【磯部磯兵衛物語】まさかのドラマ化。「処す」ほか、ぜひ実写で再現してほしい迷場面3選

米澤崇史
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 週刊少年ジャンプの時代劇ギャグ漫画『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』が実写連続ドラマとして、この夏(2024年夏)、WOWOWにて放送されることが決定し、大きな話題を呼びました。

 きっと、あんな場面やこんなセリフが実写でも再現されるんだろうなあ……とわくわくした筆者による、実写ドラマ版で映像化に期待する名(迷?)シーン3選をお届けします。

そもそも『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』の魅力はどこ?

 本作は、江戸時代“っぽい”時代の、江戸“っぽい”町を舞台に、立派な武士になるべく、日々精進すると言いながら、あらゆることに無責任で努力をしない武士校生・磯部磯兵衛(いそべ・いそべえ)のぐうたらで突っ込みどころ満載な日常を描いた作品。

 2013年の連載開始と同時にFlashアニメ化され、2015年にはショートアニメ化、さらに2016年にはミュージカル舞台化もされており、かなり早くから様々なメディア展開が行われていた作品でした。

 今回の実写ドラマ版では、脚本・監督は、ドラマ『小河ドラマ徳川☆家康』など、コメディ作品に定評がある細川徹さん、主人公・磯兵衛役をバラエティにも活躍の場を広げている杉野遥亮さんが担当されています。

  • ▲磯部磯兵衛役を演じる杉野遥亮さん。このウィンク、原作再現度が高くていいですね!

 原作の特徴は、なんといっても浮世絵風のイラストから繰り出される独特のシュールギャグのギャップ。とくに一巻の表紙は、江戸を舞台にした小粋なエピソードが出てくる日常マンガみたいな雰囲気を漂わせているのですが、蓋をあけると始まるのが春画(いわゆる江戸時代のエロ本)を母親に隠れて読もうとするエピソードですから、事前情報なしで読んだ時の落差ってかなりすごいものがあるんじゃないかなと。

 我々が見る浮世絵って、歴史の教科書だったり真面目な歴史もののドラマだったり、結構お硬い場面で見ることが多いだけに、それに近い絵柄でバカバカしいことをやっているのがすごく新鮮で面白いんです。

 その一方で、当時の江戸の文化や風習がエピソードの下地になっていることも多く、エピソードの合間には江戸時代を解説する“磯豆(いそべぇまめちしき)”というミニコーナーが入ることもあったり、意外にも(?)勉強になることも少なくないです。大河ドラマとかとはまた違うんですが、歴史の小ネタや雑学みたいなのが好きな人には特に刺さる作品なんじゃないかなと。

「磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~」特報映像(15秒)YouTube

 武士を目指していながら努力嫌いで、学校をサボるのも日常茶飯事な磯兵衛を始めとした個性的なキャラクターも魅力の一つ。歴史上の実在の人物をモチーフにしたキャラクターも多数登場します。

 磯兵衛が春画を目立たないように買うためカモフラージュに五輪の書が使われたことに切れて磯兵衛を殺そうとする宮本武蔵(の亡霊)、磯兵衛が愛読する春画の作者で、春画への未練のあまり、死後に自身の孫娘の身体を乗っ取って復活する葛飾北斎など、どれもかなりぶっ飛んだキャラになっています。

 実は北斎が“鉄棒ぬらぬら”というペンネームで春画を描いていたのは史実通りだったり、しっかりと歴史ネタを織り込んだ上でキャラクター性が練られているのも面白いところです。

実写ドラマ版『磯部磯兵衛物語』で映像化に期待する名(迷?)シーン3選

 原作漫画は16巻で完結。なかなかの長期連載でした。

 3つどころか名場面・迷場面だらけの作品ですが、特に印象に残っている3つの場面について独断と偏見によるランキングを発表します!

