『デッドバイデイライト』元ネタ集第11回。霧の森に登場した待望の和風殺人鬼“鬼”に迫る!【電撃PS】

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 1人の殺人鬼と4人の生存者に分かれて、殺るか殺られるかの命がけの儀式を行う、非対称型対戦アクション『デッドバイデイライト(DbD)』。すでに発売されているPC、PS4、Switch版に加え、今年はモバイル版でも霧の森の殺人儀式を楽しめるようになる予定です。

 今回は昨年12月に配信された最新チャプター“呪われた血統”で登場した新殺人鬼“鬼(THE ONI)”の元ネタを紹介しましょう。

⇒“『デッドバイデイライト』に登場する殺人鬼の元ネタは?”
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脈々と受け継がれる殺人鬼の血――最新チャプター“呪われた血統”

 これまでの『DbD』では、各キャラクターは基本的に独立しており、チャプターをまたいでの関連性は特にありませんでした。しかし最新チャプター“呪われた血統”は、2018年に配信されたチャプター“断絶した血脈”と密接に関係しています。

 “断絶した血脈”では、実の父に殺されて殺人鬼“スピリット”となった少女・山岡凜が登場しましたが、“呪われた血統”では、凜の祖先である山岡華山が殺人鬼“鬼”として登場します。

 第3回で考察したように、やはり山岡家には脈々と伝わる殺人鬼の血が流れていたようです。どうも山岡家は、よほどエンティティに気に入られているみたいですね。凜の祖先である山岡華山とは、いかなる人物だったのでしょうか?

ニセ侍を狩る“憤怒の鬼”山岡崋山

本名:山岡崋山
性別:男
武器:山岡の刀
特殊能力:山岡の怒り

 山岡崋山は家名を尊び、名のある侍である父・練次郎を尊敬していました。しかし失われていく侍文化を嘆くあまり山岡家を出奔し、全国にはびこる“ニセ侍”を討伐して回ります。その殺し方は冷酷かつ残忍で、侍文化を腐敗させる者は農民も武士も関係なく殺戮していきました。やがて崋山は領主から"鬼の山岡"と呼ばれ、領民たちに恐れられるようになってしまいます。

 ニセ侍を排除し侍階級を浄化するという自分の意に反し、崋山の行為は山岡家の名誉までも汚すことになりました。そして自らを"鬼の山岡"と呼ぶ者を片っぱしから惨殺するうちに、いつしか頭の中で「お前の名を冒涜した領主を叩き潰せ」という不穏な囁きが聞こえるようになります。

 頭に響く囁きに促されるまま領主の町にたどり着いたとき、崋山の前に1人の侍が立ちふさがります。愛用の金棒で打ち砕いた兜から覗いたその顔は、父・練次郎のものでした。恥辱と後悔の入り交じった目で不肖の息子を見つめたまま、彼は事切れていました。そして崋山はまさに自分こそが、壊滅させようと躍起になっていたニセ侍に成り果ててしまったことに気付きます。

  • ▲領主の館へ乗り込んだ崋山は、彼の名を冒涜したその舌を引き抜いて殺害します。“鬼”のメメント・モリはそのときの怒りを再現するかのように、生存者の舌を引き抜きます。

 怒りと絶望に突き動かされ、幾人もの侍を押しのけてついに崋山は山岡家の名を貶めた領主を殺害します。しかし屋敷を出たところで農民に囲まれ、崋山は捕らわれてしまいます。

 農民たちは慕っていた領主を殺した“鬼”を代わるがわる責め抜き、やがて崋山は苦痛に満ちた死を迎えます。しかし彼の死体と金棒は黒い霧に包まれ、消え去ってしまいました……。

▲“鬼”のステージ、“山岡邸 怒りの聖所”。かつては手入れの行き届いた神社でしたが、今では見る影もなく荒れ果てています。その一角にある不気味な地蔵が乱立する場所では、ちょっと視線を外してから向き直ると……。
  • ▲なんと、いつのまにか地蔵がこちらを向いている!? 気付くとぞっとするようなギミックが存在します。

人が成って果てたるモノ――崋山が成り果てた“鬼”とは

 山岡崋山こと殺人鬼“鬼”は、文字通り日本古来の妖(あやかし)である鬼がモチーフになっています。鬼ほど日本人になじみ深い妖は他に存在しないでしょう。鬼ごっこや目隠し鬼の童遊び、節分などの伝統行事に鬼は欠かせませんし、地獄で亡者を責め立てるのも鬼。桃太郎や一寸法師など、日本の勇者に退治されるのも決まって鬼です。

 その他にも神話や伝説、昔話、芸術、信仰、芸能……。鬼は日本の文化と密接に結びつき、古来の文化を忘れつつある現代の日本人にとっても今なお身近な存在です。そんな、なじみ深くもあるようで、じつは知らないことも意外と多い、鬼とはどんな存在なのでしょう?

