『バーンブレイバーン』9話感想:ついに明らかになったブレイバーンの正体。“お約束”の王道展開に燃えつつ、スミスの死を実感する切なさも(ネタバレあり)

米澤崇史
公開日時

 2024年3月7日(木)に放送された、『勇気爆発バーンブレイバーン』第9話“イサミィ!俺たちで、世界を救うんだ!!”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『勇気爆発バーンブレイバーン』9話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

ブレイバーンが変態っぽい理由がこんなところに!?

 スミスの特攻によってクーヌスの撃破には成功したものの、ヴァニタス&ペシミズムという2体のデスドライヴズは依然として健在。スミスが戦死したショックでイサミは完全に冷静な判断力を失い苦戦を強いられていることから、イサミにとってスミスがどれだけ大事な仲間になっていたのかが改めて分かります。

 一方、視聴者視点では「もしかすると生きているかも?」という希望もあったスミスは8話での爆発によって本当に死んでしまっていたようです。しかし、死んでいては「世界を守るために一緒に戦う」というイサミとの約束が果たせない。だからブレイバーンとなってタイムスリップする……という流れは、これまでに張られていた伏線からもある程度予想できていたところでした。

 ただ、問題は何がどういう仕組みでそうなるのかという部分で、まさかクーヌスと合体していたというのは完全に予想の上をいかれた感があります。

 ブレイバーンとスミスって趣向こそそっくりではあるものの、少なくともスミスはあんな変態(?)ではないよなと思っていたんですが、クーヌスが混ざったことで今のブレイバーンの性格が出来上がったと考えると、むちゃくちゃ納得できるんですよね。思い返すと、クーヌスがスミスに求愛する時のネットリとした感じは、ブレイバーンがイサミについて語る時の気持ち悪さとそっくりな気がしてきます。

 しかし、そこからブレイバーンとして目覚めたスミスがイサミを助けにいく流れは、予想こそできていても、演出の良さとBGMとして流れる主題歌の力も合わさって最高に燃えました。とくに8話からストレスがたまる展開が続きっぱなしでしたから、一気にここから流れが変わったという印象です。

 めちゃくちゃ自信満々で好き放題にやっているように見えたブレイバーンが、実はスミスだった頃の記憶を思い出しながら結構探り探りで戦っていたと考えると、また1話からのもろもろのエピソードに違った印象を得られそうです。

唯一ブレイバーンの正体に気づいているルルはどう動くのか

 Bパートも見どころ満載だったんですが、個人的に一番驚いたのは、8話で死んだと思われていたヒロが生きていたこと。
 あの流れと爆発の中でまさか生きている(しかも担架で運ばれているとはいえそこまで重症には見えない)とは……お前はキリコ・キュービィーかパトリック・コーラサワーかとツッコミたくなるくらいの生存力だと思います。

 8話の感想では、ドヤ顔で「画面に映っていないところで飯を残して席を立ったから死亡フラグが立ってた」とか書いていたのですが……詳しくは後述します。

 また、スミスを失ったことからなかなか立ち直れないイサミを前に、ブレイバーンはどうして自分がスミスであることを伝えないとかも気になったのですが、今のスミスはもうブレイバーンであり、ルイス・スミスという人間は死んだんだと、当のスミス本人が認識しているからこそなんでしょう。9話ラストでの「私は……ブレイバーンだ」という台詞には、スミスとしてのいろいろな葛藤を飲み込んだようにも思えました。

 ルルがスミスの遺言である「勇気爆発」を伝えて、自分にもっとも不足していたものが“勇気”だったと気づき奮い立つイサミ、イサミとスミスの拳合わせ、そしてブレイバーンが嬉しさでスミスを隠しきれなくなるという流れはズルい。

 思わず目頭も熱くなりかけたんですが、そこからあまりにも唐突に出てくる「合体」という言葉とサポートメカ“バーンドラゴン”で、今度は腹筋をもっていかれました。『勇者』シリーズファンとしては、あの1話で出てきたレバーは合体のためのものだろうと予想はしていたんですけど、それ以外のあらゆる要素がいきなりすぎる。

 一応これまでも、ブレイバーンが超次元3Dプリンター“ビルドバーン”を操作しながら怪しい笑みを浮かべているシーンがたまにありましたが、おそらくこれを作っていたのでしょう。パイロットの知らないところでロボットが勝手に自分のパワーアップメカを作っていたというのは、長いロボットアニメの歴史の中でも前例がない気がします。

 満を持して登場した“バーンブレイバーン”ですが、胸や足のパーツや全体のカラーリングから大張監督の過去作である『超重神グラヴィオン』に登場するゴッドグラヴィオンのエッセンスを感じました。それでいて頭部のデザインがこれまでの大張監督作品のメカにはあまりない新しいタイプで、ひと味違った演出も見られるのではないかと期待しています。

 ルルがスペルビアに乗るという流れも予想していた部分でしたが、「ブレイバーンと戦う」という不穏な単語が気がかりなところ。「ブレイバーンと(一緒に)戦う」という意味なら一安心なんですが、それだとスペルビア自身の望みは叶わなさそうなんですよね……。ルルは唯一ブレイバーン=スミスということに気づいているキャラでもあるので、ルルの行動が今後の鍵を握りそうな気がします。

 期待していた通りだった展開、予想の上をいってくれた展開がそれぞれにあり、総じてすっきりとした気分になれた9話だったんですが、一方でまた新たな疑問も出てきました。

 まず、スミスがブレイバーンになる前の、ブレイバーンが存在しない1回目の世界があったのかどうか。クーヌスは未来が見えるので、1回目の段階でも自分に死を与えてくれる存在になりえるスミスを狙ってくると思いますが、まずブレイバーン抜きだと最初のハワイ襲撃を乗り切れるのが難しそうですよね。

 また、スミスがブレイバーンとして復活した後、時間軸が第1話に戻っていましたが、Bパートからは9話での戦闘の続きに再度時間が戻っています。単に視点を9話のイサミに戻したとも取れるんですが、ならさっき1話に戻ったスミスの意識はどうなったんだろうという問題が出てきます。

 さらに9話の映像を見直すと、ヒビキはAパートで左腕を負傷している描写があるにも関わらず、Bパートではなぜか頭に包帯を巻いていて、とくに腕を怪我している様子がないんです。8話の描写では明らかに死んだとしか思えないヒロがピンピンしてたのも鑑みると、実はBパートの世界は、我々が知る8話とは少し展開が異なっている、スミスがやり直した結果生まれた世界という可能性も十分ありそうだなと。

 どちらも今後謎が明らかになるかは微妙なところだと想うのですが、大きなストーリーギミックが明かされた9話の後も、まだまだ油断できない展開が続きそうです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース

©「勇気爆発バーンブレイバーン」製作委員会

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります


関連する記事一覧はこちら