インディゲームの祭典“BitSummit The 8th Bit”の進化の形と、BitSummitの向かう場所とは?

電撃PlayStation
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 日本最大級のインディゲームの祭典“BitSummit”。2020年に開催される8回目となる“BitSummit”は、2020年5月9日、10日の2日間行われる。

 今回の“BitSummit The 8th Bit”は、どのような形で運営されるのか? テーマや取り組みなど、今回の気になるポイントについて、BitSummit運営理事長の富永彰一氏、副理事長の小清水史氏、理事の村上雅彦氏らにうかがってみた。

――“BitSummit The 8th Bit”のイベントとしてのテーマとはなんでしょうか?

 テーマは“フレキシビリティ”です。2020年は5Gが始まりますし、クラウドゲーミングも本格化します。ゲームの可能性もさらに広がっていくということで、クリエイターは“どういうアイデンティティーで作品を作りますか?”ということで、作家性がものすごく重要になってくると思います。

 これから変わっていくゲームに対してどう対応していくのかも重要なスキルなのではないかということでのフレキシビリティです。

――“BitSummit The 8th Bit”で行う新しい取り組みはありますでしょうか?

 イベントの完成度を上げるという基本的な部分のベース強化に加え、前回取り組んだゲームジャムを京都から全国に広げるチャレンジをしたいと考えています。ここで作られた優秀な作品はBitSummitの本会場での展示とアワード進呈をいたします。たくさんの方に参加していただけることを楽しみにしています。
 
――来場者がかなり増えてきていますが、その要因はどんなことだと分析していますか?

 7回の開催実績として、知名度が世界レベルで少しずつ広がっているというところもあるかと思いますが、一番はやはりデベロッパー、パブリッシャー、スポンサーの皆様がSNSを中心に情報を発信し、それぞれのファンへ情報を届けていただいているところが大きいと思います。

 BitSummitとしてはSNSに加え、動画配信でインフルエンサー、メディア様にこれまで以上にお力添えいただきました。
 
――来場者の内訳、構成を教えてください(学生、家族連れといった属性の構成比率や、地方からくる人の割合など)。

 アンケートの数字がなく正確なお答えができないのですが、家族連れ、学生は年々、増えている印象です。また、10代後半から20代の層も多く訪れたのが今年のBitSummitの来場者の傾向です。

 また、都道府県別では、京都での開催ということもあり関西圏を中心となりますが、関東から遠征されている方や海外からのお客様も多くみられます。

――“BitSummit The 8th Bit”に限らず、BitSummitというイベントは、ここからさらに進化していくとして、将来的にどういった方向性のイベントになっていくのでしょうか?

 当初のBitSummitに比べて明らかに、この7年間でインディゲーム開発に適した環境、取り上げるメディア、対応するパブリッシャー、プラットフォームが充実しました。これは、国外の流れによるものが大きいですが、BitSummitはそれにいち早く対応し成長したイベントだと思います。

 作る人、作るのを助ける人、届ける人、広める人がこれだけ増えましたから、これからは遊ぶ人にも注目していく必要性を感じます。ここの底上げはとても難しいと思いますが、参加する皆で考えて企画し力を結集すれば、これまでにない大きなムーブメントを起こせるかもしれません。

 これをBitSummitがどこかで達成することができたのであれば、開催を続けている意義はあるのではないでしょうか。

――日本のインディゲームを世界に広げるというコンセプトのもとに始まったBitSummitですが、近年では海外の作品も多く展示されるようになりました。これは、初期のコンセプトは達成されたと考えてもよろしいのでしょうか?

 BitSummitは日本の飛び抜けておもしろいインディゲームを海外に広げるというコンセプトで始めたイベントですが、このマインドは今も変わりませんし、力を入れなければいけないポイントです。近年、海外のゲームを多く展示していますが、これはアジアを中心に飛び抜けておもしろいインディゲームが日本以外でも多くエントリーされているところによります。

 もちろんBitSummitとしては初期のコンセプトのとおり、より多くの日本のゲームを選出し、広げていきたいと考えていますが、おもしろいゲームはやっぱりおもしろいですので、結果的に国外のゲームは増えました。

