ネタバレあり感想:『キングダム』アニメ第5期11話は絆が深まる感動回。「飛信隊は渇いてねェんだ!」という作中屈指の名ゼリフを口にしたのは?

タダツグ
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 ファン待望のTVアニメ『キングダム』第5シリーズの第11話“尾平と飛信隊”が放送されましたので、視聴しての感想をお届けします。

【注意】この記事ではアニメ『キングダム』の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

TVアニメ『キングダム』第5シリーズ 第11話“尾平と飛信隊”感想

 敵将・慶舎(けいしゃ)を信が討ったものの、桓騎(かんき)が中央の丘から兵を退いたことで先行きが不透明になった黒羊宮の戦い。黒羊一帯の集落を急襲し、虐殺と凌辱を重ねる桓騎軍に怒り心頭の信と羌瘣(きょうかい)は、蛮行を辞めさせるべく桓騎の本陣を訪れます。しかしそれぞれの意見が交わることはなく、互いの喉元に剣を突き付け合う展開になるのですが……?

 趙軍との決戦を前にして、まさかの同士討ち展開。信と桓騎、相容れない2人の意見がここに来てついにぶつかり合うこととなります。まさに一触即発の雰囲気!

 信が桓騎たちに説く「秦が中華を統一するために、このような悪行を行うことは許されない」という意見はものすごくまっとうで、強く感情移入できました。一方で、それを一笑に付した桓騎が口にした「他国のすべてをぶん捕る大虐殺、その末に訪れた平和を喜ぶのは秦の人間だけ」という言葉も、目を背けてはならない現実として心に突き刺さったんですよね……。“しょせんは悪党の言葉”なんて、安易に片づけてはならない重大事項に思えてしまいました。

 この問題はこの場での信と桓騎のやり取りだけにとどまらず、今後『キングダム』という作品がどのようにして向き合っていくかが問われる、至上の命題になる気がするのですが、皆さんとしてはいかがでしょうか。

 さておき、目の前の同士討ち問題を解決すべく重苦しい現場に現れたのは桓騎軍に出向中だった尾平(びへい)。襲われた集落は趙軍の息がかかった前線基地だった可能性を信に説明する尾平ですが、その過程で紫水晶のお守りをくすねていたことが発覚してしまい、信から渾身のパンチを食らうという有り様に……。

 このお守り、くすねたというよりは“桓騎軍の兵士に無理矢理つかまされた”という方が正しいわけですが。信や羌瘣からすれば、尾平が飛信隊の掟に背いて桓騎軍と同様の略奪を行ったと捉えてしまうのは致し方ないですね。なんせ場が荒れに荒れてる状態で、それぞれの視野が極端に狭まっていましたから。普段ならもう少し冷静に話を聞けた気もしますが、あの場においては仕方ないのかなって思えます。

 そんななかで恐ろしいほど冷静だったのが桓騎。信と尾平のいさかいで話の論点が微妙にズレたことをいいことに、「シラけたな、もうお前ら行っていいぞ」と口にして微妙な空気ながらもその場を収めてしまった手腕には、戦争巧者な彼ならではの底の深さを感じます。

 イチ視聴者としては、信や羌瘣と同様にアツくなっていた局面でしたからね。そこに「これ以上の略奪行為は行わない。なぜなら黒羊一帯の集落はすでに全滅させているから」と冷や水を掛けるかのような言葉を浴びせ、場を収めてしまった桓騎には正直ゾッとしました。こんな局面にありながら、桓騎は極めて冷静であったことがうかがいしれるというか、将としての度量を見せつけられたというか……。さすがの信や羌瘣もこの言葉には意表を突かれ、黙り込んでましたからね。やはり一筋縄ではいかない男です、桓騎。

 結果的に、命の取り合いにまで発展しかけていた局面は、尾平の乱入で“なあなあ”になったわけですが……本当に重苦しい前半パートで、正直見ているだけでドッと疲れましたよ。信たちと共に桓騎の本陣に乗り込み、命を奪われかけていた田有(でんゆう)、そして羌瘣までもが「疲れたな……」と口にしていましたが、さもありなん……。

 ここで特筆しておきたいのは、この激重な前半パートがあったからこそ、後半パートが生きてくるって部分。後半パートは信から見限られてしまった尾平が、ある事件を経て飛信隊の信念を思い出し、隊に帰ってくるまでが描かれるわけですが……その一幕が本当に名シーンすぎて、気づけば涙で画面が滲んでしまっていました。