1位:「処す?処す?」【磯部磯兵衛物語 名・迷場面】

 『磯部磯兵衛物語』といえば、やはり絶対に外せないのはこれでしょう。パロディイラストが多数描かれているのもあり、SNSなどをよく利用されているなら「あいつ…頭高くない?」「処す?処す?」のやり取りのコマは、原作を一切知らなくても見たことがある方も多いと思います。

 『磯部磯兵衛物語』の江戸も、史実と同様に徳川家によって治められているのですが、長男のいえやすを筆頭に、歴代の徳川家将軍たちが15人兄弟として同じ時間軸に存在しているという凄まじくカオスな設定になっています。そんな将軍たちが市民たちの生活を知るために江戸の街を視察していた最中、ある不敬な行動をとっていた磯兵衛に対して言い放ったのがこのセリフです(「頭高くない?」と言っているのが長男のいえやす、「処す?処す?」と言っているのは次男のひでただ)。

 このエピソードは、徳川15兄弟が江戸の街を闊歩する”将軍行列”のシーンも見ごたえがありそうですし、人気的にも映像化される可能性はかなり高い所だと思うので、放送された時にはSNSが盛り上がること間違いなし。徳川家はこの「処す?」回の後にも登場していて、面白いエピソードが多いのでとくに活躍を楽しみにしています。

2位:磯兵衛の日曜日【磯部磯兵衛物語 名・迷場面】

 日曜日を家で過ごしていた磯兵衛が、ベストの寝転びポジションを探そうとする、ただそれだけのエピソード。江戸時代的な要素もほとんどなく、ただただ磯兵衛がいろんな姿勢を試すだけの回なんですが、この良い意味での“くだらなさ”も『磯部磯兵衛物語』の魅力の一つ。

 現代にも通じる“あるあるネタ”の一種でもあり、筆者自身も結構ベッドの上でゲームしたりノートPC使って作業するタイプなので、ベストポジションを求めていろいろ姿勢を変えてみるシチュエーションはめちゃくちゃ共感できました。それまでは何とも思ってなかったはずなのに、ふとした瞬間に急に座り心地の悪さとかが気になり始めたりするんですよね……。

 読んだ後、磯兵衛がもっともリラックスできるという結論に達した姿勢を実際に試してみたのは絶対に筆者だけではないはず(自分の場合は、首がキツくて数秒でギブアップしましたが……)。

 キャラクターも登場するのはほぼ磯兵衛だけ、話のボリュームとしても短めのエピソードではあるのですが、ショートアニメ版で第1話に採用されていたり、この回がとくに印象深いという方も多いのではないかと思います。

3位:母上様vs先生【磯部磯兵衛物語 名・迷場面】

 江戸時代を舞台にした日常シュールギャグ漫画である本作を、いきなりファンタジーバトル漫画にしてしまうイレギュラーな存在がこの二人。

 特に母上様(磯兵衛の母)は、個性的なキャラクター達の中でも一際ぶっとんだ存在です。毎回磯兵衛が春画を楽しもうとしたタイミングで現れることもあって、内心では磯兵衛から「ババァ」呼ばわりされているくらいの扱いなのですが、当の母上様は磯兵衛を溺愛しており、息子の言葉なら何でも信じ、どんな行動も前向きに解釈します。

 それだけなら単なる親馬鹿なんですが、この母上様、文字通り人間離れした戦闘力の持ち主でもあります。並外れた身体能力に留まらず、空間に穴を開けて登場するわ、幽霊を視覚した上攻撃するわ、大地を操作して巨大な腕を召喚するわ、相手の慣性の法則を外して地球の自転による風圧を浴びせるわ、とにかく存在そのものがデタラメなキャラクターです。

 対する先生は、磯兵衛が通っている武士道学校の先生で、一見弱々しいお爺ちゃんなんですが、炎の中で平然としていたり、巨大なクレーターができるほどの斬撃を飛ばしたりと、母上様に負けず劣らずの超人。この二人が正面対決する回ではその戦いの余波で「藩が崩壊する」と恐れられていたほどで、二人だけ完全に出る漫画を間違っている感が凄いです。

 二人の超人っぷりや対決は、かなり映像映えもすると思うので、無駄に迫力満点でカッコいい演出を期待しています。

 まさかの実写ドラマ化となった『磯部磯兵衛物語』。原作は短いエピソードで構成された作品で、1話30分の尺の中でどんなドラマになるのか想像つかないのもあり、放送が非常に楽しみです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

©仲間りょう/集英社  ©WOWOW

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