アニメ『イド』考察。名探偵＝殺人犯。勧善懲悪ではない世界観に込められた伏線（ネタバレあり）

　監督・あおきえい氏と脚本・舞城王太郎氏のコンビによるオリジナルTVアニメ『ID:INVADED イド：インヴェイデッド』は、殺人犯の深層心理“殺意の世界（井戸）”を舞台に記憶喪失の名探偵・酒井戸の活躍を描くSFミステリー作品です。

　謎が多すぎる本作の情報を整理するため、この記事では物語の折り返し地点ともいえる第6話までの内容をもとに、これまでに判明している不明点や情報をまとめてみました。

　本作は完全オリジナルストーリーのため、うっかりネタバレを踏む前にリアルタイムで視聴することをオススメします。

　みなさんもぜひ、名探偵・酒井戸たちとともに“イド”の世界に散りばめられた謎に迫ってみてください。

名探偵＝殺人犯。勧善懲悪ではない世界観

　推理ものに不可欠なのが、名探偵の存在です。

　本作の名探偵・酒井戸は、世界さえも疑う柔軟な発想と被害者を気づかえる魅力的な人物。事件そのものはかなり凄惨な内容が多く、名探偵も死にまくりですが、彼自身はいつでもフラットでお茶目な言動も多いので物語全体が重くなりすぎません。

　しかし、現実の彼＝鳴瓢（なりひさご）は、連続殺人犯なのです。

　“井戸”のパイロットになるには、複数の人間を殺しているという条件があります。こんな物騒な条件、誰が決めたのか……、そのあたりも“ミズハノメ”の持つ秘密に関係している気がします。

　もう疑問点が多すぎて疑心暗鬼になり、すべてが怪しく見えている可能性もあるんですが(笑)。

　気さくな好青年という雰囲気の酒井戸に対して、鳴瓢はどこか陰鬱としていてくたびれた雰囲気のある男性です。年齢も鳴瓢の方が、若干上のような印象。

鳴瓢の元同僚たちの反応は？

　物語が進むなかで彼が元警察官で、酒井戸の情報をもとに現実で事件の捜査に当たる“井戸端”メンバーの百貴（ももき）船太郎（声優：細谷佳正）の同僚、松岡黒龍（声優：西凜太朗）の知り合いだったと言います。

　鳴瓢のことを気にしている百貴に対して、松岡はかなり嫌っているような言動が多い印象なんですよね。彼が犯した殺人が、そうさせているのでしょうか？

　表向きに見える人間関係と隠された人間関係。細かなつぶやきや表情の変化が特徴的な作品だけに、物語が完結したあとに彼らの何気ない会話を見直すと、実はそれが伏線だったということは多分にありそうです。

“タイマン”に殺された鳴瓢の妻と娘

　鳴瓢には妻の綾子（声優：遠藤綾）と娘の椋（むく）（声優：島袋美由利）がいましたが、“タイマン”との事件に巻き込まれて殺されています。

　作中で百貴が三周忌と言っていたので3年前の事件のようですが、独房にはたくさんの家族写真が飾られていて、現在でも彼の心の大きな部分を占めていることが伝わってくるようです。

　鳴瓢はカエルちゃんに娘・椋の影を重ねており、酒井戸もカエルちゃんの死を悼み、第6話では彼女を助けたいと涙をこぼすのでした。

　酒井戸は自分の名前と役割以外忘れているはずなのに、その悲痛な姿は娘を思う鳴瓢と重なり胸が痛くなります。

5人以上の人物を自殺に追いやってきた鳴瓢は、正義か悪か？

　6話まで追いかけている作品の主人公だし、娘を失くしているお父さんだし、悪人ではないと思いたいんです。もしかしたら、彼が殺した人間も家族がらみの犯人で情状酌量の余地があるのではと思ってしまいます。

　しかしそれ以外にも、彼は自身が捜査した“井戸”の持ち主たちを言葉巧みに5人（＋α？）も自殺に追い込んでいるんですね……。3話で“花火師”と呼ばれる犯人を淡々と追い詰めていく姿は、ゾクリとしました。

　ほかの犯人たちのように、鳴瓢自身も歪みを抱えた人間なんですよね。

　今後彼の“井戸”が登場することはあるのでしょうか？　娘たちが巻き込まれた事件と合わせて、早く真相が知りたいです。

“井戸”のパイロットになるための条件は連続殺人犯＋何か？

　“井戸”のパイロットになるためには、連続殺人犯である以外にもさまざまな資質が必要なようです。

　4話では殺人犯“穴空き”こと富久田保津（声優：竹内良太）が名探偵（むしろ迷探偵!?）“穴井戸”として登場。富久田は知能指数が高く、わずかな情報から“蔵”の本質を突くなど高い推理力を持っていましたが、“井戸”でほとんど活動できず早々に退場して思わず笑ってしまいました。

　本人もサバイバル能力のなさを自覚しているところが、より面白かったです。……もしかしたら、あえて無能を装っているのかもしれませんが。

　そんな慢性的人手不足の名探偵役に、期待の新人が出現！　“井戸端”として活動していた本堂町小春（声優：M・A・O）が松岡の推薦を受けて、探偵として活動することが6話で明らかになりました。

　現実世界で優れた推理と思い切りのよすぎる行動を見せていた彼女が、どんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。

　余談ですが、6話で“穴空き”こと富久田が語っていた「経験上、（頭の穴は）涼しくないとかなりマズい」というセリフなどはわかりやすい伏線だと思いますが、6話では回収されませんでした。

　果たして本堂町の頭の穴は暑いのか涼しいのか……。動くと傷口が開いて血が出るという描写もありましたし、かなり心配ですね。