レトロでかわいいドット絵とは裏腹に、切ないシナリオに号泣待ったなし。『くまのレストラン』レビュー
- 文
- 電撃オンライン
- 公開日時
独自の世界観でファンを獲得している、Daigoさんが開発したiOS/Android用アプリ『くまのレストラン』をレビューします。
見た目のかわいさとは裏腹に、切ないシナリオが展開され、涙なしではプレイできない内容となっていますよ。
まずはお客さんとのコミュニケーションから
『くまのレストラン』は、オーナーシェフのくまになってレストランを運営するゲーム…ではありません。
プレイヤーはレストランで働く“ネコ”になり、まずは店を訪れるお客さんのオーダーを聞き、くまの作った料理を提供します。
お客さんは妊婦さん、引きこもりのオタク、酔っ払いのおじさんなど、性別も年齢もさまざまな人々? がやってきます。
オーダーもお客さんによって異なるのですが、オーダーがよくわからない時は、お客さんの記憶に“ダイブ”することで、料理のヒントを得られます。
チュートリアル機能はありませんが、くまとの会話などで、やり方がシナリオに組み込まれているので、不安なくプレイできます。
それでもわからない時は、気になる場所をタップすれば、ネコがアクションを起こしてくれることもあります。
ゲーム自体は一本道なので、ゲームオーバーはありません。気になる所はとにかくタップしてみましょう!
駅で列車を待つお客さんたち、その行先は……
最初のお客さんたちが全員帰り、店じまいをした後、くまがネコを“ある所”に連れて行ってくれます。
そこで、この世界が“どこか”を知ることになるんです。
このレストランがある場所は、なんと“死後の世界”。レストランを訪れたお客さんは、すべて“死者”。レストランへは最期の晩餐のために来ているのです。
天国行きの列車を待つお客さんたちからは、生前の話を聞くことができます。
赤ちゃんが生まれるのを心待ちにしていた妊婦さん、あがり症ゆえに人前で話ができず引きこもりになってしまったオタク……「人前に出ると緊張して、どもりが止まらなかった。どこに就職することもできなかったよ」と語る彼に、筆者も共感を覚えました。
緊張すると頭が真っ白になり、上手くしゃべれない……皆さんも経験があるのではないでしょうか。
ここに注目!:記憶のかけらを使い、お客さんたちの“最期”の記憶を覗くと、そこは……
お客さんからオーダーを受けた時に手に入れた“記憶のかけら”。これは終業後、ネコが自分の部屋に入った時、デスクで使用できます。
“記憶のかけら”はお客さんの記憶の一部です。
覗ける記憶は、お客さんたちの“死”の記憶なので、覗く時は覚悟して見るようにしましょう。
この後もお客さんはやってきます。オーダーを聞き、時にダイブして、お客さんの最期の晩餐のお手伝いをしてあげましょう。
終業後は、記憶のかけらを使って彼らの“最期”を見守るのも、お忘れなく。
その後店を訪れるお客さんは、ちょっと怖いお兄さんや、かわいい? 小鳥もやってきます。少しネタバレになってしまいますが、怖いお兄さんの記憶のかけらを覗き、見た目からは想像できない正義感を垣間見たとき、涙が出るのを止めることができませんでした。
身を置いていた組織に裏切られたときの絶望感。警察に通報して、自分の身に危険が及んだとしても組織を正しい道に戻したかった正義感。「後悔はねぇ……よ……」という最期の言葉……絶望と希望を同時に感じさせてくれるこのシナリオに、どっぷりとハマった瞬間です。
さらにストーリーを進めていくと、このお兄さんが正義感にあふれた本当にいい人だとわかります。王道な展開ですが、くまの背中を押すお兄さんの言葉に、涙の堤防が決壊です。
そして、このレストランのオーナーシェフの“くま”。シナリオを進める途中でネコとの出会いのシーンがはさまれますが、「自分が誰だかわからないんだね」という言葉を、駅で見つけたネコに語りかけます。
「オレと同じか……」
くま自身も、自分が何者かがわからないまま、レストランで死者に食事を振る舞っていたのです。気になるのは「俺にはまだ、やり残したことが……」というセリフです。
もとは人間だったのかもしれません。くまに姿を変えてまで、一体くまにはどんな目的があるのか。くまにダイブしたときの記憶と、くまにどのような関係があるのか。
くまは“誰”なのか……。ネコもいったい何者なのか。くまとは何か関係があるのか……。
その先が知りたくてストーリーを進めていましたが、気が付けばシナリオの前半部分が終わっていました。涙をふくのに消費したティッシュの量も半端ありません。ゲームをプレイするときは、大きめのタオルを用意することをおすすめします。
残りのシナリオを見るには課金が必要ですが、無料分も短編小説を読む感覚でストーリーを進めることができるので、文庫本を買う感覚で課金するのもいいかもしれません。
(C) Daigo Sato
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります