『異種族レビュアーズ』原作者インタビューでクリムの名前の由来や幻の没ネタが判明

カワチ
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 1月11日から放送中のTVアニメ『異種族レビュアーズ』。多種多様な種族が暮らす世界を舞台に異種族娘たちが営むスケベなお店に通って、そのサービスのすべてを余すことなくクロスレビューしていくというもので、その攻め過ぎな内容から大きな話題となっています。

 ここではニコニコ漫画の“ドラドラしゃーぷ#”で連載中の原作漫画の原作・原案を手掛ける天原先生と、作画のmasha先生へのインタビューの前編をお届け。

 前後編の2回に分けて『異種族レビュアーズ』の秘話に迫っていきます。

TVアニメ化が決まった際の率直な感想は?

――まずは、TVアニメ化が決まった際の率直な感想を教えてください。

天原:世間のみなさまと同じように最初は「正気ですか?」と思いました。アニメではレビュー場面をどう表現するのか、どこまでエロの描写を描くのかといった疑問もみなさんと一緒だったのではないかと思います。

masha:自分は最初に担当編集さんから電話で「アニメ化の話が持ち上がっていて……」程度の報告をいただいたのですが、原作の内容が内容なので実現するのは難しいだろうと思い、あまり期待しすぎないように流すようにしていました(苦笑)。

 そうしたらそれから「制作会社が決まりました」「キャストが決まりました」と担当編集さんから次々と連絡が来て「これはマジだったのか……!」と驚きました。

天原:世間から「正気か?」と言われていましたが、アニメの宣伝で妖しいアドトラックを走らせたり、コミックの限定版に“マジカルホール”をつけたりと、放送前からすでに正気ではなかったですね(笑)。

――驚きも大きかったと思いますが、喜びの部分に関してはいかがでしたか?

天原:放送前は喜び半分不安半分でしたね。第1話の放送が終わったあと、概ね評判が良かったことを確認した今は喜びの感情のほうが大きいです。

――masha先生は、ご自身のキャラクターが動くという喜びも大きかったのでは?

masha:自分も第1話の反応をTwitterで見て、じわじわとよろこびが湧いてきました。動きも大変丁寧に作っていただいていることが画面から伝わってきて、とてもうれししかったです。

ただでさえ危なかった内容がさらに危険に?

――そもそも『異種族レビュアーズ』はどのようなきっかけで生まれた作品なのでしょうか?

天原:もともと多種族が多種族とのエッチの感想をレビューで言っているネタの絵をネット上で公開していて、その評判が良かったので同人誌として販売していたんです。

  • ▲文字で読ませるレビュー部分も、いろいろなネタが満載。読者=人間視点と別の種族での文化差が感じられるのもポイント。読み応えがあります!

 それから半年くらいしたところで今の担当編集さんから「これを連載漫画にしませんか?」というメールをいただいて、漫画形式に直すことになりました。内容を見た編集部の反応は賛否両論だったと聞いていますが、当然だと思います(笑)。

――masha先生は、漫画企画の話が来た時にどう思いましたか?

masha:担当編集さんから「天原先生の原作で漫画を描きませんか?」と打診をいただきまして、直接お会いしてネームなど見せていただいたのですが、とても面白い企画だなと思いました。

 私はネーム時点で間違いなくおもしろいと思っていたのですが、編集部の反応は賛否両論だったと聞いて、今こうして評価いただいていることに作画担当としてホッとしているところはあります。

 また、後から聞いた話では、1話と2話のネームはずっと前にできあがっていたのに、作画担当だけがなかなか決まらなかったところ私にお話をいただけたと聞き、この巡り合わせに大変感謝しています。

天原:最初は1月に雑誌に載る予定だったのですが、8月になっても作画が決まらなかったんです(苦笑)。

――ネームに関しては天原先生が手掛けているのでしょうか?

masha:そうですね。自分のほうでセリフ回しやコマ割りは多少手を入れさせていただくことはありますが、天原さんの段階でコマ割りまで終わったネーム形式で送られてきます。

天原:作画で大幅に内容が変わることはないですが、露出量が増えたりエロがギリギリになったりはしますね(笑)。

masha:ギリギリを攻めた方が読者さんの反応がいいかなと思って、エロは多少盛っています(笑)。

天原:最新話でもネームでは画面端でエッチなことをさせていたのに、ど真ん中に思いっきり描いてきましたよね。

――そういう部分でmasha先生のアレンジが入ることもあるんですね

masha:そうですね。やりすぎてニコニコ静画の方では修正かけられたりしちゃってますが……。編集部には「過激すぎる」という意味でストップをかける人はいないですね。