 個人的には、シリーズ屈指のお気に入りとなったこの11話後半パート。何が自分の琴線に触れたのか、下の注目ポイント部分で詳細に語らせてもらおうと思います。どうしてもネタバレ強めになると思うので、まだ11話をご覧になっていない方は、一度ご自身の目で映像をご覧になったうえで読んでもらえればうれしいです。

注目ポイント1:尾平と信、2人の想いが語られる和解シーンに大号泣! 飛信隊の絆はより確固たるものに……

 ということで、ここからはネタバレ全開。というか、もしかするとみなまで言うなってレベルかもしれませんね。信から除隊を突き付けられ、その強情っぷりに嫌気がさして故郷に帰る決意を固めた尾平。しかし、桓騎軍の雑兵が信や飛信隊を嘲笑しているところに出くわし、その言葉に激高して殴りかかっていくなかで、信が心に根差している矜持や、それをすべて理解したうえで彼についていく飛信隊の在り方にあらためて気づくシーンが胸アツでした。まあ、尾平はボッコボコに殴られて、殺されかけているわけですが(汗)。助けてくれた那貴(なき)には頭が上がらないですね。

 重傷を負って飛信隊の天幕に担ぎ込まれた尾平を、信が看病するシーンはマジで号泣もの。目を覚ました尾平に、普段は賑やかでひたすら声が大きい信が、とても静かに自分の想いを語らうところとか、心の底から泣かされました。幼い頃から漂(ひょう)と追いかけてきた清廉潔白な“天下の大将軍”という偶像を、これからも諦めることなく追いかけ続けること。そして、飛信隊にもそんな真っすぐな部隊であってほしいということを臆面もなく語る信は、本当に推せる主人公だと再確認できましたよ。演じる森田成一さんの演技も素晴らしすぎる……。

 そんな正直で愚直過ぎる信が、「悪いな、俺のワガママにみんなをつき合わせちまって」とこぼした本音に、「バカのくせに変な気を回してんじゃねえよ!」と一喝する尾平も最高でした。「みんな、好きでお前のワガママに付き合ってんだ。全部わかっててお前に付いてきてんだ。お前と一緒に戦いてェって!」という彼のセリフ、本当に素敵。天幕の外で話を聞いている飛信隊のみんなも泣いていましたが、僕も負けじと泣いてました。むしろ号泣!

 そこからの尾平のセリフも胸アツすぎて大好き。「飛信隊は渇いてねェんだ。心が渇いてないから略奪も凌辱も必要ねェんだ。飛信隊はどこの隊よりも心が潤ってんだ。お前と一緒に戦ってるから俺たちはっ!」……やっぱり尾平は信のことを、そして飛信隊のことを深く理解している仲間だと、あらためて感じますね。マジで作中屈指の名ゼリフだと思うのですが、それをあの尾平が口にするというちょっとしたカタルシスも最高です。お気に入りの名シーン! これだけで、重苦しかった前半のストレスなんてどこかに吹き飛んじゃうんですから、我ながら単純だなって思いつつ(苦笑)。

注目ポイント2:桓騎はなぜ中央の丘から兵を退いたのか? 気になる謎は次回以降で明かされる?

 飛信隊が結束を強めたことには安堵感がありますが、ここで気になるのは“なぜ桓騎は中央の丘から兵を退いたのか?”という部分。彼がどんな状況でも冷静に物事を俯瞰していることは、図らずも信たちとのいさかいを経たことでより克明に理解できたわけで、それゆえに解せないんですよね。あの中央の丘を捨てて、わざわざ周辺の集落を襲わせたその意図がわからない。

 摩論(まろん)や黒桜(こくおう)らが大人しく桓騎の命令に従っているあたり、なんらかの勝算があってのことなのでしょうけど……はたしてどんな策が? ここらへんは次回以降で明かされていくのかなって気もします。
 
 いよいよクライマックスが近づいてきた感触がありありな黒羊宮の戦い。結果はもちろん、そこに行き付くまでの過程も気になって仕方ありませんね。次回以降も要注目といえそうです。それでは、今回はこのへんで!

©原泰久/集英社・キングダム製作委員会

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