 多くの漢字がそうであるように、もともと“鬼(き)”という文字は中国から伝わったものです。本来の意味は死んだ人間の魂――つまり“幽霊”を指す言葉でした。古代中国ではすでに隋代に蕭吉が記した“五行大義”に、“鬼は帰なり、古は死人を帰人と為すと謂う”という一節が見られます。人間の本来の姿は死者であり、生者は二次的な姿である、といった意味です。

 また日本でも死亡することを"鬼籍に入る"と言うことがありますが、これも鬼=死者の魂と考えるとすんなり理解できることでしょう。鬼籍は本来“鬼録”といい、すべての生物の寿命が記された帳簿です。熊倉隆敏氏のコミック『ネクログ』では、この鬼録が物語の重要なポイントとして登場していました。また鬼録は後に仏教思想に取り込まれ、閻魔大王の閻魔帳へと変遷していきます。

 こう考えると、山岡凜が“スピリット”=魂であり、その祖先である崋山が“鬼”である、ということはなんとなく符牒が合うというか、納得がいきますね。

  • ▲殺人鬼“スピリット”こと山岡凜。平凡な女子大生でしたが、夜ごとの悪夢によって狂った実の父に惨殺されています。崋山もまた不気味な囁きにそそのかれており、山岡家には他の殺人鬼には見られないエンティティの直接的な介入があったことを伺わせます。

 洋の東西を問わず、生者は死者――とりわけ現世に恨みを残して死んだ者の魂を恐れるものです。それ故人は死者が生者に害をなさないように“埋葬”という文化を築き、やがては人に害を成すものはすべて鬼の仕業とされるようになります。そしてこれら怨霊である鬼は、仏教とともに日本に伝来します。

 一方、日本の土着信仰である神道の神話――『古事記』『日本書紀』などのいわゆる日本神話では、黄泉国に棲む“八雷神(やくさのいかづちのかみ)”“黄泉醜女”など、自然の脅威を象徴した鬼が古くから登場しています。ですがやはり、後述するような一般的な鬼のイメージは仏教伝来以降のものでしょう。

 また古代の日本では、熊襲、隼人、蝦夷(えみし)、土蜘蛛など大和朝廷に従わない人々を“まつろわぬ民”と呼んでいました。日本書紀にはすでに「亦山に邪しき神有り、郊に姦しき鬼有り」という一節があり、朝廷の反逆勢力を鬼に見立てて表現しています。鬼が人に害を成すもの、というイメージを為政者がうまく利用したわけです。これら“反逆者の鬼”は中世以降に、酒呑童子や茨木童子などのもっとも“鬼らしい鬼”へと受け継がれていきます。

 さて、日本での一般的な鬼のビジュアルイメージといえば筋骨隆々の大きな身体、頭には牛のような角が生え、腰に虎皮の衣をまとい、手には金棒……といった感じでしょうか。これらは中国由来というより、むしろインドの羅刹(ラクサーシャ)などの影響が強いようです。"悪鬼羅刹"という慣用句もありますね。

  • ▲まさに羅刹のごとき、と形容するにふさわしい“鬼”のメメント・モリ。刀で胸を串刺しにした後舌を引き抜き、とどめに金棒(木製)で顔面を3回殴打、という殺人鬼の中でも一、二を争う残虐さを誇ります。

 とはいえ、中国の陰陽思想も上記のビジュアルに影響を与えてはいるようです。日本では古くから北東の方角を鬼が出入りする“鬼門”としており、玄関を北東方向に作らない、などといったことをしてきました。北東の方角は十二支で丑寅(うしとら)といい、ゆえに丑寅に棲む鬼は牛の角を生やし、虎の腰巻きをまとっている、といった解釈が今日一般的になっています。

 こうした日本オリジナルの鬼のイメージは、仏教伝来とともに広まりました。985年に天台宗の僧・源信が記した『往生要集』には、極楽浄土とともに八大地獄の図が掲載されています。そこに描かれた亡者を責め立てる獄卒は、まさに現在のイメージどおりの鬼そのものです。「悪いことをすると地獄に落とされ鬼に責められる」→「だから信仰を持てば救われる」というように、布教の手段としても使われていったのです。

