多数の『スペースインベーダー』を楽しめる『インヴィンシブルコレクション』レビュー。開発インタビューも

滑川けいと
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 3月26日にタイトーから発売されるNintendo Switch用ソフト『スペースインベーダー インヴィンシブルコレクション』。その特徴や魅力をお届けします。

 1978年に姿を現し、爆発的ブームを巻き起こした『スペースインベーダー』。若い人でも「プレイはしたことはないけれど、名前は聞いたことがある!」という方は多いのではないでしょうか。

 『スペースインベーダー インヴィンシブルコレクション』では、長い歴史を持つシリーズから、主にアーケードで稼働していたものを中心に、8本のタイトルをプレイ可能。今回は、その中から2本をピックアップして紹介していきます。

 また、アーケード版の移植を担当された開発会社であるゴッチテクノロジーのインタビューなども掲載します。

通常版収録タイトル(※6タイトル8バージョン収録)

『スペースインベーダー(オリジナルバージョン)』
『スペースインベーダー(カラーバージョン)』
『スペースインベーダー・パート2』
『マジェスティック トゥエルブ』
『Super Space Invaders ’91』(※マジェスティック トゥエルブ海外版)
『スペースインベーダーエクストリーム』
『スペースインベーダー ギガマックス 4 SE』
『アルカノイドvsインベーダー』

これぞ『スペースインベーダー』!

 改めてになりますが最初に説明をしておくと、『スペースインベーダー』はシューティングゲーム。左右に動きながら迫ってくる敵(インベーダー)が、プレイヤー側の最下部に到達するまでにすべて撃破すればクリアとなります。

  • ▲プレイヤーができるのは横移動と攻撃。

 まず紹介するのは、『スペースインベーダー(カラーバージョン)』。タイトル通り、『スペースインベーダー』の画面に色がついたものになります。また、4桁だったスコアが5桁になっているのも特徴。

 『スペースインベーダー』が登場した当時は爆発的な人気となり、表示できる最大スコアである9990点を出す人が続出しました。そのため『スペースインベーダー(カラーバージョン)』ではスコアの桁がひとつ増えたのです。大人気で熱心にプレイする人が増加し、結果みんなの腕が上がっていったのがわかるかと。

 久しぶりにプレイしたのですが、意外に手こずりました……。序盤の敵はゆっくり動いていますし、数が多くて攻撃を当てやすいのですが、数が少なくなってくると移動速度がアップ! そのころには敵がこちらにかなり近づいていて、狙いを定めようとしても焦ってしまうんですよ。

 ただ、敵の数も少なくなっている状態なのでやられても「次はできそうな気がする!」と思い、気がつけば何度もプレイしていました。

 敵の動きもそうですが、ハイスコアを目指すのに欠かせない一定時間でいなくなるUFOの存在もあり、プレイヤーの挑戦心をくすぐる要素がしっかりと盛り込まれているなと感じました。当時の方がハマったのもうなずけます!

  • ▲当時のスキャンラインを再現させることもできます。

インベーダーをみんなでワイワイ撃破!

 収録されている作品の中で、注目タイトルは『スペースインベーダー ギガマックス 4 SE』です。本作は、2018年に行われた『スペースインベーダー』40周年記念イベント以降に稼働した多人数で同時にプレイできるタイトルで、本作では最大4人まで一緒にプレイできます。

 イベントやアトラクション稼働時にはない新ステージやギミックが搭載されていることや、音楽もタイトーのサウンドチーム“ZUNTATA”が新規に書き下ろしているところも見逃せません。

 操作は横移動と攻撃でシリーズから変わりありませんが、敵対するインベーダーは異なります。複数回攻撃を当てないと倒せなかったり、遠距離攻撃だけでなく体当たりをしてきたりと、『スペースインベーダー』にはなかった多彩な動きをしてきます。

 筆者は本作を初めてプレイしたので、「遠距離攻撃だけじゃないの!?」や「こういうギミックがあるんだ」と進化に感心しながらプレイしていました。

  • ▲インベーダーはドットで描かれています。

 『ギガマックス 4 SE』にはいくつかのステージがあり、先に進むとボスが出現。ボスはHPが設定されており、制限時間内に0にすることに。今回は同僚と2人でプレイしていたのですが、ボスのHPが高く、ギリギリで何とかクリアできました。

