3月12日は『ガンダム 逆襲のシャア』劇場公開&アクシズ落としが阻止された日。アムロとシャアの最後のやりとりが熱かった!
- 文
- 米澤崇史
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皆さんは3月12日といえば、何の日を思い浮かべるでしょうか。『ガンダム』シリーズファンである筆者が紹介したいのは、3月12日は映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の劇場公開日であり、同時に劇中(宇宙世紀0093年)において、ネオ・ジオンが地球に落とそうとしたアクシズが進路を変えた“アクシズショック”と言われる現象が起きた日でもあるということです。
最近は映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の話題で盛り上がっていますが、『ガンダム』シリーズ初の完全新作劇場作品として作られたのがこの『逆襲のシャア(以下、逆シャア)』です。『機動戦士ガンダム』『機動戦士Zガンダム』から続く、アムロ・レイとシャア・アズナブルの決着を描いた作品で、今もなお不朽の名作として『ガンダム』シリーズの中でも高い人気を誇っています。
作中の一連の戦いは“第二次ネオ・ジオン抗争”とも呼ばれ、スペースコロニー・スウィートウォーターを占拠してネオ・ジオンを立ち上げたシャアは、一度は連邦との和平交渉に応じるフリをして、連邦の管理下にあったアクシズを奪取。そのアクシズを地球に落下させることで人間を住めなくし、強制的全に人類を宇宙へと上げようとしていました。
アクシズの落下は、シャアの動きをいち早く察知していたブライト・ノア率いるロンド・ベル隊の奮闘と、サイコ・フレームの共振が起こした謎の発光現象によって防がれるという結果に終わったものの、戦いの最中アムロとシャアは共に行方不明に。その後の宇宙世紀を舞台とした時系列の作品では、アムロとシャア本人は一度も登場していません。
なお、映画の冒頭で行われる5thルナの落下は3月4日とされているので、アクシズ落としの日までを数えると映画の『逆シャア』はだいたい1週間くらいの期間の出来事を描いていたことになります。
作中ではアムロがシャアに対抗するために用意していた新型MS・νガンダムの納期を急遽短縮させて、アナハイムの担当者であるオクトーバーが不満を漏らすシーンがありましたが、確かにこのスピード感がないと到底間に合わなかったでしょう。あの短期間の間に、MSを普通に動かせすようになっているハサウェイとクェスも、なかなかとんでもないセンスの持ち主だなと思います。
見直して分かるアムロの戦闘テクニックのすごさと、印象的なラストシーン
残念ながら自分はリアルタイム世代ではないので、始めて『逆シャア』の物語に触れたのは映画館でもビデオでもなく、『コミックボンボン』で連載されていたときた洸一先生のコミカライズ版でした。
当時小学生だった自分は、すでに『スーパーロボット大戦』シリーズでブライトやアムロ、シャアのことは知っていたんですが、その頃プレイした『スパロボ』では、基本的なにシャアって『Z』でのクワトロとして登場していて、いわゆる“仲間になった元ライバルキャラ”だと認識していたので、また敵に戻ってアムロと戦うという『逆シャア』の展開を目の当たりにした時は結構戸惑った記憶があります。
漫画だと何度も読み返せるのもあって、アニメで見るよりは内容を把握しやすかったと思うんですが、それでもストーリーをしっかり理解できていたかというと、ちょっと小学生にはハードルが高い内容でした。中学生くらいの時にレンタルビデオで映画本編も見ましたが、全容を理解できていたかというと怪しく、今見直しても発見がたくさんあるんですよね。
アクシズ落としををめぐっての戦闘では、最初に見た時はギュネイがあまりにもあっさりと倒されたなという印象でした。けど映像をよくみると、アムロが5thルナ戦で戦った時のギュネイのクセを覚えていて、わざと不自然なタイミングでバズーカとシールドを捨て、意識を向けさせた瞬間に狙撃するという極まったテクニックで落とされていたと気付いた時には、卓越したアムロのパイロットとしての技量と、作品自体の作り込みに驚かされました。
また、アクシズ落としのくだりですごいと思ったのが、シャアが最後に発した台詞が「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!そのララァを殺したお前に言えたことか!」だったこと。しかもそれを聞いたアムロは、最期に吐露されたシャアの本音に戸惑ったところで言葉が打ち切られるんですね。
『ガンダム』シリーズの顔でもあるアムロとシャアの最後の台詞やりとりがこれというのが衝撃的で、時にライバル、時に味方として長く接してきたアムロとシャアという最高峰のニュータイプ同士ですら、最後の最後まで互いを理解しあえていなかったというのが実に皮肉です。
ただ一方で、それまで連邦とジオンとして殺し合っていたはずの普通の人たちの心の共鳴がアクシズを押し返すという奇跡を起こすというバランスがすごく絶妙なんですね。決してハッピーエンドではないはずなのに不思議と穏やかな気持ちになれる不思議なラストシーンで、サイコ・フレームの光に包まれる地球を背景にTM NETWORKが歌う“BEYOND THE TIME”が流れる雰囲気がまた最高なんです。
「これでは地球が寒くなって人が住めなくなる。核の冬が来るぞ!」「アクシズ、行け! 忌まわしい記憶とともに!」といった名言も多々登場。そこまで内容を理解してなくても、モビルスーツ戦の作画が素晴らしすぎるので、ロボットアニメに抵抗がなければ間違いなく一見の価値はある作品です。
とくにνガンダムとサザビーの最後の一騎打ちのシーンは、あの時代のセル画にしか出せない独特の泥臭さや迫力が詰まっていて、今見ても圧倒されます。もしもまだ見たことがないという方がいれば、この機会に是非ご視聴をオススメしたいです。
米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。
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