 こうして鬼は雷や嵐、死者の魂など自然現象を象徴とするものから政権の反逆者、布教の手段と姿を変えていきました。そして江戸時代以降盛んに創作された物語では、人の心の暗部を表すものとして鬼が描かれるようになります。

 能の“紅葉狩り”に登場する紅葉や歌舞伎“娘道成寺”の白拍子(清姫)など、山岡崋山のようにかつて人であったものが鬼に成り果てる様が、芸能や物語の題材として大いに取り上げられるようになりました。

 現代でも非情な人のことを“鬼”と言いますし、1つのことに没頭する人は畏怖を込めて"~の鬼"と呼ばれます。また"鬼が笑う""心を鬼にする"など、鬼にまつわる多くの慣用句が今日でも日常的に使われています。時代とともに姿を変えつつも、鬼は現在に至るまで日本人の身近な存在だったのです。

まさに鬼に金棒!? 崋山の持つ金砕棒とは

 もともと強い者がさらに力を得ることを、ことわざで“鬼に金棒”と言うように、武器としての金棒は鬼と切っても切れないものです。山岡崋山も、特殊能力“血の怒り”を発動すると太刀から金棒(木製)に持ち替え、すさまじい勢いで突進したり、一撃で生存者を這いずり状態にすることができます。

 この鬼に付きものの金棒は“金砕棒(かなさいぼう)”を略したもので、古くは“鉄撮棒”と書きました。鉄撮棒は木製の棒である撮棒に、鉄帯を巻き付けたり鉄板で補強したりしたもので、のちに完全な鉄製のものも作られるようになります。

  • ▲特殊能力“山岡の怒り”を発動すると、刀から金棒(木製)へと持ち替えます。この状態では猛烈な勢いで突進する“鬼の猛進”や一撃で生存者を瀕死状態にできる“鬼の一撃”を使用することができます。

 撮棒は邪気を払う力を持つとされる、長い木の棒のことです。従僧・法師が警固のために担う棒や祇園会の際に犬神人が持つ棒、刑吏が担ぐ鉾、非人の長吏の突く棒などはすべて撮棒の一種です。元来は呪具としての意味合いが強いものだったのですが、中世以降は棒を使う兵法である棒術が発展し、武器としても使用されることになります。

 鎌倉・南北朝時代の播磨国の地誌“峯相記”や、同じく南北朝時代の軍記物語“太平記”には撮棒や鉄撮棒を使用する悪党・僧兵などが登場しており、武器としての金砕棒は南北朝時代にすでに現れていたようです。

 戦乱の時代へ突入するとともに冶金の技術も向上し、重装の鎧をまとった騎馬兵などには刀で傷つけることが困難になりました。そこで強固な鎧の上からでも打撃でダメージを与えられる金砕棒を使用するものが現れていきます。このあたりは、西洋でも板金鎧(プレートアーマー)の登場により、メイスやモーニングスターなどの打撃武器が使用されるようになった経緯と同様ですね。

 金砕棒を使用していた武将で有名なのが、戦国時代の出羽国の大名・最上義光です。関ヶ原の合戦での東軍勝利の立役者で、“家康に天下を取らせた男”の1人として知られています。伊達政宗の伯父にあたり、大河ドラマ『独眼竜政宗』では悪役として描かれていました。しかし実際は、山形県南部に一大勢力を築いた名君だったということです。

 この最上義光が戦場で携えていたのが金砕棒であり、その様子を描いた屏風絵が現在も山形市の最上義光歴史館に残されています。……が、この金砕棒は武器としてではなく、どうも軍勢を指揮するために使用していたものだったようです。本陣で大将が手にしている扇子と、同じような意味合いでしょうか。とはいえ、鉄製で太刀2本分もの重さがあると伝えられており、義光が並外れた膂力の持ち主であったことは間違いないでしょう。

 また同じく戦国時代の常陸国武将、真壁氏幹も金砕棒を使用していたと伝えられています。『関八州古戦録』巻四には長さ2メートルもの“樫木棒”を振り回していたと記されています。この樫木棒は筋金を鋲で打ち付けたもので、この金砕棒を携えた氏幹は“鬼真壁”と恐れられていました(父親の久幹が“鬼真壁”だったという説も)。

 いかがでしたか? 前回配信のチャプター“ストレンジャーシングス”では初の人外殺人鬼“デモゴルゴン”が実装され、今回の新チャプター“呪われた血統”では初めて他のチャプターと関わりのある殺人鬼“鬼”が登場しました。今後の『DbD』でも、次々と新たな試みがされていくことでしょう。非常に楽しみですね!

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