 ボスの撃破で役立ったのは、新たに用意されている合体技。プレイヤーが重なった状態で同じタイミングで攻撃すると放てます。合体技は同じタイミングで攻撃する必要があるので、声かけが大切。簡単ではない分、合体技を出せた時には一体感、爽快感を味わえました。

  • ▲合体技が成功すると、攻撃が通常よりも大きな弾になります。

 合体技だけでなく、『ギガマックス 4 SE』では「こちらが左側を担当するから、右側をお願い!」や「次にこの攻撃くる! 避けて!」とコミュニケーションを取る場面は多いです。操作も分かりやすいので、家族や友だちと一緒にプレイすれば楽しみが倍増し、もっと仲よくなれるタイトルだなと感じました。

開発会社へのインタビューを掲載。原作の持ち味を正しく移植させる大変さとは?

 アーケード版から『スペースインベーダー インヴィンシブルコレクション』への移植を行ったのは、ゴッチテクノロジー。その担当者に、開発当時や、移植への心構えをコメントいただきました。

――今回のプロジェクトに限らない話ですが、御社が移植にあたって大事にしている部分、優先している部分、あえて優先度を下げている部分などあるかと思います。タイトルによって変わるかもしれませんが、御社の移植方針などあれば教えていただけますでしょうか。

 私たちは、アーケードゲームは文化的価値を持つ、後世に残すべき資産であると考えています。かつて、これらの作品は街のアミューズメント施設(ゲームセンター)で手軽に体験することができました。しかし現在では、それも相当に難しくなってしまいました。

 アーケードゲームは家庭用ゲームと違い、専用の基板、筐体等の機材が必要で、専門的な知識が無ければ、遊ぶだけでもいろいろ難しい部分がでてきます。また、ビデオゲームは現実に遊ぶことができなければ、保全したことにはなりません。筐体や基板を保管することはとても必要なことですが、理想的には、世の中に“ゲーム”と認識できる形でつねに浸透させておきたいものです。

 そういった気持ちから、最新家庭用ゲーム機へのアーケードタイトルの移植・復刻業務のお話が来るたびに、開発者としては“原作を遊ぶことができる状態の保全”、“原作の持つ要素、プレイ感覚を可能な限り正しく伝えること”を強く意識しています。

 注意すべき所としては、つねにテレビゲームとしての体裁を崩すことをしないように心がけています。原作再現の作業は、ともすればソフトウェア技術の範疇で完結してしまいがちで、ゲーム制作の心がなくても成り立ってしまいます。しかし、我々はいつも“ゲームソフトを作っている”という気持ちを忘れたくありません。

――ソフトウェアの解析と平行して、ハードウェア(基板)の解析も行ったかと思いますが、具体的にはどういった作業だったのでしょうか? 基板を解析することで解ったこと、設計当時の開発事情などがありましたら教えていただけますでしょうか。

 移植作業は、まず実機基板の解析より始めます。今回は、70年代のハードウェアということで、EPROM読み出しから作業が必要でした。初期のEPROMは、複数電圧の電源が必要なため、現在出回っている一般的な機器では取り扱いができません。また、基板に使用されているロジックICも、今では使用されていないものがあり、当時のデータシートを調査する必要がありました。

 かつては私たちが経験した移植開発の難関として、資料集めが思うように行かないといったことがありました。今はインターネット上に大量に情報が公開されている時代ですので、便利になったと実感しております。

 ソフトウェアの解析で、ハードウェアの調査が必要であることが判明した情報は、回路図から読み取ります。そして、さらに検証が必要になった場合は、必要な作業を実機基板と専用の機器を用いて行います。実機基板を取り扱う場合、作業による基板破損の可能性に気を配りながら、必要最小限の作業を行っていきます。