――まさか、それがほぼそのままアニメ化されるとは予想していませんでした。先日、監督にもインタビューをさせていただきましたが、絵だけでなく音についても無修正版はこだわっているとお聞きしました。

天原:ガチの喘ぎ声だらけなので、音量を小さくしたりしてどうにか対応してると言っていましたね(苦笑)。

――天原先生とmasha先生は、お互いの第一印象はいかがでしたか? 連載が続いて時間がたった今は、接し方や印象が変わった部分はありますか?

天原:最初にmashaさんのイラストを見たとき、キャラクターが幼い感じのデフォルメ絵柄だったので、「ただでさえ危ない内容が更に危なくなるんじゃないですか?」と感想を担当さんに送った記憶があります。

 pixivにはラフ絵とカラー絵しか置いてなかったので、どんな仕上がりになるか想像できなかったのですが、内容とがっちりハマっていたので安心しました。

――キャラクターに色気があり、漫画の第1話からすごく惹き込まれました。

masha:あのころは漫画を描き始めのころだったので、必死に描いていた覚えがあります(笑)。

――masha先生から見て、連載開始からここまで来て天原先生のネームの変化などを感じることはありますか?

masha:ネームが変わったとか感じたことはないですね。もし過激になっていたら私の悪ふざけのせいだと思います。ネタ探しは大変そうだなと思ってご本人にも聞いたのですが、まだまだ余裕だと仰っています(笑)。

天原:ネタが大変というより、そのネタをだすタイミングが来るのを待つまでが大変です。たとえば氷の種族とヤりに行くという話を描くにしても、氷の耐性のなにかを用意してからでないと、全員が冷たかったという当たり前の感想しか言わないだけになってしまいますから。

スタンクはゴロツキのようなデザインだった?

――masha先生が最初にデザインしたキャラクターは誰だったのでしょうか?

masha:最初はスタンクとゼルのペアでした。といってもスタンク以外はネームの時点であらかた形が決まっていたので、元を尊重しようと思い、そこから大筋のデザインは変えてはいません。ただ、今にして思えばネームのキャラデザインからもっと変えてしまっても天原さん的にはNGは出なかったんだろうなと思います。

天原:そうですね。

masha:スタンクのデザインはネームではてるてる坊主の様なデザインで描かれていたので、スタンクだけは例外的にゼロから私がデザインした形になっています。今のスタンクとゼルのデザインは第2稿のもので、第1稿ではもっと人相が悪く猫背で酒臭さが漂う“ごろつき”感の強いものになっていました。

その後、天原さんに「もっと残念なイケメン風にしてほしい」というご指摘をいただいて修正したのが現在のデザインになります。

  • ▲第33話(4巻収録)では、スタンクが英雄クラスの力を持つことが明かされています。……同時に、その力をエロにばかり使って、“無名誉エロ剣士”という通り名で呼ばれているそうですが。

天原:masha先生はネームそのままのデザインで描かれることも多いですけど、ウイスプ娘のようにテキトーに描いたデザインはきっちり無視して、しっかり描いてくれるので助かりますね。

masha:とくに意識はしてないんですが、アドリブが良い方向に働いているようならよかったです(笑)。

――人間以外の種族はデザインが大変そうですが、いかがでしょうか?

masha:デザインで大変だった場面はないですね。天原先生がネームの段階で大まかな方向性を示してくださっているのと、私がもともと人外キャラを描いていた経験から、そういうものにあまり抵抗がないせいもあるかもしれません。

天原:むしろ人外のほうがラクまであるというか(笑)。

masha:わかります(笑)。

――なるほど。人外に関するデザインノウハウも多そうですね。ちなみに人気キャラクターのクリムのデザインはいかがですか?

masha:ネーム段階から大体あのデザインでした。スパッツも履いていたと思います。

天原:そうですね。輪が欠けてることから羽の異質さからスパッツから中性的な顔立ちまでほぼそのままのデザインで渡した記憶があります。

――最初からスパッツだったんですね。余談ですが、アニメの無修正版でスパッツの上からでもアレの形がはっきり出ていてビックリしました。

天原:あれは完全にアニメスタッフの方の趣味です(笑)。

masha:というか、うの(まこと)さんのですね(笑)。

――インタビューでもうかがいましたが、うのさんのアイデアやデザインもいろいろすごかったそうですね。

天原:「とにかく金玉つけさせてくれ」とは言われました。

masha:ふくらみの形については天原さんに一応確認が来ていたらしいですね。天原さんがOKをだしたので、晴れてあの形になったと(笑)。

  • ▲地上波では隠されていますが、dアニメストア、niconicoなどでのムフフ成分増量の“裏オプver.”や、AT-Xでの放送やBDに収録される“無修正ver.”では、タマもサオもバッチリ!?

