できるようになったと考えております。
――『RPG MAKER WITH』の今後のアップデートや機能追加やDLCなど将来の展望についてお教えください。
黒田:私たちにとって、ユーザーの皆様がゲーム制作をお楽しみ頂けることが一番大切です。
発売後のフィードバックを見ながら、必要なアップデート、DLCの追加を検討していきます。また私はPC版の『RPGツクールMZ』のディレクターも務めておりますので、PC版と家庭用の間で新しいアイディアが反映される可能性もあります。
いずれにせよ、皆様が楽しめる改善を重ねて参りますので、ご期待頂ければと思います。
――最後に、本作を楽しみしている方に向けてメッセージをお願いします。
黒田:RPG Maker(ツクール)シリーズは「ゲーム制作」を身近に感じることができる、ゲームとツールの中間にあたるソフトです。ゲームである以上、『WITH』では楽しい時間になるように様々な工夫を凝らしてきました。ご期待ください。
そして家庭用、PC版問わずRPG MAKERを使って楽しんでいるクリエイターの皆様、イラストレーター、コンポーザー、プログラマー、声優、動画実況者……すべての皆様に御礼申し上げます。ぜひゲームプレイとゲーム制作を楽しんで頂けたら嬉しいです。
──ありがとうございました。
『RPG MAKER WITH』予約受付中
『RPG MAKER WITH』は現在予約受付中です。
家庭用向けに誰でも簡単で軽快に楽しめるようチューニングした作品で、このソフトがあれば、誰でもゲームクリエイターになることができます。“一億総クリエイター時代”のニーズに応えるタイトルとして、Nintendo Switch版が4月11日にリリースされる予定です。
※PS版の発売日は未定
※画面は開発中のものです。
※Nintendo Switchは任天堂の商標です。
©Gotcha Gotcha Games
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります