“究極の語り部”を求めたハンス・アンデルセン【グリムノーツ最終考察13_1】
- 文
- そみん
- 公開日時
スクウェア・エニックスのiOS/Android用アプリ『グリムノーツ Repage(リ・ページ)』の物語がいよいよ完結します。
その物語をより楽しめるよう、ストーリーの流れをまとめつつ、物語の背景を読み解く考察記事をお届けします。
※本記事内には物語のネタバレを含む表現がありますので、ご注意ください。
ハンス・アンデルセン(声優:鳥海浩輔)について
●プロフィール
“アンデルセン童話”の作者。「人魚姫」「マッチ売りの少女」など、悲劇的結末の物語を多く描いた。生涯独身で、孤独な死を迎えると思われていたが、彼の死に王族から貧者まで、すべての人が涙した。そして「人生は一冊の童話」と語った彼の物語は、今も尚輝き続けている。
●プロフィール(オリジン)
人生とは物語、物語は人の生き様そのもの。たとえこの身が朽ち果てようが、たとえこの名が忘れ去られようが、我が物語を読みし者たちが、次なる生き様を示し、物語となり、また後世に繋がるのなら、死すら通過点にすぎない――そう信じた男は叫ぶ、「魂は、不滅」と。
コペンハーゲン、クブンハウンとも呼ばれている街に住む作家のハンス・アンデルセン。
彼は『リ・ページ』の7想区(アンデルセン童話の想区)の凍り付いた街の中のアパルトメントの8階で、初めてレヴォルたちと出会う。
(“空白のホムンクルス”の肉体を持つ本人ではなく、その原典をもとにしたヒーローとしてのこと。また、彼は記憶を失っていたため、レヴォルたちが彼をアンデルセンだと知るのは、少しあとのことになる)
真っ暗で本が山積みとなったホコリまみれの部屋の中、アンデルセンは机にうつ伏せて本に埋もれて倒れていた。彼は、自分の力を求める“もみの木”の追っ手から逃れるために、自分の力のほとんどを封印し、仮死状態となって気配を消していたのだった。
オペラ歌手になれず、劇作家になれず、何もかもがダメだったアンデルセンが、その時の想いを物語にした“もみの木”。それは、ひたすら大きくなることを願い、望み、それ以外の一切を顧みない、救われない一本の木の物語。
そんな“もみの木”が力を求め、7想区(アンデルセン童話の想区)のカオステラーとなっていたのだった。
その後、カオス・ゲルダを前に、ゲルダとカイの愛に関する話が出た際、アンデルセンは以下のように語る。
「愛とは、時に固執と執着と同義となる」
「誰か一人を深く愛するということは、同時に、それ以外の全ての人間を、無用の者と断ずるに等しい」
「人が神でない以上、その愛は、常に表裏を持つものなのだ。」と。
そして、レヴォルたちとカオス・ゲルダの戦いが終わったのち、アンデルセンは自分の記憶を取り戻すことに。
アンデルセンがイマジンであるソフィアお姉ちゃん(人魚姫)やアンナ(マッチ売りの少女)を呼び出すのを見たレヴォルは、彼が自分たちの創造主であることを知るのだった。
レヴォルは物語を作った作者であるアンデルセンに対し、人魚姫の不運な最後に対して抗議をし、自分がマッチ売りの少女を救って運命を変えたことを告げる。
それに対してアンデルセンは、「なんて…なんという…なんたることだ…」「君は、ぼくの物語を、なにも理解できず、台無しにしたのか」「あるべき結末に、正しき結末にたどり着かせなかったのか…なんという…」「愚かな」と失望を見せる。
そして、レヴォルのような“空白の書”を持つ者に対し、「君たちはもしかして…物語にとっての、登場人物”ではなく、“読者”に近い存在なのかもな」と評するのだった。
また、火竜と化した雪の女王がカイを救うために自分の命を差し出し、スズの兵隊がカーレンのために我が身を犠牲にした際には、「素晴らしい…」「さすがは、“アンデルセン”の物語の登場人物だ…彼の魂は、不滅となった」と、自らが描いた登場人物たちをたたえる場面を。
アンデルセンにとって、死とは人の通過点に過ぎず、死をも含んだ“運命”を描くことで、人間の輝きの尊さを表現することが大事なのだった。
これについては、のちのプロメテウスとの戦いの中で、アンデルセン自身がこう語っている。
「まだわかっていないのかお前は…死など、通過点に過ぎない…!」「人の生き様は、それ自体が物語となる。ぼくという物語を読んだ者が、あらたな生き様を残し、物語となる…」
