【BitSummit】「神谷氏、ヨコオ氏は追い越すべき師匠」プラチナゲームズ田浦氏が稲葉氏に語る【電撃PS】

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 2019年6月1日、2日に京都市勧業館“みやこめっせ”で開催されている“BitSummit 7 Spirits”。その会場の1日目のステージで行われたトークショウ“プラチナゲームズの新世代ディレクター”のレポートをお届けします。

 本ステージには稲葉敦志氏と田浦貴久氏が登壇し、“新たなオリジナルタイトルを生み出すこと、次世代のディレクターを育成する、または成長すること”をテーマにトークが行われました。

 田浦氏といえば、過去には『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』のゲームデザイナーを務め、現在は8月30日発売予定のNintendo Switch用タイトル『ASTRAL CHAIN(以下、アストラルチェイン)』のディレクターを務める、気鋭のゲームクリエイター。

 最初に「田浦にとってプラチナゲームズでディレクターになるということとは、どういうことなのか? ディレクターになることは難しいことなのか?」という質問が稲葉氏から田浦氏へと投げかけられました。

 田浦氏は「難易度で言うと熱意と本気度があれば簡単だと思います。もちろん、それだけでは足りませんが、熱意と本気度を汲み上げてくれる空気、何年もゲームに真摯に向き合ってきたらそういう道は自然と開かれる、という空気が、プラチナゲームズにはあります。」との返答。

 また、田浦氏は「教育という話でいうと、“なにか教えてもらったこと”というのはまったくない、ということはありませんが、基本的にはゲームが好きという気持ちがあるので、色んなゲームに親しんで、そこから学んでいくことがすごく多いと思います。“ゲームが好きだ”という思いと、“ゲームを作りたい”という思いもあることが、ゲームディレクターに向かっていく道として一番よいのではないかなと思います」と続けました。

 これを受けて司会者のベン氏は「熱意や情熱というのは、たとえば開発期間が想像以上に長くなった時に、熱意が失われてしまったり、“早く別のゲームを作りたい”という気持ちが湧いたりすることもあると思いますが、田浦さんはそういう気持ちはいけないと思いますか?」と、田浦氏へ質問。

 田浦氏は「上手いアドバイスが自分にはできませんが……」と前置きしつつ、「同じゲームを作っていても、いろんな側面があるので、自分はあまりそういう気持ちにならないんです。たとえば“ここ、作ってて上手くいかないな”と思っていても、別のところを作ることで解決することもありますし、作っていて飽きないんです。ゲームが発売するまで、死ぬまで、ずっとゲームを作り続けていたいというのが夢としてあります。」と続けました。

 この返答には稲葉氏も「田浦はマジメですよ。ずっとマジメに仕事をしているので、たぶんベンの想定しているような事例には、まったくあてはまらないと思います。」と田浦氏のことを絶賛していました。

 ここで、稲葉氏から「今回、田浦のことを新世代ディレクターと銘打ってこのステージに登壇してもらっているが、プラチナゲームズには神谷英樹というディレクターがいて、ほかにも身近な大先輩としては『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』のヨコオタロウという人がいる。田浦からしたら、神谷英樹やヨコオタロウは倒すべき敵なのか、偉大な師匠なのか?」という質問が登場。

 田浦氏は「最初にお伝えしたいのは自分は“ファン”だということです。とにかく偉大な先輩が作るゲームをファンとして楽しみにしています。」と回答。

 これに対し稲葉氏は「マジメですね。でも本音の部分は?」と、田浦氏をさらに追求。田浦氏はこれに対し「追っていっていつか追い越さなきゃいけない、倒さなきゃいけない、“その席を空けろ”という気持ちはたしかに持っています。」と述べました。

 また、「先ほどなにか教えてもらったことというのはとくにないとは言いましたが、そういう人たちが働いているのを間近で見て、意識的にも無意識的にも、いろいろなものを盗んではいます。なので私は彼らのゲームを楽しみにしているファン、という側面もありますし、彼らは私を育ててくださっている恩人でもあります。いろいろな側面があります。」と続けました。

 稲葉氏はこれを受け「『アストラルチェイン』の発売前に聞くのも……」と述べつつ、「プラチナゲームズはこれからもずっと新しいものを作り続けていく会社でありたいと思っているが、田浦はこれから先どのようなディレクターになりたいと思う? ディレクターというポジションをどのように守っていきたいか、本音の部分を聞かせてほしい」とコメント。