 各タイトルで印象的だった部分に関して順に述べさせていただきます。

 『スペースサイクロン』に関しては、ビデオゲームハードウェアの歴史的な進歩の足取りを感じました。オブジェクト表示用ハードウェアが、直前の世代であるスペースインベーダー基板の要素と、次の世代のスプライト機能が同居しているおもしろい構成となっています。この基板には、スタージェネレーター(星表示専用ハードウェア)が搭載されていますが、ランダムに星を表示するのではなく、星配置記憶用のROMがあり、実際の星座をモチーフにした星の配置が演出として取り入れられています。オリオン座や北斗七星が見えます。

 サウンド部分では、スペースインベーダーからの進化として、プログラマブルなトーン発生が可能となり、専用のコントロール用CPUが搭載されるようになりました。このことで、ゲームの部分のプログラムに影響を与えることなく、サウンドプログラムを作成できるようになります。

 音声合成は、CVSD(継続変数勾配デルタ変調)音源が採用され、音声品質と容量圧縮の両方を目指しています。CVSDは後にADPCM(適応的差分パルス符号変調)に発展していく技術です。

 『ルナレスキュー』は、『スペースインベーダー』ハードからの改造です。改造規模の制約により、回路の根本的な変更ができないため、サウンド部分で既存回路の流用に関して考慮したであろう部分が見えます。サウンドの変更は、基本的には抵抗やコンデンサのパラメータを調整することになります。同じサウンド回路で、できるだけスペースインベーダーとは違う音を出そうとしています。また、数種のトーン回路をコントロールし、メロディを出力しています。スペースインベーダーではインベーダーの移動音として使用されていた回路です。

 『スペースインベーダーDX』は、スプライト全盛時の基板で、初代スペースインベーダーをリメイクしたものです。この基板には、当時の水準で一般的な、スプライト機能とBGテキスト機能が搭載されていますが、スペースインベーダーのゲーム部分ではそれらを使用していません。スプライト機能は無効化され、そのためのフレームバッファは CPU へ開放されています。

 ゲームキャラクタの表示は、スプライト用のフレームバッファへ、CPU(68000)が、表示パターンを直接書き込んでキャラクタの表示を実現しています。それは、オリジナル(1979年)のスペースインベーダー基板で、CPU(8080A)が、表示パターンを直接フレームバッファへ書き込んでキャラクタの表示を実現しているのとまったく同じ手法にて描画を行っています。

――一部の基板に関してはタイトーから回路図の提供が行われたとのことです。また、『ルナレスキュー』については改造説明書が提供されたと聞いています。これらはどのように活用されましたでしょうか?

 先にも申し上げましたように、回路図はソフトウェア解析時、ハードウェア挙動の確認が必要になった場合に、まず参照する資料となります。80年代前半までは、回路図ですべての挙動を把握できることが多いため、移植開発時には大変ありがたい資料となります。

 『スペースサイクロン』では、提供を受けた回路図が揃っておらず、必要な部分に関して、実機から回路図を起こしながら作業をすることになりました。

 『スペースインベーダー』では、サウンドなどの主にアナログ部分の解析に役立ちました。

 『ルナレスキュー』は『スペースインベーダー』基板からの改造のため、『ルナレスキュー』としての完全な回路図がなく、改造説明書と実機を参照しながら、必要部分の回路図を作成する必要がありました。

 F2-SYSTEM、B-SYSTEMの時代では、カスタムLSIを使用した基板となりますが、回路図には、これらの機能や構造を読み解く情報がふんだんに記載されています。

 今回、これらの回路図を提供していただいき、開発作業に有効活用を行うことができたことで、タイトー様に非常に感謝しております。

――このころの基板はサウンドチップがなく、発音回路で作られた信号をON/OFFするなどでゲームの効果音として鳴らしていたようですが、その再現にあたって工夫した点、苦労した点などはありますか?

