ネタバレあり感想:『バーンブレイバーン』最終話──勇気を爆発させたイサミがやりたい放題すぎた。皆の心に勇気がある限り、ブレイバーンは永遠だ!

米澤崇史
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 2024年3月28日(木)に放送された、『勇気爆発バーンブレイバーン』第最終話(12話)“勇気爆発の、その先へ!!”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『勇気爆発バーンブレイバーン』最終話話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

勇気爆発後のイサミはブレイバーンの真似をしていた説

 デスドライヴズの生き残り、イーラの不意打ちによってブレイバーンが機能を停止するという、あまりにも衝撃的すぎた11話のラストシーン。

 ブレイバーンに対しては完全な不意打ちを仕掛けてきたイーラですが、スペルビアに対してはルルとの最後の別れの間、攻撃をせずに待っていたのはちょっと意外でした。すっかり人が変わったスペルビアに対して、「傲慢な君らしくない」と語りかけている様子からして、デスドライヴズの中でも実は二人は結構仲が良かったのかもしれません(不意打ちしたのは、ブレイバーンに相当苛ついていたからというのもありそうですが)。

 しかしその頼みの綱もスペルビアも、アバンで一瞬でやられてしまうのは凄まじい絶望感がありました。

 なので気持ちは分かるんですが、ヤケになって笑い始めて死んだ目で諦めの言葉を口にする、白旗を上げて降伏しようとする、土下座しそうな勢いで謝罪し始めると、歴代ロボットアニメのなかでもここまで最終話で情けない姿を見せた主人公はいないのでは(改めて文字にするとかなり酷い)。

 それくらいブレイバーンの存在が、イサミにとって心の支えになっていたということでもありますが、最後の最後までイサミを逃がそうとするルルが勇ましい分、いくらなんでももうちょっとしっかりしてくれよと……。

 ただ、このイサミの行動は全部「死にたくない」という生きることへの圧倒的な執着から生まれているんですよね。

 このあたりは死ぬことを目的としているデスドライヴズと対象的で、誰もが持っている「死にたくない」という恐怖を乗り越えるための“勇気”をもつ存在こそがヒーローなのかなと。

 きっとイサミはブレイバーンのことを、違う世界からやってきた大元から人間とは異なる存在と認識していたんじゃないかと思うのですが、その正体がスミスだと知り、実はブレイバーン(スミス)も自分と同じように、“恐怖”を“勇気”で押し殺しながら戦っていたことに気付いたのではないでしょうか。

 「"勇気”があれば、人は誰しもヒーロー(ブレイバーン)になれる」。これが本作のメインテーマだったと考えると、勇気を爆発させたイサミがブレイバーンになるというのは、非常に納得のいく展開だと感じました。

 一方、勇気を爆発させたあとのイサミは、髪も伸びてるし一人称は“私”だし、明らかに今までのイサミとは違う存在になっていました。スミスにとってのヒーローがスパルカイザーで、その真似をしてブレイバーンという人格が作られたように、イサミにとってのヒーローがブレイバーンで、その真似をした結果生まれたのがあのイサミなのかなと(人の話を聞かないところとか、まさにイサミの中のブレイバーン像って感じがしますし)。

 面白いのは、当のスミス(ブレイバーン)は、イサミこそが自分がなりたかった本物のヒーローだとも認識している点で、お互いにヒーローとして憧れを抱いているんですよね。イサミがいなければスミス(ブレイバーン)はヒーローになっていないし、スミス(ブレイバーン)がいなければイサミもヒーローになっていない。2人の主人公のどちらが欠けていても成り立たない物語だったと改めて思います。

 その後ブレイバーンが金色になったのは、大張監督が深く関わってきた『勇者』シリーズの最終決戦における伝統でもあり、もう直撃世代としては「やっぱりやってくれたか!」という心境で大喜びしていました。

 そして忘れてはいけない、オンボーカルでの主題歌が流れたこと。もうイントロが流れはじめた時からテンション爆上がりだったんですが、よく聞くとボーカルがブレイバーンじゃなくイサミに変わっているんですよね。ほぼ間違いなく、ブレイバーンのようにイサミが自分の意志でBGMを流していると思います。

 第1話で「さっきから何なんだこの歌は!」とキレていたイサミが、ついに自分で歌を流し始めるようになったと考えると、ただ主題歌が流れるというお約束の演出だけに留まらない、"エモさ”を感じずにはいられません。

 一方で、マグマを飲み込みきれずにバーンブレイブビッグバーンの背景の爆発と化したポーパルチープムを見ていると、もはや「デスドライヴズはやっぱりこうじゃないとな」と思い始めるようになりました。真面目に敵のボスをやっているイーラやペシニズムたちの方がイレギュラー的な存在なんでしょう。

『勇者』シリーズファンにはたまらないシーンの連続。スミスが生き返ったのはクーヌスの力?

 イーラを撃破してすべてが終わったかと思いきや、地球に降りていなかった8つ目の塔から現れたのは、最後の敵ヴェルム・ヴィータでした。

 デスドライヴズを通して8回の死を経験したことで、「やっぱり死にたくない」と思い直すのは結構なんですが、そこから「でも“死”には興味があるから90億人を皆殺しにする」というのはあまりにもひどすぎる。今までのデスドライヴズもとんでもなく迷惑でしたが、まさにその親玉に相応しい圧倒的迷惑さです。

 それでもイサミが一応話を聞くことにした時、その前に攻撃を仕掛けていたというルルのツッコミは、完全に視聴者の心の声を代弁してくれていて面白かったです。イサミは大人で、自衛隊員としての立場もありましたが、本当はブレイバーンのように自由に振る舞いたかったのかもしれないですね。