 田浦氏は「プラチナゲームズのイメージとして、なにか新しいことをどんどんやっていく、というのはあると思います。私も先ほど“作り続けてたい”という話をしましたが、それに近い気持ちはあって、“一度ゲームを作ったら、次はそれとはまったく違うゲームを作りたい”という気持ちにはなります。それが世にまだ出ていない操作感、世界観であればあるほど、やっぱりワクワクします。

 ですので、“毎回違うことをやっていく”というスタンスで今後もディレクターを続けていきたい、という思いがあります。一方で、ディレクターの経験を経た今、プランナーとして働きたいという気持ちも少しあるんです。」と回答。

 これを受けて稲葉氏が「つまり、次に田浦が作るゲームは恋愛シミュレーション?」と問うと、田浦氏は「恋愛パズルシミュレーションを作ります!」と返し、会場からはちょっとした笑いもこぼれました。

 ここで田浦氏から「さっきからずっと神谷さんがあそこで見ているのですが、このステージが終わったら大変なことになるんじゃないかと思っていて……」と苦笑交じりに不安を述べると、稲葉氏は「まぁ、神谷は旧世代だから。」と冗談を交えつつ、「プラチナゲームズはゲームを作りたい、という気持ちを大事にする会社でありたいと思っているので、“BitSummit”に参加されているインディークリエイターさんの気持ちに通じることもあると思います。

 神谷は神谷で作りたいゲームがありますが、若手は若手で“こういう物を作りたい”という人間もどんどん出てきています。ですから、今はなにも発表していませんが、プラチナゲームズは現在さまざまなゲームを作っています。そのため、田浦みたいに初めてディレクターを行う、というケースも結構あります。チャンスはどんどん与えていきたい、という気持ちは自分の中にもありますし、そういうことをよしとする会社であり続けたいな、と思います。」と返答しました。

 稲葉氏は続けて現在田浦氏が手がけているタイトル『アストラルチェイン』の開発についても言及。「『アストラルチェイン』は紆余曲折を経ているので、田浦にとっては、思い入れもさることながら苦労もいっぱいあって、まさに今、苦労の真っ只中だと思う。でも、田浦は作ることをずっと諦めなかったよね。」と田浦氏に尋ねました。

 田浦氏は「そうですね、やはり完全な新規タイトルとなるので、いろいろな苦しいことがありました。ずっと最初から持ち続けていた熱意、ゲームを作りたいという気持ちが曲がらなかった結果、なんとか立っていられるな、という感じはあります。」と答えました。

 これを受けて、ベン氏が「オリジナルタイトルを作る時にこれが一番大変だな、という基本的なことは何でしょうか?」と田浦氏へ質問が飛び出すと田浦氏は「“伝える”ということではないか」と返答。

 「個人的な話ですが、私はあまりしゃべるのは得意ではないんです。新しいゲームというのは、まだ世にないものなので「こういうふうにしたい」というのは口で伝えるしかない、ということが大きな割合を占めています。そこからプログラムをはじめ、いろいろなものができていくので、やはり“伝える”ということは大変だなと思います。10人いれば10人の考え方がありますので、そこは『アストラルチェイン』ではいろいろ迷いながらも手探りで試行錯誤して進めていけたなと思っています。」と答えました。

 最後にベン氏からは「ぜひ『アストラルチェイン』のアピールを、稲葉さん、田浦さんからひと言ずつお願いします。」と2人にお願い。

 稲葉氏は「オリジナルタイトルを作るということは、誰も見たことがないものを作る、誰も理解できないものを作る、ということなので、プロジェクトが挫折するような要素は多いんです。それを発売日発表までこぎつけることができたのは、ここにいる田浦の情熱あってのことだと思います。『アストラルチェイン』は田浦を全身で浴びられるタイトルになっていると思うので、本当に楽しみにしていてください。」とのこと。

 田浦氏からは「こういうところに代表して出て、“田浦のゲーム”と呼ばれることもあるのですが、もちろん開発チーム全員のがんばりによってできています。今回はかなり若い人がスタッフには多くて、これが初めてのゲーム開発です、という人もなかにはいます。そういうやる気だけで組み上げられたゲームということで、いい意味で、若さを感じられるゲームになっているのかなと思います。そのあたりを期待していただければと思います。」と締めくくりました。

 Nintendo Switch用タイトル『アストラルチェイン』は2019年8月30日発売予定です。

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