 そういった点で、国内と国外の展示バランスが非常に難しいのですが、当初のコンセプトを維持するうえでも国内ゲームの割合はある一定数を下回らないバランスにしています。
 

  • ▲昨年の会場の様子。

――過去7回の開催を経て、現在の日本のインディを取り巻く状況についてどうお考えなのかお聞かせください。

 過去7回の開催を経て、日本のインディを取り巻く状況は、大きく変化したと思います。まずはインディと呼ばれる規模の開発社が市場に参入しやすくなったことがあると思います。オンラインストアや各種プラットフォームへの参入がしやすくなり、チーム規模に左右されない販路ができました。それは今後もクラウドゲーミングが出てきたことで広がっていくと思います。

 ゲームエンジンが開発の主流になりゲーム開発に参入するコストも大きく減少し、誰でもゲームを作れる時代になりました。多くの人がゲーム開発に参入しやすくなり、開発者の数が増えたことで、ゲームのバリエーションや品質も上がりました。それにともない市場も大きくなってきていると思います。

 インディゲームを専門に取り扱ったパブリッシャーなども増え、開発者にとってゲーム制作を続けていくために必要なサービスも充実してきました。よい環境が整ってきたと思います。その反面、競争が増え過酷な状況になってきたとも言えるかもしれません。

――BitSummitアワードは、イベントが拡大していくにつれて重要性は増していると思います。アワードの各賞の選定はどういった基準で行われているのでしょうか?

 アワードの選定については、海外で開催されている、ほかのイベントで採用されている手法を取り入れて実施しております。エントリーされたゲームを、世界中に居るJuryと呼ばれる有志の審査員の方にランダムで遊んでもらい評価をつけていただきます。

 Juryによって付けられた評価によって、ランキングが作成されます。次に、BitSummitで選んだ各アワードの審査員を含む審査委員会のメンバーで集まり、ランキングの不合格ラインから順番にランキングの正当性を評価して行きます。

 Juryの審査期間に約1カ月、審査委員会で集まって行う選考会は約3日の時間を費やしております。厳正な審査になるよう、BitSummitとしてのメッセージをしっかりと伝えるために、慎重に審査をさせていただいております。

――昨年のアワードは、イベント開催日を待たずにノミネート作品を事前発表しましたが、出展されたゲームをプレイしたわけでもなく、会場での来場者の反応を見たわけでもなくノミネート作品が発表されたことに違和感がありました。アワードに関して、8ではどのような形で行われる予定でしょうか?

 ノミネート作品の事前発表に関しては、運営組織内でも賛否がありました。前年は、主に海外メンバーの意向をくんだうえで、開発者の利益を考え事前に発表すると言う方法を選びました。開発者にとって、事前にノミネートされることで、イベント中の一般に遊びに来たファンやパブリッシャー、メディアなどから注目が高まるメリットがあると考えました。

 その反面、ノミネートされなかったゲームにはその逆の効果も考えられます。アワードノミネートの審査に関しては、事前にエントリーされたゲームビルドをノミネート選考委員で厳正に審査をしておりますが、当日の盛り上がりなど会場でのパフォーマンスを鑑みていないことも事実です。

 次回のイベントに関するノミネート発表の方法は、前回のイベント時に皆様からいただいた意見などを参考にしながら、これから慎重に検討を重ねたいと思っております。

――例えば海外のイベントアワードでは賞金が出て開発者をサポートすることも行っていたりしますが、8では、BitSummitアワードを受賞した作品に賞金などの副賞を用意するようなことはありますか? 賞金などの副賞がない場合、なぜ用意しないのかも教えてください。

 海外のイベントで賞金が出ていることは、非常に素晴らしいことだと思います。今まで用意してこなかったのは、とくに理由があったわけではないので、賞金や副賞などについて検討する余地があります。

 単純にお金をあげることがよいのか、副賞を贈るとしてどのようなものが相応しいのか、慎重に協議する必要があると思います。

――BitSummit Roadshowという新しい取り組みについて改めて教えてください。なぜ、このようなイベントを始めたのでしょうか? BitSummitとの関係性を教えてください。

 BitSummit Roadshowは、BitSummitというイベントをより多くのゲーム開発者に知ってもらうために行っているサテライトイベントです。東京で初回イベントが開催されて以来、上海、台北、シンガポールと、アジアを中心に展開しており、今後は欧米にも広げていく予定です。

 京都のメインイベントほどの規模はありませんが、BitSummitで展示されたゲームを通じて開発者、パブリッシャー、メディアの交流を促す目的で開催しています。次回開催の際は、今までよりも更にクリエイターにフォーカスしたイベントとなるようにしていきたいと思っています。