 オペアンプ回路や、アナログノイズ発生機などの挙動を回路図、実際の動作波形から読み取り、動作が同じになるようにプログラムしていきます。

 『スペースインベーダー』では、同じ音源でも、初代とパート2ではソフトウェア的に違った手法でコントロールすることで、別の音として聞こえるように発声させるといったテクニックを用いているため、そういった場合でも正しい音がでるように気をつけながら作業しました。

 CSG(Complex Sound Generator)などのパッケージICは、比較的同じ音が出るのですが、アナログ部品の組み合わせで構成されているサウンド回路では、個々の部品のパラメータのばらつきや、経年劣化などで、大きく音が変化してしまいます。本来の音がどうだったのかに気をつけながら、ひとつの製品としてまとめていかなければならないところが、デジタル回路で組まれたゲームのサウンドを移植する作業と違う点です。

――チャレンジモードを追加するため、ソフトの解析や改変などが必要だったかと思いますが、苦労した点、おもしろかった点をお話いただけますか。

 『マジェスティック トゥエルブ』のゲーム設定で“DUAL”を“TURN”にすると、ゲーム終盤で、従来のキャトルミューティレーションとは違うステージを遊ぶことができます。普通にゲームするだけでは、見つけることが難しいところにありますので、その点も楽しんでいただければと思います。

 『スペースインベーダー・パート2』では基本部分は前作と共通しているものの演出や新たな敵のギミックなど、追加された部分も多く、中にはゲームをさらにおもしろくする隠し要素もあり、その部分を解析するのが楽しかったです。例えばチャレンジモードではレインボーボーナスを達成することがキモとなりますが、このボーナスも条件によっては500点、800点、1000点と変化します。どのインベーダーを最後に残すかが重要となります。

 『スペースインベーダーDX』はベースとなった、初代『スペースインベーダー』ととてもよく似ていますが、内部のプログラムは新規に作り直されており、ステージの管理方法など、あらゆる要素が初代とは異なる為、初代で得た解析情報があまり役に立たなかったという点で苦労しました。また、レインボーを2段階ほど放置すると即座に侵略されてゲームオーバーになってしまうという初代『スペースインベーダー』の不具合も仕様として再現されていますが、侵略される際に残るレインボーの軌道が異なるなど、よく見ると異なる部分もあります。通なプレイヤーは互いを遊び比べてこういった違いを探すのも楽しみ方の1つかもしれません。

――その他、移植にあたってのエピソードなどあれば……。

 『スペースインベーダー』の開発終盤での不具合報告で“インベーダー編隊が表示される直前にサウンドにノイズが載りません”というのがありました。確かに、手持ちの基板によっては、このタイミングで大きなノイズが載るのですが、タイトー様よりお借りしている“いちばんリファレンスにしている基板”ではノイズ音が出ません。

 回路図的にも、ノイズがどのレベルで聞こえるのが正しいのかが判断できません。いろいろな情報を吟味して、最終的にはこのノイズを再現することにしたのですが、アナログ信号を扱う回路の挙動は簡単には完全再現できないことを痛感した次第です。

ファン必見の超豪華な特装版!

 『スペースインベーダー インヴィンシブルコレクション』では、特装版の販売も決定しています。特装版では、通常版でプレイ可能な8タイトルに加えて、『スペースインベーダーDX』、『スペースサイクロン』、『ルナレスキュー』の3本を収録。

 さらに『スペースインベーダー』をモチーフにしたオリジナルボードゲームや公式資料集、タイトー集金袋風の巾着、インストラクションカードがセットになっています。『スペースインベーダー』好きなら見逃せない、豪華なラインナップになっています。

特装版のラインナップ

  • ▲ボードゲーム
  • ▲公式資料集
  • ▲巾着(タイトー集金袋風)


  • ▲復刻インストラクションカード(5枚)
  • ▲『スペースインベーダーDX』
  • ▲『スペースサイクロン』
  • ▲『ルナレスキュー』

 『スペースインベーダー インヴィンシブルコレクション』の発売は3月26日。『スペースインベーダー』が好きな人はもちろん、これまで触ったことがない人にもプレイしていただきたい1本です。ゲーム史を語るなら外せないタイトルである『スペースインベーダー』を、実際にプレイしてみてください!

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スペースインベーダー インヴィンシブルコレクション 特装版

  • メーカー: タイトー
  • 対応機種: Switch
  • ジャンル: STG
  • 発売日: 2020年3月26日
  • 希望小売価格: 16,800円+税

スペースインベーダー インヴィンシブルコレクション

  • メーカー: タイトー
  • 対応機種: Switch
  • ジャンル: STG
  • 発売日: 2020年3月26日
  • 希望小売価格: 5,200円+税