天原:私のほうがタマのあるなしにこだわりもちだったら、戦争になっていた可能性。

masha:私は天原さんがOKならなんでもOKというスタンスです(笑)。

人間の視点で好意を持たないようなキャラクター造形に

――スタンクを中心にクセがある登場人物だらけの作品ですが、お気に入りのキャラクターはいますか?

天原:初期に数回だけ出た悪魔レビュアーのサムターンやラミアのナルガミなどは動かしにくかったので本編ではほぼ出てこなくなりました。

 カンチャルとブルーズも彼らと同じような一回限りのレビュアーの予定でしたが動かしやすいのでレギュラー化した感じですね。

 しかしナルガミやサムターンらは小説で葉原さんがいい感じに拾って使ってくれているので、彼らの存在は無駄にはならなかったなと思っています(笑)。

――ほかには難産だったキャラクターはいますか?

天原:人間の視点で見るとパスだけど、ほかの種族の視点だと十分いけるというキャラクターは見せ方が難しいですね。本当は説明をなるべく少なくして雰囲気で伝えたいのですが。

 31話に登場したほとんど樹木のドリアードのような、人間には理解の範囲外な娘を本当はもっとバンバンだしたいです(笑)。

masha:「人間以外にはOK」の線引きだと、天原さんからよくある修正依頼が「可愛すぎるので直してください」なんです(笑)。

天原:デリーちゃんは足が長くてスタンクが引く要素がゼロだったのでもっと寸胴にしてほしいというお願いをしたりしましたね。

masha:ほかの漫画ではなかなかない修正だと思います。産卵回でも「スタンクが引いてるのに読者が共感を持てるようにもう少し人型から離してほしい」と言われました。

天原:クリムが作ったデキの悪いゴーレムが普通にイケそうだったのでもっとブスにしてほしいとか(笑)。

masha:ありましたね(笑)。

――とくにお気に入りのキャラクターはいますか?

天原:気に入っているというか動かしやすさの筆頭はやっぱりクリム君ですね。いじってよし攻めさせてよし周りを困惑させる役でもよし、世界観の裏事情シナリオ全部背負わせてもよしのなんにでも使える万能キャラですので非常に便利です。

――キャラクター名はどのような形で考えることが多いのでしょうか?

天原:すごく適当です。スタンクとかブルーズやカンチャルはなんの元ネタも意味もなく感覚だけでつけていますし、クリムヴェールも“しっとりヴェールのハンドクリーム”みたいなものが手元にあったのでこれでいいやって感じでした。

 メイドリーなんてメイド服で鳥だからメイドリーですからね(笑)。

 モブ嬢には名前がほとんどなかったのですが人気投票を開催するときや、単行本のおまけの名刺や冊子用で必要になって、ぱぱっとつける感じです。

 サキュバスのアサテントとかマヨスペルは本格的に何も考えてないなって感じがして自分でも好きですね(笑)。

――クリムにそんな由来があったとは(笑)。

天原:スタンクはタンク職でスカタンだからとか、そんな感覚で付けたような記憶もあります(笑)。

masha:私は女勇者の“ユウティ・ぺぺ”が好きですね。わかる人にはわかる感じが(笑)。

――漫画の自由度は非常に高そうですが、編集部からストップが出た没ネタなどはあるのでしょうか?