「それがまた、次の者に読まれ、さらに、物語が生まれる…わかるか?」
「たとえこの生命が尽きようとも。肉も骨も臓器も、髪の毛一本まで消えてなくなり、」「全ての人類から忘れ去られ、名前すら残らなかったとしても…」
「ぼくの物語は、受け継がれるんだ…」「そう…ぼくの“魂”は、残る!」「わかるか? 虚無の男よ!」「魂は、不滅だ!!」と。
レヴォルは悲劇を描くことを“作者の自己満足”だと指摘するが、アンデルセンは「物語とは、作者が描けば完成ではない。それだけではなんの意味もなさない」「書き手が紡ぎ、読み手が受け止め、読み終えたその瞬間、初めて完成する」と返す。
その後もアンデルセンは、「君は“もみの木”の最後に憤った。“人魚姫”の最後に悲しんだ。“マッチ売りの少女”の境遇を見過ごせなかった」
「その思いだ…その思いを呼び起こすことが、ぼくが物語を紡ぐ理由だ!」
「真の救いなど、人には与えられないのかもしれない。神さまくらいしか、人を救えないのかもしれない」
「だが、どんな運命の中でも、人は、輝きを尊いと信じ生き通せる…!」
と続け、「それを証すことが、ぼくの、おほしさまなのだ」と語る。
アンデルセンにとっての“おほしさま”とは、“どんな運命の中でも、人は、輝きを尊いと信じ生き通せる”という信念や感情であり、その想いを読者に呼び起こさせることこそ、彼が“物語を紡ぐ理由”となっている。
だからこそ、彼にとっての“物語の完成”は作者が執筆を終えた時ではない。その物語を読者が読んで、特別な感情を抱くことまでを含めて、ようやく物語が完成すると考えているのだった。
そしてプロメテウスと戦う際には、「…ぼくは悲劇の物語を紡いだことに、かけらも後悔していない。これがぼくの使命だと信じている」と言いつつも、「…でも、ぼくの紡いだ物語を「運命」としてしまった者たちに、申し訳ないと思う気持ちが、ないわけじゃないんだよ」「彼女たちにその運命を担わせた者として、これは“アンデルセン”の果たすべき役割なのさ!」と、死力を尽くしてプロメテウスに立ち向かったのである。
プロメテウスに自分のイマジン、すなわち物語をあえてとりこませたアンデルセン。プロメテウスは、謎の衝動を受け、胸がざわめき、頭が揺らぎ、視界がにじんでいく。
アンデルセンは、「ぼくの物語に、“感動”しているのさ。虚無の男よ、心なきはずのお前が、今、感動に打ち震えているのだ!!」「これでお前もぼくの読者だ!!」と宣言する。
自分自身を含めて、すべてをプロメテウスにとりこませて消滅しようとする最期の時に、アンデルセンの頭をよぎったのは、自分にとって最愛の読者であるエレナとレヴォル。
エレナについては、かつて原典たるアンデルセンが体験した、グリムノーツメンバーとしてともに旅をした際の記憶の残り香の影響もあっただろう。
レヴォルについては、自分の創作物から派生した登場人物ではありつつも、“空白の書を持つ存在”=読者に近いイレギュラーな存在という考え方をしていたとわれる。
そんな2人にアンデルセンが残した言葉は、「生きろ! そして物語を紡げ!!」「誰のものでもない! 自分だけの物語を!!」というものだった。
その先に続けようとした「それこそが―――」の先の言葉はわからないが、“空白の書の持ち主、ひいては読者の役割”だったかもしれない。アンデルセンにとって、自分自身の人生も作品(物語)の1つであり、彼にとっての物語は“作者と読者”の2つがあって、初めて完成するものだったのだから。
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グリムノーツ Repage
- メーカー: スクウェア・エニックス
- 対応端末: iOS
- ジャンル: RPG
- 配信日: 2016年1月21日
- 価格: 基本無料/アイテム課金
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グリムノーツ Repage
- メーカー: スクウェア・エニックス
- 対応端末: Android
- ジャンル: RPG
- 配信日: 2016年1月21日
- 価格: 基本無料/アイテム課金