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ネタばれあり感想:アニメ『ザ・ファブル』1話。原作や映画と異なるアニメならではの演出や間で作品の新しい魅力を引き出していた――。なにより沢城みゆきさんの洋子がサイコーだった――

カワチ
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 TVアニメ『ザ・ファブル』の第1話“お引っ越し”の感想をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ザ・ファブル』第1話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。

不安を吹き飛ばすような好スタート! アニメ『ザ・ファブル』1話感想

 “ファブル”と呼ばれる伝説の殺し屋が育ての親に呼び出され、大阪に引っ越し、1年間、誰も殺さずに一般人として暮らすように命じられる『ザ・ファブル』。原作は2014年にヤングマガジンで連載を開始し、2019年と2021年には実写映画化もされました。

 今回のアニメで監督を務めるのは『装甲騎兵ボトムズ』などで知られる大ベテランの髙橋良輔さん。萌えアニメや異世界アニメがトレンドになっている現代で、かなり異質な存在になるのではないかと思っていましたが、ストレートにおもしろかったですね! 正直、岡田准一さん主演の実写映画のクオリティが素晴らしいので、同じメディア化として比べてしまうのではないかと思っていましたが、アニメならではの演出で、実写映画とは異なるアプローチで『ザ・ファブル』の魅力を最大限に引き出していました。

 アニメ版は原作に忠実な内容ですが、緩急のつけ方が上手。アクションシーンはスピーディでファブルの圧倒的な強さを表現。一方で日常シーンは佐藤明と名を変えたファブルと彼の妹を演じることになった洋子の、のんびりした会話が続くので、そのギャップに笑わせてくれます。

 とくに心を掴まされたのは冒頭シーン。ファブルの圧倒的な強さが表現されますが、主人公でありながらほとんどセリフをしゃべらずにアクションだけで存在感を示す姿がひたすらに格好いい。岡田さんによる生身のアクションが話題になった実写版もすごかったですが、アニメ版はビルの窓のてすりを使い、次々に下の階へ降りていく様子を同じアングルのワンカットで表現。人間離れした彼のすごさが分かりやすく伝わってきました。

 また、躊躇なくターゲットを殺していく彼の姿に関しては、原作を知らない人であれば驚いたはず。最近のアニメは敵の命を取る主人公は減りましたが、本作は殺しのプロフェッショナルなので躊躇がありません。序盤は派手なBGMなども使わず、セリフも最小限。それゆえに怯える敵の息遣いがよく聞こえるような演出となっており緊迫感が。一気に視聴者を引き込む見事な作りになっていました。

 さらに、この作品のすごさはその後の車のシーン。何事もなかったかのようにテレビに映るお笑い芸人のジャッカル富岡で大笑いするファブルに、これまでのクールな印象は一瞬で消え去り、面を食らうこと間違いなし。ファブルは分かりやすいようで分かりづらい、分かりづらいようで分かりやすい、とらえどころがないキャラクターですが、そんな彼を実力派の興津和幸さんが見事に演じていました。

 なお、筆者が気になっていたのは、ある意味で重要人物であるジャッカル富岡をアニメでどなたが演じるのだろうかという点でしたが、こちらは『この素晴らしい世界に祝福を!』のカズマ役などで知られる福島潤さんでしたね。いい意味でいつもの福島さんの芝居となっており、実家のような安心感がありました。

 声優陣で注目なのは、なんといっても洋子役の沢城みゆきさんですね。遊び慣れているようでありながら、じつは隙がない彼女を見事に演じていました。暴言も多い洋子ですが、しっかり上品さを残しているのはさすが沢城さん。猫舌のファブルに焼き魚をふーふーしてあげるシーンは可愛くてドキッとしましたね。原作では今後、彼女が年下の男を誘惑するような展開がありますが、このシーンがアニメでどのようになるのか今から楽しみです……。

 個人的に『ザ・ファブル』は強敵が登場するぐらいから一気におもしろくなる作品だと思っているので、第1話はアニメ版がどんな演出になるのか確認するぐらいの心持ちでいたのですが、気付けばガッツリと引き込まれていました。

 エンドクレジットを確認したところ、原画に杉野昭夫さんや関修一さんといった超ベテランも参加していることが分かり、職人芸というもののすごさを改めて教えられました。髙橋良輔監督と手塚プロダクションが制作する新しい『ザ・ファブル』に今後も期待していきたいです!


カワチ:RPGとビジュアルノベルが好きなゲーマーで、誰にも気付かれないようなマニアックな小ネタを記事に織り込むのが好き。深みのあるゲームが好きかと思えば、本当は肌色が多ければなんでもいいビンビン♂ライター。



©南勝久・講談社/アニメ「ザ・ファブル」製作委員会

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