天原:もともとの同人誌版にいた天使のレビュアーは出版コードに引っかかるような黒い発言しかしないゲスキャラでしたので、一般誌には出せないという認識で私と編集さんのなかで一致しました(笑)。

 ただし、レビューさえ書かなければ性格の悪い天使程度で済みますので、一応今は輪を割って自由になりたい天使として登場はしています。

 あとは、風俗、娼婦、歓楽街みたいな単語を全部使用禁止にしたので、サキュバス街とかサキュ嬢みたいな架空の単語に置き換えています。

 私としては特に問題はないのですが、声優さんには「発音しにくい」と不評を頂いております(笑)。サキュ嬢って実際に発音するとすごく言いにくいんですよね。

 ほかは1巻のおまけマンガ用に6ページくらいでスタンクの親父や育ちの設定漫画を描いたのです、が全体的に重い感じの内容だったので全部ボツになりました。

 一応アニメスタッフさんや小説のスタッフさんにはその漫画は渡しているので、それらの設定は結構拾って使われています。

 あとは連載前に準備していた話でアマゾネス村の回が丸ごと全部ボツになりましたね。戦って勝てたらヤれる村みたいな場所で、スタンクやゼルがまっとうに強いことを見せておくかという感じで描いた回ですが、まるごとボツになりました。

 店じゃないのでコンセプトから外れるからという理由でしたが、まあごもっともですね(笑)。あとは子供は認知しなくてもいいという設定部分も危なすぎたのでボツられたのではと思っています(苦笑)。

――すごい裏話が多くて驚きました(笑)。ちなみにmasha先生的に「天原先生ってヤバい……」とちょっと引いたネームやアイデアはありますか?

masha:じつは私自身が雑食というか、漫画について何でもアリなところがあるので天原さんのアイデアに対して引いたということは今までなかったりします(笑)。

 天原さんはアイデアが奇抜だという声が周囲でも多いですが、じつはは私が天原さんの一番ヤバいと思っている所は別にありまして、それはネタやストーリー作りのバランス感覚と嗅覚です。

 天原さんのネタ絵やネームを見せていただくと、一見シンプルなんですが、文章や配置されたネタのタイミングが的確で想像力を掻き立てられる、最小労力で最大リターンを得るような作りになっていると感じるんです。

 また、天原さんからいただいたネームから私の方でコマ割りだったりセリフ回しだったりをアレンジすることはあるのですが、大抵天原さんは私が変えたものにそのままOKを出してくださるんです。

 でも稀に「ここは変えないでください」と返ってくることがあって、そういうポイントって、読者の方をワクワクさせるために必要だったり漫画として大事なポイントだったりするんですね。

 実際、天原さんは他の方の漫画や小説を本当によく読まれていますし、そういう中で漫画センスを日々磨かれているんだと思います。

 なので私としてはそういう天原さんの漫画センスこそを信頼していて、大事なところはしっかりと釘を刺してくださるので、だからこそ毎回好き勝手に作画をやらせていただけるという安心感はありますね。

――ちなみに天原先生はどういったジャンルの漫画がお好きですか?

天原:『ヒストリエ』や『銃夢』、ゲームだと『ファイナルファンタジータクティクス』のような、世界情勢ががっちり組まれているような作品が好みですね。

――なるほど。『異種族レビュアーズ』も世界観の描写が細かくておもしろいですよね。

天原:『異種族レビュアーズ』の源流は『五竜亭シリーズ』(※)という昔の文庫ですね。

※五竜亭シリーズ:『ファンタジーRPGクイズ―五竜亭の一夜』(富士見文庫)などからなる小説。物語の舞台はユキリア世界で、冒険者たちが酒場で雑談をするような感覚で、クイズ形式での物語を楽しむことができた。盗賊の“蛇の目”ダイスや騎士のフンバルト、隻眼の傭兵カールスと妖精ヴィヴィのコンビとか、なつかしい……!

 異種族間で価値観の違いを交えつつトークするという感じの内容でした。コミックス1巻が出た当初は『ダンジョン飯』と比較されることが多かったですが、最近は『五竜亭』に気付く人も増えてきましたね。

インタビュー後編は近日公開

 インタビュー後編では、お2人がアフレコ現場を見学した時のエピソードやアニメ版を初めて見た時の感想など、アニメ版に関する話題を中心にお届けする予定です。

(C)Amahara 2020 (C)masha 2020
(C)天原・masha/株式会社KADOKAWA/異種族レビュアーズ製作委員会


『異種族レビュアーズ(1)』

  • 発行:KADOKAWA
  • 発売日:2017年9月8日
  • 定価:620円+税

『異種族レビュアーズ(2)』

  • 発行:KADOKAWA
  • 発売日:2018年12月7日
  • 定価:620円+税

『異種族レビュアーズ(3)』

  • 発行:KADOKAWA
  • 発売日:2019年7月9日
  • 定価:660円+税

『異種族レビュアーズ(4)』

  • 発行:KADOKAWA
  • 発売日:2020年1月9日
  • 定価:660円+税