 そこからのルルとスペルビアの融合、今までのエピソードに登場した仲間たちが総登場する流れはまさに王道的な展開で燃えました。ただ、TSですら一撃で消し飛びそうな最終決戦に、生身で参戦しているプラムマン曹長の勇気も、イサミと同じくらい爆発している気がします。

 そして何より、本作を作っているのは大張監督ですから、スペルビアとブレイバーンの間で絶対に何らかのギミックがあるだろうと思ってはいましたが、仲間のロボットが武器になるのは、『勇者警察ジェイデッカー』のガンマックスや『勇者司令ダグオン』のライアン、『勇者王ガオガイガー』のゴルディマーグ等、『勇者』シリーズの伝統の一つでもあるので、こちらも自分にとってはたまらない展開でした。

 最後の一撃でバーンブレインビッグバーンのゴーグルが割れる演出も、“マスク割れ”と呼ばれる『勇者』シリーズにおける最終決戦恒例の演出オマージュにもなっていまして、自分のようなロボアニメファンが事前に抱いていた期待に、しっかりと答えてくれた最終回だったなというのが一番の印象です。

 最後にブレイバーンが消えていくシーンでは、「ああ、ついにスミスとの本当の別れの時が来てしまったのか」としんみりとしていると、あっさりと人間の姿に戻っていたのにはビックリ。そのまま消えていた方が感動的だったのは間違いないんですけど、清々しい程のハッピーエンドの方が『ブレイバーン』らしいのかなと。

 12話を通して心理描写が丁寧に描かれていたのもあって、個人的にキャラクターの中で感情移入しやすかったのはスミスでしたし、何よりスペルビアだけでなく、スミスまでいなくなってしまったらルルが未来から戻ってきた意味がほとんどなくなってしまいますからね。

 ちょっと死にっぱなしのスペルビアがかわいそうだとは思ったのですが、恒例のデスドライヴズの追悼動画で、スペルビアとしては十分に満足した最期を遂げられたことが分かって少し安心しました。最終話にして、あの企画で初めて寂しさのようなものも味わえた気がします。

 おそらく誰もが思ったであろう「スミスがなぜ人間に戻って生き返れたのか」については、「勝利のご褒美として神様がとっておいてくれた」くらいの認識でいい気はするのですが、強いて理由を探すのであれば、やっぱりクーヌスの時間操作能力なのかなと。

 最終話でイサミがブレイバーンと融合したシーンでは、まるで時間が巻き戻るかのようにブレイバーンのダメージが修復されていく描写もあり、ブレイバーンにもクーヌスの時間操作能力の一部が備わっている可能性は高いです。クーヌスは、ヒロのTSを破壊した後に時間を巻き戻すという攻撃もやっていましたし、スミスの肉体をブレイバーンになる前の時間にまで戻すことも不可能ではないんじゃないかと思います。

 あとはそれを誰がやったのかですが、個人的な希望も含めて、スミスでもクーヌスでもない、“ブレイバーン”という新しい人格がロボットの中に芽生えていたんじゃないかという説を推したいですね。

 ラストシーンではスミスが人間に戻っているにも関わらず、「君たちの心の中に私は居続ける」というブレイバーンの独白がありますし、これが今まで視聴者と一緒にイサミとスミスの二人を見守ってきたブレイバーンのものであったらいいな……と。

 大分筆者の願望が混じっていますが、最後の最で流れるSE付きの主題歌も、歌っているのはブレイバーン(鈴村さん)なんですよね。実は本当にブレイバーンがカラオケで歌っているなんじゃないかとも考えられるなと(視聴者もヒーローなので、最後に皆で歌おう、という意味が本命ではあるとは思いますが)。

 少なくともスミスがタイムリープする前はイサミとスミス、そしてブレイバーンの3者がタイムパラドックスも起こさずに共存できていたわけですから、ありえない話ではないのかなと思っています。

 完全に視聴者を騙した第1話から始まり、何かと話題に事欠かなかった本作でしたが、色々な意味で「楽しかった」というのが本作に対する一番の感想です。

 長らくロボットアニメファンをやってきましたが、いわゆるスーパーロボット系のTVアニメで、こんなお祭りのような盛り上がりを体験できたのは本当に久しぶりな実感もありますし、ブレイバーン=スミスを筆頭とするシナリオのギミック、妙に拘りの強いミリタリー要素やオマージュ的な小ネタもたくさんあり、ライターとしてすごく考察のやり甲斐もあった作品でした。

 しばらくは『ブレイバーン』ロスになりそうだな……と思っていた矢先、公式スピンオフ『未来戦士ルル』のフォトストーリーの連載もサプライズ発表されて驚き。

 第10話の感想で、「未来のルルがスペルビアを叔父様と呼ぶようになるまでの話だけで1話分見てみたい」といったことを書いていたのですが、まさにその部分にあたる時間軸のエピソードが描かれるようで、個人的にめちゃくちゃ楽しみにしています。

 さらに加えて、先日発表された『スーパーロボット大戦DD』への参戦も控えていますし、TV放送が終わってもまだまだ『ブレイバーン』の盛り上がりは続きそうな予感。

 もうストーリーはこれ以上ないほどしっかり完結しているので、第2期のような続編は難しいかと思いますが、最後のブレイバーンの言葉通り、この先は皆の心の中でブレイバーンは生き続けるのでしょう。

 でも、もしいつの日かブレイバーンがあの気持ち悪い笑みと一緒に帰ってきたら、自分を始め多くのファンは喜んで受け入れるんじゃないかなとも思います。どんな展開があっても「ブレイバーンならしょうがない」と思わせてくれる、そんな不思議なヒーローとの出会いの作品でした。


米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

©「勇気爆発バーンブレイバーン」製作委員会

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